EPISODE3-15【解決策】
光の帳がゆっくりと開き、一歩踏み出すたびに周囲の景色が一変する——。クレティアは眠ったレイトキをしっかりと腕に抱え、静かに神域へと踏み入った。扉の向こうに広がるのは、時さえも穏やかに流れる天地。頭上には四つの星が四季のように輝き、地面にはそれぞれの色——紅、黒、金、蒼——が織りなす紋様が無限に広がり、空気そのものがやさしく共鳴している。ここは四凶の力が生まれ、調和し、本来の姿で在り続ける根源の地。外のように干渉し合ったり衝突したりすることのない、力たちのふるさとでもある。
「さあ、着いたわ」クレティアは足元に気を配りつつ、レイトキをそっと柔らかな光の草の上に寝かせる。周囲の気配が彼に反応するようにそっと波立ち、四色の輝きがそっと寄り添うように集まってくる。
「ここなら大丈夫。誰にも邪魔されず、外の騒がしいエネルギーも入ってこない。全ての声が、本来の調子で話しかけてくれる」彼女は隣に腰を下ろし、レイトキの額に手を軽く置く。同時に、自らの内からも同じ四つの気配が応えるように浮かび上がり、周囲の輝きと呼応し始める。
「まずは彼自身が目を覚まし、自分の中にいる子たちと対話しなきゃ。そして忘れちゃいけない、一番上にいるあのお方の存在にも——」言いながら、レイトキの胸元からはるかに深く、静かな黄金の鼓動が響き始めた。ルーツドランの因子がこの場所で初めて、抵抗なく本来の姿を現し始めたのだ。
「ふむ…これが始まりね。六つの道、一つに繋がる場所まで、ゆっくりでいいから登っていくのよ」クレティアは目を閉じ、呼吸を合わせる。この神域こそが、レイトキが力と向き合い、和解し、真に自分のものにするための——まさに解決策の始まりの地なのだった。レイトキはゆっくりとまぶたを開け、まだぼんやりとした意識のまま周囲を見回す。
「あれ!?ここは…どこなんだ?」
見渡す限り広がる不思議な景色、柔らかな光に包まれた空間——見たこともない場所に戸惑いながら起き上がろうとすると、すぐそばにクレティアが座っているのに気づく。クレティアは穏やかに微笑み、はっきりと告げる。
「目が覚めたようだね。ここはワタシの神域だよ」
「えっ!?」レイトキは驚いて反射的に顔を上げ——その視線は思いがけずクレティアの胸元に釘づけになってしまう。ふんわりとした衣装のシルエットからはみ出すような豊かな曲線が目に飛び込んできて、彼の思考は一瞬完全に停止。
「(うわっ…かなり大きいな…!)」心の中で思わず叫んでしまい、顔が一気に熱くなる。慌てて視線をそらそうとするものの、なぜか目が離せなくて——クレティアはそんな彼の様子にまったく気づかず、真剣な面持ちで続ける。
「まだ体の調子は完全じゃないと思うけど、落ち着いて。ここは外の騒ぎも力の干渉も届かない場所。ゆっくりでいいから、自分の中と向き合う時間よ」レイトキはようやく我に返り、慌てて頭を振って視線を地面に落とし、赤面しながら答える。
「あ…うん、分かった! その…ありがとう、クレティアさん!」
「(まったく何を考えてるんだ俺は! 今はそれどころじゃないだろう!)」
心の中で自分を叱りつつも、どうしてもさっきの光景が頭から離れなくて——レイトキの初々しくも純情な反応に、クレティアはまだ気づいていないようだ。クレティアはレイトキの顔が真っ赤になっているのに気づき、心配そうに覗き込みながらはっきりと問いかける。
「顔赤いけど大丈夫? まだ熱があるのかしら? 力が不安定なままなの?」そう言って彼女は心配のあまりさらに身を乗り出し——豊かな胸元がさらに間近に迫る!レイトキはハッと息を呑み、ますます顔が真っ赤に燃え上がり、慌てて後ずさりながら手をブンブン振る。
「だ、大丈夫だよ! 全然大丈夫! 熱なんてないし、体調も悪くない! ただ…その…ちょっと寝ぼけてただけだから!」
「(寝ぼけてただけだなんて、全然嘘だけど…! こんな近くに来られたら余計にヤバいって!)」心の中で大慌てしながら目を泳がせ、どこを見ていいか分からなくなっているレイトキ。だがクレティアはまったく事情に気づかず、さらに真剣な顔で彼の額に手を伸ばしてくる。
「そう? でも明らかに様子がおかしいわ。ちゃんと熱を測ってみないと——」
「だから大丈夫だってば!!」レイトキは思わず声を上げ、慌てて話題を変える。
「そ、それよりさっきの話! 俺の中の因子たちと話すんだよね? 早く始めよう! 準備はできてるから!!」完全に慌てふためいているレイトキを見て、ようやくクレティアは「あっ…」と何かに気づいたように眉を上げ——そしてふわりと優しく微笑む。
「まあ…そういうことね。分かったわ。でも無理はしないで。何かあったらすぐに言ってね」レイトキはその笑顔を見て、さらに胸がドキドキしっぱなしになりながら、なんとか真剣な表情を取り戻そうと頑張るのだった。クレティアはレイトキの慌てた様子を見て、やっと全てを理解したように、小さく口元を緩めて独り言のように呟く。
「もしかして…ワタシの胸を見てたのね…。そういうところ、ジョンアイデルにそっくりだな」レイトキはまさかの一言に、頭から湯気が出るほど真っ赤になり、全身が凍りついたように固まってしまう!
「えっ…!? ち、違う! そうじゃなくて…! その…っ!」言い訳しようとするけれど、声が裏返ってしまい、まったく言葉にならない。心の中は大パニック——
「(ジョンアイデルさんにそっくりって…! どういうこと!? まさか俺、そっくりだなんて…! それにジョンアイデルさんって…!)」クレティアは悪戯っぽく、だけど柔らかい笑みを浮かべて、そっと続ける。
「あらあら、まるで彼が若かった頃みたい。見てはいけないものを見ちゃったような、慌て方するところまで、本当によく似てるのよね」レイトキはまだ顔を真っ赤にしてうつむき、手をブラブラさせながらポツリと言う。
「そ、それは…俺が悪かった…! でも、その…悪気は全然なかったんだ! ただ、ふと目に入っちゃっただけで…!」
「知ってる、知ってるから慌てなくても大丈夫」クレティアはくすくすと笑い、彼の肩を軽く叩く。
「悪い子だなんて一言も言ってないわ。ただ、あまりにもそっくりだったから、つい懐かしくなっちゃっただけなの」そう言って少しだけ遠い目をしながら、彼女は思い出すように呟く。
「ジョンアイデルも昔は同じように、すぐに顔を赤らめて慌ててたものよ。今はあんなに落ち着いてるけどね」レイトキはようやく少しだけ冷静になり、それでもまだ照れくさそうに頭を掻きながら言う。
「俺…ジョンアイデルさんに似てるのかな…? それは…なんだか嬉しいような、恥ずかしいような…複雑な気分だな」
「それだけじゃないわ」クレティアは真剣な瞳で彼を見つめる。
「顔立ちや雰囲気、そして心の在り方まで、本当によく似てる。だから余計に目が離せないのよね。あなたが彼の後継者というのも、単なる運命じゃないのかもしれないわ」こうして照れくさい雰囲気は、いつしか温かな絆と理解へと変わり——レイトキは自分が誰に似ていて、何を受け継いでいるのか、少しずつ知り始めるのだった。クレティアは穏やかな笑みを浮かべ、話題を自然に切り替えながら、はっきりと告げる。
「でもね、君がジョースター家の血を引いてるって知ったときは、正直面白いと思ったんだよね。だからこそ断言できる——君に入れられたこれら因子の力、ちゃんと安定させられるわよ」
レイトキは目を瞬かせ、首を傾げる。
「ジョースター家…? それがどう関係あるの? それに、どうして安定できるって言い切れるの? 今まであんなに暴れてたのに…!」
クレティアは腕を組み、真剣な表情で説明を続ける。
「ジョースター家の魂っていうのかしら——揺るがない芯の強さ、人を想う心、そして何があっても立ち上がる不屈の生命力。それが代々受け継がれてきたの。その器こそが、ありとあらゆる力を受け止め、調和させ、本来の姿に戻すことができる特別な資質なのよ」
彼女はレイトキの胸元に軽く手を置き、その鼓動を感じるように言う。
「因子たちが暴れるのは、拒絶されたり居場所がなかったりするから。だけど君の中には、どんなに荒れ狂う力でも優しく受け入れ、『ここにいていいんだよ』と言ってあげられる懐の深さが最初から備わってる。それがジョースター家の血と、君自身の生き方が育てた力なの」レイトキは話を聞き、少しだけ自分自身を見つめ直すように呟く。
「俺の…芯の強さ…? 俺、そんなもの持ってるのかな。いつも迷ってばかりだし、自信なんて全然ないんだけど…」
「それでいいのよ」クレティアは柔らかく肯定する。
「迷い、悩み、それでも前を向こうとする——その姿勢こそが、実は一番強い力なの。だから安心して。君は既に、これら六つの力をまとめ上げる資格を持って生まれてきた。あとはただ、一つひとつと向き合い、名前を呼び、話しかけてあげればいいだけなの」レイトキはその言葉に少しだけ勇気をもらい、頷く。
「分かった…。俺、頑張ってみる。ジョースター家の血のこと、初めて知ったけど…それを信じて、自分の中の力たちとちゃんと向き合ってみる!」
こうして照れくさい雰囲気は完全に解け、二人の間には信頼と理解の絆が深まり——レイトキの真の力を目覚めさせる旅が、本格的に始まったのだった。レイトキは深呼吸をし、心を静め、これまで拒絶したり抑え込もうとしてきた六つの因子——ルーツドラン、四凶(饕餮・窮奇・檮杌・渾沌)、スターヴァンパイア、件狐、ムー因子、ネームレス、そしてZXファクター全て——に心から呼びかけるように意識を開いた。
「俺はお前たちを敵だと思ってた。怖がって、拒絶して、押さえつけようとしてた。だけど違うんだな。お前たちは俺の一部だ。俺が生まれた時から共にいて、俺を支えてくれてた存在なんだな」
一つひとつ名前を呼び、受け入れる——「よろしく、一緒に生きていこう」——その瞬間、身体の内側から変化が始まった。
それまで衝突し、暴れ、互いに主張し合っていた力たちが、まるで氷がゆっくりと水に溶け込むように、柔らかく、滑らかに溶け合い始める。ルーツドランの深く尊い黄金の輝きが中心となり、それぞれの因子が本来の色と性質を保ちながら、自然な形で定位置に収まり、調和の輪を描き始める。
「……!」
レイトキは目を見開き、その感覚に包まれる。
痛みも、衝突も、引き裂かれるような苦しみも——完全に消え去っていた。代わりに湧いてきたのは、生まれた時からずっと身に着けていた衣服のように、あるいは空気を吸い込むように、当たり前に、自然に、自分のものとなった力たちが全身に巡っていく、その馴染み深い感覚。
「これが…受け入れるってことなのか…」胸の奥から静かな力が湧き上がり、手足の先まで満ちていく。六つの因子はもはや別々の存在ではなく、レイトキそのものとなり、ZXファクターの可能性の光がそれら全てを優しく包み込み、さらなる高みへと繋いでいく。
「ああ…! すごく…落ち着いてる…! 全部俺の一部だ…!」力が暴れることも、制御できなくなることもない。自分が何を望み、何をすべきか——それに応じて、それぞれの力が自らの意思で応えてくれる、そんな穏やかで確かな絆が生まれていた。クレティアは微笑み、その変化を確かめるように頷く。
「そうよ。これが本来の姿。力は支配するものでも、戦うものでもない。受け入れ、理解し、共に生きることで、初めて本当の力を発揮してくれるの。君は今、完全に一つになったのよ」レイトキは拳を軽く握り、開き、自分の力を確かめる。六つの輝きが内側から優しく応え、ZXファクターが無限の可能性を広げていく——まるで新しい自分が誕生したかのような、清々しく、それでいて落ち着いた気持ちに包まれていた。
「ありがとう、クレティアさん。俺、分かった。これからは俺が俺である限り、この力たちも一緒にいる。俺たちは一つなんだな」こうしてレイトキは長かった試練を乗り越え、六つの因子とZXファクターを完全に受け入れ、真に自分のものとした——彼の新たなる力と覚醒の時が、今来たのだ!クレティアは立ち上がり、軽やかに一歩踏み出すと、四色の紋様が衣装の上で浮かび上がり、穏やかでありながら圧倒的な気配が辺りに満ちる。
「さあ、実戦してみようか。手合わせ相手はワタシよ」
レイトキは少しためらいつつも、胸の内に湧いてきた確かな力と決意を感じ、ゆっくりと立ち上がる。
「クレティアさんが相手!? それは…心強いけど、同時にすごく手強そうだな…!」
「当然よ」クレティアは笑みを浮かべながら構えを取る——その姿は優しさの中にも、四凶因子を持つ者としての風格と鋭さが満ちている。「同じ力を知る者同士だからこそ、君の今の実力、限界、伸びしろが正確に分かる。遠慮は無用。今手に入れた力、全部使ってかかってきなさい」
レイトキは深呼吸し、トーフーとボーフーを静かに構える。内側では六つの因子が呼吸に合わせて穏やかに脈打ち、ZXファクターが自在に流れ始める——もう恐怖も混乱もない。
「分かった! 全力でいく! 俺がどこまでやれるか、確かめてもらう!」
「いざ!」合図はなくとも、互いの気配が一気に鋭くなる。レイトキはまず基本の突きを放つ——だがその軌道には、ネームレスの不確かな揺らぎが自然に重なり、見た目よりも捉えにくくなっている!クレティアは軽やかにかわしつつ、的確に指摘する。
「いい! 既に力が一体化してる。だけどまだ『こう使う』と決めつけてる部分があるわ。もっと自由に——力たち自身が何をしたがってるか、聞いてみて」レイトキは言われた通り、意識を力たちに開く。すると饕餮が「もっと繋がりたい!」、窮奇が「流れを変えてみろ!」、檮杌が「真っ直ぐに突き抜けろ!」、渾沌が「全てを内包して広がれ!」——それぞれの声が心に響き、自然と次の動きが生まれる!
「わかった! こうだ!」一気に距離を詰め、四つの力を順に、そして同時に織り交ぜた連続攻撃! 星の光が軌道を描き、月のように変化し、件狐の素早さが加わり、ルーツドランの重厚な核が全てを支える!
「見事!」クレティアは受け止めながら、その一撃一撃の質の高さに目を見張る。
「力が生きてる! ただ流すんじゃなく、君らしい意志が乗っかってる!」手合わせは続き、時に激しく、時に流れるように——レイトキは一つ一つの動作ごとに力の使い方を身体で覚え、六つの因子とZXファクターを自在に組み合わせ、新たな技すら自然に生み出し始める。
「これが…俺の本当の力なんだな! まだまだいける!」
「そう、その調子!」クレティアも次第に本気になり、同じ四凶の力を応用した高等な動きで応じる。
「制御するな、共に踊れ! それが祖龍の後継者たる者の在り方よ!」こうして神域の空間は、光と力が華やかに交わる場となり——レイトキは理屈ではなく身体全体で、自分自身の力と完全に一体となる感覚を掴み取っていくのだった!レイトキは心の中で、ただそっと二振りの刀に呼びかける——力で押さえつけるのではなく、「一緒に来て」と手を差し伸べるように。すると、トーフーとボーフーがまるで自ら意思を持ったかのように、ゆっくりと手の平から浮き上がり、宙に静止した! ルーツドランの力が根本から支え、ZXファクターが自在な動きを与え、ネームレスの揺らぎが軌道を柔軟に保つ——六つの因子が一体となって、彼の想いをそのまま形にしているのだ。レイトキは目を丸くし、驚きと感嘆の声を上げる。
「おお、こういうことも可能か!?」刀たちは彼の周りをゆるやかに旋回し、まるで応えるかのように輝きを強める。手で握っていた時とはまた違う、より自由で一体的な感覚——距離も角度も、全てが思考と同期し、何も力まなくても思い通りに動かせる。
「手を離してても…俺の一部みたいに動いてくれる! これが全部、受け入れて繋がったからこそなんだな!」クレティアは笑みを浮かべ、頷いて見せる。
「そうよ。道具は使うものだと思ってない? でも本当に力と共に生きる者にとって、刀も力も自分の延長線上にある存在。拒絶や命令じゃなく、絆で繋がれば、こうして自ら共に動いてくれる。まさに今の君と同じようにね」レイトキは二刀を見つめ、それから自分の手を見て、新たな可能性に胸を躍らせる。
「すごい…! じゃあ、これなら両手が使えるし、同時に複数の動きもできる! まだまだ新しい使い方がありそうだな!」試すように少し意識を動かすと、トーフーが素早く円を描き、ボーフーがその内側を直線に走る——互いに連携し合うかのような軌道を描き、見事な調和を見せる。
「これは…戦い方自体が変わってくるぞ! 俺、今まで以上にやれることが広がった!」彼は二刀を自在に宙で操りながら、力と自分の境界すら溶けていくような、まったく新しい感覚を味わっていた。手合わせの流れの中、レイトキは身を沈め、素手で突き込むように構え——クレティアも軽く構えて受け流そうとした瞬間、動きが予測を外れ、まるで引力に導かれるかのように手が滑り込み——
「っ!?」気づいた時には、レイトキの手はまさにクレティアの豊かな胸を鷲掴みにしてしまっていた!柔らかく弾力のある感触が手のひら全体に伝わり、二人の動きはピタリと完全に停止。空気まで固まったかのような静寂が辺りを包む——
「…………」レイトキは目を限界まで見開き、顔から血の気が引いたかと思えば一気に燃え上がるように真っ赤に染まり、全身が凍りついたように動けなくなる。心の中は大パニックで嵐のよう!
「(な、なんで!? どうしてこうなるんだ!? 俺、何をやってるんだーっ!!)」クレティアも一瞬驚いて瞳を丸くし、動きが止まる——だが痛がる様子はなく、むしろ呆れつつも悪戯っぽい笑みが浮かび、静かに呟く。
「……まあ、やっぱり。予想通りというか、何というか。ジョースター家特有の不器用さ、健在ね」レイトキは慌てて手を離そうとするものの、緊張で指が動かなくなり、ますます顔が真っ赤になって叫ぶ。
「す、すまない! 本当に悪気は全然なかったんだ! 手が勝手に…いや、その…っ!」慌てて勢いよく手を引っ込めるものの、余計にもたついてしまい、完全にパニック状態に。クレティアはくすくすと笑いながら、自分の胸元を軽く押さえつつ、彼の赤面した慌てっぷりを楽しむように見つめる。
「あらあら、慌てなくても取って食べたりしないわよ。でも——手合わせ中にこれは反則じゃないかしら?」レイトキは頭を抱えるようにうつむき、「もう…本当に申し訳ない!」と絞り出すように言うが、耳まで真っ赤になっているのは隠しようもない。
「(どうして俺はこういうことを…! さっきの視線のこともあるし、絶対に変な奴だと思われてるよな!)」
だがクレティアはそんな彼を見て、ますます柔らかい笑顔になり、肩を軽く叩いてくれる。
「まあまあ、そこまで落ち込まなくても。無邪気というか、何というか——本当にジョンアイデルにそっくりだわ。彼もよく似た失敗をして、同じように真っ赤になって慌ててたものよ」レイトキはその言葉を聞いて、ますます恥ずかしくなりつつも、どこかホッとしたような複雑な気持ちになるのだった。クレティアは悪戯っぽく笑い、指を唇にあてて静かに告げる。
「絶対彼女さんに言わないでおくからね」レイトキは一瞬呆然とし、それからハッとして目を見開く。
「見抜いてたのか!?」まさか自分の気持ちや状況まで、全部お見通しだったなんて——! 顔はさらに熱くなり、まるで心の中を丸裸にされたような気分になる。
「いつから…? どこから分かってたんだ?」クレティアはくすくすと笑いながら、穏やかに答える。
「最初からよ。あなたの反応、見てれば一目瞭然だったんだから。照れたり慌てたりする様子、それに『悪いことしちゃった』って申し訳なさそうにするところ——本当にピュアなんだから」彼女は少しだけ優しい眼差しになり、続ける。
「それに、大切な人がいるっていうのは、すごくいいことだと思うわ。だから安心して。約束する、誰にも言わない。これは私たちだけの秘密」レイトキはその言葉を聞いて、恥ずかしさはまだ残っているものの、胸の中のつかえがスッと取れたような気持ちになる。
「…ありがとう。本当に助かる。俺、自分でもどうしようもなくて…! でも、そう言ってもらえて、本当に嬉しい」
「当たり前でしょ」クレティアは笑顔で肩を叩く。
「さあ、もう恥ずかしがってないで! 手合わせ、続けるわよ? 今度はちゃんと刀を使って、私を倒してみなさい!」レイトキは深呼吸し、照れくさそうに笑いながらも、再び決意を込めて頷く。
「はい! 今度は絶対に、ちゃんと攻撃します! もう変な失敗はしないように頑張るから!」こうして二人の間には、秘密を共有したことでさらに深い信頼の絆が生まれ——照れ臭いハプニングは、いつしか良い思い出となり、次のステップへ進むための潤滑油となったのだった!手合わせの熱気がまだ空気に残る中、クレティアはゆっくりと膝をつき、呼吸を整えながら告げる。額にはわずかに汗が光り、その瞳には驚きと同時に確かな納得の色が浮かんでいる。
「さすがね。本気を出してないとは言え、ワタシに勝てるんだからね。これから神の試練を受けることになるわね」
レイトキは刀を収め、慌てて駆け寄り手を差し伸べる。
「クレティアさん! 大丈夫ですか!? いや…勝ったなんて、俺、まだまだ全然です! だってクレティアさん、手加減してくれてたんでしょ?」
クレティアはその手を取り、立ち上がりながら穏やかに首を振る。
「手加減はしてた。だけど力の差だけの話じゃない。君はただ力を操るだけじゃなく、それを『自分らしさ』で纏め上げ、前に進もうとする意志そのものが、既に神の資格に届き始めてるのよ。同じ四凶を持つ者として、それがよく分かる」彼女は真剣な眼差しで続ける。
「君がクロノたちから告げられた通り、これからは単なる戦いじゃない。時空と英勇の神、そしてグノーシス神たちの試練——それは力だけでなく、心、選択、存在の意味そのものを問われるものになる。今の君なら、きっとその扉を叩ける」レイトキは胸に迫るものを感じ、拳を固く握りしめる。
「神の試練…。俺、本当にそこまで来てるんですか? まだ何も分からないことだらけで、不安だらけだけど…」
「不安で当然よ」クレティアは柔らかく背中を押すように言う。
「だけど忘れないで。君はもう一人じゃない。六つの因子、ZXファクター、そしてジョースターの血、仲間たちの絆——全部が君と共にある。そして必要な時は、いつでもワタシも力になる」レイトキは感謝の気持ちでいっぱいになり、深く頭を下げる。
「ありがとう、クレティアさん。俺、頑張る。どんな試練が来ても、俺らしく、俺の選んだ道を進んでみせる!」
「うん、その意気よ」クレティアは満足げに微笑み、神域の出口へと視線を向ける。
「さあ、もう準備はできた。行こう。待ってる人たちのもとへ、そして君自身の運命の場所へ——」
「あっ、待って、その前に——」クレティアは不意に呼び止めると、そのまま一歩踏み込み、腕を広げてレイトキをぎゅっと強く抱きしめる。そして彼の顔を自分の胸にそっと埋めさせるように、優しく包み込んだ。
レイトキは突然のことに息を飲み、全身が一瞬硬くなる。柔らかくて温かな感触に包まれ、耳元には心臓の穏やかな鼓動が響いてくる——先ほどの失敗とは全然違う、心からの優しさと守られているような安心感が、じんわりと広がっていく。
「クレティアさん…?」声は少し震えていたけれど、抵抗することも、慌てることもなく、自然と彼女の腕の中に身を委ねていた。クレティアは彼の頭をそっと撫でながら、柔らかく温かい声で囁く。
「よく頑張ったね。本当に、よく頑張った。自分の中の大きな力と向き合って、受け入れて、和解するのは、誰にとっても一番辛くて難しいことなの。それを君はやり遂げたのよ」抱きしめる力は少しだけ強くなり、彼女の想いが直接伝わってくるようだ。
「これから先、神の試練やリュウゼツランたちとの戦い、辛いことや苦しいことがたくさんあると思う。でも忘れないで——君は決して一人じゃない。ワタシはいつでも君の味方で、いつでもこうして支えてあげるからね」レイトキは胸の奥が熱くなり、目の裏がじんわりと熱くなるのを感じる。これまで一人で背負い込もうとしてきた重荷が、この抱擁で少しだけ軽くなったような気がした。
「…ありがとう、クレティアさん。俺、本当に一人じゃなかったんだな。こうして見守ってくれる人がいて、支えてくれる人がいて…本当に恵まれてるな」彼もゆっくりと腕を回し、クレティアの背中に手を添えて——心からの感謝を込めて、その優しさに応える。
「俺、強くなる。絶対に。クレティアさんが教えてくれたこと、力の使い方、心の在り方、全部胸に刻んで、どんな試練も乗り越えてみせる!」クレティアは満足そうに微笑み、少しだけ体を離してレイトキの瞳をまっすぐに見つめる。
「うん、そう信じてる。さあ、もう大丈夫。行こう。君の帰りを待ってる人たちが、きっと心配してるわ」こうして温かな抱擁は、別れと旅立ちの儀式のように——レイトキの心に永遠に消えることのない勇気と絆を残し、二人は共に神域を後にするのだった。




