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EPISODE3-7【前世の記憶など】

アハトとの決別、陸郎と那奈の新たな旅立ち——多くのことが一気に動いた一日。レイトキはドライたち正規品の残りと別れ、自宅へと戻ってきた。玄関の扉を開けると、久美子、星玲奈、リジェが既に帰宅し、揃って彼を迎える。三人の表情には、戦いの疲れと同時に、無事に戻ってきた安堵が滲んでいる。

「おかえり、レイ」久美子がそっと駆け寄り、彼の服の埃を払う。「長かったね…、色々あったんでしょ?」

「ああ…」レイトキはゆっくりと頷き、玄関で靴を脱ぐ。

「アハトが衆生解放戦線に移るって、俺たちの敵になるって言って去った。陸郎と那奈は俺とキキョウさんが買い取ることにした。これからはこの家の隣に住むことになる」星玲奈は悲しそうに瞳を伏せる。

「アハトくん…。そうなっちゃったんだね…。でも、陸郎くんと那奈ちゃんが来てくれるのは嬉しいよ。みんなで過ごせば、きっと心強い」リジェも静かに頷く。

「アハトのことは残念だけど…、今は彼の選択を受け止めるしかない。それよりレイ、今日は本当にお疲れ様。ゆっくり休んで」だがレイトキはその場で動きを止め、額に手を当てる。突然、頭の奥が疼き、視界が一瞬霞む。

「レイ? どうしたの?」久美子が心配そうに声を上げる。

「ああ…、大丈夫だ。ただ…急に頭の中に、変な映像が浮かんできたんだ」

レイトキは目を閉じると、そこには見たこともない景色が広がっていた。青く輝く空、浮かぶ大地、そして自分と同じ顔をした人物が、何千年も前のような世界で、同じくトーフーとボーフーの刀を手に立っている姿——。

「俺…、誰かに似ていると思ったことがあった。でもそれは、他人じゃない。俺自身の、昔の姿だったんだ…」

星玲奈は息を呑む。

「それって…、前世の記憶なの?」

「そうかもしれない…。ユーカリさんが言っていた、生誕の地…アブラムニア、メルトキア。そしてクロノジェ…。俺の記憶は、そこに繋がっている気がする」レイトキは目を開け、そこには決意と共に、過去から受け継いだものを実感する瞳の輝きがあった。

「俺は行く。メルトキアへ。そしてアブラムニアへ。俺の全ての答えが、そこにあるからだ」夜、レイトキは久しぶりに深い眠りに落ちた。だがその夢の中は、静けさとは程遠い世界だった——。

夢の中

視界の端々が赤く滲み、遠くからは重苦しい鉄の響きが轟いている。無数の鎖が空を覆い、大地は黒い装甲に覆われ、どこまでも続く監獄のような光景が広がっていた。その中心で、レイトキは二振りの刀——トーフーとボーフー——を両手に構え、立っていた。目の前には人ならざる巨大な影が幾重にも迫り、牙を剥き、権力の意志を纏って襲いかかる。

「はぁーーっ! やぁーーっ!」渾身の力を込めて刀を振るう。白い閃光が闇を裂き、影は次々と断ち切られていく。一撃一撃に覚悟が宿り、その剣筋には迷いが一つもない。敵の残骸が霧のように消えゆく中、レイトキは刀を構えたまま、胸の内から湧き上がる声を叫ぶ。

「解放しなくてはいけない——! この支配から、全ての者を! 誰も鎖に縛られることのない世界を、取り戻さなくてはならない!」その声は、今の自分のものであると同時に、遥か昔、この地で同じ願いを抱いた者の声でもあった。前世の記憶が、血潮となって駆け巡る——。

「アブラムニア…メルトキア…。俺は必ず、そこで真実を解き放つ!」目覚める直前、夢の中の自分が最後に見たのは、鎖の切れ端が空へと舞い上がり、その先に輝く二つの時の星だった——。レイトキはゆっくりと目を開け、寝具に体を沈ませたまま、遠くを見つめるように呟く。

「夢は…古代のクリラトン時代の記憶か…」頭の中には、赤く染まる空、鎖に縛られた大地、そして「解放」という言葉が鮮明に残っている。まるで自分がその時代を生き、同じ場所で同じ戦いをしてきたかのような——遠い記憶の断片が、今になってやっと形を成し始めたのだ。

「俺のルーツ…クロノジェ、アブラムニア…。全部が繋がり始めてるんだな」枕元に置かれたトーフーとボーフーの刀が、微かに輝いているように見える気がして、レイトキは静かに手を伸ばす。

「この刀も、この記憶も…全て、未来を切り開くために受け継いだものなんだ」彼はゆっくりと体を起こし、窓の外の夜の空を見上げる。次なる地、メルトキアへの旅立ちが、確かに近づいていることを、心の中ではっきりと感じていた。レイトキが窓辺に立ち、夢の余韻と自らの記憶に思いを馳せていると——、部屋の空気がふわりと震え、柔らかな光の粒子が集い始めた。

「……?」レイトキが振り返ると、そこには穏やかでありながら厳かな気配を纏う存在が佇んでいた。光の衣をまとい、その瞳には悠久の時が流れている。まさに精霊——それも、遥か昔、ジョンアイデルたちと契約を交わした伝説の精霊その人である。精霊はレイトキを見つめ、古から響くような優しい声で告げる。

「久しいな、継承者よ。そなたの中に、かつての者たちの記憶と願いが、確かに息づいているのを感じる。ジョンアイデル様たちと我が精霊族が結んだ契約——その証が、今そなたのもとに現れる時が来たのだ」レイトキは息を呑み、一歩前に出る。

「ジョンアイデル様…。そして、彼らが契約した精霊…。まさか、俺の前に現れてくださるとは…」

「そなたがトーフーとボーフーを手にし、クリラトンの記憶を夢に見、アブラムニア・メルトキアへの道を選んだからこそ、我は現れた。そなたは単なる後継者ではない。過去の意志を受け継ぎ、新たな未来を紡ぐ者——それがレイトキ、そなたの宿命だ」精霊は手を差し伸べ、その掌から輝く紋様が浮かび上がる。

「これは、ジョンアイデル様たちが託した契約の証。そなたが真に必要とする時、我ら精霊の力がそなたを守り、導くだろう。さあ——旅立て。生誕の地に辿り着いた時、全ての謎が解け、真の力が目覚める」レイトキはその光を受け入れ、胸に刻み込むように強く頷く。

「はい…。必ず辿り着きます。全ての真実を確かめ、受け継いだものを無駄にはしません。ジョンアイデル様の想いも、精霊の力も——俺が未来へ繋ぎます!」精霊は微かに微笑み、その姿は光の粒子となってレイトキの胸へと溶け込んでいった。部屋にはもうその姿はない——だが、レイトキの中には確かな絆と力が宿り、次なる旅への覚悟が一層深まったのだった。レイトキは刀を手に、静かに決意を込めて呟く。

「新たなる技を習得しないとな…。これからの旅、そして待ち受ける試練を乗り越えるためにも、俺自身の力を高めなければ」その言葉が落ちた瞬間——、部屋の一角、これまで無造作に置かれていた音符が刻まれた7つの石が、一斉に鮮やかな輝きを放ち始めた。

「ん…? これは…」それぞれの石は違う音色を奏でるように穏やかに震え、七色の光を紡ぎながらゆっくりと浮かび上がる。まるでレイトキの想いに応え、新たな技の胎動を告げるかのように——。レイトキは目を見開き、その光景を見つめる。

「音符…7つの調べ…。これが、俺の新たな力の源になるっていうのか…」

石たちは彼の周りをゆっくりと旋回し、一つの旋律となって胸の奥へと流れ込んでくる。それは技の理であり、力の調べ——クロノギアが持つ時間と歯車の力が、音と共に新たな形へと進化し始めた瞬間だった。

「分かった…。この調べを、技として、力として使いこなしてみせる。7つの音が紡ぐ旋律——それが俺の新たな刃となる!」レイトキは浮かぶ7つの石を見つめ、その響きを噛み締めるように呟く。

譜技ふぎっていうのか…。なるほど、音を力に変える技…。喉を鍛えないといけないらしいな」石たちは彼の言葉に応えるように、それぞれ違う高さの音を澄んだ音色で奏でる。言霊、そして歌声そのものが力の核となる技——それが譜技なのだ。

「ただ声を出すんじゃない。正しく、強く、心を込めて響かせることが必要なんだな。俺の声が、俺の想いが、そのまま力になる…」レイトキは深呼吸をし、自らの喉と声を意識する。

「よし、時間をかけて鍛え上げる。この譜技を、俺の新たな武器にする。7つの調べをすべて使いこなし、メルトキアへ、アブラムニアへ——その時、最高の音色を響かせてみせる!」レイトキは深呼吸し、全身の力を声に乗せるように、一音一音確かめながら音階を奏でるように声を出す。

「ドー…レー…ミー…ファー…ソー…ラー…シー…ドー…」澄んだ声が部屋に響くたび、7つの石がそれぞれの音に応じて輝き、共鳴するように震える。高音は鋭く、低音は重く——声の調べがそのまま力の波動となって空気を震わせる。

「はっ…はぁ…。一音ごとに、力が宿ってくるのが分かる…!」再び、今度は力強く、心を込めて音階を奏でる。

「ドッ! レッ! ミッ! ファッ! ソッ! ラッ! シッ! ドーッ!」

石たちは一斉に七色の光を放ち、旋律の輪を描くように旋回。声の波動が光の帯となって伸び、壁に当たるときには軽い衝撃波すら生まれる。

「これが譜技…! 声、音、想い——全部が一つになって力になるんだな!」レイトキは拳を握り、目を輝かせる。

「よし、この調子で繰り返し、喉にも体にも覚え込ませる。正確に、強く、そして心から響かせられるように——!」久美子がそっと扉を開けて部屋に入ってくる。

「なんだか、発声練習みたいなことをしてるけど……どうしたの?」レイトキは声を切り、はっきりと答える。

「新しい技を覚えるためにしてるんだ。譜技っていって、声そのものを力にする技なんだ」そう言って、まだ浮かんだままの7つの輝く石を指し示す。石は七色に光り、澄んだ音を微かに奏で続けている。久美子は目を丸くして石を見上げ、驚きながらも嬉しそうに微笑む。

「声が力になる……! それってすごいね! レイ、頑張ってるんだね」

「ああ。メルトキアへの旅に備えて、俺自身の力を確かなものにしたいんだ。喉も鍛えなきゃいけないし、まだまだ練習が必要だけどな」久美子はそっと彼の肩に手を置き、力強く頷く。

「応援してるよ。無理しすぎないでね。でも——その声、いつかみんなのために響かせてくれるのを待ってるから」

「ありがとう、クーちゃん。必ず、その時が来たら最高の音色を響かせてみせる!」久美子は少し前に出て、はっきりと問いかける。

「その譜技って、ワタシたちは習得できないのかしら?」レイトキは七つの石を見つめながら、率直に告げる。

「おそらく不可能だろう。俺自身の体を調べてみたら、声を力に変えるための特殊な器官が、喉の奥に新たに形成されていることが分かったんだ。ヒュージノイドへの進化と共に備わった、俺だけのものらしい」久美子はわずかに肩を落とすが、すぐに前を向き直す。

「そう…。残念だけど、レイだけの特別な力なんだね。だったら仕方ない」

「でもな」レイトキは続ける。

「お前たちにはお前たちの力がある。風や炎、光や物質操作——それぞれの特性を極め、連携することで、譜技に負けない強さになる。俺は俺の力で、お前たちはお前たちの力で、互いに支え合えばいいんだ」久美子は表情を明るくし、頷く。

「そうだよね。ワタシはワタシのできることを頑張る! レイが譜技を極めるなら、ワタシも風の力をもっと磨いて、いつでもレイを守れるようになる!」

「ああ、頼もしいよ。二人で一緒に強くなろう」

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