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EPISODE3-6【正規品集結と思惑】

久美子たちの連携攻撃が決まり、ついにセイランの狐型ファンネルは全て破壊され、本体にも確かな打撃を与えた。

「思ったよりやりますね。これで良いでしょう」セイランは機械の瞳を静かに点滅させ、潔く認める。ユーカリはその様子を見届け、高らかに告げる。

「——退くわよ!」合図と同時に、カトレア、サギソウ、セイラン、そしてヒヤシンスも一斉に戦闘態勢を解く。ユーカリはレイトキたちを真っ直ぐに見据え、最後の言葉を残す。

「見事よ。その実力と絆があれば、メルトキア、アブラムニアへの道も開けるわ。だけど忘れないで——これは始まりに過ぎない。次に会うときは、もっと厳しい試練が待っていると思いなさい」一行はその場を静かに去り、空には帆船型飛行船が降りてきて、彼らを乗せてゆっくりと飛び去っていった。街の喧騒が次第に収まり、レイトキたちは互いの無事を確かめ合う。

「…やっと、行ってくれたね」久美子は胸を撫で下ろしながらも、引き締まった表情で続ける。

「でも、ユーカリさんが言ってた通り、これからが本番だよ」レイトキはメルトキアへの旅立ちを決意し、仲間たちを見回す。

「ああ。俺たちはメルトキアへ向かう。そして——全員で、生誕の地を目指す。準備を整えよう」戦闘が収まり、ユーカリたちが去った直後、7人の正規品たちが姿を現す。その中でツヴァイが一歩前に出て、厳しい口調で問いかける。

「それをする前に、やるべきことがあるだろう。この状況をどうするんだ? お前たちには、これからも追手や刺客が次々と来るんだぞ」


レイトキは眉を上げ、驚きつつも応える。

「ツヴァイ…。アハト、ドライ、フュンフ、ゼクス、ズィーベン、フィーア…全員揃って来たのか。追手や刺客が来るって…? それはどういうことだ?」ツヴァイは周囲の破壊された街並みを指し示し、続ける。

「ユーカリたちが去った今、ストレンジの他の部隊、それに衆生解放戦線のゼロトキたちも動き始めている。お前たちがここに留まれば、標的になるのは時間の問題だ。メルトキアへ向かうにしても、まずは身の安全を確保し、態勢を立て直すのが先だ」


フュンフが前に出て、補足するように言う。

「俺たちはリュウゼツランの命令で表向きは監視役だが…本音では、お前たちが無事に旅立つのを見届けたいだけだ。だが現状、この場所はもはや安全ではない」ゼクスも低く告げる。

「ツヴァイの言う通りだ。まずは拠点を移し、情報を整理し、仲間全員の準備を整える。慌てて出発しても、罠に嵌まるだけだ」レイトキは仲間たちの顔を見回し、頷く。

「…分かった。ツヴァイの言う通りだ。まずはこの場を離れ、新たな拠点を探す。全員、準備を急げ! メルトキアへの旅は、それからだ!」久美子は即座に反応し、はっきりと告げる。

「拠点はあるじゃん。だけど——敵の動きを止めないと、どこに行っても追いかけてくるよ!」レイトキは頷き、その指摘を受け止める。

「その通りだ。拠点に逃げ込むだけじゃ、根本的な解決にはならない。ストレンジも衆生解放戦線も、俺たちの動きを感知して次々と刺客を送り込んでくる。だから——ただ逃げるんじゃなく、状況を把握し、先手を打つ必要がある」ツヴァイは腕を組み、続ける。

「だが今の状況では、敵の数も勢力も測れない。正面から全てを止めるのは無理だ。ならば——動きを読み、要所を押さえるしかない」ローズマリーが補足する。

「私がSランクイェーガーとしての情報網を使って、ストレンジと衆生解放戦線の動きを追うわ。その間に、拠点で態勢を整え、次の手を考える。動きを止めるのは、情報が揃ってからでも遅くない」レイトキは全員の意見をまとめ、決断する。

「よし。まずは拠点に移動して体制を立て直す。同時にローズマリー、情報収集を頼む。敵の動きの核が見えたら、そこを叩く。——行くぞ!」ドライは冷静に状況を見渡し、はっきりと告げる。

「正規品は集合しましょう。そして、まずは体制を整えるべきです。このままではいつ襲われてもおかしくありません」その声に応えるように、アハト、ズィーベン、ゼクス、フュンフ、ツヴァイ、フィーア——正規品全員が一つに集まり、陣形を整える。互いの位置を確認し、気配を一つに纏め上げる。レイトキはその様子を見て、頷く。

「そうだ。まずは身を固め、態勢を立て直すことが先決だ。クロノギアも、正規品のみんなも、一緒に拠点へ向かおう。そこで情報を共有し、今後の方針を決める」フィーアが静かに補足する。

「私たちは表向きは監視役ですが…今は共通の敵に備えることが最優先です。力を合わせれば、それだけ選択肢も増えます」ツヴァイは短く告げる。

「行こう。ここはもう、安全な場所じゃない」全員が一斉に動き出し、互いを守りつつ、新たな拠点へと歩みを進める。緊迫した空気の中にも、確かな連帯感が生まれていた——。フィーアはレイトキの隣に歩み寄り、そっと顔を近づけて、小さくだけどはっきりと囁くように告げる。

「アナタの最初の行動…あれは単なるバグやエラーだと思ってました。だけど、違うんですね。あれも全部、アナタの意志と考えだったんですね…。そして今、こうして進んでいくアナタを見て…私も、もし自分が同じように選べるのなら、違った道を選べるのかもしれない…って、そう思うんです」

レイトキは真っ直ぐにフィーアの瞳を見て、優しく応える。

「バグだなんて…そんなことはない。俺は俺の意思で、一つ一つ選んできただけだ。お前も同じだ。お前自身の心が、何を望み、何を信じるのか——それが分かれば、お前だけの道を選べる。誰かの命令じゃなく、自分自身のために」フィーアは微かに頷き、瞳に柔らかな光が宿る。

「…アナタはいつも、そう言ってくれるんですね。なら、私も自分の目で確かめて、自分の答えを見つけてみます。」その言葉は、単なる同行の表明ではなく、彼女自身の「正規品」としての在り方を問い、新たな自分へと踏み出す決意の瞬間だった。フィーアは足元を見つめ、それからゆっくりとレイトキを見上げ、はっきりと言葉にする。


「でも、私は今までずっと組織に従ってきました。それが正しいことなのか、悪いことなのか——今は分からない、それが正直な気持ちです」


彼女の声には迷いがあり、それでも真摯な響きがある。長らく「正規品」として、与えられた役割と命令に従うことが当たり前だった。その在り方そのものを問い始めた今、答えはすぐには見つからない。


レイトキはその気持ちを受け止め、柔らかく、だからはっきりと応える。

「それでいいんだ。急いで答えを出す必要なんてない。今まで従ってきたことが全部正しいわけでも、全部間違っていたわけでもない。ただ——これからは、自分の心で感じ、自分の意思で選ぶ時間を持てばいい。それが分からないということは、これから自分自身で考え始めた証拠だから」フィーアは少し肩の力が抜けたように、小さく頷く。

「……自分で選ぶ。それが、どういうことなのか。少しずつ、探してみます。レイトキがそばにいてくれるなら——」

「ああ、いつでも話せばいい。一緒に考えるよ。お前の道は、お前自身が選べばいいんだ」その言葉に、フィーアの瞳には戸惑いの中にも確かな希望が宿った。ゼクスは真剣な面持ちでレイトキの前に立ち、はっきりと告げる。

「レイトキ、お前には僕の本名を教えておく。僕は陸郎りくろうだ。そしてズィーベンの本名は那奈ななだ」レイトキはその言葉に驚き、二人の名を反芻する。

「陸郎…那奈…。これまで番号だけで呼んできた俺たちに、本名を明かしてくれるのか…」陸郎——ゼクスは頷き、その意味を込めて続ける。

「俺たちは長い間、『正規品』という記号、番号だけで存在してきた。だけどそれだけじゃない。俺たちにも一人ひとりの名前が、人としての在り方がある。お前たちと共に歩み、同じ道を進もうと決めたからこそ、本名で呼んでほしい」那奈——ズィーベンも静かに頷き、瞳に強い決意を宿す。

「番号は与えられたもの。だけど名前は——自分自身を示すもの。これからは那奈、と呼んでください」レイトキは心からの感謝を込め、二人の名を呼ぶ。

「陸郎、那奈…。ありがとう。これからはそう呼ぶ。俺たちはもう、記号や番号ではない。それぞれの名前で、共に戦い、共に生きる仲間だ。よろしく、陸郎、那奈!」二人は力強く頷き、これまでの「正規品」という枠を超え、自らの名前を胸に新たな一歩を踏み出した。フュンフは二人の背中を見て、はっきりとした口調で言い当てる。


「ゼクス、ズィーベン——お前ら、いずれストレンジを抜けるんだろう。自分の居場所を改めて見つけるためにだろう」陸郎ゼクスは一瞬、はっとした表情になり、それからゆっくりと頷く。

「……その通りだ。俺たちはただ命令に従うだけの存在じゃない。自分が何を信じ、どこに生きるべきなのか——それを確かめるためには、あの組織から離れる日が来る」那奈ズィーベンも瞳を強くして続ける。

「与えられた番号のままでは、本当の自分にはたどり着けない。だから私は、那奈として生きる道を探す。それが、この名前を教えた理由でもあるの」フュンフは真剣な眼差しを二人に向け、言葉を続ける。

「俺はまだ組織に残る。だが、お前たちが抜ける日が来ても、絶対に敵になったりはしない。——いや、それぞれの道が違っても、心では仲間だ。それだけは忘れるな、まあ、仮にできになったとしたらそんときはそんときだな」レイトキはその言葉を受け、三人のそれぞれの決意を胸に刻む。

「そうだ。道が分かれることがあっても、信じる心があればまた交わる。陸郎、那奈、フュンフ——お前たちが自分自身の答えを見つけるまで、俺は全力で支える。共に進もう」フィーアは小さく息をつき、沈んだ声ではっきりと告げる。


「アハトはやはり、置いていくんですね。いや——アハトだけは、別の道、別の組織に行くって言ったほうが正しいのかもしれませんね」


その言葉に、一瞬全員が静まり返る。番号が示す通り、アハトは正規品の筆頭であり、最も長く組織の理に従ってきた存在。だからこそ、彼の選ぶ道は他の六人とは異なる可能性が高い——それをフィーアは冷静に見抜いていた。


レイトキはアハトの姿を探し、沈んだ声で問う。

「アハトは…自分からそう言っていたのか?」


「いいえ。でも、分かります。彼はあの組織の在り方そのものを背負ってきたから。簡単には抜け出せないし、抜け出すことを選ばないかもしれない。それでも——彼は彼なりの正義と、自分の居場所を探すために、別の道を選ぶんです」


陸郎ゼクスは拳を握り締め、悔しそうに唇を噛む。

「…アハトがそう決めるのなら、仕方ない。だけど、俺たちは決して敵にはならない。それだけは信じていてほしい」


那奈ズィーベンも瞳を潤ませながら頷く。

「道が分かれても、同じ空の下で生きている。いつかまた、笑って会える日が来ると信じてる」

レイトキは全員の顔を見回し、決意を込めて告げる。

「そうだ。それぞれの道があって、それぞれの選択がある。アハトがどんな道を選んでも、俺たちは彼の幸せを願う。そして——もし彼が本当に必要としているものが見つかった時、俺たちはいつでも手を差し伸べる準備ができている。それが仲間ってものだろう?」フィーアはその言葉に少しだけ笑顔を取り戻し、静かに頷く。

「……はい。そうですね。アハトも、私たちも——それぞれの答えを探し続ける。それでいいんですよね」アハトは突然壁を力任せに殴りつけ、怒りと絶望を剥き出しに叫ぶ。

「何だよ、ハッピーエンドみたいなこと言ってるんだ! 僕ははっきり分かったんだよ! 人間は勝手すぎる! そしてそれに追従する亜人たちにも、反吐が出る! 幸せ? それは全部、誰かの犠牲の上に築かれた仮初めのものだろう! ボクは——衆生解放戦線に移る。つまり、これからはお前たちの敵になるんだよ!」その宣言はあまりにも衝撃的で、場は一瞬凍りつく。彼の瞳には、長らく抑え込んできた深い諦念と憤りが燃え上がっている。

フィーアは青ざめ、声が震える。

「アハト…、それは本気なのですか…?」

「本気に決まってるだろ!」アハトは拳の痛みも気にせず、吐き捨てるように続ける。

「この世界の理は根本から腐ってる。誰かが幸せになれば、誰かが犠牲になる。それを知ってて皆、見て見ぬふりをしてる。そんな偽物の絆なんて、ボクは認めない!」

陸郎ゼクスは一歩前に出るが、言葉が出てこない。那奈も唇を噛み締め、涙を堪える。レイトキは動じず、真っ直ぐにアハトを見据えて告げる。

「…アハト。それが今のお前の答えなんだな。人間も亜人も、全部嫌いになった。それでも俺は、お前のことを否定しない。だけど一つだけ言わせてくれ——俺たちは、犠牲の上に幸せを築こうとしてるんじゃない。誰一人犠牲にしない世界を、俺は目指してる。それが嘘だと思うなら、それを証明するためにも、俺の前で見ていてくれ。」アハトはその言葉に一瞬たじろぐが、すぐに冷たく背を向ける。

「…綺麗事だ。それが通用する世界なら、誰も苦労しない。さようなら、レイトキ。今度会う時は、全力で倒しに行くからな」そう言い残すと、アハトはその場を走り去った。誰も引き止めることができないまま、彼の姿は路地裏へと消えていく。フュンフは低く呟く。

「……決別、か。これが正規品の、最初の分岐点だな」レイトキはアハトの去った方向を見つめ、拳を握り締める。

「いつか——彼が自分の選択を後悔した時、戻ってこられる場所を、俺たちは守り続けよう。今はただ、彼の選択を受け止めるしかない」新たな旅立ちの直前、仲間との決別という試練が、レイトキたちを襲ったのだった。那奈はアハトが去った方向を見つめ、動揺を隠しきれない。今まで冷静で、感情を荒げることのなかったアハトが、まさか人間全体、そしてそれに追従する亜人たちまで憎むようになっていたなんて——その事実が胸を締めつける。


「アハトくん…、最初はただ、自分の在り方に迷ってただけだと思ってた…。だけど、人間が重ねてきたこと、それを良しとして従う亜人たちの姿に、ついに嫌気が差したんだね…」


声が震え、瞳には涙が浮かぶ。


「でも…悲しいよ。友達だと思って、ずっと一緒にいたのに。それが全部、彼には偽物に見えていたなんて…」陸郎がそっと那奈の肩に手を置き、静かに言う。

「彼は悪い人間じゃない。ただ、見てきたものがあまりにも理不尽で、それを許せなかっただけだ。だから、お前が悲しむ必要はない。それでも——友達だったという事実は、嘘じゃない」レイトキも沈んだ面持ちで頷く。

「そうだ。彼の怒りは、誰かを憎むことでしか自分を保てないほど、心が傷ついていた証拠でもある。だから俺は、彼がいつか目を覚まし、戻ってきてくれる場所を守り続ける。それが、今俺たちにできることだから」

フィーアも小さく呟く。

「アハト…。誰も悪くないのに、どうしてこんなに悲しい別れが来るんだろう…」風が通り過ぎ、アハトの残した怒りと絶望の気配が、少しずつ遠ざかっていく。だがその別れは、決して消えることのない傷跡として、仲間たちの心に刻まれたのだった。レイトキは二人を真っ直ぐに見据え、はっきりと告げる。


「それと——陸郎と那奈は、誰かに『買い取られる』んだろう。それが今のストレンジ・プレデターから抜け出し、自分たちの自由への第一歩なんだよな」


陸郎は一瞬目を見開き、それから苦しそうに眉を寄せる。

「…よく分かったな。俺たち正規品は、生まれた時から所属が定められ、管理されてきた。組織を離れるには、新たな所有者のもとへ移る——いわば『買い取り』という手続きが必要なんだ。それが唯一、今の枠組みから抜け出す方法だった」


那奈も唇を噛み、小さく頷く。

「私たちは『モノ』じゃないのにね…。それでも今は、それが自由への一歩なの。誰かに買い取られ、その人のもとで新たな生き方を探す——それが、今の私たちに許された道なの」レイトキは力強く頷き、言葉を続ける。

「それがお前たちの今の状況なら、俺が買い取る。俺が——レイトキとキキョウさんが、陸郎と那奈を迎え入れる。そうすればストレンジからも追われず、俺たちと共に生きる道が開けるだろう?」二人は驚き、同時に瞳を潤ませる。

「レイトキ…、それでいいのか? 俺たちは、そんな価値のある存在じゃない」

「価値なんて関係ない。お前たちは俺の仲間だ。仲間が自由になるためなら、俺は何だってする。——陸郎、那奈、俺のもとに来い。そして、本当の自由を一緒に掴もう」陸郎と那奈は顔を見合わせ、それから力強く頷く。

「……はい。よろしくお願いします、レイトキ!」こうして二人の「買い取り」——すなわち新たな所属先への移籍が決まり、ストレンジの枠組みから離れ、レイトキたちと共に歩む道が開かれたのだった。

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