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EPISODE3-3【襲撃など】

翌朝、街の警戒網の外側から、密やかな動きが始まった。リンドウの指揮下にある直属部隊が、一斉に行動を開始する。重装の実験体たち、装甲を纏った部員たちが、標的を定めたかのようにマタラシティ各地へと展開していく。その報せが届いた時、レイトキは表情を引き締め、仲間たちに告げる。

「リンドウの部隊が動いた…。表向きはJOKER確保の指令だが、向かう先は明らかに俺たちの行動圏と重なっている。敵の真の狙いが何なのか——くれぐれも警戒を怠るな」屋根裏や路地裏、そして空から。影たちはじりじりと距離を詰めてきていた。襲撃の気配が、街全体を包み始める。リンドウは冷ややかな指示を下し、多数の失敗作・欠陥実験体たちを街の各所へと送り込んでいく。

「散らばれ。標的の動きを探り、その身に迫るがよい」外見や能力に不備を抱え、従来の部隊には加えられなかった個体たち——だからこそ扱いにくく、制御が難しく、そして危険だ。それらが一斉にマタラシティの路地裏、廃ビル、人目につかぬ場所へと潜み、レイトキたちの気配を探し始める。表向きの威圧だけではない——不穏な影が、街の内側からじわりと広がっていく。街のあちこちで、突如として異変が起き始める。実験体の放つ気配に触れた一般の人々が、突然苦しみ、周囲の空間が不自然に歪み始める。彼らの姿は亀裂のような光の帳に包まれ、次元の裂け目へと飲み込まれるように、あっという間に姿を消してしまう。

「なんだ!? 空間ごと消えていく…!」レイトキは遠くからその光景を目の当たりにし、息を呑む。危害を受けた者たちは、次元の歪みにそのまま飲み込まれ、どこへと飛ばされるのか——行き先も、無事なのかも分からないまま、跡形もなく消え去っていく。

「これはただの襲撃じゃない…。巻き込まれた人々が、次元ごとさらわれているのか!」恐怖と緊張が一気に街を包み込む。リンドウの部隊は、標的だけでなく街中の無実の人々までをも巻き添えに、空間そのものを歪める力を使っているのだ。久美子は状況を見極め、はっきりと言い切る。

「ストレンジの連中は、こうやって騒ぎを起こして、レイが飛び出してくるのを待っているのよ。みんなが傷つけられるのを放っておけないって、レイの性格を知った上での罠なんだわ」無実の人々が消されていくのは、すべてレイトキを誘き出すための陽動——それが最も危険な狙いだと、久美子は鋭く指摘する。レイトキは拳を強く握り締め、唇を噛みしめる。

「わかっている…。だからといって、見捨てておくわけにはいかない。俺が動けば誰かが犠牲になり、動かなければもっと多くの者が消されていく…。最悪の状況だ」ホワンが一歩前に出て、はっきりと切り出す。

「ならば、こんな作戦はどうかな?」その言葉を聞いた瞬間、レイトキはハッとした面持ちになる。ホワンの視線、その口ぶり——この状況を打開するための、自分だけがはっとするような案が、まさにこれから語られようとしていると直感したからだ。周囲の緊張が一気に高まる中、レイトキは真剣な眼差しでホワンを見つめ、静かに続きを促す。

「言ってくれ。一体どうするんだ?」ホワンははっきりと告げる。

「ワタシは夢幻の歯車。だからその力を使って、実体を持った幻を生み出すの。それでストレンジの裏をかくって作戦だよ」レイトキは瞳を大きく開き、思わず声を上げる。

「なるほど…! 幻を俺たちの姿に見せ、標的が別の場所にいると思い込ませれば、彼らの狙いは完全に外れる。だが、その幻は次元の歪みにも気づかれず、あたかも本物のように動けるのか?」ホワンは力強く頷く。

「夢幻の歯車の力は、見た目だけじゃない。気配、動き、時には触れることさえ——そこに『在る』と感じさせられる。それで彼らの目を欺いている間に、本物たちは別の場所から人々を救い、そして背後から一気に叩くのよ」ホワンは両手をゆっくりと広げ、夢幻の歯車の力を解き放つ。するとレイトキの姿がもう一つ、彼女の前に浮かび上がった。見た目も気配も歩み方も、まるで本物と見紛うほど——実体さえ持っているかのように、その幻はしっかりと地面を踏みしめている。

「さあ、行って」合図と共に、幻のレイトキは颯爽と表通りへと進み出ていく。実験体たちはその姿を捉えると、一斉に狙いを定め、後を追うように引き寄せられていく。

「うまくいった…。全部の注意を、こちらへ向けさせるわ」ホワンは幻が遠くまで誘い込んでいくのを確かめ、その瞳には決意が宿る。本物たちはその隙に、歪みに飲まれつつある人々のもとへと急ぐのだ。実験体たちは、標的と信じ込んだ幻のレイトキめがけて一斉に襲いかかり、四方から取り囲むように捕らえる。

「捕まえたぞ!」手足を押さえつけ、拘束を施す。だが捕らえられたその姿は、次第に輪郭を曇らせ、掴んだ手の中から煙のようにすり抜けていく——。

「何だ!? 姿が消えていく…!」

「幻だったのか! 俺たちは完全に欺かれたというのか!」慌てて周囲を探し回るものの、そこには何も残っていない。部隊は完全に出し抜かれ、戸惑いと怒りに沸き立ちながら、本当の標的が既に別の場所へと向かっていることに、ようやく気づくのだった。レイトキは歪みの生じた現場を慎重に調べ、地面に落ちていた小さな物体に目を留める。

「ん!? 何だ、これは」手元に拾い上げてよく見ると、精密な金属で作られた立方体の機械だ。表面には微かな光の回路が走り、周囲の空間と干渉するような独特の気配を放っている。次元の歪みと人々を飲み込む現象——まさにこの装置が、その仕掛けの源だったのだ。レイトキはそれを指先で慎重に摘まみ上げ、仲間たちに向けて低く告げる。

「これが…次元を歪ませていた本体というわけか。持ち帰って詳しく調べれば、構造も止め方も分かるかもしれない」幻が消え去ったのを目の当たりにし、部隊長は怒りを露わに部下たちを一喝する

「バカモノめ! 本物と偽物の見分けもつかぬとは、何事だ! えぇ~い!」足元を強く踏み鳴らし、苛立ちを抑えきれない。

「まんまと幻に惑わされ、本物を取り逃がすとは…! 一体どこへ消えた、どこにいるのだ!」部下たちは一斉に俯き、恐れて言葉も出せない。幻術による陽動だと気づいた時には、既にレイトキたちは別の場所へと移り、任せられた任務は完全に出し抜かれていたのだ。リンドウは状況を冷静に分析し、鋭い視線を向けてはっきりと告げる。

「まあ、待て! アイツラがこうも上手く立ち回れるのは、誰かの協力を得ている証拠だ。その裏にいる協力者は——エルカーノスという組織に所属している」そして声に威圧を込め、指示を下す。

「ならば、標的を変更せよ! レイトキたちだけでなく、エルカーノスそのものを狙え! 彼らの支援網を断ち切れば、アイツラの牙も簡単に折れるということだ!」その言葉は、単なる報復ではなく、相手の弱点を的確に突いた作戦転換——新たな脅威が、エルカーノスをも襲うことを告げるものだった。リンドウが作戦を告げた直後、空気が一瞬で張り詰め——エピデンドラムがひらりと姿を現した。

「それ、想定内なんだよな。やあ、リンドウ、久しぶりだな」その軽やかな口調とは裏腹に、周囲の空間が彼女を中心に静かに圧倒される。リンドウは眉を吊り上げ、声を低く響かせる。

「キュリオシティと呼ばれし幹部の一人が、ここに来るとはな…。何の用だ、エピデンドラム」エピデンドラムはにっこりと笑い、指先を軽く振る。

「脅すわけじゃないさ。ただね、エルカーノスを狙うのは『想定済み』ってことだけ伝えに来ただけ。そっちが手を出せば、こっちも当然の手を打つ——それだけの話さ」緊張感が辺りに渦巻く中、リンドウは鋭く睨みつける。

「…ならば、貴様らも最初からこの状況を見越していたというのか」

「そういうこと」エピデンドラムは軽やかに言い放ち、その瞳の奥には計り知れない覚悟が宿っていた。リンドウは鋭く睨みつけ、声を強く響かせる。

「そうか——マズミやユーカリを唆しているのは、貴様だったのか!?」エピデンドラムは肩を軽くすくめ、淡々と返す。

「唆すなんて、聞こえの悪い言い方をするなよ。彼女たちは自分の意思で動いているだけだ。それに——ストレンジのやり方に、抗おうとしているだけのことだろう」その言葉を聞いて、リンドウの眉間の皺はさらに深くなる。

「…つまり、貴様らは組織の方針そのものに反旗を翻しているというのか?」

「そういうこと」エピデンドラムは笑みを消し、真っ直ぐに応じる。

「誰もが上の命令に従うだけの人形じゃない。それが理解できないなら、お前こそ何も分かっていない」リンドウは一歩も引かず、勢いよく剣を抜いてエピデンドラムに突きつける。刃の先端が鋭く光り、怒りが爆発するように叫ぶ。

「黙れ! 私が忠誠を誓うのはリュウゼツラン様ただ一人! それ以外のことなどどうでもいいんだよ!」エピデンドラムは向けられた剣を前にしても微動だにせず、冷ややかな視線でリンドウを見据え、はっきりと言い放つ。

「つまらん男だな。盲信者め! いや、それよりもたちが悪い。自分たちのやり方が何を生み出すか知りながらなお従い、それこそが正しいと信じ込んでいる、その勘違い野郎め!」言葉の刃は互いに鋭く、空気は一気に緊迫し、今にも剣戟が鳴り響くかと思われた——。リンドウは剣の先をエピデンドラムに向けたまま、声を震わせながら強く主張する。

「勘違いなどではない! 人類が進化するためには、犠牲は必然なのだ! 他の生き物の因子を取り入れ、クラリトンの技術や要素を融合させ——そうしなければ、人類は次の段階へ進めない! それが定めであり、必要なのだ!」信念を込めて叫ぶその姿は、自らの正義を疑うことなく突き進もうとする者の覚悟に満ちている。だがエピデンドラムは、その言葉を静かに聞き終えると、冷ややかながらも鋭い眼差しで返す。

「……それが正しいと、本当に心から信じているのか。進化の名のもとに、選別と犠牲を正当化するそのやり方が、本当に人類のためになると言うのか?」互いの世界観が真っ向から衝突し、その場の空気は張り詰め、一触即発の状況が続く——。ストレンジ・プレデター本拠、重厚なる執務室。リュウゼツランは不穏な報告を受け、指先で机を軽く叩きながら、低くはっきりと告げる。

「5人目の大幹部を、呼び寄せるか」その一言に、周囲の空気が一変する。キュリオシティ3人、そしてクラッスラ、リンドウ——それらを凌ぐとも噂される「5人目」。その存在は極秘とされ、詳細を知る者は組織内でもごくわずか。リュウゼツランは冷ややかな瞳で遠くを見据え、続ける。

「マズミ、ユーカリ、…裏切りの兆候が見える今、これ以上手を拱いているわけにはいかん。最強の刺客を招き、状況を一気に収拾する——」だがその決断が、新たなる嵐の始まりであることを、まだ誰も知らない。

「呼びました〜、ボス!」

挿絵(By みてみん)

扉が音もなく開き、明るくもどこか妖しい声が響く。現れたのは背の高い男——漆黒を基調としたゴシック調の衣装に華やかな装飾と銀の刺繍が映え、襟元や袖口にはフリルがあしらわれている。黒髪は整えられ、瞳には深い輝きが宿り、軽やかな笑みを浮かべながら一歩踏み出す。リュウゼツランは微かに頷き、低く告げる。

「来たか。5人目の大幹部——モンステラ。お前が最後の切り札だ」モンステラはにっこりと笑い、指先で衣装の裾をはらう。

「はい、もちろんですわ〜。裏切り者も、邪魔者も、全部まとめて消して差し上げます。ボスのために、完璧に、美しくね」その軽やかな態度とは裏腹に、彼の周囲には冷たく鋭い気配が漂い——最強の刺客の登場が、戦局を一気に変えようとしていた。リュウゼツランは手を挙げて制し、改めて告げる。

「まあ、待て。ユーカリやマズミは今のところ、直接的な障害とはなっていない。だから君に頼むのは、とある施設の解体だ。廃棄された旧研究所——そこに眠るものを、跡形もなく消してもらう」モンステラは指先を顎につき、にっこりと妖しく微笑む。

「廃棄研究所の解体ね…。中には何が残っているのかしら? 失敗作? それとも、人に知られては困るデータ?」

「どちらもだ。だが最重要なのは、外部へ漏れてはならない記録と、実験体の痕跡を一つ残らず消すこと。痕跡が残れば、エルカーノスやレイトキたちに手がかりを与えてしまう。そうなると計画に支障が出る」リュウゼツランは冷ややかに続ける。

「君の力なら、施設ごと次元の彼方へ消し去ることもできるだろう。任せた。完璧に、何も残さずに」モンステラは優雅に一礼し、黒い衣装の裾をひるがえす。

「お任せあれ〜。私の手にかかれば、古い研究所なんて一瞬で『無かったこと』にしてあげる。跡形も、記憶さえもね」その言葉には、任務の範囲を超えた何かが含まれているようにも感じられ——モンステラの真の力が、今こそ発揮されようとしていた。廃棄研究所の前に辿り着くと、モンステラはにっこりと笑い、両手をゆっくりと前に差し伸べる。

「さあ、これでお別れよ〜。誰にも見つからないように、綺麗に消してあげる」指先から漆黒のエネルギーの塊が生まれ、ゆっくりと大きく膨らみながら研究所全体を包み込んでいく。その黒い光は建物の壁も、機械も、資料も、何もかもを吸い込むように飲み込み——次第に輪郭が曖昧になり、跡形もなく消え去っていく。

「ほら、見て。もう何も残っていないでしょ?」手の中のエネルギーが静かに霧散する頃、そこには廃研究所の姿はもちろん、瓦礫一つ残らず、まるで最初から何も無かったかのような更地だけが残されていた。モンステラは満足げに頷き、指先を軽くはらった。

「完璧ね。痕跡も、記録も、何もかも消し去ったわ。これで誰も手がかりを掴むことはできない」リンドウは突如として感じられた強い気配に反応し、瞳を見開いて呟く。

「ん!? 奴が動かされたか…モンステラ…。ボスがまさか、あいつを動かすとは」傍らの部下たちもその言葉に驚き、顔を見合わせる。

「5人目の大幹部が、ついに出動したのですか…?」リンドウは剣の柄を強く握り締め、険しい表情で続ける。

「あれは最強にして最後の切り札。それが使われたということは、ボスが事態をかなり深刻に見ている証拠だ。——だが、あいつの力は危険すぎる。何もかもを消し去るその力が、いつ我々自身に向けられることにならなければいいが…」モンステラの登場が、敵だけでなくストレンジ内部にも不穏な波紋を広げ始めていた。エピデンドラムは眉を寄せ、はっきりと告げる。

「モンステラ…。聞いたことがない大幹部の名前だな。キュリオシティでもなく、今まで名前すら上がらなかった男が、5人目だなんて」リンドウは剣を収め、低く冷たく答える。

「それもそのはずだ。あいつはボス自らが、『進化させた人類』と『旧人類』の間に生ませた特別な個体なのだ。だから表向きの名簿には載らないし、存在そのものが極秘だった」

エピデンドラムは息を呑み、鋭い視線を走らせる。

「人為的に…、しかも幹部自らの手で生み出された存在? それじゃあ、あいつは最初から、リュウゼツランのためだけに作られたようなものなのか」

「そういうことだ。忠誠も力も、何もかもがボスの意向に従うように定められた——まさに人型の兵器と言っても過言ではない」リンドウの言葉は、モンステラの異質さと危うさを如実に物語っていた。そしてそれが今、表舞台に立ったという事実は、事態が最終段階に入ったことを告げている——。エピデンドラムは鋭く切り込む。

「だが、一つだけ明らかになった事実がある。ヒュージノイドは、元から存在する人類、そしてクラリトン人との間で性行為によって繁殖が可能だ——ということだ」リンドウの表情が一瞬曇る。それはストレンジが隠し続けてきた核心の一つでもあった。

「……そうだ。因子融合によって生まれたヒュージノイドが、単なる実験体ではなく、自らの種として次世代を残せる存在であるということ。それが何を意味するか——」

「つまりだ」エピデンドラムは続ける。「モンステラがそうであるように、ヒュージノイドは人為的に創られた存在でありながら、自然な形でも増えていける。それはもはや実験の産物ではなく、新たな種族の誕生だ。そしてそれをリュウゼツランが最初から知っていたのなら——」

「計画は、単なる進化実験では済まされないということだ」リンドウが低く呟く。

「人類の枠組みそのものを塗り替え、ヒュージノイドこそが新たな支配層となる世界を作ろうとしているのかもしれない」その言葉は、二人の前に広がる闇の深さを如実に示していた。リンドウは剣を握る手に力を込め、厳かに付け加える。

「いや、正確には違う。クラリトンの力を利用し、そして自らが新たな種族の支配者となる——それが真の目的だ。そしてリュウゼツラン様の種族については、もう分かっているであろう。そう、あのお方は外見こそ旧来の亜人や人間に似た姿をしているが、本来はヒュージノイドそのものなのだ」エピデンドラムは瞳を大きく開き、言葉を失う。

「……! つまり、あの男は最初から自分自身の種族を頂点に据えるために、すべての計画を進めてきたというのか。人類も亜人もクラリトン人も、そのための駒に過ぎなかったと——」

「そういうことだ」リンドウは低く続ける。「ヒュージノイドこそが真の支配者。その礎を築くために、犠牲も選別も、すべてが必要だった。あのお方は自らの種の未来のために、この世界を再編しようとしているのだ」その告白は、すべての謎を一つに繋げると同時に、戦いの本当の意味を突きつけるものだった。リュウゼツランの真の正体——それが明らかになった今、レイトキたちの進む道は、ますます険しいものへと変わっていく。エピデンドラムは眉をひそめ、疑問をぶつける。

「ならば不可解だな。わざわざ『歯車』を創り、クラリトンゲートを開き、クラリトンの力まで融合させようと企む理由が、どうしても分からない。自らがヒュージノイドであり、既に支配者となる素質を持っているのなら、そんな手間は必要ないはずだ」リンドウは沈黙し、しばし考え込んでから低く答える。

「……それは、ヒュージノイドにも『限界』があるからだ。どれだけ因子を重ねても、この世界の法則だけでは到達できない領域がある。クラリトン——異界の存在と力、そして次元そのものの理こそが、リュウゼツラン様が目指す『完全なる進化』の最後の欠片なのだ」エピデンドラムは息を呑む。

「つまり…単に種族を支配するだけではなく、世界そのものを書き換えようとしているのか?」

「そうだ。歯車はそのための鍵。ゲートは道標。クラリトンの力は、その扉を開けるための原動力。あのお方が望むのは、ヒュージノイドが頂点に立つだけの世界ではない——自らが世界の法則そのものとなる、そんな未来なのだ」その言葉に、すべての謎が一つに繋がる。歯車も、クラリトンゲートも、実験体たちも、そしてモンステラの誕生も——すべてはその途方もない野望のために用意された駒に過ぎなかった。リンドウは声を強く響かせ、核心を突きつける。

「そして——JOKER、つまりレイトキを狙う真の理由も、これで明らかになる。アイツはアカシックレコードにより、ヒュージノイドへと進化することが確実に予見されていた存在なのだ。そして今、その予見は現実となった」一呼吸おき、さらに続ける。

「歯車だからというだけでは、ここまで執着する理由にはならない。歯車として必要なら、クローンを作れば済む話だ。だがレイトキは違う。アカシックレコードに記された『進化の可能性』を自らの内に秘め、それを現実のものとした——唯一無二の存在なのだ」エピデンドラムは息を呑み、ようやくすべての繋がりを理解する。

「つまり…歯車としての機能だけでなく、ヒュージノイドとしての完全な進化体、それこそが彼を狙う真の目的だったというのか。クローンでは再現できない、アカシックレコードに刻まれた『道』を歩む存在——それがレイトキなのだと」

「そうだ。だからこそ、あらゆる手を使って確保しようとする。彼こそが、リュウゼツランの野望を完成させる最後の鍵になるか、あるいは——それを打ち砕く唯一の希望になるのかもしれない」二人の間に、重い沈黙が訪れる。レイトキの進化が、単なる個人の変化ではなく、世界の運命を左右する分岐点であること——それが今、明らかになったのだ。

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