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EPISODE3-2【追跡者など】

朝の光が通りを照らす中、レイトキは久美子、星玲奈、リジェと並んで学校へと歩いていく。四人で過ごす新しい暮らしはまだ始まったばかりで、道すがら自然と笑みがこぼれ、穏やかな時間が流れている。だがレイトキは、何者かの視線を背中に感じて、ふと振り返る。通りの向こう、人混みの陰に、素早く身を隠そうとする気配があった。

「どうしたの?」久美子が足を止め、心配そうに問いかける。

「いや…何でもない。気のせいかもしれない」レイトキはそう答えながらも、胸の奥の警戒心を解かない。視線の主は、JOKER回収命令を受けた追跡者たち——あるいは、ゼロトキを巡る新たな影か。何者かが確かに、彼らの行く末を監視し始めている。

「とにかく、みんな、いつもより周りに気を配ってくれ。何か変だと感じたら、すぐ俺に知らせてくれ」そう告げるレイトキの瞳は、すでに戦いの時を覚悟していた。平穏な日々の裏で、追跡の網は次第に狭まりつつある——。朝のホームルーム。教壇に立った教師が、生徒たちを見回しながら告げる。

「今日からこのクラスに、短期の編入生が加わることになった。その数、なんと7名だ」教室の中は一気にざわめきが広がる。

「7人も? 一度にどういうことだ?」

「どこから来たの?」レイトキは席の中で、思わず眉を寄せる。久美子、星玲奈、リジェもそれぞれに緊張した面持ちで顔を見合わせる。一度に7人——あまりに唐突で、しかも数が多い。何かの目的があって送り込まれてきたとしか思えない。レイトキは心の中で静かに構えを固める。

「(この中に…ストレンジの者か、あるいはそれ以外の勢力の者が紛れ込んでいるのか?)」扉の向こうから、新たな7つの気配が近づいてくる——。教室の扉が開き、次々と姿を現した者たちを見て、レイトキは思わず息を呑む。ズィーベン、ゼクス、フィーア、ドライ、アハト、ツヴァイ、フュンフ——そう、ストレンジ・プレデターの精鋭たちだった。七人が一斉に教室に入り、整然と並ぶ姿に、クラス全体が静まり返る。レイトキは指を組んで机の下で拳を握りしめ、心の中で呟く。

「まさか…正規品の面々が、一斉に転校してくるとはな。これは明らかに、俺を監視し、場合によっては確保するための布陣だ」久美子も肩を強張らせ、レイトキの横から小声で囁く。

「レイ…あの人たち、全部ストレンジの関係者よね。これほど揃ってくるなんて、明らかに狙われてるわ」星玲奈も不安そうに瞳を揺らし、リジェも鋭い視線を彼らに向けたまま、動かない。一方、七人はそれぞれ無表情なまま教壇の前に立ち、自己紹介を始める。だがその瞳は、レイトキたちをしっかりと捉えて離さない——。

「これは、ただの監視じゃ済まされそうにない」レイトキは静かに覚悟を決め、七人の視線を真っ向から受け止め返した。教室の空気は一気に張り詰め、見えない戦いがすでに始まっていた。休み時間となり、教室の喧騒の中でフュンフが一人、レイトキの席へと歩み寄ってくる。周囲の目を気にするそぶりもなく、真っ直ぐな視線を向けると、静かに口を開く。

「お前、並々ならぬ目的を抱いているようだな。クラリトンとクリプトンを一つにする、と。その志、捨てたものじゃない」そう言うと、掌に収まるほどの不思議な輝きを放つ石を取り出し、レイトキの手の上にそっと置く。

「ならば、これを託そう。その志を貫くための、力の一つとして使ってくれればそれでいい」手の中の奇石は二つの世界の周波数を併せ持つように、深みのある蒼と黄金の輝きがゆっくりと入れ替わり、触れるだけで心が落ち着くような温かな力が伝わってくる。レイトキは驚きながらも、その石を強く握りしめて問い返す。

「いいのか? これほどのものを…。ストレンジからの監視任務だというのに」フュンフはわずかに口元を緩め、何も言わずに静かに頷くと、そのまま自席へと戻っていく。——彼の真意は言葉にされないまま、だが確かに「敵対するだけが答えじゃない」と、そう告げているようだった。レイトキは手の中の石を見つめ、そしてフュンフの背中を見送りながら、新たなる可能性と試練が、また一つ自分の元へ届けられたのだと感じていた。フィーアがそっと近づき、周囲に気配を配りながら低い声で告げる。

「レイトキ、私たちは本気でアナタを確保するつもりなんてありません。ただ、怪しまれないように——表向きだけはリュウゼツラン様の命令に従っているだけなのです」レイトキは目を細め、真剣な瞳を見つめ返す。

「…そういうことか。マズミさんやユーカリさんの意向で、動いてくれているのか?」フィーアはわずかに頷き、言葉を添える。

「アナタの志が、私たちの望む未来に通じているのなら、なおさら。だからくれぐれも、表向きの姿に惑わされて敵だと決めつけないでください。互いの立場は複雑でも、心の在り処は同じかもしれませんから」それだけを伝えると、彼女は何事もなかったかのように自席へと戻っていく。レイトキはその言葉を胸に刻み、手の中の奇石をそっと握りしめる。——敵のふりをしている者たちが、ここには大勢いるのだと知った今、戦い方も、信じる道も、また少し形を変えていくのだった。フュンフから預かったその石が、レイトキの手の中でふわりと浮かび上がる。蒼と黄金の輝きが渦巻きながら彼の胸元へと引き寄せられ、まるで元からそこに在ったかのように、心臓の真上に吸い込まれるように溶け込んでいく。

「…!」違和感はまるでなく、むしろ胸の奥がじんわりと温かくなり、クラリトンとクリプトン、二つの世界の鼓動が自らの中で静かに共鳴し始めるのを感じる。まるで自分の一部となったかのように、奇石は完全に彼の胸に溶け込み、外見からはその痕跡さえも見えなくなった。レイトキは胸に手を当て、その静かなる力を確かめるように握りしめる。

「これは…俺の心と、力そのものと繋がったのか」誰にも気づかれぬように、その奇石は彼の守りとなり、道を示す光となって——これから始まる長き闘いの中で、静かに力を蓄え続けていくのだった。アルビテトは、レイトキの胸に石が溶け込む様子を目の当たりにし、息を呑むように見つめていた。そして心の中で確信を深め、静かに呟く。

「…父さんと、同じような道を辿っているのね。まさか、あの人には——神になれる素質が備わっているというの?」かつて自分の父がそうであったように、二つの世界の理を一身に受け入れ、その力を自らの一部へと変えていく姿。それは単なる進化や覚醒をはるかに超え、神の領域へと至る道筋そのものだった。アルビテトは瞳を震わせ、レイトキの胸元に宿った輝きを見つめ続ける。

「もしそうなら…彼はいずれ、この世界の常識すらも書き換える存在になるのかもしれない…」その想いは、まだ誰にも告げられぬまま、彼女の心の奥底に沈んでいくのだった。教室の空気がふと変わり、扉の前に穏やかな気配を纏ったグノーシスが現れる。誰もいつの間に来たのか気づかぬまま、彼はレイトキを真っ直ぐに見据え、澄んだ声で告げる。

「レイトキ、君には神へと至る素質がある。よって、特進クラスへと編入させる」言葉一つ一つが教室に響き渡る中、続けて告げられる。

「もちろん、歯車の者たちも共に編入させる。そして、短期留学生たちも——全員、同じクラスに加える」レイトキは胸の内の輝きを感じながら、グノーシスの言葉を噛み締める。

「俺だけじゃなく、仲間も…そして監視に来た彼らまで、同じ場所に集めるというのか?」グノーシスは微かに頷き、静かに告げる。

「それが、君たちの進むべき道だ。共に試練を受け、共に成長せよ。この場所こそ、次なる始まりの地となる」こうして、敵と味方、そしてその境が曖昧な者たちまでが、一つのクラスに集められ——新たな日々が、静かに幕を開けた。グノーシスは澄んだ声で告げる。

「この学園の天空エリアに、特別な教室を用意してある。『デリスクラス』だ」言葉の響きには「二つ」を意味する響きが込められており、クリプトンとクラリトン、二つの世界を繋ぐ場所——まさにレイトキの目指す道と呼応するかのような名だ。一同は思わず顔を見合わせる。グノーシスは続ける。

「高く、澄んだ場所にあるその教室で、これから君たちは共に学び、力を磨いていく。真の資質を見極め、そして神へと至る道を探るために」レイトキは胸の奥の温もりを感じながら、静かに頷く。

「デリスクラス…。俺たち全員が、同じ場所で、同じ空の下で。それが、これからの始まりというわけだな」レイトキは思わず率直な感想を口にする。

「しかし…グノーシス神自らが直接お越しになるとはな。本当に驚いた」神々の理を司る存在が、こうして間近に姿を現し、自ら指針を示してくれる——それがどれほど稀なことか、改めて実感し、身が引き締まる思いがする。グノーシスは穏やかな笑みを浮かべ、応える。

「君の歩もみ、そしてこの場に集まった者たちの行く末を見届けておかねばならぬからな。さあ、共に天空へ向かおう。新たな教室が、君たちを待っている」レイトキは胸の奥の輝きを感じながら、静かに頷く。

「はい。よろしくお願いします」ストレンジ・プレデターの指令室を後にしたリンドウは、独り言をつぶやくように低く呟く。

「まさか、私にまで捕獲任務が下るとはね。だが…マズミとユーカリの動きが、どうにも不穏なのは事実だ。表向きは命令に従うふりをしながら、何か隠れた思惑があるのは見て明らかだ」指揮系統の裏で二人がレイトキたちを生かそうと図っている気配——それを感じ取りながらも、リュウゼツランからの命令は絶対。リンドウは険しい表情を浮かべ、心中で警戒を強める。

「任務は遂行する。だが、裏切りがあるのなら…その時は、私の手で始末するまでだ」冷ややかな決意を秘め、リンドウは影の中へと歩み出していく。表向きの布陣の裏側で、それぞれの思惑が複雑に絡み合い始めている。放課後ともなれば、レイトキたちクロノギアの面々は依頼を受けて街へと繰り出す。捜索や調査、時には異変の調査——日々の暮らしの中で、任務は日常の一部となっている。

そして夜。任務を終えた四人は、星玲奈の家へと戻り、それぞれの部屋でゆっくりと体を休める。二階の西側——真ん中がレイトキ、北が星玲奈、南西が久美子、南がリジェ。どの部屋もほどよい距離で、互いの気配をそっと感じられる。窓からは星が降るように輝いている。昼間の緊張も、任務の疲れも、同じ屋根の下で過ごす安らぎの時間が、そっと和らげてくれる。それぞれの想いと絆を胸に抱きながら、穏やかな夜は更けていく——。深夜、レイトキはふと目を開ける。だがこれは「目覚めた」というより——眠る必要がない体になった今、闇の中で意識が鮮やかに冴え続けているだけだ。クリプトンとクラリトンの因子が融合した彼の体は、もはや睡眠による休息を必要とせず、常に冴え渡った思考と力を保ち続ける。静かに部屋を抜け出し、隣室の気配をそっと確かめながら家を出る。向かうのはマタラシティ・セントラルエリアにある、キキョウから提供された研究開発実験施設。誰もいない深夜のラボ。レイトキは機材の電源を順に入れ、胸に溶け込んだ奇石の反応を確かめながら、持ち帰った遺物や解析中のデータと向き合う。二つの世界の理、歯車の仕組み、そして自らの進化の軌跡——一つずつ解き明かすように検証を進め、記録を重ねていく。

「眠れない夜は、こうして知識を積み重ねる時間にするのが一番だな…」

静寂に包まれた施設の中、彼は一人、未来へと続く道を確かめるように、研究を続けていくのだったレイトキは研究室から開発室へと歩を進める。部屋の奥に伸びる作業台には、これまで回収した遺物を基に試作・調整された様々な武器が整然と置かれている。歯車の意匠が施された槍、重厚な槌、光回路が輝く盾——どれも並外れた力を秘めているのが見て取れる。だがその中で、一際目を引く一振りの刀剣がある。周囲の空気がわずかに歪み、触れぬ先から冷たくも強い波動が漂い、他のどの武器とも異なる、鋭く深い存在感を放っている。剣身には蒼くも妖しい光が静かに流れ、見つめれば飲み込まれそうな——それはまさに「異質」と呼ぶにふさわしい気配を纏っている。レイトキはゆっくりと近づき、手を伸ばそうとして思いとどまり、剣を真っ直ぐに見据える。

「これは…いったい誰が、何のために作った? 俺の知らぬ間に、ここに届けられたというのか…」胸の奇石が微かに疼き、その剣と呼応するかのように、ほんのりと熱を帯び始めていた。レイトキは剣身をじっと見つめ、記憶と照らし合わせながら低く呟く。

「今俺が持っている刀剣の名は…ボーフー。そう記されているな。だが聖書には『トーフー・ヴァ・ボーフー』——混沌と虚無、という言葉があったはずだ」指でそっと刀身をなぞり、浮かぶ紋様と力の流れを確かめる。

「ボーフーだけではなく…だとしたら、この刀剣こそがもう一つの『トーフー』なのか? 二つで一つ、対となる存在だというのか?」胸の奇石がますます強く共鳴し、二つの名、二つの剣が遥か昔から呼応し続けてきたかのような重みを、レイトキははっきりと感じ取っていた。作業台の脇に並ぶ四冊の書物を指し示し、レイトキは静かに確かめるように呟く。

「そうだ…ルカ、マタイ、マルコ、ヨハネ。四つの福音書だ。元々はジョンアイデル様が所持されていたものだが、今はこの研究所に預かり、保管しているな」それらは単なる古文書ではなく、歴史と異界の理が記された貴重な遺物。書棚に厳重に収められ、それぞれが静かに独特の気配を放っている。

「トーフーとボーフー、そしてこの四冊…。いずれもが何か大きな意味を持ち、互いに繋がっているのだとしたら——俺はまだその全貌を見届けていないのかもしれない」胸の奥の共鳴は、これらすべてが一つの道標であることを、静かに示し続けていた。夜が明け、休日の朝が穏やかに訪れる。リビングで顔を合わせると、久美子が真っ先にレイトキの顔を見て、はっきりと指摘する。

「レイ、また夜眠ってないでしょ。最近ずっと、研究開発に没頭してるんでしょ」星玲奈も隣から笑みを浮かべて続ける。

「そういえば、この前もらったブレスレット、レイが作ってくれたんだよね。とても使いやすくて、本当に助かってるよ」レイトキはそう言う二人へ、新しく作り上げた片手杖を手渡す。杖の先端には鋭い刃が仕込まれている。

「ああ。ブレスレットのスピナーは接近戦向けの武器だからな。この杖は遠くへも力を放てるように、並行して開発していたものだ。放出系の技にも対応できる仕組みにしてある」そして自身の手を見つめ、瞳を引き締めて付け加える。

「それに…俺自身も、これまでとは違う、まったく新しい技を身につけようとしているところなんだ。二つの世界の力を、もっと深く理解し、自在に使いこなせるようになりたいからな」その言葉には、自らの進化と未来への強い決意が込められていた。リジェは心配そうな面持ちで、はっきりと言葉にする。

「レイトキって、ケガや病気になったら大変なんだよね。だって…もう本来のヒトとは体の仕組みが全然違うんだから」レイトキは穏やかに笑い、率直に答える。

「心配してくれてありがとう。だけど病気やケガについては、まず問題ないんだ。ネオヒューマノイド——ヒュージノイドに進化してからは、免疫力が桁違いに高くてね。体内に入った病原体なんて、すぐに消滅させられる。それにケガについても、外傷ならほとんど一瞬で塞がるし、内臓の損傷や筋肉の断裂、脳や血管の損傷だって、少し時間はかかってもちゃんと治癒・再生するようになったんだ」

そう告げると、二人はまだ完全には安心しきれないようだが、レイトキの言葉に嘘がないことは感じ取り、それぞれ安らかな表情で頷くのだった。リジェは瞳を潤ませながら、真っ直ぐに想いを告げる。

「だけど、あまり無茶はしないでほしいの…。だって、そんなに強くなった分、もし何かあったらって思うと…その事実を知るのが、本当に辛くなっちゃうから」レイトキはその言葉を胸に深く受け止め、優しく頷いて応える。

「ありがとう…。心配してくれるその気持ち、ちゃんと受け止めるよ。無理をしていい理由なんて、どこにもないよな。お前たちを悲しませるようなことは、決してしない。俺は俺の心を持って、大切な人たちと共に生きていくために、強くなったんだから」そう言ってそっと手を重ねると、リジェは安堵の涙を浮かべながら、笑顔で頷いた。リジェは言葉を紡ぎ終えると、思いを抑えきれぬように一歩踏み出し、両手をそっとレイトキの胸元に添えて、激しく、そして心からの想いを込めて唇を重ねた。瞬間、言葉では言い表せない不安と愛しさ、そして「失いたくない」という切なる願いが、一つの口づけに込められていく。レイトキもその想いをしっかりと受け止め、彼女の背中をそっと抱きしめ返し、同じだけの熱い想いを伝えるように、長く柔らかな時を二人だけのものにした——。

唇が離れた後も、リジェは頬を紅潮させながらレイトキの胸元に顔を寄せ、そのまま離れがたいように寄り添った。リジェの想いが伝わったその後、久美子が一歩前へ進み、真っ直ぐに瞳を見つめて、優しくも深く唇を重ねる。それは変わらぬ愛しさと、共に歩む決意を込めた口づけ。

続いて星玲奈もゆっくりと寄り添い、頬を染めながらも、心からの想いを込めて唇を重ねる。柔らかく温かなその感触は、言葉以上に「ずっとそばにいる」という絆を伝えてくれる。レイトキは三人の想いを一身に受け止め、そっと腕に抱きしめ返す。

「ありがとう…。俺は絶対に、君たちを悲しませはしない。これから先も、ずっと一緒だ」同じ屋根の下、休日の朝に、四人の温かな絆が静かに深まっていくのだった。休日の穏やかな空気が一変し、町のあちこちで異変が起き始めた。路上から突如として姿を現したのは、人の背丈をはるかに超える巨大な蜘蛛——その脚には鋭い棘が並び、牙からは猛毒を含んだ煌めきが仄めかされている。

「まさか…スパイダーギアの類か!」

通行人の悲鳴が響き渡り、蜘蛛は素早く動き出して街を脅かし始める。その異常な気配は、遠く離れたレイトキたちのもとにまで届き——平穏な時間は、突然の緊迫感に包まれていく。レイトキは迫りくる巨大な蜘蛛の姿を捉え、瞳を鋭くして告げる。

「クラリトンの生き物でもない。それにクリプトンのものでもない…。まさか——ストレンジ・プレデターが、新たに創り出した実験生物というのか?」どちらの世界の特徴とも異なる不自然な姿と気配。それは意図的に作られた脅威であると直感させる。三人の女性たちも緊張して身構え、レイトキは前に出て剣の柄に手をかける。

「こいつらを野放しにはできない。俺が向かう。君たちは安全な位置から援護してくれ!」レイトキが駆けつけた時、すでに仲間たちは戦闘態勢で蜘蛛を迎え撃っていた。アルビテトが空から舞うように術を放ち、与太郎は真っ先に飛びかかり、斗愛は的確な指示と援護の言葉を響かせる。カグラとデュークは連携して蜘蛛の動きを封じ、アルカとゼロは距離を置いて強力な一撃を繰り出し、ホワンは警戒しつつも隙を見て攻撃を加えている。

「みんな…もう戦ってくれてるのか!」レイトキはその姿を見て決意を固め、手にした武器を構えて叫ぶ。

「ならば俺も加わる! みんな、この化け物を一気に仕留めるぞ!」迫りくる脅威を前に、クロノギアの面々の力が一つになり——街を守るための激しい戦いが、本格的に始まった。巨大蜘蛛は腹部から幾筋もの鋭い光の糸を放ち、アルビテトめがけて襲いかからせる。レーザーのように輝く糸は速く、そして何本も重なるように飛来する。アルビテトは身を翻し、紙一重で次々と躱していく。だが糸の数は増すばかりで、次第に逃れる術も狭まり——。

「くっ…!」避けきれずに糸が彼女の手足、そして胴に巻き付き、一気に引き締める。光の拘束糸は切ることも難しく、動きはみるみる封じられ、ついには身動一つできないまま宙に引き寄せられるように捉えられてしまう。

「アル!」レイトキは叫ぶと同時に駆け出す。仲間を奪われていく——その危機感が、彼の闘志を一気に燃え上がらせた。与太郎はアルビテトの危機を見るや、一気に距離を詰めて巨大な蜘蛛の腹部へと渾身の一撃を叩き込む。拳が蜘蛛の甲羅にめり込むように衝突し、彼は力の限り叫ぶ。

「デイヤーーーーーー!!」衝撃が蜘蛛全体に伝わり、糸の動きが一瞬止まる。その一撃が、拘束を解くきっかけとなることを願うように——。斗愛は素早く駆け寄ると、手にした刃で輝く拘束糸を一閃する。

「さあ、これで自由だ!」鋭い一撃は糸を寸断し、アルビテトを束縛から解き放った。光の糸は切れ端となって宙に漂い、彼女はようやく身を動かせるようになる。レイトキは躊躇なく駆け込み、手にした刀身から次々と鋭い斬撃を放つ。一太刀、また一太刀——蜘蛛の脚を根本から断ち、続いて胴体へと深く刃を通す。甲羅を裂き、内部の機構や生体組織を断ち切るように幾重にも斬り込み、巨大な体は支えを失い、勢いよく地へと崩れ落ちた。

「これで…動けまい!」蜘蛛の巨体は地面に横たわり、断ち切られた脚と胴体からは不自然な光が消えていく。レイトキは刀を構えたまま、油断なくその姿を見据え続ける。戦闘の後、レイトキは切り落とされた脚を手早く回収すると、収納空間へと収める。

「これを研究施設に持ち帰り、詳しく解析する必要がある」仲間たちの方を向き、はっきりと告げる。

「細胞の構造や素材、体内の仕組みなど、徹底的に調べ上げる。これが何から作られ、どうして生まれたのか——正体を突き止めなければ、次の被害も防げないからな」一同は頷き、レイトキは標本を確かに収めたことを確認し、緊張を解かぬまま先を見据える。この一件が単発の異変ではないことを、誰もが感じ取っていた。レイトキは素早く駆け寄り、うずくまるように座り込んだアルビテトに声をかける。

「大丈夫か? どうした? さっきから息が荒いし、動こうともしないじゃないか」近くでよく見ると、彼女の頬はいつもと違って紅く染まり、額にはうっすらと汗まで浮かんでいる。拘束された時の糸の影響か、それとも別の異変か——レイトキは心配そうに顔を覗き込み、手をそっと彼女の額に添えて状況を確かめようとする。アルビテトは力が抜けたように前へと倒れかかり、レイトキの胸元へとぎゅっと抱きつく。熱を帯びた体がそのまま伝わってくるほどに火照り、彼女は潤んだ瞳で上を見上げ、苦しそうに囁く。

「あったかい…身体が、すごく火照って…」レイトキは彼女の額に手を当ててその熱さに驚き、そして先ほどのレーザー糸の性質、拘束された際の様子を思い返し、急に顔を赤らめて声を詰まらせる。

「ま、まさか…その糸に何かあったのか? 発情しているっていうのか…?」

アルビテトは答える代わりに腕を強く回し、さらに深く寄り添う。その反応が、レイトキの予感が的中したことを物語っていた。リジェはアルビテトの様子を見て、眉を寄せながらはっきりと告げる。

「確かに獣の性質を併せ持つ亜人には、発情という変化が起こることはあるわ。だけど…これはあまりにも突然すぎる」久美子と星玲奈も心配そうに顔を覗き込む。リジェは続ける。

「自然なものなら前兆も緩やかなはず。さっきの拘束糸——あれに何らかの誘発作用があった可能性が高いわ。体質に合わせて仕込まれた、そういう影響よ」レイトキは腕の中で熱にうなされるアルビテトを支えながら、決意を込めて言う。

「とにかく一度、安全な場所へ運ぼう。このまま外にいるわけにはいかない」レイトキは、アルビテトを捉えていた輝く糸の切れ端を見逃さず、慎重に回収して収める。

「この糸自体も持ち帰る。解析して、何が含まれていたのか——熱を帯びさせた原因を、確実に突き止めるために」蜘蛛の脚と併せ、糸もまた重要な手がかりとなる。正体不明の実験生物と特殊な糸——どちらも意図的に仕組まれたものであると、レイトキは確信を深める。そして腕の中のアルビテトを支え直し、静かに告げる。

「さあ、家へ帰ろう。早く詳しく調べて、原因を解明してみせる」星玲奈は状況を察し、はっきりと告げる。

「家の一階、西側の真ん中に空き部屋があるから。そこで休ませよう」

レイトキは頷き、腕の中で熱にうなされるアルビテトをしっかりと支え直す。

「わかった。すぐに運ぶ。静かで落ち着ける場所だな。ありがとう、星玲奈」四人は急ぎ足で家へと向かう。一刻も早く安らげる部屋に届け、この異変を落ち着いて見守りたい——そう願いながら。レイトキはアルビテトをそっと抱え、一階西中央の部屋へと運び込み、静かにベッドへと横たえる。まだ意識がはっきりとしないのか、彼女は熱っぽく息を吐きながら、そのまま布団に沈み込むように身を預ける。額には汗が浮かび、頬の紅潮はまだ消えない。レイトキはその脇に腰を落ち着け、彼女の手をそっと握りしめる。

「ここなら大丈夫だ。誰も邪魔をしない。ゆっくり休んで、早く熱が引くのを待とう」胸の奥では、先ほど回収した糸のサンプルが、いつもと違うわずかな異質な響きを放っているように感じられた。朝の光が窓からそっと差し込む頃、アルビテトがゆっくりと瞼を開ける。だがまだ体の火照りは完全には収まらず、瞳はいつもより潤み、頬の紅潮もそのままに残っている。彼女はまず目の前にいるレイトキを捉えると、言葉より先に体が動くように身を起こし、そのまま腕を回してしっかりと抱きつく。熱い吐息がレイトキの胸元に触れ、力強く寄り添いながら、くったりと体を預けてくる。

「ん…レイ…」まだ意識がぼんやりとしながらも、離れたくないと言わんばかりに腕を締め、熱を帯びた体をレイトキに擦り寄せるようにして、そのまま動こうとしない。アルビテトの腰元から伸びるジャッカルの尻尾が、ピンと鋭く立ち上がり、小刻みに弾むように揺れ動く。その勢いのまま、彼女はレイトキの胸元から顔を上げると、そっと唇を重ねてきた。まだ熱の残る柔らかな口づけは、彼女の高鳴る想いそのもののように、温かく長く続く。瞳を閉じて身を委ねる彼女の姿は、いつもの凛とした様子とはまるで違い、あどけなく、そして心から求めるように——レイトキだけを見つめている。熱い吐息を交わしながら、アルビテトはゆっくりと腕を離すと、そのまま指先を服の前あてにかける。戸惑うレイトキの視線をまっすぐに受け止めながら、彼女は瞳を潤ませたまま、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。まだ熱が抜けきらない肌が朝の光に仄かに染まり、小麦肌が次第に現れてくる——その行為は、すべてを委ねようとするかのように、あまりにも自然で、そして熱く求めるようだった。レイトキは思わず息を呑み、手を添えてよいものかどうか、一瞬ためらいながらも彼女の瞳を見つめ返す。

「アルビテト…本当にいいのか?」アルビテトは潤んだ瞳で真っ直ぐにレイトキを見つめ、はっきりと告げる。

「レイなら…いいよ」その言葉に迷いはなく、熱に揺れながらも心から信じ、すべてを委ねる覚悟が込められている。彼女はそのままレイトキの胸元へとゆっくりと身を寄せ、あたたかな吐息を響かせながら、待つように瞳を閉じた。レイトキはその想いをしっかりと受け止め、そっと彼女を抱きしめ返しながら、柔らかく応えるように唇を重ねていく——。レイトキは真剣な面持ちで、はっきりと言葉にする。


「だけどな…恋人同士でもない者同士が、こんなことをするのは、やっぱり違う気がする」


熱に染まったアルビテトの瞳をまっすぐに見つめ、続ける。

「お前の気持ちは嬉しい。だが俺は、真剣に想いを通わせ、互いに心から愛し合うようになってから、そういうことをしたいんだ。熱や一時の気持ちに流されるままにはしたくない。お前のことを大切に思っているからこそだ」そっと彼女の服を手に取り、その場で着せられるようにそっと懐に置く。

「だから今は、落ち着くまでそばにいさせてくれ。お前の心も体も、正気に戻ってから、改めて二人のことを話そう」アルビテトはその言葉に、熱の中にあっても心の奥の誠実さを感じ取り、ゆっくりと頷くのだった。レイトキの言葉を聞き、アルビテトはゆっくりと頷くと、素直に服を手に取り、そっと身にまとい直していく。まだ頬の紅潮は完全には引かず、瞳も少し潤んだままだけれど、さっきの熱に流されたような様子は和らぎ、指先で襟元を整えながら、レイトキの方を静かに見つめる。

「…レイがそう言うなら、そうする」

小さく呟くように言うと、彼女は改めてレイトキのそばに寄り添い、心から信じていると告げるように、そっと手を握りしめてきた。レイトキは真っ直ぐな瞳でアルビテトを見つめ、誠実に告げる。

「はっきりと言っておく。俺が恋愛として想っているのは、久美子、星玲奈、そしてリジェの三人なんだ。だからアル——君に対しては、残念だけど同じ気持ちを抱くことはできない」

言いにくい言葉を真剣な面持ちで伝え、それでも彼女を大切に思っていることを添える。

「君のことは仲間として、心から大事に思っている。だからこそ、曖昧なままにしておくことはできなかった。傷つけてしまってすまない…」アルビテトはその言葉を聞き、一瞬瞳を揺らして俯く。だがレイトキの真摯な眼差しと、嘘のない言葉に、少しの間をおいてから小さく頷いた。アルビテトは瞳を潤ませながらも、凛とした面持ちではっきりと告げる。

「レイが出した答えなのね…。少し心残りはあるけれど、これ以上私のわがままでレイを困らせるのは違うって、ちゃんと分かった」そして少し強がるように口角を上げ、真っ直ぐに瞳を向けて続ける。

「だから最後に一つだけ言うわ。好きになった人たちを、絶対に幸せにしなさい。もしそうしなかったら——理由なんて問わず、私が有罪判決を下すからね!」冗談めかしながらも、その言葉には真剣な願いが込められている。レイトキはその気持ちをしっかりと受け止め、深く頷いて応える。

「ありがとう。その覚悟はちゃんと持っている。約束するよ」

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