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EPISODE2-18【レイトキの進化など】

レイトキたちが研究開発実験施設を目にした直後、全員の端末に同時にエルカーノス本部からの通知が届く。

『【任務指令】

古代遺物およびクラリトン由来の遺物が各地で複数確認された。これらは今後の戦況を左右する重要な手がかりであり、敵勢力による奪取も警戒される。クロノギアメンバーは、ミクスタッド皇国内の各担当エリア——マタラシティ、ハクレイシティ、ヤクモシティ、ワタツキ海岸などへそれぞれ向かい、遺物の確保と安全な回収を遂行せよ。くれぐれも単独での行動は避け、互いに連携を取り合い、任務完遂を最優先とする。』レイトキは通知を読み終えると、仲間たちを見回してはっきりと指示を出す。

「よし、ついに正式な任務が来た。星玲奈も加わった今、二手、三手に分かれて動ける。まずはマタラシティ周辺から手をつけ、順次各地へと向かう。遺物はただ回収するだけじゃない——それが何を意味するのか、誰が狙っているのか、その目で確かめてくる」久美子が拳を握って応え、他のメンバーも一斉に決意を固める。

「任せて! 絶対に敵には渡さない!」

「みんなで力を合わせれば、どんな場所だって乗り越えられる」新たな拠点と、託された使命。クロノギアの新たな一歩が、今始まる。ストレンジプレデターの本拠点、重々しい空気が満ちる指令室。リュウゼツランは端末に映し出された各地の報告を一瞥し、厳かに告げる。

「エルカーノス…いや、SMOが本格的に動き出したな。今回確認された遺物の中には、我々の計画に不可欠なものも確かに含まれている。ツヴァイ、フュンフ、アハト——お前たち3体を現地へ投入する。それと同時に、部隊長クラス達の精鋭部隊も加わる」名前を呼ばれた三人の影が、薄闇の中から一歩前に出る。

「了解。目標の遺物を確保し、妨害する者があれば排除します」リュウゼツランは冷ややかな視線を画面に向けたまま、続ける。

「レイトキたち『歯車』が出てくる可能性が極めて高い。奴らの力は予測以上に強大になっている。手を抜くな。遺物は必ずこちらの手に収めよ」背後のユーカリが、にやりと笑みを浮かべて付け加える。

「せっかく手に入れた材料ですもの。無駄にはできませんわね。どちらが先に手にするか——楽しみですわ」こうして、遺物をめぐる二つの勢力の争奪戦が、静かに幕を開けた。リュウゼツランは鋭い視線をユーカリに向け、はっきりと命じる。

「今回はお前も動いてもらう、ユーカリ。最近、こそこそと独自に動いているようだが、成果は上がっているんだろう? その実力、この場で見せてみろ!」ユーカリはにやりと悪戯っぽく、しかし底知れぬ笑みを浮かべ、一礼する。

「ご命令、確かに承りました。手間をかけて準備してきた甲斐があるというもの。この遺物争奪、私が華を咲かせてみせますわ」彼女は端末を軽く指で弾き、画面に控えていたクズノハの姿を映し出す。

「さあ、クズノハ。出番よ。全ては、あの未来のために——」これにより、ストレンジプレデターの最も油断ならない切り札が、ついに表舞台に現れる。レイトキは潮風が肌を撫でるワタツキ海岸に立ち、波打ち際を見つめながらはっきりと告げる。

「確かここが、最初にクラリトンの遺跡が確認された場所だ。この一帯だけは次元周波数が他の地域とは全く違っていて、常に異常な数値を示していた」足元の砂には、うっすらと幾何学的な紋様が浮かび消えしている。胸に宿るオーブが微かに疼き、この地が持つ特別な響きに反応しているのが分かる。

「ここが二つの世界を繋ぐ最初の接点だったのか…。だとすれば、この遺跡には、俺たちが知らない本当の事実が隠されている可能性が高い。みんな、警戒を怠らず、周囲を確認してくれ。敵も、この場所の重要性に気づいているはずだ」仲間たちが一斉に頷き、それぞれの役割で周囲を偵察し始める。波の音だけが響くこの海岸で、静かな争奪戦の火蓋が切られた。星玲奈は少し照れくさそうに笑いながら、はっきりと言う。

「念には念を入れて、水着を着てきちゃったんですけど…」そう言って上着を脱ぐと、そこにはスクール水着を改造したビキニ姿が現れる。清楚さの中に活発さが滲み、日差しを受けて白い肌が映える。レイトキは思わず目を逸らし、頬を赤らめながらも言葉を返す。

「お、おい…、その…、準備がいいのは分かったが…! いや、でも、この辺りは水に入る可能性もあるし、助かる…のか?」久美子はにっこり笑いながら肩を組む。

「さすが星玲奈ちゃん、気が利くね! その格好なら、遺物が水中にあってもすぐに動けるもん!」星玲奈は耳を少し赤くしながらも、真剣な表情で頷く。

「はい! レイトキたちの役に立ちたいから…! さあ、みんな、早く遺物を探しましょう!」アルビテトは翼のように広がる気配を纏い、はっきりと告げる。

「アタシは空中領域を担当するわ。最近、眷属の召喚が安定して使えるようになったから、ここは一人で向かってみる」レイトキは少しだけ眉を寄せ、確かめるように言う。

「大丈夫か? 無理だけはしないでくれ。何かあったらすぐ連絡しろ」アルビテトは柔らかく、だが力強く笑みを浮かべる。

「心配しなくていい。アタシはアタシの役割で、レイたちを空からしっかり守り、見張っているから。すぐに合流できる距離にいるわ」そう言うと、彼女の周りに聖なる光の羽が舞い、そのまま優雅に空へと舞い上がっていく。星玲奈は両手を海面にかざし、内に秘めた力を集中させる。微かな星の輝きが指先から広がり、海水がゆっくりと渦を巻き始める——

「はっ!」彼女の呼応に応えるように、海面が裂け、海中から錆び一つない複数の機体が、重々しい音を立てながら浮かび上がってくる。クラリトン特有の歯車と光回路が組み合わさった、小型の飛行・索敵用装置だ。レイトキは目を見張り、胸のオーブも同じように反応しているのを感じる。

「さすがだ、星玲奈! これが、この地に隠されていたクラリトンの遺物——機械式の遺跡端末か!」星玲奈は少し汗ばみながらも、真剣な眼差しで応える。

「これらは、周囲の次元の乱れを記録し続けていたものだと思います。まだ起動しているものもあるみたいです…!」その瞬間、一つの機体のレンズが赤く光り、遠くの空を捉えた——敵の影が、すぐそこまで迫っていた。海面が激しく波立ち、砂浜のあちこちから無数の脚を持つ金属の影が這い出てくる。装甲はクラリトンの技術と謎の合金が融合したような造りで、関節部には赤いライトが点滅し、獲物を狙うようにレンズ状の眼がレイトキたちを捉えている。

「スパイダーギア…! ヴァルテン・アグレッションが開発した、機械生命体の斥候型だ!」レイトキはマルチブレイカーを構え、素早く仲間たちの前に立つ。

「星玲奈、回収した遺物を死守しろ! 久美子は側面から! こいつらは数で押してくる!」金属の脚が砂を切り裂き、一斉に襲いかかろうとした瞬間——星玲奈が浮かび上がらせた機体の光回路が一斉に輝き、スパイダーギアの動きを一瞬だけ鈍らせた。

「今だ!」レイトキはアックスモードで最も近い一体の中枢を叩き、久美子が多腕で次々と薙ぎ払っていく。だが背後からも新たな影が現れ、この戦いが単なる前哨戦に過ぎないことを全員が悟った。一体が隙を突いて飛びかかり、鋭い顎を久美子の腕に食い込ませた。

「しまっ…、うぅーっ!」鋭い痛みが走った直後、腕から急速に痺れが広がり、体の力が抜けていく。顔をしかめ、膝をつきそうになる。

「毒だ! 神経系を麻痺させる仕込みだ!」レイトキは怒りを込めてスパイダーギアを一撃で叩き飛ばし、すぐに久美子を支える。

「クーちゃん、しっかりしろ! 星玲奈、何か中和する手段はないか!」星玲奈は焦りながらも、浮かぶ遺物端末と自身の力を照らし合わせる。

「回路の周波数を合わせれば…! 少し辛抱してください!」アルビテトが上空から光の鎖を放ち、迫り来る敵を足止めする。

「こちらは時間を稼ぐ! 早く!」背後から別の個体が素早く動き、青白く光る強靭な糸を吐き出して星玲奈の手足を巻きつける。

「うわっ! やられた…、体が動かない!」糸は機械と魔力が織りなすもので、力を込めてもびくともせず、星玲奈はその場に釘付けになってしまう。浮かび上がらせた遺物端末も、彼女の力が途切れかけたせいで、ぐらりと傾き始めた。レイトキは怒りと焦りを胸に、眼前の敵を薙ぎ払いながら叫ぶ。

「星玲奈! 諦めるな! すぐに助ける!」久美子はまだ腕に痺れが残りながらも、歯を食いしばって体を起こし、残った腕で糸を断ち切ろうと前に出る。

「レイ、星玲奈を頼む! アタシも…まだやれる!」空からアルビテトが急降下し、光の刃を糸に向かって振りかざす——しかし、敵の増援が次々と砂浜を埋め尽くし、状況は一気に厳しさを増していた。

「クソッ! コイツラ、連係が厄介すぎる!」レイトキはマルチブレイカーを振るい、群がるスパイダーギアを一太刀で薙ぎ払うが、すぐに別の個体が隙を突いてくる。その瞬間——

「レイトキ、これを使え!」キキョウが疾風のように現れ、二つの武器を手渡す。一つは鋭い輝きを放つ刀、もう一つは頑丈な造りのバット型武器だ。

「こ、これは…!」

「刀は糸や装甲を断ち切り、バットは敵を弾き飛ばし、毒の回路も衝撃で狂わせる! 状況に合わせて使い分けろ!」レイトキは迷わず受け取り、瞳に決意が宿る。

「ありがとう、キキョウさん! これで…!」彼は刀を一閃させて星玲奈を縛る糸を断ち切り、続けてバットを振るって久美子に噛みついた個体をその場で弾き飛ばす。

「みんな、大丈夫か! 今だ、反撃開始だ!」リジェが天高く舞い上がり、全身を灼熱の紅蓮の炎で包み込む。

「久美子、少しの間だけ我慢して! 毒なんて、燃やし尽くしてあげるわ! ブレイジング!」彼女が放つ浄化の炎は、久美子の周りだけを優しく渦巻き、神経に浸透していた毒を跡形もなく焼き消していく。痛みと痺れが一気に抜け、久美子は大きく息を吸い込む。

「あっ…! 体が戻った! ありがとう、リジェ!」その直後、リジェは炎の嵐を一斉にスパイダーギアの群れへと叩きつける。

「さあ、これで思い切り戦えるわ! みんな、一気に蹴散らすよ!」レイトキが刀を一閃させて糸を断ち切り、バットで敵を弾き飛ばし、リジェの紅蓮の炎が敵の装甲を焼き溶かし、久美子の多腕が残りを薙ぎ払い、アルビテトの光の鎖が逃げ道を塞ぐ——。連携の一撃が重なり、最後の一体が機関を鳴らして崩れ落ち、砂浜には金属の破片だけが残った。

「やった…、全滅だ!」レイトキは武器を構えたまま周囲を確認し、星玲奈は安堵の息をつきながら、浮かんでいた遺物端末をそっと手元に引き寄せる。

「これで、この場所の遺物は確保できました…!」キキョウは静かに頷き、告げる。

「だが、これは前哨戦に過ぎない。敵の本隊は必ず次の手を打ってくる。遺物を回収したら、速やかに次のエリアへ移動しろ」一同は頷き、新たな脅威を警戒しながらも、確かな手応えと共に次なる任務へと歩みを進める。戦闘の余韻が残る砂浜に、ひらりと一対の扇子が風を切って飛んでくる。飾り紋にはストレンジ・プレデターの紋章があしらわれ、その先端が地面に突き立つと同時に、涼やかな笑い声が響く。

「おやおや、随分と手こずったものですわね。」影からユーカリが姿を現し、ゆっくりと扇子を開いて口元を覆う。

「折角ここまで誘き寄せたのに、こんな簡単に片付けられちゃうなんてねぇ…。でも、まあいい。これも計算のうち、ということで。」レイトキは刀を構えたまま、鋭く睨みつける。

「ユーカリ…! お前が、この一連の動きを仕組んでいたのか!」ユーカリは悪戯っぽく笑い、扇子を閉じて手のひらに叩く。

「さあ、どうかしら。それより——次は、もっと“楽しい”相手を連れてきましたわ」彼女の合図と共に、背後の岩陰から新たな気配が立ち上がる。次なる戦いが、すぐそこまで迫っていた。ユーカリは扇子をひらりと翻し、にやりと笑みを浮かべる。

「今回は、コイツにやってもらおうかしら」彼女の背後から、ふわりと白い着物をまとい、白銀の髪をなびかせた女性が姿を現す。静かながらも張り詰めた気配を纏い、ゆっくりと頭を下げる。

挿絵(By みてみん)

「ユーカリ様の配下、サギソウ。参ります」レイトキは刀を強く握りしめ、警戒を強める。

「ユーカリ…、まだ続くのか。お前たちの真の目的は一体何なんだ!」ユーカリはあえて答えず、サギソウへと合図を送る。

「さあ、存分に相手をしてあげなさい。彼らの力、存分に試してあげるわ」サギソウは無言のまま、袖の奥から細長い白い刃を抜き放ち、その瞳には冷ややかな光が宿った。新たな戦いの幕が、再び切って落とされた。サギソウはまるで風そのもののように、音もなく距離を詰める。白い着物の裾が舞うと同時に、細長い白い刃が一筋の光となって走り——

「っ!」レイトキは間一髪、刀を横に構えて受け流すものの、衝撃で体勢を崩しかける。刃が鎧の表面をかすめ、鋭い閃光が砂浜を照らした。サギソウは一撃を終えてもなお、微動だにせず無表情に告げる。

「退かぬ。譲らぬ。この遺物は、我らが預かる。」レイトキは拳を握り直し、真っ直ぐに睨み返す。

「そうはいかない! これは二つの世界を繋ぎ、多くの命を救うためのものだ! 誰にも渡さない!」周りの仲間たちも一斉に構え直し、この新たな強敵に対して、一歩も引かずに臨む決意を固めた。サギソウは地を蹴って天高く跳躍し、白銀の髪と着物の裾が風になびく。細長い白い刃を頭上高く振りかぶり、落下と同時に渾身の一撃を振り下ろそうとする——

「喰らえ!」レイトキはバットを構えて迎え撃ち、刃と鈍器が激しくぶつかり合って火花が散る。衝撃は凄まじく、足元の砂が大きくえぐれる。

「っくっ! この一撃…、並外れた威力だ!」レイトキは歯を食いしばって耐え、その隙に久美子が側面から多腕を伸ばし、リジェが炎の壁を展開して挟み撃ちに備える。アルビテトも上空から光の槍を構え、いつでも援護できる態勢を整えた。サギソウは素早く袖を翻し、特殊な紙で作られた式神を次々と放つ。式神は風を切ってアルビテトめがけて飛び、避けきれずに直撃する。

「うっ…、きゃあぁーっ!」アルビテトは体勢を崩し、光の翼がかすかに揺らいで落下しかける。紙の式神は触れると同時に魔力を乱し、動きを封じる性質を持っていた。レイトキは叫びながら駆け出す。

「アル! しっかりしろ!」リジェもすぐさま炎の壁を張り、追撃を防ごうとする。

「その式神、炎で燃やせるわ! 任せて!」サギソウは無表情に次の式神を構え、油断なく機会をうかがっている。サギソウは素早く指を組み印を結ぶと、忍者のような身のこなしでリジェの前に躍り出る。手のひらから勢いよく大量の水が噴き出し、まともに浴びせられる——

「うわぁ~っ!」リジェは炎が一瞬で掻き消され、水圧で体を後ろに弾き飛ばされそうになる。服も髪もびしょ濡れになり、いつもの勢いが削がれてしまう。

「火が…消されちゃった! 水で炎を封じるなんて…!」レイトキは間に割って入り、刀を構えて叫ぶ。

「くそっ! 相手の術をよく見ろ! 星玲奈、アル、援護を頼む! こいつは相手の力を見極めて的確に突いてくる!」サギソウは無表情に次の手を構え、隙を逃さず一気に勝負を決めようとしている。星玲奈は唇を噛み、悔しそうに拳を握りしめる。

「私にも、もっと力があればいいのに…。いつも、みんなに守られてばかりで…」その瞬間、心の奥底から、どこか懐かしく厳かな声が直接響き渡る。

『お前はもう、気づいているはずだ。その力の本当の使い方を。さあ——その鎖を解き放て!』星玲奈はハッと顔を上げ、涙を瞳にたたえながらも、迷いを振り払うように両手を前へ真っ直ぐと構える。指先から、これまでよりも遥かに強く、澄んだ星の光が溢れ出し、周囲の闇をも照らし始める。

「そうだ…、私は守られるだけじゃない! 私の力で、みんなを守る!」その光は遺物端末と共鳴し、サギソウの術の流れさえも一時的に乱し始めた。星玲奈から放たれた光の圧力に、サギソウは思わず後方へ大きく跳び退き、白い刃を構えたまま目を見見開く。

「な、なに!? こいつ、これほどの力が…! んっ!? そうか、おぬしは“人工歯車”か! 二つの異なる概念を埋め込まれ、生み出されし存在だということか!」彼女は初めて表情を曇らせ、星玲奈の内に秘められた力の正体を見抜いた。星玲奈は揺るぐことなく前を向き、光を両手に集めながらはっきりと告げる。

「違う…! 私はただ、誰かを守りたいと願っているだけ! この力が何であろうと、私は私の意志で使う!」その言葉に応えるように、遺物端末が一斉に輝き、星玲奈の周りに無数の光の歯車が浮かび上がった。ユーカリはひらりと風のように戦闘の間に割り込み、隙を突いてレイトキの背後に回り込み、素早く腕を押さえて人質に取る。

「おっと、そこまでにしなさい」冷ややかな声が響き渡り、一同の動きが一気に止まる。ユーカリはレイトキの首元に爪を軽く当て、にやりと笑みを浮かべる。

「さあ、武器は全部捨てなさい。遺物もこちらへ置いてもらうわ。さもなければ——この方がどうなることやらか」星玲奈の光も、その瞬間に揺らいで消えかかる。

「やめて! レイトキを離して!」

「ユーカリ…! 卑怯な真似を…!」

レイトキは歯を食いしばりながらも、仲間たちが動けなくなるのを見て、怒りを抑えきれずにいる。レイトキは一切ためらわず、ユーカリの腕に思い切り噛みついた。

「いっつ!この! 離せっ!」ユーカリは思わず痛みで手を緩め、その隙にレイトキは体を捻って拘束から逃れ、素早く距離を取り戻す。

「卑怯な手をつかいやがって!何が目的だ! 俺たちは絶対に遺物を渡さない!」ユーカリは唇を歪めて笑いながら、手を口元に当てる。

「おやおや、荒々しいこと。でも、その根性、嫌いじゃないわ。だけどね——これで終わりじゃないのよ」彼女は合図を送り、サギソウが再び刃を構え直し、状況は再び緊迫の度を増していく。

「くらえ! 式神・攻!」サギソウが手元の紙を勢いよく投げつけると、紙片が次々と禍々しい気を纏う式神へと変じ、鋭い爪や牙を持った姿となって一斉に襲いかかってくる。レイトキは刀を振るい、眼前の式神を真っ二つに切り裂くが、数が多く捌ききれない。

「みんな、散れ! 一か所に固まるな!」リジェは体を覆った水を乾かしながら叫ぶ。

「今度こそ燃やし尽くしてやる! 炎よ、我が元に集え!」だが式神は散開して迂回し、アルビテトや星玲奈の方へも迫っていく。星玲奈は再び両手を構え、光の歯車を展開して迫り来る式神を弾き飛ばそうとする。

「負けない! 絶対に負けないんだから!」

「呼水、降水!」サギソウが印を結ぶと、たちまちリジェの頭上だけに黒い雲が垂れ込み、勢いよく雨が降り注ぐ。炎を熾そうとするたびに雨が叩き落とし、彼女の力の源を徹底的に封じにかかる。

「きゃあっ! また火が消されちゃう! これじゃあ式神を焼くこともできないわ!」リジェは歯を食いしばりながらも、雨足は一向に収まらず、次第に動きも鈍っていく。レイトキは状況を見て叫ぶ。

「リジェは一旦下がれ! 星玲奈、光で雨の軌道を乱せ! アルビテト、光の壁で雨を遮れ! こいつは俺たちの得意な力を一つずつ潰しにきてる! 逆に、その術の隙を突くんだ!」

「拘束陣!」サギソウが素早く印を結ぶと、久美子の足元に漆黒の陰陽陣が浮かび上がる。陣の紋様が光りながら足を掴み、多腕を動かそうとしても一切動けなくなる。

「なに!? 体が…、足が地面に張り付いたみたいに動かない!」久美子は力を込めても抜け出せず、焦りながら叫ぶ。レイトキは刀を構えて突進しながら叫ぶ。

「久美子! もう少し耐えろ! 星玲奈、その陣の紋様を光で打ち消せ! アルビテト、鎖で陣そのものを斬り崩せ! こいつの術はすべて“決まった手順”で動いている! その型を乱せば隙が生まれる!」

「暗雲甲!」サギソウが印を結ぶと、真っ黒な雲が一気に星玲奈を包み込み、分厚い殻のように閉じ込める。星の光も外部に漏れず、彼女の力の源である光を完全に遮断してしまう。

「きゃあっ! 光が…、何も見えない! 力が出なくなっちゃう…!」星玲奈の声が雲の中からかすかに響くものの、雲は微動だにせず、彼女の動きを完全に封じてしまった。レイトキは怒りと焦りを抑えきれず、刀を強く握りしめる。

「星玲奈! 耐えろ! 絶対に助け出す! みんな、こいつは俺たちの力を一つずつ封じにきている! 今こそ、残された力を一つに合わせるんだ!」アルビテトは光の槍を構え直し、リジェは雨の中でもわずかに炎を灯し、久美子は陣の中から力を溜め、そしてレイトキが胸のオーブを輝かせる——全員の意志が一つになろうとしていた。

「貴様にはこれだ——無限穢楔!」サギソウが印を結び終えた瞬間、アルビテトの周囲に無数の黒く濁った釘が浮かび上がり、一斉に彼女の体へと打ち込まれる。釘は魔力を汚し、力の流れを根こそぎ阻害し、抜こうとすればするほど深く食い込んでいく。

「っ…! この穢れ…、聖なる力が濁されていく…!」彼女が光を放とうとしても、穢れが覆いかぶさり、最後には太く黒い鎖が絡みつき、完全に動きを封じてしまう。アルビテトは唇を噛み締めながらも、力が抜け落ちていくのを感じ、無念の表情を浮かべる。

「アル!」レイトキは仲間たちが一人、また一人と封じられていくのを目の当たりにし、怒りと決意が胸の奥で渦巻く。

「くそっ…! だが、まだ終わらない! 俺たちの絆までは、お前に封じられはしない!」彼は刀とバットを両手に構え、胸のオーブがこれまでにない輝きを放ち始める——。仲間たちが次々と封じられる中、与太郎、カグラ、斗愛、デューク、アルカ、ゼロが一斉に前へ踏み出し、構えをとる。与太郎は大剣を地に突き、カグラは刀を抜き放つ。斗愛は周囲の気配を読み解き、デュークは素早く駆け回って敵の注意を引く。アルカは強固なバリアを展開し、ゼロは魔術書を開いて術式を展開し始める。

「レイトキ! 俺たちがまだいるぞ!」与太郎が力強く叫ぶ。

「この術の理、もう読めたぞ!」斗愛が冷静に指摘し、「あの陣と印、順番に隙がある!」

「任せろ! お前たちが隙を作れば、私が叩き斬る!」カグラが鋭く言い放つ。

「へっ、悪戯の時間だぜ!」デュークは素早くサギソウの背後へ回り込み、術の糸を絡ませ乱そうとする。

「私が全員を守る! 絶対に突破させない!」アルカのバリアが仲間たちを覆い、

「我が力を以て、敵の術を解析し、打ち破る!」ゼロが呪文を唱え、サギソウの術式に干渉し始める。レイトキはその姿を見て、瞳に再び強い光が宿る。

「ああ! 一人じゃない! みんな、一気にこの膠着を打ち破るぞ!」サギソウは唇の端をにやりと歪め、掌から鋭く輝く光の輪を次々と投げ放つ。

「拘束爆光輪!」光の輪は飛ぶや否や、まだ動けていた与太郎たち全員の体に巻き付き、一瞬で動きを封じてしまう。力を込めても抜け出せず、全員がその場に釘付けになる。

「なんだこれは! 体が言うことをきかない!」与太郎が悔しそうに叫び、カグラも刀を構えたまま身動きが取れなくなる。斗愛もデュークも、アルカもゼロも、皆一様に動きを奪われ、戦闘は完全に膠着した。サギソウは無表情にレイトキを見据える。

「これで、抵抗する者は一人もいなくなった。さあ——遺物を、そしてお前の力を、こちらに渡すがいい。」レイトキは刀を強く握りしめ、たった一人で敵の前に立ちはだかる。胸のオーブが激しく鼓動し、仲間たちの想いが一つになって彼の中に流れ込んでくるのを感じていた。

「そうはいかんぞ!タァーーーーーッ!!デリャーーーーーッ!!!」

突如響き渡る力強い声、その主はエピデンドラムだ。彼が現れると同時に、まずリジェの頭上に垂れ込めていた雨雲が一瞬で掻き消え、続いてアルビテトを苦しめていた穢れの鎖と楔が、すべて彼の元へと吸い込まれていく。さらに久美子を縛っていた陰陽陣は音を立てて砕け散り、最後には星玲奈を閉じ込めていた暗雲甲、そして与太郎たちを拘束していた光の輪まで、跡形もなく打ち壊された。サギソウは驚きに目を見開き、一歩退く。

「貴様…! なぜここに!? これらの術を、こうも容易く…!」エピデンドラムは涼やかに笑い、レイトキたちの前に立ちはだかる。

「歯車が動き出した以上、噛み合うのは当然のことだ。それに——お前たちの手際は、少々手荒すぎるからな」レイトキは仲間たちが次々と自由になるのを見て、力強く拳を握りしめる。

「エピデンドラム…! すまん、ありがとう!」

「感謝は後だ。さあ、反撃の時間だ——!」ユーカリは扇子を閉じ、状況を素早く見極めて冷ややかに告げる。

「エピデンドラム…、これじゃあ分が悪いわね。退くわよ」彼女はサギソウに手招きをし、その場から退く合図を送る。

「遺物は今回は見逃してあげる。だけどね——これで終わりじゃないから。次はもっと“面白い”準備をして待ってるわ」そう言い残すと、二人は風のように砂浜から姿を消し、争奪戦は一時的にクロノギアの勝利で幕を閉じた。 レイトキたちは安堵の息をつきながら、改めて手にした遺物を確かめ合う。そして、これが長い戦いのほんの始まりに過ぎないことを、全員が心の奥底で感じ取っていた。レイトキは拳を固く握りしめ、胸の奥から湧き上がる思いを言葉にする。

「このままじゃ、いつか大切なものを失ってしまう…! 俺は、人としての心を決して捨てず、進化したい!」その決意が胸のオーブと共鳴した瞬間——彼の姿が光に包まれて変わり始める。頭部には凛とした角と獣のような耳、そして水の流れを思わせるエラ付きのエルフ耳が並び、背中には鳥のような羽が広がり、腰からは力強い竜の尻尾が伸びていく。機械と魔法、そして命の輝きが一つに溶け合った、まったく新しい姿だ。

挿絵(By みてみん)

レイトキは変わりゆく自分の手を見つめ、迷いなく告げる。

「これが、俺の選んだ姿だ。どんな力を得ようとも、俺は俺であり続ける。誰一人犠牲にせず、すべてを救う——そのために、この力を使う!」その瞳には、これまで以上に強く、それでいて温かい決意が宿っていた。ミクスタッド皇宮の最深部、光と水が織りなす厳かな間。中央には水面がそのまま立ち昇ったかのような巨大な水鏡があり、そこには先ほど新たな姿を現したレイトキの様子が、鮮明に映し出されている。ジョンアイデルとクレティアが、その姿を固い表情で見つめていた。ジョンアイデルは静かに、だがはっきりと言葉を紡ぐ。

「レイトキ…。こいつは進化した。今までの“人類”という枠を完全に踏み越えた。あるいは、新たな人の形——新人類(ネオヒューマノイド)と呼ぶべき存在になった、ということか」クレティアは水鏡に映る角、耳、翼、尻尾、そのすべてを見つめ、微かに頷く。

「機械と幻想の力、クリプトンとクラリトン、そして“歯車”の力が一つに溶け合った姿…。だが、その瞳には確かに、人としての心が宿っている。それが最も危険で、そして最も希望に満ちたものだ」ジョンアイデルは厳かに続ける。

「この選択が、二つの世界の未来を分ける。彼がその力を“救うため”に使い続けられるのか——それとも、力に飲み込まれてしまうのか。今、すべては彼の意志にかかっている」水鏡の中のレイトキが、空を見上げる。その姿は、これから訪れる大きな時代の転換点を、象徴しているかのようだった。レイトキたちは、戦いの余韻が残る砂浜に集まり、無事に確保したクラリトン製の遺物端末を丁寧に手に取る。

「よし、このワタツキ海岸の遺物は、確かに回収した。」レイトキは新たな姿のまま、慎重に機体を調べる。角と翼、尻尾はまだ力強く存在感を放っているが、その手つきは以前と変わらず、仲間たちを気遣う優しさに満ちていた。星玲奈がそっと端末に触れると、機体が穏やかな光を放ち、無事に起動を確認する。

「この記録、まだ生きています! ここが二つの世界を繋いだ瞬間の記録が、ちゃんと残っているみたいです…!」エピデンドラムが背後から静かに告げる。

「これは、まだ序の口だ。各地に散らばる遺物の一つに過ぎない。だが、これを手にしたことで、敵の計画の一端が見えてきた。急げ、次のエリアへ向かうぞ」レイトキは遺物を専用の収納ケースに収め、仲間たちを見回し、力強く頷く。

「ああ。みんな、無事か? これからも、絶対に一人にはしない。共に、全てを救う未来へ——」一同は心を一つにし、次なる任務の地へと、足を踏み出した。久美子はレイトキの新しい姿を見て、少し頬を赤らめながらも、はっきりと褒める。

「しかし、レイのその姿、カッケーじゃん!」星玲奈も大きく頷き、真っ直ぐな瞳で言葉を続ける。

「うん、確かにかっこいい! もともとの、誰も想いやる心、強さと優しさを両方持っているところが、そのまま姿になったみたいだよ」レイトキは少し照れくさそうに頭を掻き、角が微かに揺れる。

「そうか…? 俺はただ、自分が何者であるか、はっきりさせたかっただけなんだ。この姿が、俺の本当の姿なんだと思う」リジェも笑いながら肩を叩く。

「どんな姿になっても、レイトキはレイトキだよ。それが一番大事なことだもん!」レイトキは仲間たちの温かい言葉に、心からの笑みを浮かべる。

「ありがとう。——さあ、行こう。まだ、俺たちのやるべきことはたくさんあるんだ」アルビテトは少しだけ名残惜しそうに目を細め、はっきりと言う。

「アタシは、前の姿のレイが好きだったな。慣れ親しんだ、あの姿が一番しっくりきたんだけど」ホワンが柔らかく諌めるように続ける。

「アルビテトさん、見た目で判断しちゃダメだよ。レイトキさんはレイトキさんだよ。姿が変わっても、心の中身は何一つ変わっていないんだから」アルビテトは少しだけ唇を尖らせたが、すぐにレイトキの瞳を見て、柔らかく笑い直す。

「…そうね。それが一番大事なことだったわ。どんな姿になっても、アンタはアンタ。そこが好きなところなんだから」レイトキは照れくさそうに頬を掻きながら、それでも真っ直ぐに仲間たちを見つめ返す。

「ありがとう。俺は俺のまま、これからもお前たちと共に進んでいく」エピデンドラムは厳かな口調で告げる。

「本来なら、回収した遺物はSMOの関係機関で厳重に保管する決まりだけど。だが、君たちには専用の研究開発実験施設がある。君たちの回収したものはそこに保管することを許可する」レイトキは力強く頷き、真剣な眼差しで応える。

「ありがとうございます。この遺物をただ預かるだけでなく、しっかりと解析し、二つの世界を救うための糧にしてみせます。絶対に無駄にはしません」エピデンドラムは微かに笑みを浮かべ、続ける。

「その言葉、忘れるな。その施設が、君たちの手で未来を切り開く拠点となることを期待している」一同は改めて決意を新たに、遺物を大切に携え、次なる行動へと歩みを進める。エピデンドラムの指示のもと、一行は次なる任務の地へと向かう。辿り着いたのは、木々に覆われた坂の上に佇む、ミュータント学園の旧校舎だ。かつて多くの特殊な生徒たちが学んだ場所だったが、今は窓が曇り、壁には古い紋様が浮かび、どこか寂しくも、強い記憶と気配が残っている。風が廊下を吹き抜ける音が、まるで過去の声のように響く。レイトキは新たな姿のまま校舎を見上げ、胸のオーブが微かに反応するのを感じる。

「ここにも、クラリトンとクリプトンの痕跡がある…。この校舎自体が、二つの世界の力を受け止めてきた場所なのかもしれない」星玲奈もそっと壁に触れ、真剣な表情で言う。

「ここには、たくさんの人の想いと、隠された記録が眠っています。そして、今回の遺物も…きっと、誰かを守るためにここに残されたものだと思います」久美子が多腕を構え、周囲を警戒しながら告げる。

「敵もこの場所の重要性に気づいているはずだ。気を抜くな。慎重に、一歩ずつ進んでいくぞ」一同は心を引き締め、古びた扉をゆっくりと開き、校舎の奥深くへと足を踏み入れた。薄暗い旧校舎の玄関ホール、影の中からセイランが悠然と姿を現す。彼女は冷ややかな笑みを浮かべ、呆れたように肩を竦める。

「ユーカリ様も本当、戯れをすること。いたずらに時間を浪費するなど、性に合わないというのに」レイトキは角の先を鋭く向け、刀の柄を握りしめる。

「セイラン…! お前がここにいたということは、この旧校舎も、お前たちの計画の一端だったのか!」セイランはゆっくりと一歩前に出、その瞳には慈悲も容赦もない、計算し尽くされた光が宿る。

「この場所は、元々は優れた素体を選び、育てるための苗床だった。そして今、その“収穫”の時が来たということよ」彼女が手を挙げると、校舎の壁のあちこちから、機械仕掛けの影が這い出してくる。新たな戦いが、この古い校舎の中で始まった——。セイランが手を振ると、背後から狐の頭部を模した無数のファンネルが展開し、赤い光弾を一斉に放つ。

「さあ、消えなさい!」だがレイトキは翼で飛び上がり、自ら光弾の中心へと踏み込む。角とエルフ耳が微かに光り、触れた瞬間——光弾もファンネルの本体も、まるで砂が溶けるようにデータへと変わり、彼の胸のオーブへと吸い込まれていく。

「なっ…! 貴様、私の術式を…!」

セイランは驚きで瞳を見開く。レイトキは力を自分のものにしながら、静かに告げる。

「この力は、お前たちだけのものじゃない。俺が受け継ぎ、正しい道に使う!」仲間たちはその様子に息を呑み、そしてすぐに次の動きへと備える。レイトキの新たな能力が、敵の攻撃さえも己の力へと変えていくのだ。レイトキは自らの内に流れ込んだ力と、元から備わっていた因子の性質を確かめ、はっきりと呟く。

「そうか…。元々宿っている因子の力は、肉体が種族進化しても、ちゃんと使えるのか。ならば——遠慮なく使わせてもらう!」彼の背後から、光と回路が織りなす無数のケーブル状の触手が現れ、自在に伸び縮みする。機械の機構と命の息吹が溶け合い、先端には刃や銃口、あるいは魔力の核さえも形成されていく。セイランは思わず一歩退き、驚きを隠せない。

「なんだ…その触手は! まるで、あなた自身が一つのシステムになったかのようだ!」レイトキはその一本をゆっくりと動かし、確かな手応えを感じながら告げる。

「これが、俺の新たな力の形だ。誰かを救うための力——!」レイトキは背中の翼を大きく広げ、角が凛と輝き、尻尾が力強く地を蹴る。その姿はもはや従来のヒトの枠を超えているが、瞳の奥にある想いは、これまでと少しも変わらない。

「俺はもう、既存の人類とは違う。新人類と呼ばれる存在になったのかもしれない。だがな——仲間を守り、誰もが差別や偏見に傷つくことなく、当たり前に暮らせる場所を作る。その想いだけは、何があっても変わらない!」その言葉は校舎の壁に響き渡り、胸のオーブと全身の紋様が一斉に同じ輝きを放つ。セイランはその揺るぎない決意に、思わず息を飲む。仲間たちもまた、レイトキの背中に、これまで以上に強い絆と希望を感じ取っていた。

「たとえ姿が変わり、種が変わろうとも——俺が俺であること、誰かを想う心だけは、永遠に不変だ!」久美子は真っ直ぐにレイトキを見つめ、力強く言い切る。

「やっぱりレイはレイだ。どんなに亜人や機械の特徴が混ざって、どんな姿になろうとも、心だけは少しも変わってないんだね。そんなレイを、私は最後まで支えたい!」星玲奈も大きく頷き、同じ想いを重ねる。

「私もだよ! 久美ちゃんと、まったく同じ気持ちだよ。私も、レイトキさんのそばにいて、力になりたい!」レイトキは胸が熱くなり、角の先が優しく揺れる。

「ありがとう…。お前たちがいるから、俺はどんな姿になっても、自分を見失わずにいられる。絶対に、二人の想いに応えてみせる」セイランはその絆の強さに、初めて戸惑いの色を浮かべる。だがレイトキたちの決意は、この場所の空気さえも変えていく——。

「行くぞっ!」レイトキは翼を羽ばたかせ一気に距離を詰め、刀を抜き放ちセイランへと斬りかかる。だがその瞬間、白い影が風のように割って入り——

「通さん!」サギソウが白刃を一閃させ、レイトキの刀を正面から受け止める。火花が校舎の薄暗い廊下に飛び散り、互いの力がぶつかり合って床まで軋む。セイランは後ろに下がり、冷ややかな笑みを浮かべる。

「予想外の進化ね。だが、ここで終わらせはしない。この旧校舎の“収穫”は、すでに始まっているのだから」

レイトキは刀を強く握りしめ、瞳に決意を燃やす。

「ならば、その計画ごと俺が叩き潰す! みんな、一気にかかれ!」レイトキは刀を構えたまま、鋭く問いかける。

「お前、ユーカリと共にストレンジ本部へ引き上げたんじゃなかったのか? なぜここにいる!」サギソウは白い刃を揺らし、静かに笑みを浮かべて答える。

「フフフフ、いやはや…君が自ら種族を変え、進化を遂げるとは、本当に驚いたよ。なるほど、これが“新人類”か。ユーカリ様が描いていた絵図が、また一つ現実になったということだ」レイトキは眉を寄せ、敵の真意を探る。

「…これも、お前たちの計画通りだというのか?」サギソウは無言のまま、再び構えを直し、その瞳には「試す」という色が濃く宿っていた。戦いは単なる遺物争奪ではなく、レイトキという存在そのものを巡る駆け引きへと、変わり始めていた。サギソウは白い刃を構えたまま、澄んだ声で告げる。

「ならば教えてあげよう。ユーカリ様の真の目的——それは、人類が秘める無限の可能性を、引き出し尽くすことだ」レイトキは眉を吊り上げ、鋭く睨み返す。

「可能性を引き出す…? だったら、なぜ犠牲を伴うやり方を選ぶ! なぜ人の心を踏みにじり、世界を壊そうとするんだ!」サギソウは微かに首を傾げる。

「今ある姿のままでは、人類には限界がある。壁を打ち破るには、痛みと選別が必要だと、彼女はそう考えているだけのこと。君がこうして“新人類”へと進化したことこそ、その証明なのだから」その言葉を聞いた瞬間、レイトキの胸に怒りと共に確かな信念が湧き上がる。

「違う! 可能性は選別や犠牲によって築くものじゃない! 誰もが認め合い、手を取り合って、共に高めていくものだ! 俺はお前たちのやり方を、絶対に認めない!」セイランは冷ややかな眼差しでレイトキを捉え、理を突きつけるように告げる。

「でもね、君は傷ついた仲間たちの姿を見て、初めて進化した。それは決して“犠牲ゼロ”じゃない。痛みという代償、その犠牲があったからこそだよ、それによって君は変われたんだ。その事実だけは、否定できないでしょう」レイトキは一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに拳を固く握り返し、揺るぐことなく応える。

「痛みがあったのは事実だ。だが、その痛みを“当然の代償”だと決めつけ、誰かを選別したり、わざわざ傷つけることを正当化するのは、まったく別の話だ!」彼は翼を広げ、胸のオーブが強く輝く。

「俺は、その痛みを“次に同じ痛みを誰にも与えないための力”に変えただけだ。犠牲を前提にするお前たちの道と、俺の進化は、根本から違う!」その言葉は、古い校舎の空気を切り裂き、正しさを巡る対立が、これまで以上に先鋭化していくことを告げていた。リジェ、ホワン、アルビテト、そしてミトラスが一歩前に踏み出し、セイランの前に立ちはだかる。

「セイランは私たちが相手するわ! 久美子、星玲奈、レイトキはサギソウを任せた!」リジェは紅蓮の炎を手に宿し、ホワンは幻の霧を纏い、アルビテトは裁きの光を刃に宿し、ミトラスは古き魔精の力を帯びて構えを固める。レイトキは力強く頷き、久美子と星玲奈に視線を向ける。

「ああ、わかった! みんな、絶対に無事でいてくれ! 俺たちはサギソウを相手する!」久美子は多腕を展開し、星玲奈は星の光を両手に集め、三人は一斉にサギソウへと向き直る。二つの戦線が同時に動き出し、この旧校舎での決戦が本格的に幕を開けた。サギソウは白い刃を静かに構え直し、冷ややかながらも真剣な眼差しでレイトキを見据える。

「クリプトンとクラリトンの力が混ざり合い、そして新人類へと進化した“歯車”よ——その力、本物であるかどうか、測らせてもらう」レイトキは刀を強く握りしめ、角と翼が決意と共に輝きを増す。

「望むところだ! 俺の力が何のためにあるのか、その目で確かめるがいい!」久美子が多腕を構え、星玲奈が光の歯車を展開し、三人の呼吸が一つになる。

「さあ、いくぞ!」この一戦が、レイトキの新たな存在意義を示す試金石となる——。サギソウが白い刀を一振りすると、赤・青・黄・緑・紫・橙——六色の斬撃波が渦を巻きながら一斉に襲いかかる。だがレイトキは刀を円を描くように振るい、放たれたすべての斬撃を刃の軌道に絡め取る。角とエルフ耳が力を捉え、背中の翼が体勢を支え、刀身が六色の閃光を帯びていく。

「なっ…! 術式ごと受け止めたというのか!」サギソウは初めて驚きの声を上げる。レイトキは受け取った力を刀の先端に集中させ、真っ直ぐに見据える。

「これらの力も、無駄にはさせない。俺が正しい形で使ってみせる!」そして彼は刀を一閃、絡め取った六色の斬撃を一つにまとめ、サギソウへと切り返した。サギソウは思わず後ずさり、目を見見開いて叫ぶ。

「クッ、こ、これはっ!? その刀、まさか伝説の刀剣!?」レイトキが手にする刀は、先ほどの六色の力を吸収したことで、古く厳かな輝きを放ち始める。刃には歯車と星の紋様が浮かび、クリプトンの魔法とクラリトンの技術が一つに溶け合った、伝承にだけ語られていた武器だと気づいたのだ。レイトキは刀を強く握りしめ、真っ直ぐにサギソウを見据える。

「この刀が何であろうと、俺が手にした以上、人を救うための刃にする。お前たちの計画を切り裂き、誰もが笑って暮らせる未来を切り開くために!」その言葉と共に、刀身は一層強く輝き、旧校舎の闇をも切り裂くかのような光を放った。サギソウは鋭く言い放ち、刀の真実を突きつける。

「それは清い刀剣などではない! その刀剣には底知れぬ呪魔、すなわち妖の力が宿っている。その名は——妖魔精刀・村正雨むらまさめ! クリプトンの鍛冶師とクラリトンの刀剣職人が、禁忌を冒して合作した代物だ。そんな力を、お前が本当に使いこなせるというのか!?」レイトキは刀を握る手に力を込め、刃から伝わる荒々しい力の鼓動を感じながらも、揺るぐことなく答える。

「だったらなおさらだ。この妖しい力でさえ、誰かを救うための力に変えてみせる! 二人の職人が込めた想いも、この刀が秘めた闇も、すべて受け止めて、正しい道へと導く!」胸のオーブが刀と共鳴し、妖しい赤黒い光と、星のような清らかな光が絡み合いながら刃を包む。

「この刀が何であろうと、俺が使い手だ。俺の意志が、この刀の在り方を決める!」サギソウは唇を歪め、挑発と興味を混ぜて吐き捨てるように言う。

「人殺しの刀剣をか…、フン、面白いわね!」白い刃を構え直し、その瞳には本気で試そうとする光が宿る。

「ならばその刀が、お前の意志に従うのか、それともお前を飲み込むのか——その目で確かめさせてもらう!」レイトキは村正雨を低く構え、妖しい力を己の心で抑え込みながら静かに告げる。

「この刀が人を殺すためのものだというなら、俺がその定義を覆す。誰も傷つけず、誰も救うための刃に変えてみせる!」刃の妖気が意志の輝きと混ざり合い、旧校舎の空気が一気に張り詰めた。最終決戦の一撃が、今始まる——。サギソウは一気に間合いを詰め、頭上から渾身の一撃を振り下ろす。

「唐竹割りっ!」だがその瞬間、星玲奈が両手から鋭い星の光を放ち、サギソウの顔面へと叩きつける。

「っ! 目が…!」視界を奪われ体勢が大きく崩れた隙に、久美子が背後から無数の腕を展開し、一斉に拳を叩き込む。

「多腕連打!!」轟音と共にサギソウが壁際まで弾き飛ばされ、白い着物が乱れる。

「見事な連携だ…! だが、これで終わりじゃない!」レイトキは村正雨を構え、その隙を逃さず、最後の一撃を決めるべく駆け出した。

「ハァーーー! 次元斬っ!!」レイトキは一気に分身し、あらゆる角度から駆け抜け、村正雨の一閃が空間さえも切り裂くようにサギソウを捉える。

「グワッ! み、見事だ! 今回は退いてあげましょう!」サギソウは刃を受け流しつつも、その威力に後退り、白い袖を翻して距離を取る。そして初めて、真の興味と敬意を込めて告げる。

「レイトキ——名前はしっかりと覚えました。やはり、君は実に面白い男だ」彼女はにやりと笑い、そのまま風のように旧校舎の闇へと消えていく。レイトキは刀を納め、額に汗をにじませながらも、確かな手応えを噛みしめる。

「ああ…、これで一歩前進だ。だが、まだ終わりじゃない」久美子と星玲奈が駆け寄り、安堵の表情を浮かべる。

「レイ、やったね!」

「お疲れ様、レイトキ!」 三人の絆が、この一戦でさらに深く結ばれた瞬間だった。セイランは高らかに問いかけながら、狐頭のファンネルと回路模様の札を無数に飛び回らせ、空間を覆い尽くさんばかりに展開する。

「どうですか!? ワタクシに与えられた力の素晴らしさ、よく分かりましたか!?」アルビテトは光の盾で飛来する札を弾きながら、冷静に見極めて告げる。

「あれは確かに、クラリトン由来の技術だわ! 魔術と電脳が融合した、特殊な術式基板…!」リジェは炎を纏い、札の軌道を焼き払いながら叫ぶ。

「ならば、その理屈を打ち砕いてやる! 炎はあらゆる歪みを浄化する!」ホワンは霧を張ってファンネルの照準を狂わせ、ミトラスは古き契約の力で術式そのものに干渉し始める。セイランは余裕の笑みを崩さず、さらに力を高める。

「クリプトンの力では、そう簡単にはいかないと知りなさい!」だが仲間たちの連携は、彼女が想定していた以上に、その技術の核心へと迫り始めていた。

「くらいなさーい!」セイランが合図を送ると、狐頭のファンネルが一斉に照準をリジェへと合わせ、水色の鋭いビームを連続して撃ち放つ。

「きゃあああーっ!」リジェは避けきれず、ビームが肩や体をかすめ、勢いで後ろへ弾き飛ばされそうになる。服が焦げ、炎の力も一瞬で揺らぐ。

「リジェ!」アルビテトが光の盾を広げて追撃を防ぎ、ホワンが霧で視界を奪い、ミトラスが呪文を唱えてビームの軌道を乱す。

「そのビーム、魔力と電流を混ぜたものね! ただの水でも光でもない、だからこそ対処法がある!」セイランは冷ややかに笑う。

「無駄よ。この力は、あなたたちの常識では測れないのだから」だが仲間たちは、その性質を一瞬で読み取り、反撃の糸口を掴み始めていた。

「視界を塞いでも無駄無駄無駄! 多感センサーが仕込んであるからね! そーれっ!」ファンネルは霧の中でも軌道を狂わせることなく高速回転し、そのままホワンの腹部へと突き当たる。

「ウグウァーッ!」ホワンは勢いよく後ろへ弾き飛ばされ、壁にもたれて苦しそうに身を丸める。幻惑の霧さえも、センサーの前では無意味だと突きつけられた形だ。

「ホワンっ!」アルビテトは即座に光の鎖を放ちファンネルの動きを少しでも封じ、ミトラスは魔術の障壁を張って追撃を防ぐ。

「センサーか…! ならば信号そのものを乱してやる!」セイランは勝ち誇ったように告げる。

「どんな手を使っても、私の前では通用しない。さあ、諦めなさい」だが仲間たちは、その仕組みを逆手に取るべく、次の一手を考え始めていた。

「裁きの雷霆よ、悪しきものを焦がせ! ライトニング!」アルビテトが高らかに唱えると、天井から真っ白な稲妻が迸り、ファンネルの一つに直撃する。

ガチャッ…!バチッ!

回路がショートしたような音が響き、狐の顔の一部が火花を散らして動きが鈍る。センサーの信号が乱れ、他のファンネルも一斉に軌道を狂わせる。

「なっ! 電気が術式回路に干渉したというのか!」セイランは初めて動揺した声を上げる。アルビテトは構えを直し、鋭く告げる。

「機械である以上、電気は弱点だ。そして、それが聖なる力を帯びているなら、なおさらだ!」ミトラスが隙を見て素早く駆け寄り、短剣をセイランの喉元に突きつける。

「降参して、この場から退け!」セイランは歯ぎしりして怒りを抑え、鋭く吐き捨てる。

「チッ…、覚えてなさいよ!」彼女はファンネルを一斉に回収し、札もすべて手元に収めると、そのまま素早く校舎の奥へと姿を消した。アルビテトは安堵の息をつき、ホワンとリジェの元へ駆け寄る。

「二人とも、大丈夫?」

「ああ、平気だ。少し痛いけど、まだ動ける」

「これで、この旧校舎の戦いも一段落だね」レイトキたちも合流し、互いの無事を確かめ合う。だが、敵が完全に引いたわけではない——次の手を、彼らは既に準備しているはずだ。一同が古びた扉を開けて旧体育館へ足を踏み入れると、高い天井の下、中央にカトレアが悠然と佇んでいた。彼女はゆっくりとこちらを見渡し、感心したように、それでいて冷ややかな声で言う。

「あの二人を退けたかぁー。なかなかやるじゃないか」レイトキは村正雨を手に、角と翼が依然として警戒の色を宿したまま問いかける。

「お前も、ストレンジの手先か? この場所に、何の目的がある?」カトレアは唇を少し歪め、静かに答える。

「目的? そうだな…、この学園に眠る“選ばれし者たちの記録”と、そして君という“新人類”が、本当にどこまで通用するのか——それを確かめるための、もう一つの試練だよ」彼女の周りには、古い記憶と電脳の残響が渦巻き、次なる戦いの気配が体育館全体を包み込んでいた。カトレアは冷徹な眼差しでレイトキたちを見据え、事実を告げるように淡々と語る。

「やはり、複数の因子をを掛け合わせた“混因人”こそが、人類進化の鍵だったということね。ユーカリ様がストレンジに入ってまずマズミ様と手を組んだのは、正しい判断だったってわけだ」彼女は続け、計画の全容をさらけ出す。

「そして因子融合技術を持ち込み、“歯車”や“正規品”を生み出してきた。もちろん、その過程で失敗作や欠陥品が生まれることもあったけれど——それも仕方のない犠牲だった、ということよ」その言葉を聞いた瞬間、レイトキの瞳が激しく怒りに燃え上がる。

「仕方ないだと? 一人一人の命、想い、人生を、“犠牲”の一言で片付けるな! お前たちが切り捨ててきた者たちも、俺たちと同じように、心を持って生きてきたんだ!」胸のオーブと村正雨が共鳴し、体育館の空気が一気に張り詰める。

「そんなやり方で手に入れる進化など、俺が絶対に認めない!」カトレアは眉一つ動かさず、冷ややかな理屈を並べ立てる。

「勘違いしないで。犠牲というものは、大なり小なりつきまとうものよ。これまでの進歩も進化も発展も、みんなそれを伴ってきた。例えば電池一つ作るにだって、マウスで実験して、そのマウスたちは命を落としてきたでしょう? それでも、人類が一切犠牲を出さずに前に進めるなんて、本気で思ってるの?」レイトキは拳を握りしめ、角が怒りで鋭く輝く。

「違う! 必要だからといって、誰かを切り捨て、あらかじめ“捨て駒”と決めつけるのとは、まったく別だ! 過去の犠牲を知り、その痛みを胸に刻んで、次は同じ思いをさせないようにするのが、本当の進歩だろう!」彼は一歩前に踏み出し、刃を向けながらも心を真っ直ぐにぶつける。

「お前たちは、犠牲を“当然の手続き”だと言っている。そんなやり方で手に入れた未来なんて、誰も幸せになれない! 俺は、誰一人犠牲にしない道を、必ず切り開いてみせる!」カトレアは呆れたように肩を竦め、理屈を重ねてくる。

「やれやれ。ならば聞くけど、なんで絶滅した生き物だっているのよ? 生き物が進化する過程で、そういう淘汰は外せないものでしょう? 恐竜が絶滅して、そのあとに新しい生き物が生まれた——そんな前例が、いくらでもあるじゃない」レイトキは拳を固く握りしめ、それでも揺るがぬ想いをぶつける。

「自然の摂理と、誰かが意図を持って命を選び、切り捨てることを一緒にするな! 恐竜の絶滅は、誰かが“こいつらは要らない”と決めて消したわけじゃない! お前たちは、自分たちの都合で“正規品”と“欠陥品”に分け、自らの手で命を選別している!」彼は一歩も引かず、真っ直ぐにカトレアを見据える。

「自然が時間をかけて選ぶ道と、人が欲望のために強引に作り変える道は、まったく違う! 俺は、そんな不条理な選別を、絶対に認めない!」カトレアは冷徹な眼差しを崩さず、言い放つ。

「選別こそが必須だ。ついていけない者は滅びる——それが厳然たる自然の摂理だ」 レイトキは怒りと決意を胸に、力強く反論する。

「だったら、その摂理を俺が変えてみせる! 人の手で未来を選べるようになった今、“ついていけない者を切り捨てる”のではなく、“みんながついていけるように道を広げる”——それが、本当の進歩だろう!」彼は村正雨を構え直し、全身の光が強まる。

「誰一人取り残さない世界を作るために、俺はこの“摂理”そのものに逆らう!」カトレアは軽く鼻を鳴らし、冷ややかに告げる。

「思い上がりも甚だしいわ。摂理に逆らえば、あなたはただ消されるだけ。それこそが、神の手による裁きなのよ」レイトキは角を鋭く突き上げ、翼を大きく広げ、その言葉に真っ向から応える。

「神だと? 誰が定めた神だ! 誰かが勝手に決めた“当然の淘汰”を、神の名のもとに押しつけるな!」彼は村正雨を握りしめ、全身の光が強く輝き渡る。

「俺は信じない。強い者だけが生き残り、弱い者は切り捨てられるなんて世界を! たとえ“神の手”が相手だろうとも、俺は俺の意志で、誰もが手を取り合える未来を守り抜く! そのためなら、この身が消えても構わない!」その決意は、旧体育館の闇をも切り裂き、新たな時代の意志として響き渡った。カトレアは鋭く突き放すように叫ぶ。

「愚かっ! 誰も犠牲にしないと言いながら、一番自分を犠牲にしているじゃない! それこそが矛盾だわ!」

レイトキは一瞬、胸を突かれたようになるが、すぐに瞳に静かな強さを宿して答える。

「違う…! 俺がこの身を捧げるのは、“代わりに誰かを犠牲にする”のとは全然違う! 俺は、みんなが笑って生きられる未来のために、自らの意志で力を尽くしているだけだ!」彼は仲間たちを見やり、そして再びカトレアを真っ直ぐに見据える。

「それに、俺は一人じゃない。お前たちが“捨てるもの”だと決めつけた仲間たちが、いつもそばにいてくれる。だからこそ、俺は自分の命だって、大切にしながら戦える。これは、誰かを切り捨てることとは、決して同じじゃない!」カトレアは一歩踏み出し、空気が鋭く張り詰める。

「だったら、その言葉が本当だと証明してみなさい! 私は功罪のカトレア——これより、貴方たちの敵となる!」その瞬間、彼女の周囲には功と罪、光と影が入り混じった力が渦巻き、旧体育館の床や壁に、無数の歯車と天秤の紋様が浮かび上がる。レイトキは村正雨を構え、角と翼が決意と共に輝きを増す。

「ああ、証明してみせる! 俺たちの在り方、そして誰もが救われる道があることを——この刃と、この心で!」

久美子、星玲奈、そして仲間たちが一斉に彼の背に並び、構えを固める。

「レイトキの想い、私たちも共に証明する!」

「絶対に、あなたの理屈には負けない!」功罪を巡る、新たな一戦が今、始まった——。カトレアの両腕が、漆黒の重厚な装甲に覆われていく。歯車と回路が浮かび上がり、機械と魔力が溶け合った光が滲む。

「クラリトンの力…、ますます馴染んできたわ」彼女は装甲を軽く鳴らし、冷ややかな笑みを浮かべる。

「この力で、君の甘い理想がどれほどのものか——その身で確かめさせてもらう」レイトキは村正雨を低く構え、自らのケーブルの触手をたなびかせ、真っ直ぐに応える。

「その力が、誰かを支配し切り捨てるためのものなら、俺が打ち砕く! 俺たちの力は、誰かを守るためにある!」新旧の力が激しくぶつかり合い、体育館の空気が一気に沸き立つ。レイトキはキキョウから預かったバット型棍棒を大きく振りかぶり、漆黒の装甲を纏ったカトレアに向かって一気に薙ぎ払う!

「この力で、お前の理屈ごとぶち壊す!!」硬質な打撃音と共に衝撃波が床を這い、歯車の紋様が砕け散る。カトレアは咄嗟に腕で受け止めるが、重みで一歩、二歩と後退る。

「っ…! クラリトンの装甲をも弾くとは——!」レイトキは勢いを止めず、棍棒の柄にケーブルを巻きつけ、旋回しながらさらに追い打ちをかける。

「まだまだだ! 俺の想いは、こんなもんじゃ折れない!」打撃の余韻が静かに消えていく中、カトレアは漆黒の装甲を解き、ゆっくりと両腕を下ろす。

「今回は降参だ。あなたの思想、その揺るぎない決意は、確かに理解した。ならば、その想いを——本当に現実のものとして、叶えてみなさい」彼女は冷徹な態度を少しだけ崩し、真剣な眼差しで告げる。

「だが忘れないで。誰も犠牲にしない道は、あらゆる淘汰と闘い続ける道でもある。その重さを、背負い続けてみせなさい」レイトキはバット型棍棒を構えたまま、真っ直ぐに頷く。

「ああ、必ず叶えてみせる。お前たちが“不可能”だと切り捨ててきたその道を、俺が仲間と共に歩き切ってみせる!」この一戦が、ただの力比べではなく、未来の在り方を賭けた対話の終わりであり、新たな始まりとなった。カトレアは古びた箱を取り出し、静かに差し出す。

「この場所の遺物は、あなたに渡すわ。だが、覚えておきなさい。ストレンジ・プレデターは、これからもずっと——あなた自身を狙いに来る」レイトキは遺物を受け取り、真剣な眼差しで応える。

「ああ、覚悟はできている。俺がどんな存在になろうとも、仲間と共に、そしてこの想いと共に、必ず最後まで戦い抜く。」カトレアは微かに頷くと、そのまま体育館の出口へと歩み去る。戦いは終わったが、本当の闘いは、これから続いていく——。

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