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EPISODE2-17【打ち上げなど】

クロノギアの事務所メインルーム。いつもは書類や装備で整然とした空間が、一気に賑やかな雰囲気に変わっていく。レイトキは両手にいっぱいの紙袋を抱え、テーブルの上に次々と中身を広げていく。

「ほら、みんなで食べられるように、甘いお菓子から、おかず系の惣菜、飲み物までいろいろ買ってきたぞ! 今回の任務も無事終わったし、星玲奈も加わったことだし、みんなでわいわい楽しくやろう!」袋からは、焼き菓子、フルーツ、揚げ物や煮物のパック、缶ジュースやお茶などが次々と並べられ、あっという間にテーブルがいっぱいになる。久美子は目を輝かせて駆け寄り、「わーい! レイ、気が利くじゃん! これ絶対おいしいやつだよ!」とはしゃぐ。

星玲奈も嬉しそうに手伝いながら、「私もお皿とお箸、用意しますね! こんな風にみんなで過ごせるなんて、すごく嬉しいです!」と笑顔を見せる。アルビテトやリジェたちもそれぞれ席に着き、緊張が解けた穏やかな笑みを浮かべ、任務の疲れを癒しながら、これからの時間を楽しもうと準備を始めた。リジェは温かい眼差しでレイトキを見つめ、はっきりと言葉にする。

「レイトキ、本当に最初の頃と比べたらすごく変わったわ。今ではちゃんと人の心に寄り添う感性も備わっているし、普通に接しているだけじゃ、クリプトン人とクリラトン人のハーフだなんて、誰も気づかないと思うわ」レイトキは少し照れくさそうに頭を掻き、穏やかに笑う。

「そうかな……。でも、そう言ってもらえると、本当に嬉しいよ。俺がこうして変われたのは、全部お前たちがそばにいてくれたからだ」隣に座る星玲奈も、柔らかく頷きながら言葉を添える。

「私が初めて会ったレイトキさんは、本当に優しくて、頼りがいのある人でした。出身がどこだとか、種族とかそんなことより、レイトキさん自身がどういう人なのか——それが一番大事なんだと思います」ホワンは突然体を竦ませ、甲高い声を上げる。

「ひっ、ひゃあっ!」テーブルの隅、お菓子の袋のそばに、小さなクモが素早く這い回っていた。ホワンは慌てて後ろに下がり、両手を胸の前で組んで怯える。

「き、きもちわるいっ! い、いつのまにこんなところに…!」レイトキはあわてて手近なティッシュを丸め、そっとクモを捕まえると窓から外へ逃がしてやる。

「ああ、ごめんごめん。もう大丈夫だ、外に出したから。こわかったな」久美子はくすくす笑いながらホワンの肩を叩く。

「ホワンって、こういうの苦手だったんだ~? でもレイ、さっと手際よく退治してさすがだね!」星玲奈も心配そうにホワンを見て、「もういないから、安心してくださいね」と柔らかく声をかける。ホワンはまだ少し肩を落としながら、はっきりと説明する。

「アタシ、足がたくさんある虫とか、形がいびつな虫や不衛生というイメージの虫はどうしても苦手なんです。でも、チョウチョみたいにきれいなのとか、かわいらしいのは全然大丈夫なんですよ」レイトキはにっこりと頷き、フォローする。

「そっか、それはみんなそれぞれだもんな。気にしなくていいぞ。これからは足の多いやつがいたら、俺が真っ先に退治するからな!」星玲奈も同調して柔らかく笑う。

「私も蝶々とかは好きです。色がきれいで、ふわふわしていて、とても癒されますよね。もしまた苦手なのが出てきたら、私も手伝いますから、安心してくださいね」久美子もからかい半分で言いながらも、ちゃんと気遣う。

「はいはい、レイが専門の虫除け係に任命されました~! だからホワンも安心して、お菓子食べようよ!」星玲奈が真っ赤な一口菓子を口に運んだ瞬間、瞳を見開いて思わず叫び声を上げる

「キャアアアア〜! 辛いっ、すごく辛い〜!」慌てて口元を押さえ、顔を真っ赤に染めながら、両手で小さく扇ぐ。レイトキは驚いてすぐに冷たい飲み物を手渡す。

「おいおい、大丈夫か!? これは唐辛子がたっぷり入った激辛お菓子だったんだ、見た目きれいだから間違えちゃったか! 早くこれ飲んで、口の中冷やして!」星玲奈は急いで飲み物を飲み、しばらくしてやっと息をつく。

「はぁ…、びっくりした! 赤いからいちご味かと思ったけど…!」久美子はお腹を抱えて笑いながら、

「あーあ、引っ掛かっちゃった! これはレイの悪趣味なお土産の一つなんだよ~!」と言い、レイトキは頭を掻いて照れ笑いする。

「いや、悪気はなかったんだ、ただ珍しいから買ってみただけで…! 次からはちゃんと中身確認してから出すよ!」一同の笑い声が、部屋中に響き渡った。久美子は周りをきょろきょろと見回し、ひとまず安心したようにはっきりと言う。

「もう、これでアクシデントはないよね? クモもいなくなったし、激辛お菓子も片付けたし…!」レイトキも念のためテーブルの下や隅を確認してから、にっこり頷く。

「ああ、大丈夫だ。あとは普通においしいものだけだから、安心して食べてくれ」星玲奈もまだ少し赤らめた頬を撫でながら、はにかんで笑う。

「はい、今度はちゃんと味を確かめるよ…! みんなで楽しく食べようね!」こうしてわずかなハプニングも笑い話に変え、一同は和やかな打ち上げの時間を再び楽しみ始めた。リジェがソファに腰を下ろした瞬間——

「ブーッ!」間抜けな音が部屋中に響き渡る。リジェは一瞬何が起きたか分からず、次の瞬間耳まで真っ赤に染め上げ、硬直してしまう。

「な、なにこれっ!? 誰よ、こんなもの仕込んだのっ!」恥ずかしさと驚きで声が裏返り、思わず立ち上がってソファのクッションをめくると、中からおどけた顔のブーブークッションが転がり出てくる。一同は一瞬呆気に取られた後、一斉に吹き出した。

「はははっ! いったい誰が仕掛けたんだ?!」レイトキも笑いを堪えながら、リジェの慌てふためく様子を見ている。久美子は「やだー、誰かの悪戯ね!」とお腹を抱えて笑い、星玲奈も口元を押さえながら、「リジェさん、大丈夫ですか…? あの…とても可愛かったです…!」と言って、ますますリジェを真っ赤にさせてしまうのだった。デュークが後ろからぴょんと顔を出し、舌を出して悪戯小僧のように胸を張る。

「へへ〜〜んだ、見事に引っ掛かった~!」リジェは耳まで真っ赤にして、軽く彼をにらみつける。

「デュークっ! いったいいつ仕込んだのよ、もう~恥ずかしかったじゃない!」レイトキたちはもう一度大きく笑い、デュークの悪戯を責めるでもなく、その和やかな騒ぎを楽しむ。

「おいおい、デューク、いたずらもほどほどにしろよ~」とレイトキが笑いながら言うと、デュークは「だって、みんな楽しそうだったから、もっと盛り上げたくなっちゃったんだも〜ん!」とへらへら笑う。星玲奈も手を口に当てて微笑み、「本当に賑やかで、温かい皆さんだなって思います…」と心の中でしみじみ感じていたカグラはデュークの頭に、ぽんっと軽く拳を置く。

「まったく、やめておけと言ったのに。」デュークは頭を押さえながら、しゅんとして謝る。

「ごめんなさい…、つい調子に乗っちゃって…」リジェも少し表情を和らげ、「まあ、楽しかったからいいけど、次は気をつけてね」と笑いかける。こうして小さな悪戯も、みんなの絆を感じさせる、ほっこりとした一幕になった。レイトキは何気なく尋ねる。

「そういや、カグラってさ、デュークとよく一緒に行動するよな。なんか特別な感情とかあるのか?」カグラは少しだけ頬を緩め、真っ直ぐな気持ちを言葉にする。

「うん。デュークは、見た目や態度こそガラが悪く見えるけど、本当はすごく優しくて、根が素直な奴なんだ。だから、好きなんだよね」その言葉を聞いたデュークは、急に耳まで真っ赤に染めてうつむき、「な、何だよ急に…! 悪い気はしないけどさ…!」と口ごもる。レイトキはにっこりと笑って頷く。

「そうか、それは本当にいいことだ。お互いの本当の姿をちゃんと分かっているからこそ、一緒にいられるんだな」周りの仲間たちも、そんな二人の様子を見て、柔らかい笑みを浮かべていた。

レイトキはにっこり笑いながら、次の二人にも話題を向ける。

「ならば、アルカとゼロも——つまり、お互い好き同士なのか?」

ゼロは少しだけ視線を揺らし、真剣な面持ちではっきりと答える。

「最初の頃は、あまりにもアルカの押しが強すぎて、正直戸惑っていた。だが、共に過ごすうちに彼女の本当の優しさや、心根の温かさに触れて——今では、はっきりと好きだと思っている」アルカは顔をぱっと輝かせ、嬉しそうにゼロの腕にそっと寄り添う。

「そう言ってもらえて、本当に嬉しいわ。これからも、ずっとそばにいるからね」レイトキは心から穏やかな笑みを浮かべ、仲間たち一人一人の絆を確かめるように頷く。

「そうか…。みんながお互いを想い、支え合っている。その絆こそが、俺たちの何よりの力なんだな」レイトキは少し考え込むように視線を落とし、自分の心の内を素直に言葉にする。

「俺はまだ、『恋愛』というものが一体どういうものなのか、よく分かっていないんだ。みんなを信じているし、大切だと思っているし、『好きだ』という気持ちももちろんある。だけど——恋愛って、それだけとはまた違う、何か別のものなんじゃないかって気がするんだ」アルビテトは柔らかく頷き、優しく応える。

「それでいいのよ、レイ。正解なんて決まっていないし、急いで知る必要もない。その気持ちが少しずつ形になっていくのを、私たちはずっとそばで見守っているから」久美子も穏やかに笑みを浮かべる。

「そうだよ。自分のペースで、ゆっくり感じていけばいい。誰も急かしたりしないから」レイトキは仲間たちの言葉に、心がほっと軽くなるのを感じ、少しだけ笑顔を取り戻した。レイトキは少し照れくさそうに、それでも真っ直ぐな想いを口にする。

「だけど、久美子、リジェ、アルビテト、それに星玲奈のことは——いつもよく考えているんだ。何をしているのかな、大丈夫かな、って。みんなのことが、いつも頭から離れなくて」言葉が途切れ、部屋の空気が少しだけ柔らかく沈む。久美子は耳をほんのり赤らめ、それでもはっきりと笑いかける。

「それって、すごく嬉しいことだよ。レイが真剣に私たちのことを想ってくれてるって、ちゃんと伝わってくるから」リジェも優しく頷き、「急ぐことなんて何もない。今のその気持ちを大切にしていけば、いつかきっと、自分の中で答えが見つかるわ」アルビテトは穏やかな笑みを浮かべ「私たちも、いつだってレイのことを一番に考えている。だから、同じだよ」星玲奈も小さく、だけど真っ直ぐに言葉を紡ぐ。

「私も…レイトキさんのことを、いつも考えています。一緒にいられるだけで、本当に嬉しいんです」レイトキはその言葉たちを一つひとつ胸に刻み、心の奥から湧き上がる温かさを感じながら、静かに頷いた。星玲奈は少し前のめりになり、はっきりと問いかける。

「レイトキは、もし誰かと付き合うとしたら、誰がいいとかってあるの?」あまりに突然の直球の質問に、レイトキは思わずむせてしまう。

「ご、ほっ! お、おい、今聞くかよ!」顔を真っ赤にしてしばらく咳き込んだ後、照れくさそうに視線を泳がせながら、それでも正直な気持ちを口にする。

「まあ……俺としては、クーちゃん、リジェ、ホワン、それに星玲奈の四人かな……」言い終わると、レイトキは耳まで真っ赤に染めてうつむいてしまう。久美子は大きく目を見開き、次いで頬を染めながらも嬉しそうに唇を結ぶ。リジェは驚きつつも、柔らかい笑みを浮かべてレイトキを見つめる。ホワンは恥ずかしそうに両手で顔を覆い、小さく「わたしなんかでいいの…?」と呟く。星玲奈も真っ赤になりながら、瞳には嬉しそうな光を宿し、レイトキを見つめ返していた。アルビテトはその様子を見て、少しだけ複雑ながらも穏やかな笑みを浮かべ、静かに見守っている。レイトキはまだ顔を赤らめながら、少し言い訳がましく、でも素直な気持ちを続ける。

「アルビテトは、からかいが多すぎるからな…。だから、もし付き合うとしたら…って、そういうのは、ちょっとまだ想像がつかないっていうか…」

アルビテトは一瞬ぴくりと眉を動かすが、すぐに柔らかく笑い、レイトキを見つめ返す。

「ふふっ、そう。確かに私はいつもからかってばかりだものね。でも、それも全部、レイのことが気になっているからなのよ。今はそう思っていても、いつか気持ちが変わることだってあるわ。私は、その時を待っているから」レイトキはその言葉に、ますます照れて頭を掻きながらも、「あ、ああ…、その…、そう言われると…」と、言葉を詰まらせてしまうのだった。星玲奈は真剣な面持ちで、はっきりと感じたことを言葉にする。

「確かにアルビテトさんって、どこか不思議な感じがするだよね。『審判の歯車』という立場なのに、レイトキさんにはすごく肩入れしているし、その上でもっと親しくなりたいって、狙って行動しているのが分かるというか…」アルビテトは少しだけ目を見開き、それから柔らかく笑みを浮かべて認める。

「よく見ているわね。その通りよ。私は審判としての役割も持っているけれど——それ以上に、レイのそばにいたい、レイを支えたいと心から願っているの。だから、あえて近づき、あえて関わり、あえてからかったりもするの。それが私なりの、レイとの向き合い方なのよ」レイトキは照れくさそうに頬を掻きながら、でもその言葉をしっかりと受け止める。

「アルがどれだけ俺のことを想ってくれているか、なんとなくだけど、分かってはいるんだ。だから、その……悪い気はしてない」星玲奈はそのやり取りを聞いて、静かに頷く。

「そうなんだね…。みんなそれぞれ、レイトキさんのことを想って、自分なりの関わり方をしているんだなって、よく分かった」久美子ははっとしたように声を上げ、鋭く核心を突く。

「あれ!? 私たち、星玲奈の前では『歯車』なんて言葉、一度も出してなかったはずなのに…! どうして知ってるの? やっぱりアンタも、歯車の一員なの?」星玲奈は少しだけはにかみながらも、真っ直ぐに頷き、隠していた事実を打ち明ける。

「うん、実はそうなんだ。私は『変異と望星の歯車』なの」その言葉を聞いた場の空気が一瞬静まり、レイトキは驚きを隠せず、ゆっくりと前に踏み出す。

「そうだったのか…。だから、初めて会った時からどこか似た気配がしたんだな。同じ歯車として、俺たちと同じ運命を背負っているんだな」アルビテトも静かに頷き、納得したように告げる。

「『望星の歯車』…。星の名を持つその役割は、未来を照らし、道を示すもの。あなたが来たことで、ようやく全ての歯車が噛み合い始めるのかもしれないわね」星玲奈は力強く、そして優しく言葉を続ける。

「私はまだ何も分からないことだらけだけど…、レイトキさんたちと一緒に、自分の役割を探して、ちゃんと果たしていきたい。どうか、これからもよろしくお願いします」打ち上げの賑やかな声が背後に遠ざかる。レイトキは物音を立てずに事務所を抜け出し、夜の闇の中、ストレンジプレデターが使用していた廃棄施設へと足を向ける。

「(仲間たちには言えない。今はまだ、この目で確かめなければならないことがある。アザルトスは倒したが、ヴァルテンの残党、そしてマズミの言葉、星玲奈の秘密……まだ、全てが繋がっていない気がするんだ)」冷たい風が襟元をすり抜ける。手にはマルチブレイカーを隠し持ち、警戒の視線を周囲に巡らせながら、かつて多くのデータと実験体が消された場所へと、一歩一歩踏み入れていく。錆びついた鉄扉をこじ開け、施設の奥へと進むレイトキ。埃をかぶった廃棄物の山の奥、不思議と傷一つない台座の上に、それらは安置されていた。古代より伝わる堅牢な素材で作られた、機械仕掛けの冠。歯車と紋様が複雑に組み合わさり、触れれば微かな振動と共に光が浮かび上がる。そして同じ素材で鍛えられた杖。先端には小さな歯車が埋め込まれ、それ自体が力の流れを操るかのようにゆっくりと回転している。さらにその脇には、重厚な法衣。布地にも無数の刻印が施され、身に纏えばあらゆる干渉から身を守るかのような、厳かな気を放っていた。

レイトキは息を呑み、そっと冠に手を伸ばす。

「これは……クリラトンの伝承に伝わる、『歯車の守護者』の装具か? なぜ、こんな廃棄施設に隠されていたんだ?」その瞬間、杖の歯車が鋭く回転を上げ、法衣の紋様が一斉に青白く輝き出す。まるで彼の来訪を知り、主を迎えるかのように——。低く、しかしどこか懐かしく響く声が、施設全体に穏やかに満ちる。どこから発せられたのか定かではないが、まるで装具そのものが語りかけてくるかのようだ。

「待っていたのだよ、相応しき者が現れるのを。長き時、この場にて、歯車の運命が再び廻り始めるその時を——」レイトキは身構えつつも、その声に敵意を感じないことに気づき、静かに問いかける。

「お前は……誰だ? この装具は、いったい何のためにここにある?」声は変わらず、厳かに答える。

「我はこの装具に宿りし、古き記憶の番人。これらはかつて、全ての歯車を束ねし者が纏うべき、『統べし者の装具』。お前が三つ目の電脳獣を宿し、歯車の中心として選ばれし存在であることを、今、この身が証明している」冠が一層輝きを増し、杖の歯車がレイトキの呼吸に合わせて回転する。法衣もまた、彼を招き入れるかのように、そっと裾をなびかせた。レイトキが手を伸ばした瞬間、冠・杖・法衣が同時に激しく輝きだし、無数の光の粒となって溶け合う。それらは一つの丸い蒼く澄んだオーブへと姿を変え、ゆっくりと彼の胸元へと吸い込まれていく。抵抗する間もなく、オーブはそのままレイトキの体内へと完全に溶け込み、消えた。

「っ…!」全身を駆け巡るのは、冷徹な機械の律動と、古き想いが混ざり合ったような力。痛みはなく、むしろ自分の一部になったかのように、すっと馴染んでいく。心臓の鼓動に合わせ、内なる歯車が一つ、また一つと確かに噛み合い、回り始めるのが分かる。番人の声が最後に、彼の心の奥底に直接響く。

「これより、その力はお前の一部となる。歯車を統べ、二つの世界を守るその時、この装具は再びその姿を現すだろう。さあ、行け——選ばれし者よ」レイトキは胸に手を当て、新たに宿った力と責任をしっかりと感じ、静かに頷いた。

「ああ。必ず、俺の手で全てを守ってみせる」光が静まり、レイトキが胸に手を当てて佇んでいると、背後の影から穏やかな気配が現れる。

「やはり、あなたが選ばれましたね」ドライが静かに姿を現し、真っ直ぐな視線でレイトキを見つめる。その眼差しには、確信と、そして幾許かの安堵が宿っている。レイトキは驚きつつも、落ち着いて問いかける。

「ドライ……。お前は、こうなることを前から知っていたのか?」ドライはゆっくりと頷き、厳かに告げる。

「この場所も、この装具も、そしてあなたがここに来ることも——全ては歯車が定めた道筋。ただ、それを自らの選択で切り開けるかどうかは、あなた次第でした。そして、あなたはその資格を、自らの手で掴み取ったのです」レイトキは胸の奥に宿った力を確かめるように握りしめ、力強く言い放つ。

「ならば、俺はこの力を、誰かを犠牲にするためじゃなく、誰かを守るために使う。それが、俺の選択だ」ドライは微かに笑みを浮かべ、深く頷く。

「その言葉、忘れないでください。さあ、仲間たちが待っています。新たな歯車の刻を、共に進み始めましょう」レイトキは瞳に強い決意を宿し、はっきりと言い切る。

「俺はクリラトンとクリプトンを、一つに繋げてみせる! そして、これまで犠牲になってきた実験体のみんなが、安心して過ごせる場所を必ず作る!」その言葉に、ドライは深く頷き、その決意を真っ直ぐに受け止める。

「それこそが、あなたが歯車の中心として選ばれた意味。二つの世界の架け橋となり、誰一人取り残さない未来を——その新たに得た力で、切り拓いてください」レイトキは胸に宿る力を確かめるように握りしめ、力強く歩き出す。

「ああ、必ずな! 誰もが笑って暮らせる世界を、俺の手で作る!」レイトキは警戒を緩めず、次なる廃施設の鉄扉をゆっくりと開ける。

「まだ何か、残されている可能性がある。見逃すわけにはいかない」薄暗い空間には、無数の破損した装置、書き損じた実験記録、そして途中で放棄されたカプセルが転がっている。埃っぽい空気の中、微かに機械の稼働音が響いているのに気づき、レイトキはマルチブレイカーを構えて慎重に奥へ進む。

「ここにも、多くの人の記憶や、未来が隠されていたんだな…。一つ残らず確かめて、必ずみんなの元へ返してやる」胸のオーブが微かに光り、彼の決意に応えるように鼓動する。何が待ち受けていようと、その足は止まらない。廃施設の薄闇から、金髪をなびかせたフィーアが姿を現し、真っ直ぐな視線で問いかける。


「あちこち調べ回っていますけど、いったい何のために、そこまでするんですか?」


レイトキは一瞬もためらわず、胸に秘めた想いをはっきりと告げる。

「俺は、ここに関わったすべての人を救いたいからだ。そのためなら、どんな手間も、どんな危険も厭わない。ただ一つ——誰かを犠牲にすることだけは、絶対にしない」


フィーアはその言葉を聞き、険しかった表情が少しだけ和らぐ。

「犠牲を強いるのが当たり前だと思われてきたこの場所で、それを言い切れるなんて…。あなたは、本当に何もかもを変えようとしているんですね」

レイトキは静かに頷き、新たな力が鼓動する胸に手を当てる。

「ああ。だからこそ、まだ隠されているもの、奪われたままのものを、一つ残らず見つけ出す。手伝ってくれるか?」フィーアは真剣な面持ちで、はっきりと提案する。

「あなたがそこまでやるというのなら、きちんとした研究施設のような拠点を持ったほうがいいのではないでしょうか。ストレンジ・プレデターからは当然与えられませんが、脱退したあの人——キキョウさんに頼めば、譲ってもらえる可能性がありますよ」レイトキは驚いて目を見開き、問い返す。

「お前、キキョウさんのことを知っているのか?」フィーアは当然だと言わんばかりに頷き、説明を加える。

「当たり前です。彼女は『キュリオシティ』の一人ですから。キュリオシティは組織の幹部にあたる存在であり元々三人いたと言われていますしね」

レイトキはその言葉を噛みしめ、手応えを感じて力強く頷く。

「なるほど……。あのキキョウさんがそういう立場だったのか。ならば、彼女なら確かに必要なものを託してくれるかもしれない。——情報をありがとう、フィーア。早速、彼女に会いに行く」フィーアははっきりと告げる。

「『キュリオシティ』に該当するのは、マズミ様、キキョウさん、そしてエピデンドラムの三人です」レイトキは思わず息を呑み、これまでの出来事が一気に繋がるのを感じる。

「そうだったのか……。三人とも、これまで俺たちの前で、それぞれの立場で道を示し、手を貸してくれていた。みんなが同じ幹部だったなんて——」フィーアは厳かに続ける。

「三人それぞれに役割があり、それぞれの思惑で今の状況を動かしてきました。だからこそ、キキョウさんはあなたの志を理解してくれる可能性が高いのです」レイトキは心の中で決意を新たに、力強く頷く。

「ああ。ならば、彼女に会って、直接俺の想いを伝えてくる。——教えてくれて、ありがとう、フィーア」フィーアは事実を淡々と、しかしはっきりと告げる。


「こうして情報をあなたに伝えたのは、マズミ様のご指示だからです。彼女の真の目的は、歯車——あなたたち自身が、自らの力で成長していくことにありますから」


そして他の幹部たちの立場も、整理して示してくれる。

「対して、ユーカリ様の真意は今もって不明です。クラッスラ様は経済という基盤を潤し、組織全体の活動を支えることを役割としています。そしてリンドウ様は、都合の悪い事実や危険な要素を処理し、表向きの秩序を守ることに徹している——そう見て間違いないでしょう」レイトキはその言葉を胸に刻み、これまでの一つひとつの出来事が、それぞれの思惑のもとで動いていたことを理解する。

「マズミさんは、俺たちが自分の足で立ち、自分の選択で進むことを望んでいるのか。そして他の者たちは、それぞれ違う方向から、この状況に関わっている……」フィーアは静かに頷く。

「だからこそ、あなたの選択が、これからの未来を決めるのです。誰の指示でもなく、あなた自身の意志で——」レイトキは強く拳を握りしめ、決意を新たにする。

「ああ。俺は俺の道を行く。誰一人犠牲にせず、全てを救う道を、この手で切り開いてみせる」フィーアはしばらく、レイトキの瞳をじっと見つめていた。そして、心の底から感じ取ったことを、穏やかに、だがはっきりと言葉にする。

「あなたの瞳は、とても澄んでいますね。その奥に、すべてを成し遂げようとする揺るぎない思いが、はっきりと伝わってきます」レイトキは少しだけ照れくさそうに頬を緩め、それでも真っ直ぐに返す。

「そう言ってもらえると、本当にありがたい。俺はただ、自分が見た地獄を、これからの誰にも味わわせたくないだけなんだ。そのために、今ここにいる」フィーアは微かに笑みを浮かべ、一歩下がって道を開く。

「ならば、その志は必ずや届きます。さあ、キキョウさんのもとへ行きましょう。あなたの歩みを、私も微力ながら支えます」レイトキは力強く頷き、新たな一歩を踏み出す。

「ああ、ありがとう。共に行こう」レイトキがキキョウの前に姿を現すと、彼女は何も驚いた様子もなく、先に言い当てる。

「レイトキ、どうした? もしかして、専用の実験研究開発所が欲しいのか?」レイトキはためらうことなく、はっきりと答える。

「はい、そうです。どうしても必要なんです」キキョウは微かに笑みを浮かべ、頷く。

「お前のことだから、いつか必ずそう言いに来ると思っていたよ。ちょうど使われずにいる施設がある。マタラシティのセントラルエリアだ。さあ、ついてきな」彼女はすぐに案内を始める。たどり着いたのは、レイトキの自宅と、何でも屋「クロノギア」の事務所を結ぶちょうど中間地点、人目につきにくい裏通りに佇む、頑丈な造りの建物だった。キキョウは扉を開けながら告げる。

「ここなら、お前たちの拠点からもすぐに駆けつけられる。外部からの目も届きにくく、設備も以前のまま残っている。誰の許可もいらない、お前たちの自由に使え。ただし——この場所が、お前の描く未来の礎となることを願っているよ」レイトキはその建物を見上げ、胸に新たな決意を刻み、深く頭を下げる。

「ありがとうございます。ここを、誰もが安心して過ごせ、二つの世界を繋ぐための、確かな拠点にしてみせます」

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