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EPISODE2-13【目覚める】

久美子を先頭に、仲間たち全員が一歩も引かず、闇の彼方に向かって声を一つに揃える。

「君がいない世界なんて、絶対に嫌だ! だから——私たちが多少強引でも、必ずここから引きずり出してみせる!」ジャンヌの聖光、アルビテトの力、リジェの気迫、ホワンの絆——全員の想いが一つの光の帯となり、渦巻く闇に真っ直ぐ突き刺さる。

「一人で終わらせるなんて、許さない! あんたの歩幅で、みんなで進むんだ!」その光が、レイトキを閉じ込めていた絶望の殻を、ゆっくりと、だが確かに溶かし始めた。ジャンヌは天を仰ぎ、両手を高く掲げて力の限りに唱える。

「聖なる力よ、邪悪なる力を相殺せよ! ホーリーオーダー!」まばゆいばかりの光の奔流が闇の渦に叩きつけられ、黒い靄はみるみる削り取られていく。だが、光が切り崩したその隙間から、今まで閉じ込められていた負の感情が歪な姿を得て、次々と悪夢の怪物となって這い出してくる。

「光で消せないなら…! 力を合わせて、一つずつ砕くしかない!」

久美子たちは武器を構え、押し寄せる怪物たちに向かって踏み出した。アルビテトは大きく腕を振り上げ、重く澄んだ声で叫ぶ。

「裁きの鉄槌よ、今ここに顕現せよ! ジャッジメントハンマー!」

天から轟音と共に巨大な光のハンマーが降り立ち、彼女の手に収まる。そのまま渾身の一撃を振り下ろすと、周囲の悪夢の怪物は複数体まとめて跡形もなく粉々に砕け散り、闇の欠片となって消えていった。リジェは両手を広げ、地を蹴って詠唱を叫ぶ。

「炎よ、我が力よ、それは邪悪を焼き払う力なり!燃やせ!」瞬く間に灼熱の炎の帯が渦を巻き起こり、押し寄せる悪夢の怪物たちを一帯ごと包み込む。黒い体は炎に触れると悲鳴を上げて溶け落ち、闇の残り滓まで跡形もなく焼き尽くされていく。久美子は天に向けて手を差し伸べ、力強く命じる。

「元素を司る者よ、同盟を結びし久美子が命じる——ミラ・マクスウィル!」詠唱の終わりと共に、風と光が渦巻く中から姿を現したのは、金髪をなびかせ、赤と青を基調とした精霊装束を身にまとう女性精霊・ミラ・マクスウィル。彼女は両手に元素の刃を構えると、そのまま一直線に闇の渦へと切り込み、幾重にも重なった絶望の壁を一撃で鮮やかに切り裂き、光の道を開いた。ミラの刃が最後の層を断ち切った瞬間、渦全体が鈍い音を立てて弾けた。黒い靄、悪夢の残滓、絶望の壁——それらは一斉に光に溶けるように消え去り、辺りはあっという間に澄んだ空間へと戻っていく。闇の渦は、完全に消滅した。そしてその中心には、仲間たちが開いた光の道を辿り、ようやくレイトキがゆっくりと瞼を開ける姿があった。レイトキは体を起こし、まだぼんやりとした視線で仲間たちを見回し、声が震えながら問いかける。

「なんで…、なんでそこまでしてくれるんだよ…? 俺たちが出会ってから、まだそんなに時間も経ってない。関係なんて、まだまだ浅いはずなのに…」久美子が真っ先に歩み寄り、優しく、だからはっきりと言い返す。

「時間の長さなんて、関係ないでしょ。心で選んだ絆に、期限なんてないんだから」アルビテトも頷き添える。

「お前がどれだけ自分を低く見ても、私たちが見たお前の本質は嘘をつかない。だから、それを信じただけだ」リジェも拳を軽く胸に当てる。

「浅かろうが深かろうが、これから一緒に作っていけばいいだけの話なんだよ! さあ、まだまだ道は続いてるわ!」レイトキは歯を食いしばり、隠し続けた本音を、やっと声にする。

「怖いんだ…! 俺は…仲間を、大切な人を傷つけたり、失ったりするのが、本当に怖いんだ…!」拳を強く握りしめ、肩が小さく震える。

「俺は『包括の歯車』だ。何もかもを受け入れ、飲み込んでしまう性質だ。それがいつか、お前たちを壊してしまうんじゃないかって…そればっかり考えてたんだ…!」久美子はその震える拳を、両手でそっと包み込む。

「それでもいい。怖いって言ってくれることのほうが、ずっと嬉しいよ。全部一人で抱えるより、一緒に怖がりながら、一緒に守っていけばいいんだから」リジェは胸を張り、いつもの明るさで力強く言い放つ。

「もし万が一、壊しちゃいそうになっても、私の力で絶対に直してあげるわよ! だって、私が持ってる力は、そのためにあるんだから!」そしてにっこり笑い、レイトキを真っ直ぐ見据えて付け加える。

「それに忘れたの? 私たち、簡単に死んだり消えたりする存在じゃないんだよ! だから、そんなに心配しなくても大丈夫なの!」アルビテトは静かに、だが揺るぎない眼差しでレイトキを見つめ、言葉を紡ぐ。

「怖いと感じる心は、決して弱さなんかじゃない。むしろ、強くなろうともがき、大切なものを守ろうとする証だよ」一歩近づき、真っ直ぐに告げる。

「怖さを知らない者は、平気で人を傷つけ、壊してしまう。だけど、レイは違う。その痛みを抱えているからこそ、誰よりも優しく、誰よりも本気で向き合えるんのよ」ホワンは柔らかくも真剣な眼差しでレイトキを捉え、はっきりと言い聞かせる。

「レイトキさんは、本当に心優しい方なんですよ。だからこそ、全部一人で抱え込んで、一人で悩んでしまう癖がついてしまったんです」彼女は手を胸に当て、仲間全員の想いを代弁するように続ける。

「だから、どんなに重いことでも、どんなに怖いことでも——私たち仲間を、もっと頼ってください。一人で背負いきれないものは、みんなで分け合えばいいんですから」レイトキは瞳に揺らぎながら、胸の奥につかえていたものがゆっくりと溶けていくのを感じ、力強く頷く。

「そっか…。俺は、独りじゃなかったんだな。そうだ、ちゃんと、仲間が側にいてくれるんだ」長い間自分を閉じ込めていた絶望の殻が、完全に砕けた。肩の荷が下りたように笑みがこぼれ、握りしめていた拳を、今度は前へと差し出す。

「ありがとう…。これからは、ちゃんとお前たちを頼る。一緒に、進んでいきたい」ソムニウムは骸骨の顎をカチリと鳴らし、最後のあがきをするように鋭く叫ぶ。

「惑わされるな! 人はいつか必ず裏切るものだ! 今は都合のいい言葉を並べているだけに過ぎない! 裏切られた時の苦しみは、他の何ものにも代えがたいほどに辛いんだぞ!」レイトキは一歩も引かず、その声を正面から受け止め、全身で反論する。

「違う! すべての人がそうだなんて決めつけるな! 俺を信じ、支え続けてくれる者だって、ちゃんとここにいる! お前の絶望の思い通りになんか、絶対にさせてやらない!」その言葉には、これまでの迷いが嘘のような、確かな絆の重みが宿っていた。レイトキがぱちりと瞼を開け、現実の空間に意識が戻った瞬間——先ほどの威勢はどこへやら、ソムニウムは地面に崩れ落ち、苦しそうに転げ回る。

「クソ、クソ、クソっ! こいつの心を喰らえば、僕は僕は完全になれたのに…! 最高の糧だったのに…!」

骸骨の頭部がガチガチと鳴り、淡紫の体は力が抜けて透け始め、黒い靄もぼろぼろと零れ落ちていく。レイトキはゆっくりと体を起こし、仲間たちと肩を並べ、その姿を冷徹に見据えていた。レイトキは力強く笑みを浮かべ、仲間たち一人ひとりの顔を見回しながら、はっきりと告げる。

「残念だったな、ソムニウム! 仲間が、そして大好きな人が、俺をしっかりこの世界へ引き戻してくれたんだ!」声には迷いなど微塵もなく、心からの感謝が込められている。

「ジャンヌ、アルビテト、リジェ、ホワン、そしてクーちゃん——君たちのおかげで、俺はまた人を信じる強さ、誰かを愛おしく思う心を取り戻せた。本当に、目覚めさせてくれて、ありがとう!」その言葉が、ソムニウムの絶望の説得を完全に打ち砕き、これから共に歩む絆の証となった。レイトキはソムニウムを真っ直ぐに見据え、揺るぎない声で言い放つ。

「もう、お前の思う通りには、絶対に行かないぞ!」今までの迷いも弱さも、すべて受け止めた上での強い決意がその瞳に宿っていた。ソムニウムの誘惑も絶望も、もう彼を動かすことはできない。ソムニウムはかすれた声で、重い事実を突きつけるように告げる。

「一つだけ教えてやる…。僕は、お前をもとに生まれた存在なんだ」その言葉に、レイトキも仲間たちも息を飲む。ソムニウムは骸骨の頭をゆっくりと傾げ、続けた。

「お前が捨ててきた、抑えつけてきた絶望や後悔、孤独——それらが形を得て、僕という存在になった。僕はお前の闇そのものなんだよ」レイトキは一歩前に踏み出し、怒りと決意を込めてはっきりと言い返す。

「俺を侮辱するな! たとえ元が俺の一部だったとしても、お前と俺は全然違う存在なんだ!」拳を強く握り締め、ソムニウムを真正面から見据える。

「お前は俺が捨ててきた闇だ。だが俺は、その闇も受け止めた上で、前に進もうとしている。同じ出発点だからこそ、行き着く先は全く別なんだ!」ソムニウムは乾いた笑いを響かせ、骸骨の顎をガチリと鳴らす。

「そうか、僕を否定するのか…。まあいいさ、その拒絶ごと、全部受け止めてやるよ…!」透けかけた体から最後の力を振り絞り、絶望の声が空間を切り裂く。

「だがな——もう、この世界も、お前たちの戯れも、全部終わりだ!!」

黒い衝撃波が周囲に弾け、夢の空間そのものがひび割れ始めていく。レイトキは声の限りに叫び、両腕を広げて崩れゆく世界を庇うように構える。

「そんなことはさせない! 夢というのは、叶えるために、掴み取るためにあるものだ! だからお前なんかに、この世界を壊させはしない!」その言葉には、自らが歩む意味と、守るべき場所への確かな誓いが込められていた。

「クリプトンも、クリラトンも——絶対に壊させるもんか!」

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