EPISODE2-10【明らかになること】
レイトキが先頭に立ち、奥へと続く扉を開くと、空間は一変する。薄暗い廊下、すりガラスの窓、黒板の残る壁——かつての校舎のような風景が広がり、そのあちこちに、学校の七不思議に語られる姿を模したビヨンダーたちが、ひっそりと佇んでいた。宙に浮かぶ人体模型、階段の数が増えたり減ったりする影、鏡の向こうからこちらを窺う目、音もなく歩く上半身だけの影——それらはいずれも、この迷宮の歪みが記憶の噂を取り込んで生まれた存在だ。
「これが…元凶の手先か」レイトキは足を止め、全員を手で制しながら低く告げる。
「人の怖れや噂を糧にしているらしい。決して怖れを見せず、連携を崩さずに行くぞ!」七不思議のビヨンダーたちが一斉にこちらを向き、不気味な響きを上げながら、ゆっくりと包囲を狭め始めた。レイトキたちが最奥へと続く扉に足をかけた瞬間、空気がふわりと和らぎ、金色と水色の柔らかい光が床から湧き上がるように広がる。その光が集まって輪郭を結び、黒い衣をまとい、風のように軽やかな姿をした精霊が、そっと宙に浮かび上がった。
「よくぞ、ここまで辿り着いた…」
鈴が鳴るような澄んだ声が、心の奥に直接響くように伝わってくる。精霊は悲しみと安堵をない交ぜた面持ちでレイトキを見つめ、そして仲間たち一人一人をゆっくりと見渡す。
「この迷宮は、人々の忘れられた想いと、拭いきれない怖れが歪んで生まれた場所。そして今、その歪みを根元から濁している存在が、すぐそこにいる」精霊は白く細い指を、さらに奥へ続く暗がりに向けると、レイトキの胸の輝きを見て、微かに微笑んだ。
「だが、心で力を選び取ったお前たちなら、きっとこの場所を、そして囚われた者たちを救えるはずだ。わたしも、わずかな力を貸そう」そう言うと精霊は光の羽を翻し、一行の剣と盾、そして心に、清らかな加護の光を宿してくれた。レイトキが一歩前に出て、精霊を真っ直ぐ見つめ呼びかける。
「待ってくれ。君、ビヨンダードの精霊だよね。もしよければ、契約を交わすことはできないだろうか?」精霊はふわりと浮かぶ動きをぴたりと止め、透き通った瞳を大きく見開く。
「結ぶことはできる。だけど、ボクはビヨンダードの精霊。クリプトンの者と契約すると、力の均衡が崩れ、双方に代償や負担がかかる——決してノーリスクとはいかないんだ」その言葉を聞いても、レイトキはたじろぐことなく、はっきりと告げる。
「安心しろ。俺はもともとから半分、クリラトンの因子を宿している。普通のクリプトンの者とは違うから、均衡の歪みも少ないはずだ。それに、代償を恐れていては、誰も救えない」精霊は驚き、そして彼の胸に宿る二つの力の調和を見て取ると、少し考えるように頷き、やがて柔らかく微笑んだ。
「なるほど…。二つの世界の狭間で、心一つで道を選び取った者なら、確かに受け入れられるかもしれない。ならば、ボクもその覚悟を受け止めよう」精霊は光の手をレイトキの掌に重ねる。二つの異なる力が、絆の証として、ゆっくりと一つに溶け合っていった。精霊は光の輪が揺らめくように微笑み、己の名を告げる。
「ボクの名はレセプト。時空の流れと、ありとあらゆる属性の力を司る存在だ」レイトキは胸を張り、力強く名乗り、契約の言葉を響かせる。
「俺はレイトキ・ジョースターだ! この迷宮の歪みを正し、囚われた者たちを救うため、その力を貸してくれ! レセプト!」言葉と共に、二人の手の間で七色の光が爆ぜ、時空の波動が周囲の空間を穏やかに包み込む。契約は完了し、レセプトの力がレイトキの心とZXファクターに、新たな可能性として刻まれた。レイトキたちが最奥の広間へ踏み入ると、薄闇の中心で、青いインナーの上に真っ白な白衣をまとった男が、両手を背後に組んで佇んでいた。彼は一行を見ても動じず、低く愉しげな笑い声を響かせる。
「フフフフフ…! よくぞ、この迷宮の最深部まで辿り着いたものだ。褒美として、真実を教えてやろう。我が名はディーガスト。ヴァルテン・アグレッションの研究開発長を務める者だ!」その名を聞いた瞬間、レイトキはあらゆる違和感が一つに繋がるのを感じ、はっきりと言い当てる。
「ヴァルテン・アグレッション…か。なるほど、やはりそうだったのか。いやはや、ずっと可笑しいと思ってたんだ。クリラトン側の者が、これほど何度も不自然にクリプトンの領域に侵入してくるなんて、本来ありえない。やっぱり、こいつらの背後にはこうした存在が糸を引いていたんだな」ディーガストは口元を歪めて嘲笑い、白衣の裾を翻す。
「ふん、気づくのが遅すぎたな。二つの世界の境界を利用し、歪みを実験台に、ZXファクターも、お前という特異な個体も——全ては我々の研究のための材料に過ぎんのだ!」空間がさらに大きく歪み、彼の周囲には無数の実験データの残光と、歪んだエネルギーの塊が次々と姿を現し始めた。最終決戦の火蓋が、今切って落とされる。久美子は少し戸惑いながらも、はっきりと問いかける。
「レイトキ、コイツらの背後の存在、前から気づいてたの? なのに、どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」レイトキはディーガストから目を離さず、冷静に答える。
「よく考えろ。確かな証拠もない不確かな情報を、先走って伝えるのはかえってみんなを混乱させるだけだ。確信を得るため、ずっと裏を探ってたんだ。それに、ストレンジ・プレデターも、あいつらも——本当に質の悪いことをしてくれたもんだよ」彼の言葉には、推測が確信に変わった重みと、悪意ある計画に対する怒りが滲んでいた。アルビテトが要点をまとめ、はっきりと確かめるように告げる。
「つまり、レイが言いたかったのは、ストレンジ・プレデターとヴァルテン・アグレッションが、裏で手を組んでいたってことだよね?」レイトキは厳しい表情で大きく頷き返す。
「そうだ。これまでの一連の事件、全部が別々の出来事じゃない。二つの組織が互いに利用し合いながら、この迷宮も、ZXファクターも、俺たちの動きさえも、全部計画の上で操っていたんだ」その言葉を聞いた瞬間、ディーガストは大きく声を上げて笑い、認めるように両手を広げた。
「フフフフフ! よくぞ見抜いた! その通りだ! 全ては我々の完璧なる実験のための、長い長い布石に過ぎなかったのだ!」レイトキはディーガストの嘲笑を正面から受け止め、これまでの謎を一つずつ紐解くように、はっきりと言い切る。
「そうだ。まず支配の足がかりとして、クリプトンの負の側——すなわちストレンジ・プレデターが動き出した。古くから伝わるクリラトンの伝説に目をつけ、因子生命体まで創り出し、最初にこちら側へのゲートを開いたんだ。その後、偶然か計画かは知らないが、ヴァルテン・アグレッションの創設者と接触した」彼は言葉を続け、同盟の裏側を暴いていく。
「ストレンジ側は『実験が成功した暁には、クリプトンの地をお前たちにも与える』と約束した。ただし、あくまで対等な関係であることを条件にな。そしてヴァルテンはそれに応え、中立を標榜していたキクリさんたちの技術までも引き出して、全ての準備を進めた——そういうことだろう?」レイトキは拳を強く握り締め、確信を込めて付け加える。
「最初からずっと、妙だと思ってたんだ。ストレンジ・プレデターだけの力じゃ、ここまで大掛かりで、世界の理にまで踏み込むような所業は、到底できはしないってな!」その推測が全て的を射ていたことに、ディーガストの笑みはやがて冷たい確信へと変わり、広間全体が重苦しい沈黙に包まれた。ディーガストは感心したように目を細め、改めてレイトキを値踏みするように見つめ、甘い言葉を並べる。
「よくぞここまで突き止めたものだ! レイトキ、お前の頭脳、洞察力、そして仲間を率いる統率力、宿した能力の水準——どれを取っても極めて特級だ。どうだ? 私達の仲間にならないか? 創設者様に直々に話を通し、この組織の中でも最高クラスの地位に就けさせてやる。それに、お前が気に入っているそこの連中も、望むなら全員連れてくることを許そう」彼は白衣の胸元を指し、あたかも栄光が約束されているかのように告げる。だがレイトキは、その申し出を鼻先で一蹴するように、きっぱりと拒み返す。
「お前たちのやり方で手に入れる地位や力なんて、俺には何の価値もない。人の心や命、世界の絆を実験材料にするような連中と、同じ場所に立つつもりは毛頭ない。俺が率いるのは、お前たちの下僕じゃない——互いを信じ、共に闘う仲間たちだけだ!」その言葉が響いた瞬間、レセプトの光がレイトキの周りで一際強く輝き、仲間たちも一斉に武器を構え直す。交渉の余地は、完全に消え失せた。ディーガストは声を潜め、にやりと口角を上げて脅しをかける。
「本当にいいのですか? 貴方の身に宿るZXファクター——あれはそもそも、他ならぬ我々がこの地へ持ち込んだものなのですよ! これがどういう意味か、言われなくても分かるでしょう?」彼の言葉は「その力の根源は我々にある。逆らえば、力そのものを奪われ、制御されても文句は言えない」という威嚇だ。だがレイトキは一歩も引かず、むしろ胸の奥の輝きを強め、はっきりと返す。
「持ち込んだのはお前たちでも、今この力を選び、受け止め、使い道を決めているのは俺自身だ! 誰が運んだかなんて関係ない。俺の心が、俺の絆が、この力を俺のものに変えたんだ!」その言葉に応えるように、ZXファクターの紫黒い光がレセプトの加護と混ざり、ディーガストの支配の気配をはねのけるように、力強く広がった。ディーガストは顔を歪めて怒鳴り、白衣のポケットからリモートスイッチを取り出して強く押し込む。
「愚かな! だったら、ここで粉々になれ!」床が激しく軋みながら開き、二足歩行の巨体メカが姿を現す。両肩には連射式バルカン砲、両腕の先端には高速回転する巨大な丸鋸が備わり、鉄の重圧と機械の咆哮が広間を満たす。ディーガストはその機体中央のコックピットへと素早く乗り込み、装甲を閉じると同時に、機体の赤い照準が一行めがけて一斉に光り輝いた。
「実験体の分際で、我々の意志に逆らう代償を思い知れ!」丸鋸が甲高く回転音を上げ、バルカン砲が弾倉を叩く音が響き渡る——最終決戦の幕が、ついに上がった。レイトキは怒りを込めて一喝し、前に飛び出す。
「黙れ! 侵略者が! 正々堂々とこの地を踏みにじるな! 必ず追い返してやる!」彼が手にしたマルチブレイカーが大きな斧の姿へと変形し、光の刃を周囲にまき散らしながら振り下ろされる。巨体メカが丸鋸の腕で迎え撃とうとするが、その一撃はあまりにも鋭く——金属の軋む音と共に、まず片腕が根元からきれいに斬り落とされた。久美子は素早く機体の死角へ回り込み、背中から光の多腕を一斉に展開させる。
「こっちだよ!」八本の腕が一斉に重みを乗せて振り下ろされ、装甲の隙間もろとも分厚い鉄板をめがけて叩きつける。鈍い衝撃音が響き、巨体メカの側面がぐにゃりとへこみ、バルカン砲の照準が大きく狂った。ディーガストは機体を激しく揺らしながら怒鳴り散らす。
「ムキィーーー! 小癪なっ、この程度でいい気になるなよ!」彼は周囲に飛び散った瓦礫や金属片を一気にデータ変換し、斬り落とされた腕を瞬く間に再構築。さらに機体の背面装甲がめくれ上がり、無数の鋭い棘が生えたような姿へと変形し、攻撃範囲と迎撃能力を大幅に高めた。
「どんなに傷つけても、我々の技術があれば何度でも蘇る! 絶望しろ!」再び丸鋸が唸りを上げ、棘の先端までもが禍々しく光り輝いた。久美子は素早く状況を切り替え、声を張り上げて宣言する。
「ならば、戦法を変える! 回復や牽制は一旦脇に置き、一撃必殺のスキルに特化するわ!」彼女の周囲に光の輪が幾重にも重なり、多腕の一つ一つが一点集中の破壊エネルギーを帯び始める。
「みんな、隙を作って! 再構築が追いつかないほど、根本から叩き潰す!」リジェは手を高く掲げ、真っ赤に燃え上がる炎の柱をコックピットめがけて一直線に放つ。
「これでも食らいなさい!」炎が直撃した瞬間、機体の装甲が熱で赤く変色し、内部からディーガストの叫び声が漏れ響く。
「ドワッ、アチチチチ! 熱い、熱いぞ! 貴様らァ!」彼は焦りながら冷却システムをフル稼働させるが、その隙に機体の動きが一瞬大きく鈍った。アルビテトは両手を広げ、清らかな光を天に掲げて力強く詠唱する。
「清らかなる守りの力よ! 害する者の動きを、ここで完全に封じよ! ディヴァインチェーン!」光の鎖の次々と噴き出し、棘だらけの脚部と腕部に巻きつき、巨体メカを床にしっかりと固定する。ディーガストがいくらエンジンを吹かしても、鎖は微動だにせず、再構築の動きさえも一時的に凍りつかせた。
「今だ! この隙に決めろ!」ディーガストはコックピット内で怒りを撒き散らし、力任せに叫ぶ。
「この程度で調子に乗るな! デーモン召喚!」
彼が手元の起動スイッチを叩くと、機体の背面から闇のスリットが開き、歪んだ紫黒いエネルギーの塊が次々と吐き出される。それらは瞬く間に牙と爪を持つ悪魔のような異形へと姿を変え、光の鎖を噛み砕き、一行の包囲を抜け出して襲いかかろうとする。
「実験で作り上げた最悪の歪みだ! こいつらもろとも、貴様らを喰い尽くさせる!」だが、闇の影が地面に触れるよりも速く、与太郎と斗愛が一歩前に踏み出る。
「任せろ!」与太郎が拳に気を込めて一閃すると、闇の群れは真っ二つに裂け、斗愛が放つ光の矢が一匹残らず射ち貫いていく。悪魔たちは断末魔の声も上げる間もなく、跡形もなく消え去った。
「そんな量、俺たちが相手になるまでもないぜ!」二人が肩を並べて構え直した瞬間、ディーガストの動きが初めて、はっきりと止まった。アルビテトは手をかざし、切れた鎖の残り光を呼び集めるように力強く詠唱する。
「壊れし聖なる鎖よ、今一度結び直し、この者の動きを完全に封じよ! リビルドディバインチェーン!」砕け散っていた光の欠片が一気に集結し、先ほどよりも一層太く強固な鎖となってメカの全身を巻き直す。棘をも飲み込み、関節を固め、再構築のエネルギーの流れまでも遮断して——巨体は完全に身動き一つ取れなくなり、コックピットからはディーガストの焦りの唸り声だけが漏れ響いた。アルカは天を仰ぎ、澄んだ力強い声で召喚の詠唱を響かせる。
「彼方より顕現せよ! 歪みし力の供給を断ち切りし、方舟の守護者よ! 現れたまえ、アークエンジェル!」 言葉の直後、天から黄金の光の柱が降り注ぎ、六枚の光の翼を広げた巨大な守護者の姿が現れる。アークエンジェルは一本の光の槍を掲げ、一切の迷いなく、鎖に固められたコックピットめがけて一直線に突き撃つ。
「ぐあああああ!」衝撃が機体全体を貫き、ディーガストの叫び声と共に、歪んだ制御信号が次々と途絶えていく。ゼロは両手に光の書を開き、力強く詠唱する。
「聖なる神なる書よ、我らに仇なす者の弱き点を、隠さず示したまえ! アナライズ・ブレイバル!」言葉と同時に書のページが光り輝き、無数の解析の光がメカ全体を走査する。やがて一筋の鮮やかな光が、機体の胸部中央——装甲の最も厚い奥に隠された、赤く点滅する一つの小さな部位を、はっきりと指し示した。
「あそこだ! 全ての動力と再構築を司る、心臓部たるコアだ!」レイトキはゼロが示したコアを睨み据え、隣の久美子へと声をかける。
「クーちゃん、ここは俺たち二人でトドメを刺すぞ!」久美子は力強く頷き、光の多腕を一斉に輝かせて応える。
「りょーかい! 全て任せて!」二人の視線が交わり、呼吸が完全に一つになった瞬間——レイトキはZXファクターとレセプトの力を剣に集中させ、久美子は一点に収束した最大の破壊エネルギーを両手に溜め込む。最終の一撃が、今まさに放たれようとしていた。レイトキは光の触手を伸ばして久美子をそっと包み込み、鎖に固められたメカのすぐ至近距離まで一気に駆け寄る。
「即席連携技!マルチブルショック!」触手から飛び出した久美子が、まず全ての光の多腕を渾身の力で振るい、一点集中の拳を連打してコアを覆う装甲を打ち砕く。続けてレイトキが大きく振りかぶったマルチブレイカー・アックスモードを、まさにその芯めがけて叩きつける——甲高い轟音と共に赤いコアが真っ二つに割れ、巨体メカは制御を失ってガタガタと崩れ落ちた。
「ドワーーーッ!!」 コアの破壊と同時にメカ全体が激しい閃光と共に大爆発を起こし、鉄の破片とエネルギーの煙が広間中に舞い上がる。機体は粉々に砕け散り、ディーガストは装甲から放り出され、そのまま地面にどさりと転がり出た。白衣は煤けて破れ、力尽きたように体を動かすこともままならない。
「ぐっ…、ありえない…、我が完璧なる機体が…」かすれた声が聞こえるだけで、もう反撃する気力すら残っていない様子だ。ディーガストは地に伏したまま、血を吐きながらも不敵な笑みを浮かべて告げる。
「だが、まあいい。この敗北は素直に受け入れよう。だがな、我々の本当の目的は、とうに果たし終えたのだ。ここまで集めたお前たちの戦闘データ、ZXファクターの制御ログ、そしてレセプトとの契約の記録——全ては無事、あの方たちの元へと送信済みだ!」彼は肩を震わせて笑い、最期に言い放つ。
「こうして消滅せずに済んだだけでも、御の字よ。クククククク…! 次にお前たちが相手することになるのは、このデータを元に完成された、真の脅威だ!」 その言葉を最後に、彼の体は紫黒い靄となってゆっくりと薄れ消え、跡地には不吉な予感だけが、ぽつりと残された。レイトキは消え去ったディーガストの跡を見据え、厳しい声で仲間たちに告げる。
「まだ何も終わってはいない。ディーガストはこの迷宮の歪みを利用しただけで、この空間そのものを生み出した元凶ではない。まだ別の、根元となる怪異がここに隠れている!」
彼は手を胸に当て、レセプトの力と空間の残り香を探り、さらに続ける。
「この場所の歪みは、誰かの深い未練や悲しみが形になったものだ。それをヴァルテンが悪用し、増長させていただけだ——その本体を、必ず見つけ出して解放するぞ!」




