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EPISODE2-9【奪還作戦・後半】

四人がコアの奥へ踏み込んだ瞬間、視界は一転する。そこには機械も装甲もなく、ただ果てしない闇が広がり、地面には見慣れた風景のかけら——共に歩いた道、笑い合ったあの日の空、小さな約束の記憶が、紫黒い靄に覆われながら無数に浮かんでいる。その中心に、うずくまるように佇むレイトキの姿があった。彼はこちらを見ようともせず、両手で頭を抱え、自分自身を守るように丸くなっている。靄は彼の輪郭を少しずつ溶かし、飲み込もうとしていた。

「レイ!」久美子が真っ先に駆け寄り、手を伸ばす。ここは力ではなく、心と心が直接触れ合う世界——本当の想いだけが、闇を切り裂ける場所だ。アルビテトは静かに手をかざし、柔らかくも確かな光を放つ。

「消えないで。君はここにいる、その姿も心も、全部確かに存在しているんだ」光がレイトキの体を優しく包み込み、紫黒い靄に溶けかけていた輪郭を一つずつ縁取り、しっかりと固定していく。靄が形を曇らせようとしても、光は決して緩まず——彼が「レイトキ」であることそのものを、揺るぎなく繋ぎ留めた。

「さあ、みんなの声を、ちゃんと受け止めて」レイトキは声を震わせ、両手で顔を覆いながら絞り出すように打ち明ける。

「オレは…オレはみんなを傷つけるかもしれないんだ。オレの体は半分、クリラトン側のものなんだ。あの因子を入れられたせいで、心の奥に眠っていたクリラトンの力が目覚めてしまった。このままじゃ、この力のせいで、大切なみんなを…」紫黒い靄が彼の言葉に反応するように激しく渦巻き、「お前は敵だ」「滅ぼす存在だ」というささやきが闇の中から幾重にも響き渡る。彼は自分自身の本質を呪うように肩を震わせ、完全に自分を閉じ込めてしまおうとしていた。だが久美子は一歩も引かず、そっと彼の手に触れる。

「そんなことない! 半分がどちら側だろうと、レイはレイだ! クリラトンの力も、人の心も、全部ひっくるめて、あなたは私たちの仲間なの!」アルビテトは真っ直ぐレイトキを見つめ、揺るぐことなくはっきりと告げる。

「それでも、君が昔からずっと抱いていた想いまで、否定するつもりなの? 弱い者を、苦しんでいる者を、何が何でも助けたい——あの心まで、全部嘘だったって言うの?」その言葉が闇の中に響くと、レイトキの肩が大きく跳ねる。かつて共に過ごした時、彼が誰よりも真剣に語ったその言葉が、記憶の底から鮮やかに蘇り、紫黒い靄を一筋切り裂いていく。

「違う…」彼はかすかに声を漏らし、「それだけは…絶対に、嘘じゃない…」リジェは優しくも力強く、心を込めて呼びかける。

「優しくて、いつもみんなを頼もしく守ってくれたレイトキを、私たちは絶対に否定しない。どんなに君が自分を責めても、その姿こそが本当の君なんだ。だから、戻っておいで、レイトキ」彼女の声に応えるように、レイトキを覆っていた靄が一筋薄れ、うつむいていた彼の顔が少しだけ上がる。瞳の奥に、かつての温かい光が、確かに浮かび始めていた。リジェは柔らかな緑の回復の炎を全身にまとい、そっと腕を広げてレイトキを強く抱きしめる。

「レイトキがいない未来なんて、私たちには考えられないよ」温かい炎が彼の体を包み込み、心を蝕んでいた痛みや不安を少しずつ溶かしていく。レイトキは硬く閉ざしていた肩の力を抜き、震えながら、おそるおそる彼女の背中に腕を回した。闇の靄がみるみる後退し、胸の奥の心の輝きが、一段と強く灯り始めた。レイトキは腕の力を緩め、自嘲するように声を震わせる。

「みんな、頼もしいとか言ってくれるけど…俺はまだまだ全然だ。本当は、すごく弱いんだ…。だから今回だって、あっさり敵にさらわれて、みんなをこんな危険な目に遭わせて…」自分を責める言葉は続き、うつむいた瞳には悔し涙が浮かぶ。だが久美子がそっと彼の腕を握りしめ、ホワンも隣から優しく声を重ねる。

「弱いって、何が悪いんですか?」

「弱いからこそ、誰よりも強くなろうと足掻ける。その姿こそが、ワタシたちが一番信じてるレイトキなんだ」

アルビテトも静かに頷き、続ける。

「さらわれたのは君が弱かったからじゃない。相手が卑怯な手を使っただけだ。それに、君が闇の中で最後まで自分を捨てなかったから、ワタシたちはここまで来られたんだ」レイトキはゆっくりと顔を上げ、四人の真っ直ぐな瞳を見つめ返す。心の靄がさらに薄れ、胸の奥の輝きが、もう迷いなく強く光り輝いた。レイトキは拳を握り締め、声にならない思いを吐き出すように、はっきりと胸の内を明かす。

「俺だって…本当は、誰よりもみんなを守りたいんだ! だけど、今回みたいにみんなを危険に巻き込んで、ZXファクターにとらわれたら、物理的にも心からも、みんなを深く傷つけてしまうんだって、なんとなく分かるんだ…。怖いんだ、また大事な人たちを、自分の手で傷つけてしまうのが…」言葉の最後は震え、彼は再びうつむく。自分の中にある力そのものが、大切な絆を壊してしまう刃になるのではないか——その恐怖が、彼を一番苦しめていた。 その時、久美子が彼の手を両手で包み込むように強く握りしめ、真っ直ぐな声で応える。

「大丈夫だよ。もしまた闇が君を飲み込もうとしても、一人で背負わなくていい。今度は私たちが絶対に、君の隣にいて、一緒に闇と戦うから!」

ホワンも穏やかに頷き、続ける。

「力は使い方次第で、誰かを守る盾にもなる。それに、ZXファクターが君を操ろうとしても、君の中にある『守りたい』という想いは、誰にも奪えないんだから」アルビテトとリジェもそっと彼の肩に手を置く。四人の温もりが心に染み渡り、レイトキの瞳からは、不安と共に涙がこぼれ落ちた——それは、孤独な闇から抜け出せると信じ始めた、希望の涙だった。闇がざわめく中、レイトキの前には、彼の姿をそのまま黒く塗りつぶした影の自分が現れる。その影は冷たく、誘うように囁く。

「ZXファクターの力は本当に凄いぞ。さあ、全部委ねてしまえ。そうすれば、迷いも怖れも全部消える。衝動のまま、本能のまま、力の赴くままに振るえばいいじゃないか」影の手からは、破壊と自由を混ぜたような強い誘惑の気が立ち昇る。だがレイトキは一歩も引かず、胸を張り、はっきりと拒み返す。

「そんな俺には、絶対になりたくない! 力は闇や破壊のために使うんじゃない。正しく、大事な人たちを守るために、使いたいんだ!」その言葉と同時に、彼の心の輝きが一気に膨らみ、影の誘惑を弾き飛ばすように白く強く光る。黒いレイトキは「フッ」と嘲笑を残しながらも、その光に押されて少しずつ後退していく——彼はもう、自分の心を曲げたりはしない。黒い影は嘲笑をやめ、鋭く問い詰める。


「ならば、圧倒的なZXファクターの力を、心を保ったまま使いこなすと、そう言うのか? 制御できずに飲まれるのが関の山だぞ」レイトキは影を真っ直ぐ見据え、迷いなく力強く答える。

「そうだ。自分の力は、正しく、守るために使いたい。たとえどれだけ強大で危うい力だろうと、俺の心だけは誰にも渡さない」その言葉が闇に響いた瞬間、彼の胸の奥から淡くも確かな光が溢れ出し、影の黒さを溶かし始めた。ZXファクターの力は消えずとも、その在り方が完全に彼の意志によって塗り替えられていく——。リジェがそっと腕を解くと、代わってホワンとアルビテトが両側からレイトキを囲むように、温かく腕を回し抱きしめる。

「一人で全部背負わなくていいんですよ。重いものは、みんなで分け合えばいいんですから」

「そうよ。アタシたち、ずっと一緒に歩いてきた仲間じゃん。苦しいときは、お互い様だよ」二人の言葉に、レイトキは硬く握りしめていた拳をゆっくりと開き、震えながらも力いっぱい二人の背中に腕を回した。黒い影は完全に光に溶けて消え、心の世界は闇が晴れ、彼女らの絆の色に満たされていく。心の世界の光が外へとあふれ出すと、黒い装甲や紫黒い機械の部位は一つずつ溶け消え、レイトキの体はかつての姿へと戻っていく。ZXファクターは消えはしないが、もう彼を飲み込むことはなく、心の奥で共に在る力へと変わっていた。次の瞬間、まばゆい光に包まれた四人は、気づけば迷宮最奥の部屋へと戻っていた。エピデンドラムたちが必死に繋ぎ止めていたグレイプニールの鎖がゆっくりと解け、レイトキがその場に立ち——仲間たち全員が、安堵の涙を浮かべて彼を見つめていた。レイトキが仲間たちに笑顔で応えようとした瞬間、床の亀裂から紫黒い靄が湧き上がり、あの青インナーの男の姿を形作って実体化する。

「みんな、ただいま」 斗愛が真っ先に駆け寄り、安堵の声を上げる。

「心配したんだよ、このまま戻らないかと」 与太郎も拳を固めながら、胸を撫で下ろす。

「でも、久美子たちのおかげで戻れたようだな」 カグラが穏やかに頷き、

「愛の力ってやつかな」 デュークがにっこり笑い、

「羨ましいな、愛する存在って」 アルカが少し照れくさそうに呟き、

「よかった、よかったよ、元に戻ってくれて」 ゼロが目を細めて喜ぶ。

レイトキも力強く頷き、告げる。

「これで一先ずは、一つ目のミッションクリアだな」だがその言葉の直後、靄が冷たく笑い響く。

「一息つくのは、まだ許されないようだな」黒い靄はレイトキの前に佇み、嘲るように続ける。

「ククククク…! あのままZXファクターに身を委ね、本能のまま冷酷に存分に力を振るえば、こんなに苦しまずに済んだものを。中途半端に心を残したままでは、これから待ち受ける試練には到底耐えられんぞ」靄は空間を歪ませながら、新たな脅威の気配を周囲に満たし始めた。

「次は何を企んでいる?」エピデンドラムが剣を構え直し、警戒を強める。靄はただ不気味に笑い、何も答えず——だが、迷宮の奥底から、さらに巨大な闇の気配が近づいてきていた。青インナーの男は不敵に笑い、冷徹に告げる。

「純粋なデータと細胞からの完全再現だ。本物には遜色ない力を持っているぞ。さあ、行け!」彼の合図と同時に、黒く塗りつぶされたレイトキそっくりの影が一気に加速し、鋭い爪と禍々しいエネルギーを纏って一行めがけて襲いかかる。その動きは本物の記憶をなぞったもので、先ほどの猛攻の手の内を知り尽くしているかのようだ。

「くっ! 俺の…レイトキの真似事だと!」与太郎が拳を構えて迎え撃とうとするが、影の動きは予想以上に速く、一撃で地面を砕きながら真っ先にレイトキ本人へと狙いを定める。

「みんな、下がれ! こいつは俺が相手する!」レイトキは一歩前に踏み出し、仲間たちを守るように腕を広げ——自分の力、そして新たに共に在るZXファクターの力を、心のままに解放する。レイトキは両手に光の大剣を現し、真っ直ぐ影を見据えて叫ぶ。

「俺の中の悪意よ、消え失せろ! デリートディバイン!」ソードモードに転じたマルチブレイカーが、清らかな光の軌跡を描き、黒い影を真っ二つに切り裂く。

「グワアアアアアッ!!」黒レイトキは断末魔の悲鳴を上げ、紫黒い閃光と共に大きく爆発し、跡形もなく消え去った。だが、その断片の声が空間に残り、冷たく響く。

「だがな…ZXファクターがお前に宿ったままである限り、お前は永遠にこの力と共に生き、そして闘い続けなければならないのだ…!」レイトキは剣を構えたまま、微動だにせず、はっきりと返した。

「上等だ。そんな運命も力も、俺が制御してみせる。俺の心が、俺の歩む道を決めるんだ!」その言葉と共に、彼の周りではZXファクターの紫黒い光が、心の輝きと混ざり合い、新たな力強い輝きへと変わっていく。久美子は目をキラキラさせ、駆け寄りながら大きく声を上げる。

「カッケーじゃん、レイ! 今の啖呵、最高だよ!」レイトキは少し照れくさそうに頬を掻きながらも、はにかんだ笑顔を浮かべる。その横顔には、もう迷いはなく、自分の力と仲間たちと共に進む覚悟が、はっきりと宿っていた。レイトキは光る剣を収め、仲間たち全員を見渡して力強く宣言する。

「さあ、リベレーションレスキューミッション、ここで終わらせるわけにはいかない! さらに奥へ進み、この迷宮の元凶たる怪異を、必ず突き止めるぞ!」その声に全員が一斉に頷き、武器を構え直す。不安や迷いはすっかり消え、今は共に闘う確かな絆と、新たな力が一行の背を押していた。

「行こう、みんな! 最後まで、絶対に共に行くんだ!」彼らは一歩踏み出し、闇が残る迷宮の奥深くへと、歩みを進め始めた。

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