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EPISODE2-7【異界迷宮と混因反応】

傷つきながらも、一行は歩き続け、旧校舎の三階踊り場へとたどり着く。そこには、先ほど彼らが通り抜けたあの鏡が、静かに佇んでいた。表面は曇りもなく、だがよく見ると、鏡の向こうの景色がぐにゃりと歪み、黒い靄のような空間の亀裂が、鏡面ごと揺らめいているのが分かる。

「この歪み……まだ閉じていない」エピデンドラムが慎重に近づき、手をかざす。

「レイトキが撤退した先と、こちらを繋ぐ道が、まだここに残っているんだ」久美子は鏡を見つめ、強く頷く。

「この先に、彼がいる。あの歪んだ空間の迷宮の奥に、閉じ込められているんだね」アルビテトは剣を握り直し、決意を込めて言う。

「ならば、行くしかない。どんな迷宮でも、どんな絶望が待っていようとも、レイを迎えに行く!」一同は互いに背を預け合い、一歩ずつ、歪んだ鏡の中へと踏み込んでいく。足元が消えるような浮遊感に包まれながら、彼らは異界へと続く迷宮の入り口へと進み入った。鏡をくぐり抜けた先に広がっていたのは、これまでの無機質な施設とはまるで違う、目にも鮮やかな世界だった。床も壁も天井も、ネオンピンクやエメラルドグリーン、サイバーイエローなど、虹色の光の帯が縦横無尽に走り、ホログラムのような幾何学模様が浮かんでは消えていく。空気中にはキラキラと光るデータの粒子が舞い、遠くからは電子音が微かに響いている。

「これが……クリラトンの世界の法則で作られた、異界迷宮の姿なのか」エピデンドラムは周囲を見回し、感嘆と警戒を混ぜた声で呟く。「色彩も構造も、クリプトンの常識とはまるで違う。ここでは、道も敵も、何が本物か分からない」久美子は光に目を細めながらも、前を見据える。

「でも、レイの気配は確かにこの奥から感じる。このカラフルな光の先に、彼が閉じ込められているんだ」

アルビテトも剣を構え直し、頷く。

「ならば、この迷宮を突き進むだけだ。どんなに見た目が騙そうとも、私たちの想いだけは、絶対に惑わされない!」一行は光の道を選び、慎重に奥へと進み始める。カラフルなサイバー空間の向こうに、彼らを待ち受けるものは何なのか——。色とりどりの光の帯が交わる場所に、ふとキクリが現れる。彼女は迷宮の光をまとうように佇み、静かに告げる。

「ZXファクターに犯された者は、はじめはまるで心を失ったように、自分の意思を閉じてしまう。だが、完全に消えたわけじゃない。特定の条件が揃えば、必ず心は戻ってくる」アルビテトは思わず前に踏み出す。

「条件? どうすればいいの!? レイを取り戻す方法を教えて!」キクリは柔らかく頷き、言葉を続ける。

「ZXファクターは『記憶を塗り替え、感情をノイズとみなして消そうとする』性質を持っている。だからこそ、そのノイズこそが彼の本当の心だと、誰よりも強く、正確に、彼自身に届けること——それが一番の鍵だ。」久美子は瞳に光を宿し、拳を握りしめる。

「彼が忘れたくなかった想い、守りたかった絆、選んだ夢……それらを全部、私たちが彼に見せてあげればいいのね」

「そうだ」キクリは微笑みを浮かべ、道の先を指し示す。

「だが迷宮は記憶を映し出し、誤った道へと君たちを誘う。本当の絆だけが、正しい扉を開ける。さあ、行くがいい。彼は君たちを待っている」キクリは頷き、大事な事実を付け加える。

「それと、一つ言っておく。ZXファクターは本来、クリラトンの者にだけ備わる因子だ。それをそれ以外の存在——つまりレイトキのような異次元存在に無理やり注入するから、心が塗りつぶされ、自我が揺らぐことになるんだ」彼女は手をかざし、虹色に輝くデータの粒を一行一人ひとりにそっと触れさせる。粒は体に吸い込まれ、じんわりと温かい安心感が広がっていく。

「これは安定パッチだ。残念ながら、すでに深く侵されたレイトキには通用しない。だが、もしお前たちがZXファクターを打ち込まれたとしても、自我が崩れたり制御されたりする危険はなくなる」アルビテトは胸を撫で下ろしつつ、唇を噛む。

「私たちは守られても、レイだけがこの痛みを背負わされている……」

「だからこそ、お前たちの力が必要なんだ」キクリは真っ直ぐな瞳で告げる。

「彼の中の本当の心を、隠された記憶を、絆の力で呼び覚ましてあげてほしい」久美子は力強く頷き、前を向く。

「はい。必ず、連れ戻しますから!」エピデンドラムは真剣な面持ちで問いかける。

「その安定パッチ、我々エルカーノスの技術で複製・再現することは可能か? 今後の活動や、他の仲間を守るためにも、必要になるはずだ」キクリはあっさりと頷き、答える。

「可能だ。というより、そもそもエルカーノスやSMOにも、クリラトンからの協力者や、クリラトンの血を引く混血の者たちがすでに在籍している。基盤となる知見は、ちゃんと共有されているんだ」その言葉に、一同は驚きつつも、大きな手がかりを得たと安堵する。

「そうか……」エピデンドラムは拳を握りしめる。

「ならば、この技術を広め、ZXファクターの脅威から多くの者を守ることもできる。まずは目の前の迷宮を突破し、レイトキを救い出してから、必ず着手する!」キクリは真剣な面持ちで告げる。

「他の歯車たちにも、すでに安定パッチは施しておいた。歯車が壊れてしまっては困るのは、クリプトン側だけではなくクリラトン側も同じだ。歯車は二つの世界、そして全世界を繋ぐ要だからね」彼女は言葉を続け、その中でも特異な存在を明らかにする。

「その中でも一番重要なのが包括の歯車だ。そして、単独でも空間の歪みを生み出し、世界の境界を揺るがす力を持つのは、包括、夢幻、混沌、時空の四つの歯車だけだ」アルビテトは驚きを隠せず、呟く。

「それほどまでに大きな責任と力を、レイは背負っていたのね……」

「だからこそ、彼を完全に失うわけにはいかない」キクリは道の奥を見据える。

「さあ、迷宮の核心へ急げ。彼の心が、君たちを待っている」キクリは静かに付け加える。

「そして、この乱れた空間の歪みを正し、世界の軸を元に戻せるのは、包括、秩序、そして審判の三つの歯車だけだ」アルビテトは自分の役割の重さを改めて噛み締め、ジャッカルの耳を真っ直ぐに立てる。

「審判の私も、その一端を担っているのね。ならば、レイと秩序の歯車と共に、必ずこの迷宮も、歪んだ心も、全て正してみせる!」キクリは深く頷き、虹色の光が彼らの行く手を優しく照らし出す。

「その絆と力こそが、今最も必要なものだ。さあ、進め——君たちだけが、彼を救える」カラフルな光の通路の先から、新たな気配が現れる。カタストロフを筆頭に、他の歯車たちも迷宮へと踏み入れてきた。カタストロフは大股に歩み出て、太い声で告げる。

「おうおう、困ってるようだな。包括が敵の手に渡ったと聞いて駆けつけたぞ。だが、安心しろ! 我が『崩壊』の力は、敵の邪魔な障壁や制御装置だけを徹底的に壊す。仲間の心まで壊したりはせん!」レゾルも後ろから続き、剣を構え直す。

「革命の歯車としても、この状況は放っておけない。歪んだ仕組みごと、正しい形に覆してやる」ジャンヌ、シオン、ケイオ、エイトたちも次々と姿を現し、久美子たちの周りに集まる。迷宮の光が、十四の歯車が揃ったことを祝うかのように、一斉に明るく輝き出す。久美子は目に涙を浮かべ、力強く頷く。

「みんな……ありがとう。これなら、どんな壁も越えられる。必ずレイを取り戻そう!」ジャンヌは前に進み出て、秩序の歯車としての威厳ある声で全員に告げる。

「ギアミッション発動! 任務は三つ。包括の歯車奪還、この歪んだ空間の解放——リベレーション。そして、攫われた人々の中で無事な者たちを全員救出する——レスキューだ。最優先は、まず包括の歯車を取り戻すこと!」その宣言を合図に、十四の歯車の力が一斉に共鳴し、迷宮の光がさらに強く輝き渡る。

カタストロフは拳を鳴らして頷く。

「よし! 邪魔な制御壁は俺が全部粉々に砕く!」シオンも時空の糸を手に構える。

「道を開き、敵の罠は事前に撃ち抜いてみせる」久美子は胸に手を当て、強く決意を固める。

「みんなの力を一つに合わせて、絶対にレイを、そして全員を救い出そう!」一行は息を合わせ、迷宮の最深部へと歩みを進めた。斗愛は足音を立てずにするりと前へ出ると、闇に紛れるような影の気配をまとい、静かに告げる。

「様子を偵察してくるよ。罠や敵の配置があれば、先に見つけて伝える」

彼女は周囲のネオンの光を反射させず、壁際の影へと身を滑り込ませる。氷の気配を薄く張り巡らせて自分の存在を隠しつつ、迷宮の奥へと慎重に進み出ていく。

「頼んだぞ」カタストロフが低く声をかけ、残りの面々は警戒態勢を保ちながら、彼女の報告を待つ。斗愛は影から抜け出し、素早く仲間たちのもとへ戻ってくる。警戒を緩めず、はっきりと状況を伝える。

「やっぱりだ。侵食パネルが、道のあちこちに大量に仕掛けられてるよ」彼女は手のひらで見てきた様子を描くように補足する。

「踏んだ瞬間にZXファクターが噴き出したり、空間を閉じ込めたりするタイプだ。不用意に進めば、囲まれるか、足止めされる仕組みになってる」エピデンドラムは頷き、装備を確認する。

「ならば、不用意に踏まず、一つずつ無効化しながら進むしかない。カタストロフ、障害物の破壊は頼んだ」

「おう! 邪魔な板なんて、一撃で粉々だ!」道の先のデータ魔法陣が一斉に点灯し、無数の砲台が浮かび上がる。紫黒い光の弾が雨あられとなって襲いかかり、空間そのものが揺れるほどの高威力の砲撃が繰り出される。その瞬間、アルカが一歩前に踏み出し、両手を大きく広げる。

「防御は任せて! アークプロテクトバリア!」彼女の周囲から純白の光の膜が瞬く間に展開し、一行全体をすっぽりと覆い尽くす。砲弾は次々とバリアにぶつかり、激しい閃光と衝撃波を生じさせるものの、膜は微動だにせず、完全に弾き返してみせた。アルカはバリアを支えながら、力強く告げる。

「まだ持つ! この隙に、砲台の制御を奪うか、破壊するかして!」カタストロフは砲台の動きを一瞬で見極め、その心臓部にある制御核を狙い定める。

「スキャンブレイク!」彼が拳をぎゅっと握りしめた瞬間——砲台内部の回路とデータが一斉に破裂するように干渉され、核から崩壊が広がっていく。

ドカーン!ドカーン!ドドーン!

重い破裂音と共に、浮かんでいた砲台は次々と光の欠片に砕け散り、跡形もなく消え去った。カタストロフは大きく息を吐き、残りの通路を睨みつける。

「邪魔な物は全部、この調子でぶち壊してやる! さあ、どんどん進むぞ!」迷宮の最奥、冷たい光に満ちた調整室の最深部。透明なカプセルの中で、レイトキが身をよじり、全身を激しく痙攣させている。

「ウワアアアアアアッ! グワアアア〜〜〜!!」喉を裂くような、悲痛で絶望に満ちた叫び声が、室内の壁を反響して響き渡る。濃い紫黒いZXファクターがカプセル内を渦巻き、彼の体を内側からも外側からも蝕み、心の奥にしまった想いや記憶を無理やり塗りつぶそうと何度も押し寄せる。彼の瞳は赤黒く濁ったかと思えば、一瞬だけ元の色が浮かび上がり、また覆い隠される——その葛藤そのものが、この絶叫になって零れ落ちていた。

「まだ抵抗するのか……」青いインナーの男は制御盤の数値を冷ややかに見つめ、レバーをさらに押し込む。「だが無駄だ。お前の心も、歯車の力も、すべて我々のものになる」レイトキは歯を食いしばり、意識が闇に沈みかけるその瞬間、かすかに唇を動かした。

「……クー……ちゃん……みんな……」

その声はファクターの音に掻き消されそうになりながらも、確かに彼がまだ戦っている証だった。通路の奥から、かすかながらも胸を締めつける叫び声が風に乗って届く。久美子は足を止め、耳を澄ますと、はっきりとそれがレイトキのものだと分かり、声を上げる。

「聞いて! レイだ! 今、レイの声がした!」彼女は涙ぐみながら、声のする方向を指し示す。

「苦しんでる……まだ心の奥で戦ってる! 絶対に、絶対に間に合わせよう!」その言葉に、仲間たちの足取りはさらに速まり、迷宮の最奥へと向かう光の道が、一層鮮やかに輝きを増した。カタストロフは次々と押し寄せる敵を薙ぎ払いながら、舌打ちする。


「チッ! 敵が多すぎる! 一体一体の強さ自体はそんなにないが、数が多くて足が進まねえ!」彼は拳を地面に叩きつけ、衝撃波で周囲の敵を吹き飛ばす。

「だが、こんなもので止まる俺たちじゃない! みんな、一気に突破するぞ! レイトキの声が聞こえたんだ、急げ!」与太郎は大きく息を吸い込み、覚悟を決めて叫ぶ。

「仕方ねぇな! 本来ならもっと後になって披露するはずだったが、この状況じゃあ使うしかねえ! 混因反応——酒呑童子×神殺し!」声と共に彼の体が激しく光りだす。額の角は真っ赤に燃え上がり、肌の色も鮮やかな紅色に染まっていく。耳はぐっと長く鋭く尖り、瞳は奥深い赤黒い光を宿して、獲物を捉えるように輝く。その気配は一気に密度を増し、周囲の敵たちが本能的に怯え、足を止めるほどの重圧を放つ。

「これで数の壁なんてぶち壊してやる! みんな、遅れるな!」彼は紅蓮の気をまとい、真っ先に敵の群れへと突進していく。与太郎は天を突くように叫び、全身の力を拳に込めて勢いよく突き出す。

「デヤアアア〜〜!!」真っ赤な気の奔流が拳から噴き出し、真正面の敵は一撃で光の塵となって消え去る。その衝撃の波動はさらに広がり、周囲を取り囲んでいた敵たちも、拳圧に触れた瞬間に跡形もなく消滅していく。道を塞いでいた敵の壁が一瞬で薙ぎ払われ、最奥へ続く通路が鮮やかに開け放たれた。斗愛は開けた道を確認しつつ、驚きを隠せずはっきりと告げる。

「混因反応…。理論上は因子実験体なら誰にでも発現する可能性があると聞いていました。でも、実際に記録に残っていたのはフュンフただ一人だけだったはずです。まさか、与太郎さんも使えるなんて…本当に驚きました」

彼女は赤く染まった与太郎の背中を見つめ、続ける。

「これは単なる力の強化じゃない。二つの系統の因子を完璧に繋ぎ合わせる、極めて稀な現象なんです。これだけでも、僕たちの可能性がまだまだ隠されているってことですね」与太郎は肩を竦めながらも、前を向いて拳を握り直す。

「そんな難しいことは後で話そうぜ! 今はこの力を全部使って、レイトキの野郎を迎えに行くだけだ!」久美子は真っ直ぐ与太郎を見つめ、はっきりと言葉を紡ぐ。


「そうね。異なる系統の因子を技術的に繋ぎ合わせるだけじゃ、ここまでの力は出ないわ。きっと、強い感情や意志、想いそのものも深く関係してる」彼女は先ほどの一撃の残り香を思い返し、続ける。

「与太郎から感じたのは、『筋を通し、守るべきものは最後まで守り、曲がったことは絶対に撃ち抜く』——そういう義理人情の熱さが、力の芯になってるんだと思う」与太郎はぽりぽりと頭を掻き、照れくさそうに笑う。

「おうよ! 俺の筋は一本だ! 仲間のためなら、どんな壁もぶち抜いてやる!」その言葉に、一同の決意もまた一つに強く結ばれた。久美子は両手を固く握り締め、瞳に涙を浮かべながらも、真っ直ぐ前を見据えて力強く叫ぶ。

「私も、私も強くなりたい! レイと約束した、あの明るい未来を掴むために! そして、もう二度と大事なものを何一つ失わないために!」彼女の声には、これまでの不安や悔しさを噛み締めながらも、前へ進もうとする決意がみなぎっていた。その想いに応えるように、彼女の周りからも柔らかくも確かな光が湧き上がり、仲間たちの光と共鳴し合った。

「その気持ちが一番大事だ!」与太郎が大きく頷き、「みんなの想いを一つにして、絶対に間に合わせるぞ!」久美子の体の奥から、今までにないほどの高揚と光が湧き上がってくる。彼女自身も驚きながら、その変化を受け入れるように叫ぶ。

「ま、まさか……これも混因反応!? ティターニアの妖精霊の力と、多腕族の力が、一つに溶け合ってる! 混因反応——ティターニア×多腕族!」声と共に、背中の羽が七色に輝きを増し、同時に四本、六本と光の腕が次々と展開される。彼女はひらりと宙へ舞い上がり、素早く飛び回りながら、その多腕で敵を一閃、薙ぎ払い、砕き——隙間なく攻撃を叩き込んでいく。それだけではない。彼女は指先一つで無数のドール分身を自在に操り、それぞれが同じように光の腕と飛翔の力を宿し、敵の背後や側面を襲い、あっという間に残りの敵を殲滅してみせた。

「すごい……!」アルビテトが目を見張る。

「これが、君の守りたいという想いが呼び起こした力なんだね!」久美子は羽ばたきながら、迷宮の最奥へ続く道を真っ直ぐに指し示す。

「行くよ! もう、何も失わない! レイを、絶対に連れ戻すから!」迷宮最奥の調整室で、硬く閉ざされていたカプセルの扉が、ゆっくりと重い音を立てて開き始める。中からよろよろと這い出たレイトキは、まだ赤黒い靄が瞳に残り、体は力なく震えている。だがカプセルが開いた瞬間、彼の中で押さえつけられていた「包括」の歯車の光が、一斉に沸き立つように輝きだす。

「おっと、予定より少し早いな」青いインナーの男は眉を吊り上げるが、すぐに冷たく笑みを浮かべる。

「だが、ちょうどいい。完全に制御しきれないなら、実戦で馴染ませてもらう。さあ、迎えに来た仲間たちを、全部叩き潰してしまえ——インターセプター、レイトキ!」レイトキは声もなく頷くと、背中から無数の光の触手と機械の腕が迸り、迷宮の入り口へと真っ直ぐ向き直った。その赤黒い瞳の奥に、かすかな苦しみの色が滲んでいることに、男はまだ気づいていない。久美子は光の翼を広げ、六本の光の腕を強く握り締め、全身の想いを乗せて叫ぶ。

「絶対に、取り戻す!」その声は迷宮の空間を響き渡り、仲間たちの力と共鳴して虹色の光の波となって奥へと伝わっていく。彼女はまっすぐ最奥へと駆け抜け、仲間たちも一斉にその背を追う——今度こそ、心からの絆で、彼を闇の中から引き離すために。

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