EPISODE2-5【探索など】
レイトキは開いた扉の先へ足を踏み入れ、室内を素早く見回す。壁際にうずくまり、怯えたように肩を寄せ合う数人の生徒たちの姿を確認すると、駆け寄りながらはっきりと告げる。
「間違いない! こいつらが行方不明になってた生徒たちだ! 無事でいてくれたか!」だが、安堵するのも束の間、疑問が湧き上がる。彼は首を傾げ、室内の様子を再び確かめる。
「だが、どうしてこんな風に、一人残らず各教室に分けて閉じ込めているんだ? 一体何の目的があって……!?」生徒たちはレイトキの顔を見て、ようやく安堵の涙を浮かべる。
「わ、分からない……急に目の前が真っ暗になって、気づいたらここにいたの。動こうとしても、足が床に縫い付けられたみたいに動けなくて……」久美子はすぐに生徒たちのもとへ行き、体を覆う見えない拘束の糸を丁寧に解きほぐしながら言う。
「まるで、この空間全体のセンサーとして、あるいは何かの起動キーとして、生徒たちの命の反応を利用しているみたいね。一人にまとめておくより、点在させた方が都合がいい、何かがあるのよ」レイトキは拳を握りしめ、廊下の奥へと視線を向ける。
「いずれにせよ、全部回収しなきゃならない。みんな、もう大丈夫だ。後ろをついてきて、絶対に離れるな! まだ探している仲間たちと合流して、一緒に外へ連れ出してやる!」生徒の一人が突然絶望的な悲鳴を上げる。
「きゃあああ! 体が、体が消えていく……!」見ると、彼の手足から輪郭がぼやけ始め、砂のように、あるいはデータの欠片のように宙に溶け出していく。まるで空間そのものが、彼の存在を吸い込んで取り込もうとしているかのようだ。
「まずい! この空間が生徒たちの命の反応を喰らい始めた!」レイトキは即座に駆け寄り、左腕の端末を最大限に輝かせる。
「アカシックレコードよ、この子の存在を固定しろ! 消させはしない!」彼は光の膜を広げ、消えかけた生徒を包み込む。同時に久美子も残りの生徒たちを素早く集め、心臓の歯車の力で守りの結界を張る。
「みんな、私のそばから絶対に離れないで! このままでは、この空間の一部にされてしまうわ! 急いで、他の教室も全部回って、一人残らず連れ出さないと!」レイトキは生徒を背後にかばい、廊下の奥を睨みつける。
「こいつらはただの人質じゃない。この歪んだ空間そのものの燃料だったんだ! 急ごう、時間がない!」廊下の奥から、無機質な声が響き渡る。現れたのは、先の戦闘で一度は退けたはずのクリラトン人——カッツードだ。
「侵入者、発見! 侵入者、発見! 直ちに排除し、計画を進行せよ!」彼は両腕を高く掲げ、床のパネルから黒い粘液を噴き出させ、次々と変異ウィルスの群れを呼び寄せる。ウィルスたちは牙を剥き、生徒たちを狙って突進してくる。レイトキは生徒たちを壁際に退かせ、久美子に守りを任せる。
「久美子、生徒たちを頼む! こいつらは俺が引き受ける!」彼は左腕の端末を輝かせ、光の触手を一斉に伸ばす。
「カッツード! お前たちの計画なんて、ここで終わりにしてやる! 人の命を燃料にするなんて、許せない!」
カッツードは無表情に繰り返す。
「邪魔な存在は消す。それが最も効率的な方法だ」さらに多くのウィルスが現れ、レイトキたちを取り囲む。レイトキは光を纏った拳を振り回し、襲い来る変異ウィルスを一撃一撃で粉砕していく。
「このっ! エイ! デヤアー! トリャーッ!」一発の拳がウィルスの体を貫けば、黒い塵となって弾け飛び、次々と道が開けていく。彼の拳には、人の命を奪う悪意を断ち切る、強い想いが宿っていた。
「誰一人、傷つけさせはしない! この先には、絶対に通さない!」残りのウィルスも蹴散らし、レイトキはカッツードの方を鋭く睨みつける。カッツードは高らかに宣言し、手にしたチップを掲げる。
「この世界の法則とやらも、徹底的に解析し尽くしたんだよ! そして、それに完全に適応するプログラムと専用チップを開発したんだ! マジックチップ『サモンサークル』!」チップが強く光り輝くと、廊下の床や壁に無数のデータ状の魔法陣が次々と展開される。陣の中からは、本来の姿を歪め、機械部品や装甲を埋め込まれた改造クリプトン生物たちが、牙を剥きながら次々と現れた。レイトキは構えを直し、瞳を鋭く光らせる。
「法則に適応したからって、何でも通じると思うな! お前らが歪めた存在なんて、俺が正してやる!」彼は生徒たちを守る位置を確かめ、改造生物たちを真正面から迎え撃つ覚悟を固めた。レイトキは負けじと高くチップを掲げ、力強く叫ぶ。
「ならばこっちも応戦するぜ! 攻撃チップ『ランブルバルカン』!」左腕の端末から光の柱が立ち上がり、廊下の天井や壁の隙間から、複数のバルカン砲台が次々と出現する。砲口が一斉に改造生物たちへと向けられ、轟音と共に連続砲撃が放たれた。
「悪意の塊なんて、まとめて薙ぎ払ってやる!」砲弾は正確に敵を捉え、改造生物たちの装甲を叩き、その動きを封じていく。レイトキは砲撃の隙を逃さず、さらに前へと踏み込む。レイトキは手に持ったマルチブレイカーを瞬く間にソードモードへと変形させ、刃に蒼い光を纏わせる。
「デルタスラッシュ!」三角を描くように三連の斬撃が一気に放たれ、砲撃を潜り抜けてきた改造生物たちをまとめて切り裂く。光の刃は歪んだ装甲や干渉の糸をも断ち切り、敵たちは次々とデータの塵となって崩れ落ちていく。
「これで邪魔は全部終わりだ! さあ、次はお前の番だ、カッツード!」カッツードは残りの敵が消えるのを見届け、少しだけ口元を緩めて言い放つ。
「少しはやるな! だが気配を感じたぞ、お前、半分は我々クリラトン人と同じだということか! ならば敵ではない、こちら側の仲間になれ!」
レイトキは剣の切っ先を彼に向けたまま、きっぱりと拒む。
「同じ血が流れていても、お前たちのやり方には絶対についていかない! 人を利用し、命を燃料にする道なんて、俺は選ばない!」彼は一歩も引かず、さらに続ける。
「俺が受け継いだのは、世界と繋がり、互いを認め合う願いだ。それを踏みにじるお前らとは、根本から違うんだよ!」背後から鋭い声が響き渡り、アルビテトが閃光と共に現れる。
「よく言ったよ、レイ! ジャッジメントスラッシュ!」彼女の剣が白く輝き、一瞬の閃きの後、カッツードの腕が鮮やかに斬り落とされた。
「きぃっ!」カッツードは絶叫し、後ろによろめく。アルビテトは剣を構え直し、冷徹に告げる。
「自らの同族をも、他の世界の者たちをも道具にするなんて、最も重い罪だ。審判の刃が、お前の歪みを正してやる!」レイトキは剣を構えたまま振り返り、二人の姿を確認して表情を緩める。
「おお、アル、エピデンドラム! 無事だったか、ようやく合流できたな!」アルビテトは剣を軽く振って血糊を払い、にっこりと笑う。
「当たり前でしょ。レイが一人で張り切ってるのを、放っておけるわけないじゃない!」エピデンドラムも頷き、状況を確認する。
「こちらの捜索も一段落した。生徒の無事な反応も確認できた。だが、まだこの空間の核心部には、もっと大きな仕掛けが隠されているはずだ」レイトキは頷き、背後の生徒たちを守りながら先を見据える。
「ああ、そうだな。だがまずは、見つけた生徒たちを全員無事に外へ連れ出す。それが先決だ!」斬り落とされたカッツードの腕は、青白い光の粒となって瞬く間に再構築、完全に再生される。彼は憎悪に満ちた声で叫び、手元の制御端末を強く叩きつける。
「こうなりゃ、手段は選ばん! ギアバインド!」途端、床と壁の回路が真っ赤に点滅し、無数の光の鎖が空間から噴き出す。レイトキ、久美子、リジェ、アルカ、ゼロ、ホワン、そしてアルビテトの体を一斉に巻きつけ、強力な束縛が全員の動きを完全に封じてしまう。
「なんだ!? 力が入らない……!」レイトキは歯を食いしばり、もがくが鎖はびくともしない。
「この空間の干渉回路そのものを、束縛に転用したのか!」エピデンドラムは叫ぶ。
「歯車の力すら、この場所では制御下に置かれてしまうとは!」カッツードは嘲笑いながら一歩前に出る。
「どれだけ適応しようが、この空間の管理者である俺には勝てない。さあ、お前たちも計画の礎となれ!」カッツードは冷徹な声で告げる。
「お前たち『歯車』には高い利用価値がある。だから、他の者たちのようにデータ化して消したりはせん」
彼が手を振ると、天井から円盤型の浮遊装置が降下し、強力な光の場が全員を包み込む。動きを封じられたまま、レイトキたちは抵抗もできず装置の中へ引き込まれ、そのまま空間の奥底へと連れ去られていく。
「しまった……!」エピデンドラムは、仲間たちが消えていくのを見つめ、拳を握り締めて悔しそうに唸る。
「この空間の制御権を完全に握られている以上、俺一人ではどうすることもできないのか……。だが、絶対に見捨てはしない。必ず追いついて、奪い返してみせる!」装置は一瞬で光となって消え、廊下には再び不吉な警告音だけが響き渡った。斗愛、与太郎、デューク、カグラが駆けつけ、エピデンドラムの元に無事合流する。
カグラは状況を即座に把握し、きっぱりと告げる。
「どうやら、歯車の面々はみんな攫われてしまったらしいね。だが、立ち止まっている暇はない。先へ進もう!」エピデンドラムは頷き、気持ちを引き締め直す。
「ああ。奴らが連れ去られた先が、この空間の核心施設だ。我々が道を切り開き、必ず全員を奪い返す!」
斗愛は冷気を纏い、与太郎とデュークも武器を構え直す。一行は互いに背を預け合い、敵の待ち受ける奥へと、一歩踏み出した。円盤装置から放り出されるように、レイトキたちは硬い床の上に乱雑に倒れ込む。
「イテテテテ……クソ、一体どこだ? ここは!?」レイトキは体を起こしながら周囲を見回す。そこは無機質な金属壁に囲まれた広い空間で、天井からは青白い作業灯が照らされ、あちこちに巨大なデータ端子や拘束具が並んでいる。まるで、特殊な存在を調整・保管するための隔離施設だ。先ほどの光の鎖は解かれているものの、空間全体が歯車の力を鈍らせるような干渉で満ちており、思うように力が入らない。久美子もゆっくりと体を起こし、不安そうに呟く。
「ここが……この歪んだ空間の、最深部。奴らの計画の中枢なのね」アルビテトも剣を握りしめ、鋭く周囲を警戒する。
「監視されてる気配がする。あちこちにセンサーが仕掛けられてるわ。気を抜かないで!」レイトキは辺りを見回し、並び立つ無数の透明な筒に目を留める。中には青白い液体が満たされ、人影が浮かんでいるのがはっきりと見て取れる。
「これって……人間か、それとも亜人、半亜人たちの培養カプセルか!?」彼は駆け寄り、カプセルの表面に手を当てる。中の者たちは皆、目を閉じたまま微動だにせず、生命反応はあるものの、意識だけがどこかに吸い取られたように虚ろだ。
「行方不明になった生徒たちの一部や、以前から攫われていた人たちも、ここにまとめて保管されていたのか!」リジェは唇を噛み、怒りを込めて言う。
「これだけの数を……まるで資源か何かみたいに扱うなんて、許せない!」
レイトキは拳を握りしめ、カプセルの列の先、さらに奥の扉を睨みつける。
「絶対に、全員をここから連れ出す。こんな檻の中に、閉じ込めておいたりはしない!」奥の影から、全身を濃いフードで覆い隠した人物がゆっくりと歩み出てくる。声は冷たく、まるで事実を突きつけるだけのように響く。
「この者たちの意思は、とっくにデータとして抜き取られ、書き換えられている。もう元の姿には、二度と戻らない」レイトキはその言葉に、カッとなって前に踏み出す。
「何をふざけたことを言うんだ! 人の心や意思を、お前たちの道具にするなんて、絶対に許さない! 元に戻せ、今すぐだ!」フードの人物は微動だにせず、続ける。
「意思なんて不安定で無駄なものだ。こうして完全に制御下に置くことで、初めて『資源』として役に立つ。お前たち歯車も、いずれは同じ運命を辿るのだ」アルビテトは剣を抜き、刃を向ける。
「そんな理屈、審判で切り裂いてやる! 人の尊厳を踏みにじる行いは、何があっても許さない!」レイトキは拳を強く握り締め、瞳に決意を燃やす。
「たとえデータにされていようとも、心の根までは奪えない。俺が必ず、みんなの意思を取り戻してみせる!」フードの男の言葉を遮り、施設全体のスピーカーから、どこまでも無機質で重々しい機械の声が響き渡る。
「歯車の意思を奪ってはならない。彼らは、全世界を巻き込むほどの力を秘めている。安易な書き換えは、システムそのものを崩壊させる」その声が落ちた瞬間、壁のランプが一斉に赤く点滅し、カプセルの制御音が不吉な警告音に切り替わる。フードの男は舌打ちし、苛立ちを隠せない。
「……何を今更。だからこそ、完全に管理下に置く必要があるというのに」レイトキはその言葉を聞き逃さず、瞳を鋭く光らせる。
「ならば、お前たちですら、俺たちの本当の力を恐れているってことだな! その力で、この檻も、お前たちの計画も、全部ぶち壊してやる!」スピーカーから再び機械質の声が響き渡り、フードの男を名指しする。
「ウォーラット、お前は事の重大さを分かっていない。これは、上層部から直接下された指示だ」ウォーラットと呼ばれた男はフードの縁を強く握りしめ、苛立ちを隠せない。
「知ったことか! 歯車を制御できなければ、この空間の安定も、計画の進行もままならないというのに!」
レイトキはその名前と上層の存在を心に刻み、前に踏み出る。
「上層だろうが何だろうが、人を道具にする命令なんて、俺が全部無効にしてやる! さあ、この檻を開けろ!」
だが声は冷徹に告げる。
「指示は絶対だ。歯車は意思を残したまま、監視下に置く。それ以外の選択肢は、存在しない」同時に、部屋の四方の壁がゆっくりとせり出し、逃げ場を塞ぐように通路を閉ざし始めた。突然、天井から伸びた極太の光コードが、ウォーラットの胸を真っ直ぐに貫き抜く。
「ぐあっ!」
フードが鮮血に染まり、彼は膝をつく。機械質の声が、まるでゴミを捨てるかのように冷たく響く。
「反逆者は消えろ。代わりなど、幾らでもいるのだ」
コードは彼の体を素早くデータの塵へと分解し、跡形もなく回収していく。たった今までいた男の存在は、あっという間にこの施設から消え去った。レイトキたちはあまりの非情さに言葉を失う。
「なんてことだ……自分たちの手駒ですら、都合が悪くなれば一瞬で処分するのか!」アルビテトは剣を強く握りしめ、背筋を凍らせる。
「これが、この施設の本当の姿なのね。ここにいる限り、誰も安全じゃない……!」レイトキは奥の制御室へと続く扉を睨みつけ、拳を固める。
「ならば、こんなシステムごと、俺が完全に停止させてやる! 急げ、この先が核心だ!」ウォーラットを処分した太い光コードは、そのまま獲物を狙うようにしなやかに伸び、レイトキの体を一気に巻きつけた。
「ぐっ! 離せっ!」コードの表面から無数の光の粒が滲み出し、彼の腕、胸、そして左腕の端末へと次々と流れ込んでくる。見たこともない膨大なデータ、施設の設計図、制御プログラム、そしてクリラトン側の侵略計画の断片が、一気に彼の意識に流れ込み、脳内を駆け巡る。
「こ、これは……この施設の全データが……!? それに、歯車の力の解析結果まで……!」頭が割れそうな痛みに襲われながらも、レイトキは流れ込む情報の中から、敵の狙いと、この空間を停止させるための手がかりを必死に掴もうとする。
「レイくん! 耐えて!」久美子が駆け寄ろうとするが、別のコードが道を塞ぐ。
「大丈夫だ、まだいける!」レイトキは歯を食いしばり、流れ込むデータを逆に自分の力で飲み込み始める。「お前たちが与えてくれた情報なら、俺が全部利用してやる!」コードから流れ込む膨大なデータと干渉に、レイトキの意識は次第に霞み、視界が白と黒に滲んでいく。体を動かす力も抜け落ち、膝がついに床に着く。だが彼は、最後の力を振り絞り、左腕の端末を強く輝かせ、手のひらで空間を切り開く。歪んだ光の扉が一瞬だけ現れると、その中へ久美子たちを強く押し込む。
「お前たちだけでも……先に、脱出しろっ!」久美子が手を伸ばし叫ぶものの、歪みの引力は彼女らだけを優先的に吸い込み、レイトキ一人を残して閉じてしまう。
「レイくん! 絶対に、絶対に迎えに来るからね!」レイトキは一人、コードに絡め取られたまま、再び襲ってくる眠気に逆らいながら、敵の核心を睨み続けた。コードに絡め取られたレイトキだけが、広い施設フロアに残された。天井のスピーカーから、機械質の声が無感情に響き渡る。
「包括の歯車のみ、残ったか。まあいい。これで余計な干渉はなくなった」光のコードはさらにきつく彼の体を締め付け、端末への接続を強化する。
「お前こそが、全歯車のデータを統合し、この空間を完全に安定稼働させるための、唯一の鍵なのだからな」レイトキは意識が遠のきながらも、歯を食いしばって睨み返す。
「鍵だなんて……俺は、お前たちの悪事を動かす鍵になんか、絶対にならない!」だが声は、彼の抵抗を意にも介さず続ける。
「抵抗は無駄だ。お前の意思も、力も、すべてこのシステムの一部となる。それが、お前の役割だ」スピーカーから冷徹な指令が響き渡る。
「ZXファクター、注入開始!」コードの先端から、不吉な紫黒い光が噴き出し、レイトキの体に一気に流れ込んでいく。それは骨髄まで焼き尽くすかのような激痛と、精神を根本から蝕む異質な干渉だ。
「うわああああああっ!!」レイトキは全身を弓なりに反らせ、絶叫する。視界は歪み、記憶や感情がばらばらにされ、自分が誰なのかさえ分からなくなりそうな衝撃が彼を襲う。
「これで包括の歯車の中枢を、完全に制御下に置く……」機械の声は平然と告げる。だが、苦痛に身悶えるレイトキの瞳の奥には、まだ消えていない黄金の輝きが、かすかに瞬いていた。胸を突き上げるような苦痛の中で、瞳の奥にかすかに残っていた黄金の輝きは、スッと完全に消え去った。
そして次の瞬間——レイトキの両の瞳は、底の見えない赤黒い色に染まり変わった。彼は絶叫をやめ、ゆっくりと顔を上げる。表情からは、かつての熱意も迷いも怒りも、すべてが削ぎ落とされ、まるで別人のように無機質な沈黙だけが残っていた。体を締め付けていたコードも、今や彼を縛るものではなく、一体化したかのように馴染んでいる。
「制御、確認……」彼の口から、かすれながらもどこか機械的な声が漏れる。
「包括の歯車、同期完了。システム中枢へ、完全接続……」スピーカーから満足げな機械音が響く。
「よし。これで、全ての歯車の力を、我々の思い通りに操れる。さあ、計画の最終段階を始めるぞ」レイトキは赤黒い瞳を、無表情に天井へと向けた。スピーカーから最終指令が冷徹に響き渡る。
「行け! コードネーム『インクルード』。侵入者をすべて排除し、クリラトンの真の目的を完遂せよ!」赤黒い瞳のレイトキは、ゆっくりと床から浮き上がる。体を巻いていた光コードが彼の意志一つで自在に伸び縮みし、周囲の空間の回路が一斉に彼の制御下に入ったことを示すように点滅する。
「了解……」彼は感情の色を一切含まない声で応答し、手のひらを前方に向ける。歪んだ空間の扉が開き、仲間たちが脱出した先へと、まっすぐ歩き出す。
「障害物、一掃。目的、最優先で実行する」かつてのレイトキの面影はどこにもなく、今や彼は、敵の計画を動かす最強の駒となって、仲間たちの前に立ちはだかろうとしていた。




