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EPISODE2-4【鏡の向こうと真実】

鏡面を手で押し開くようにくぐり抜けた瞬間、体を包んでいた光が霧のように消える。足元がしっかりと床に着いた時、一同が見上げた先は——かつて何度も行こうとして、境界にはね返され続けた、あの旧校舎の廊下だった。壁はくすんで古び、窓の外には夕暮れの空ではなく、どこまでも黒く濁った空間が広がっている。空気はひんやりと重く、ビヨンダードの気配が濃く澱んでいた。レイトキは周囲を見回し、驚きと共に納得したように言う。

「まさか……この鏡は、直接旧校舎の内部へと通じていたのか。あれだけ頑なに閉ざされていた結界の裏側に、こうして回り込めたってわけだ!」エピデンドラムは壁に触れ、その感触を確かめる。

「ここはもうクリプトンの領域ではない。ビヨンダードの侵食が完全に浸透した、歪んだ空間だ。行方不明になった生徒たちも、侵略タイプの拠点も、きっとこの先にある」レイトキは拳を握りしめ、廊下の奥へと視線を向ける。

「ならば、ここからが本番だ。奪われた場所も、攫われた人たちも、全部取り返しに行くぞ!」レイトキは気を引き締め、仲間たちを見渡してはっきりと宣言する。

「ここから先は、ただの捜索じゃない。人を救い、場所を取り戻す『レスキューリベレーションミッション』も兼ねてる!これより、この任務を開始する!」そしてエピデンドラムの方を向き、一枚の緑色の紙を手渡す。

「そうだ、ビヨンダードの領域では普通の干渉や攻撃は通用しない。これを使え!」紙には複雑な電子回路が光り輝いていた。エピデンドラムが受け取った瞬間、それはふわりと光の粒に変わり、彼の手から腕全体へと溶け込むように同化していく。

「これは……境界干渉を可能にする調整回路か!」エピデンドラムは力強く拳を握りしめ、頷く。「感謝する。これで、奴らの法則に縛られずに戦える!」レイトキも同様に、自身の力をこの領域用に切り替える。

「よし、全員準備はいいな。行くぞ——閉じ込められた者たちを、必ず解放する!」廊下を一歩進むと、足元からサイバー的な軋む音が響く。旧校舎の木製の床は跡形もなく消え、全面が光る電子パネルにすり替わっていた。表面には二進数や歪んだ回路図が絶えず流れ、踏むたびに青白い光が波紋のように広がっていく。まるで、校舎の形をした巨大なデータ施設の上を歩いているかのようだ。レイトキは床を軽く蹴り、反応を確かめる。

「ここはもう、旧校舎でもない。ビヨンダードが境界ごと塗り替え、データ空間として再構築してるんだ。踏みしめる足元から、全部が奴らの監視下にあると思え」エピデンドラムも警戒を強める。

「パネル一つ一つがセンサーかもしれない。不用意に刺激すれば、罠や敵が即座に出現する。慎重に進め!」レイトキは先頭に立ち、光の触手を床に這わせて安全な道を探りながら進む。

「だが、進むしかない。このデータの海の先に、攫われた人たちが待ってるんだ!」レイトキは仲間たちを見回し、はっきりと指示を出す。

「見逃しは許されない。各教室、隅から隅まで、一つ残らず調べ尽くすぞ!」彼は手元の端末を起動し、周囲のデータ反応をスキャンし始める。

「この床はセンサーだらけだが、逆に言えば生体反応や干渉の痕跡もはっきり分かる。異常を感じたらすぐに声を上げろ!」エピデンドラムは二手に分かれるように提案する。

「手分けした方が早い。俺とアルビテトは右側、リジェ、久美子、ホワン、レイトキは左側、斗愛、与太郎、カグラ、デュークは錯乱を担当しよう。絶対に単独行動はせず、何かあればすぐに合流だ!」

「了解!」一同は頷き合い、それぞれの教室の扉へと向かう。一つ一つの部屋を丁寧に確かめながら、閉じ込められた生徒たちの手がかりを探し始める。アルビテトはぷくりと頬を膨らませ、照れ隠しに口を尖らせながらはっきりと言う。

「まったくもう! こんな緊急任務じゃなかったら、レイと離れて別行動なんて絶対にしなかったんだからね!」隣を歩くエピデンドラムが、その様子を見てにやりと笑い、からかうように告げる。

「ほう、そうか。レイトキのこと、随分と気に入っているんだな」アルビテトは耳まで真っ赤に染め、慌てて言い返す。

「そ、そうだけど! それが何か問題でもあるの!?」その瞬間、足元のパネルが不意に強く光り、二人の言葉を遮るように警告音が響き渡った。アルビテトは耳をピンと立て、空気の変化を察知して鋭く警告する。


「エピデンドラム!気をつけて、何か来るよ!」


その声が落ちた瞬間、足元の電子パネルが亀裂を走らせ、黒い粘液のような塊が次々と噴き出す。それらは瞬く間に人型や怪物型に姿を変え、鋭い牙や爪を剥き出した変異ウィルスとなって、二人を取り囲むように現れた。

「来たか!」エピデンドラムは先ほど同化させた回路の力を腕に宿らせ、構えを固める。

「こいつらが、この空間の防衛システムそのものだというわけだ!」アルビテトは審判の光を瞳に宿らせ、一歩も引かずに言い放つ。

「この程度の違反者、さっさと裁いてやる! さあ、かかってきなさい!」アルビテトはジャッカルの耳を鋭く立て、剣を高く掲げて力強く叫ぶ。

「ディバインジャッジ!」剣の刃からは真っ白な審判の光が迸り、一閃と共に変異ウィルスの群れを薙ぎ払う。光に触れたウィルスたちは、まるでデータが消去されるかのように、黒い塵となって跡形もなく消え去った。

「法則に背く存在など、これで終わりよ!」彼女は剣を構え直し、残りの敵にも視線を向ける。エピデンドラムは光が収まるのを見届け、驚きを隠せずに目を見張り、はっきりと問いかける。

「お前、まさか神力を扱えるのか…!?」アルビテトは剣を軽く振って鞘に収め、当然のことのように胸を張って答える。

「そうだよ。ってか、アタシの父はジョンアイデル皇帝、そして母はアヌビスだからね。この力があって当然でしょ!」エピデンドラムはその血筋の重みに改めて息を呑み、深く頷く。

「なるほど……だからこそ、法則の違反を裁く力を持ち、この歪んだ空間でも通用するのか。ありがとう、お前の力があれば、この先も心強い」

アルビテトは少し照れくさそうに耳を揺らしながらも、真剣な表情で先の廊下を見据える。

「任せて。レイのためにも、アタシは全力を尽くす! さあ、行くよ、まだ調べる場所はたくさんあるんだから!」レイトキは教室の扉を軽く押さえながら、ふと胸中に浮かんだ記憶と疑問を、独り言のようにはっきりと呟く。

「そういえば俺の血筋には、ジョースター家っていうのがあったな。そういやジョンアイデル皇帝と同時期に生まれた存在が、全部で四人いるって話だった。そしてその四人は、全員神へと昇ったって――」彼は指を折りながら確かめるように続ける。

「ジョンアイデル陛下、それにジョンテ叔父さん、ジョンテイル叔父さん……。ただテリオン叔父さんだけは例外だ。あの人はもう、婚約者がはっきりと分かってるから、道も役割も最初から決まってたんだろうな」


そして先日の別れを思い返し、瞳を少し曇らせる。

「この前、アカーシャって人が父さんだと思ってたんだけど、どうやら真実は違うみたいだ。俺の本当の父は……一体誰なんだ? そしてジョースターの血と、あの四人の神との関係は――」思考が途切れたその瞬間、手元の端末が鋭い警告音を上げ、部屋の奥からかすかな人の気配が滲み出てきた。久美子はその言葉を聞き、目を見開いてはっきりと問いかける。

「もしかすると、あなたには二人のお父さんがいるってこと? つまり、キクリさんと結ばれた存在が、過去に二人いたっていうの?」レイトキは頷き、調べ上げた家系図の記録をもとに、真実を告げる。

「ああ、そういうことらしい。記録を辿ったら、アカーシャさんは最初の夫だった。だが俺と再会した時点では、もう既に別れていたんだ。彼が虚空の歯車として覚醒し、役割を全うする道を選んだから、だって」彼は少し言葉を選びながら、続ける。


「そして二人目の夫——つまり俺の本当の父親は、ジョンプリミティブっていう存在だったらしいな。まだ知らないことばかりだけど、これが今分かってる事実だ」久美子はその複雑な血筋と運命を噛み締め、静かに手を握りしめる。

「そうだったの……。それでも、あなたはあなただ。どんな出自を背負っていても、私たちが守り、共に歩く存在だってことは、変わらないわ」レイトキはその言葉に少しだけ表情を和らげ、前を向き直る。

「ああ。だからこそ、この先も真実を追い続ける。そして、誰一人取りこぼさず、全員を救ってみせる!」突然、部屋の隅からも、天井からも、床のパネルの奥からも、どことも知れぬ冷たい笑い声が、重く響き渡った。

「クククク……悪夢は、再びやってくる……」声は空間を歪ませながら反響し、まるで背後から囁かれているかのように、レイトキたちの耳元を掠める。同時に、足元の電子回路が不吉な赤色に点滅し、空気が一気に凍りつくように冷え込む。レイトキは久美子をかばうように前に立ち、左腕の端末を強く輝かせ、周囲を睨みつける。

「誰だ! 隠れてないで、姿を現せ!」だが声は答えず、代わりに廊下の奥から、ゆっくりとした重い足音が、確実にこちらへ近づいてくるのが聞こえてきた。その冷たい声は、空間全体を震わせるように重く響き渡り、核心の真実を突きつける。

「ククククク……ようやく、お前にも真実を話してやる。お前の本当の父は、確かにジョンプリミティブだ。そしてお前は、ジョースター家の元罪人であり、かつて皇位継承の儀に横槍を入れた勢力の、元メンバーでもある」声は一層低く、重みを増して続く。

「そうだ……罪を背負ったまま、それでも神となった存在、その罪はお前も背負うことになる」レイトキは拳を握りしめ、爪が手のひらに食い込む。頭に浮かんだ知らない記憶の断片、胸の奥から湧き上がる得体の知れない痛み——それらがすべて、この言葉に繋がっている気がした。

「罪を背負って神になる……?」彼は歯を食いしばり、声の主を睨みつける。

「だったらその罪とやらを、全部俺にぶつけてみろ! だがな、罪を背負ってるからって、誰かを傷つけたり、人の未来を奪ったりしていい理由にはならない! 俺は俺の道を、自分の手で切り開いてやる!」久美子はそっとレイトキの腕に手を添え、力強く頷く。

「レイくんがどんな過去や役割を背負っていようと、私は変わらずそばにいる。一緒に、その答えを探していけばいいの」その時、声はまた不気味に笑い、空間の歪みがさらに大きく広がった。その声は、嘲笑いを含んだまま、核心の謎を突きつけてくる。

「ジョンアイデルが皇帝に就任して半年後、なぜクリラトンの住民がクリプトンへと押し寄せてきたのか、不思議に思わなかったか!? あれは、何も偶然でもなければ、自然な流れでもない――誰かが、意図的にゲートを開いたからに他ならないんだよ!」 レイトキは眉をきつく寄せ、胸に鋭い違和感が突き刺さるのを覚える。

「誰が? なんのために、そんなことを……!」声は冷たく、さらに続ける。

「その答えも、お前が背負う罪の一端と、無関係じゃない。ゲートが開かれた時、その先に何が待っていたのか――侵略、干渉、そして今も続く歪みのすべてが、その一つの選択から始まったんだ」足元の赤いランプが一斉に激しく点滅し、空間の歪みは限界まで広がる。レイトキはアカシックレコードの記憶を必死に辿り、隠された真実の糸を掴もうとする。

「ならば、その『誰か』を、そしてすべての真相を、俺の目で確かめてやる! 隠し通せると思うな!」その声は、まるで全てを見透かしているかのように、冷徹に核心を突きつける。

「そんなにかっこつけなくても、答えはもうお前の中にあるだろう。あのゲートを開いたのは、他でもない――お前の父、ジョンプリミティブ自身だ。自らの研究によってな」その言葉が落ちた瞬間、レイトキの全身が一瞬で凍りついた。頭の中が真っ白になり、先ほどまでの決意が、ガラスのようにひび割れる音が聞こえた気がした。

「父が……ゲートを?」彼はかすれた声で呟き、拳を握りしめる手が震える。

「なんで……そんなことをしたんだ? いったい何のために……!」声は答えず、ただ不気味な笑いだけが空間に満ちていく。久美子はレイトキの震える手を両手で包み込み、力強く言う。

「それが本当だとしても……それが彼の全てじゃない。理由があったはずだし、それを知って、そしてどう受け止めるかは、レイくんが決めることよ。私はずっと一緒だから」レイトキは彼女の手の温もりを感じ、ゆっくりと顔を上げる。瞳にはまだ迷いがあるものの、揺るぎない決意が再び宿り始めていた。

「……そうだ。俺は、真実から逃げたりしない。父が何をし、何を背負い、そして何を願っていたのか――最後まで確かめてやる!」その声は、かつての選択の裏にあった想いと歴史の事実を、淡々と紐解いていく。

「ジョンプリミティブがゲートを開いたのは、侵略のためじゃない。異なる世界と交流し、互いに発展し、真に分かり合える関係を築きたいと願ったからだ。それに、クリプトン以外にも特殊な力が息づく世界があるのではないか——そんな純粋な興味も、確かにあった」声は少しだけ響きを変え、過去の記録を語るように続く。

「興味が湧くのも無理はない。クリプトンのマーテラという星が、無幻想世界の地球と融合して『チキュー』という新たな星に生まれ変わる、そのずっと前から、『クリラトン』という別の世界の存在は、度々説かれてきたんだ。そしてその記録は、ジョンアイデルが皇帝に就任するよりもずっと前から、この星に確かに残されている」レイトキは固く閉ざしていた心を少しだけ開き、その言葉を噛み締める。

「父は……悪意からじゃなく、繋がりを求めて、未知を知りたくて、その一歩を踏み出したんだな。それなのに、どうしてこんな形で歪んでしまったんだ?」久美子は静かに頷き、補うように言う。

「願い自体は、決して間違ってなかった。ただ、その一歩があまりにも大きく、そして誰も予想できなかった力を持っていただけなのよ。そして今も、その先を行きたがっている人たちがいるのも、また事実なの」レイトキは拳を緩め、前を向き直る。

「ならば俺は、父が描いたその願いを、正しい形で実現してみせる。侵略も奪い合いもない、本当の交流の道を——それが、今の俺にできる、父への答えだ!」声は重く、過去の非業な結末を突きつける。


「だが、残念ながらクリラトンの法則は、クリプトンのそれとは根本から違っていた。その大きなズレが災いし、中には一方的にこちらを支配しようとする侵略タイプの者たちも現れてしまったんだ」


「『ゲートさえ開かなければ、こんな混乱は起きなかった』――そう決めつけられ、ジョンプリミティブはあらゆる責任を一身に背負わされ、犯罪者という烙印を押された。純粋に交流を願ったその想いが、代償として罪のレッテルに塗り替えられたんだよ」


レイトキは胸を締め付けられるような痛みを感じ、歯を食いしばる。

「父は何も悪くなかった……ただ、未知の世界と手を繋ごうとしただけなのに、誰もその先の危険を、そして彼の想いを、理解しようとはしなかったんだな」久美子は涙ぐみながらも、はっきりと言う。

「そんなの、あまりにも残酷だわ。結果だけを見て、願いそのものを否定するなんて……」レイトキはゆっくりと顔を上げ、その瞳には決意の光が強く宿る。

「だからこそ、俺が証明する。父の想いは間違いじゃなかったって。そして、この歪んだ歴史を、俺の手で正してみせる! 罪の烙印も、過去の誤解も、全部受け止めて、真の交流の道を切り開いてやる!」声は、過去に消えなかった痛みを、まるでその場に再び蘇らせるかのように語り続ける。


「それでも悪夢は終わらなかった。自分の純粋な願いが踏みにじられ、犯罪者の烙印を押されたことで、ジョンプリミティブの心には、無実の罪を着せた者たちへの怒りと、報われぬ想いへの恨みが、少しずつ澱のように積もっていった」


「それでも彼はキクリと共に、押し寄せる侵略者たちに対し、最後まで戦い続けた。自分が招いた混乱だからこそ、自らの手で収めようと。だが、どれだけ戦い、どれだけ結果を出しても、周囲の誤解は解けず、赦しの言葉はついに彼に届くことはなかった」


レイトキは胸が締め付けられ、言葉も出ずに拳を握りしめる。正しいことを信じ、戦い続けた者が、報われるどころかずっと責められ続ける——その寂しさと悔しさが、自分のことのように心に突き刺さる。

「なんてこった……最後まで、一人で背負わせてしまったんだな」久美子も瞳を潤ませ、静かに続ける。

「誰か一人でも、彼の心に寄り添い、その想いを理解してくれる人がいれば、道は変わっていたかもしれないのに……」レイトキは涙を拭い、真っ直ぐに前を見据える。

「だが、その寂しさも、悔しさも、もう終わりにする。俺が父の想いを受け継ぎ、そして誰もが互いを理解し、赦し合える世界を作る。それが、父に届けるべき、本当の答えだ!」声は、隠された最も大切な真実を、重く響かせて告げる。

「そうしてキクリとの間に、一人の子供が授かった。その子こそが、他でもない――レイトキ、お前なんだ。だが、周りの連中はその事実を受け入れようともせず、父親に押しつけた罪のレッテルを、そのまま無邪気なお前にまで被せようとした。何の罪もないお前にまで、だ」レイトキは思わず息を呑み、自分の胸に手を当てる。今まで抱えていた違和感、どこか心の奥にあった「自分は居てはいけない存在なのでは」という小さな不安が、やっとその正体を現した。

「俺が……父さんと母さんの、本当の子供だったんだな。それなのに、俺まで罪人の子だって――」言葉が途切れ、喉が詰まる。久美子は両手でレイトキの手を強く握りしめ、真っ直ぐに瞳を見つめる。

「そんなの、間違いだわ! 罪は誰かに押しつけるものでも、血筋で受け継ぐものでもない。レイくんは、ジョンプリミティブさんとキクリさんの、誇るべき子供なのよ!」レイトキはその言葉に救われるように、少しだけ涙を浮かべながらも、強く頷く。

「ああ。俺は俺の道を行く。誰がなんと言おうと、父さんの願いを無駄にしない。そして、この誤解だらけの歴史を、俺の手で塗り替えてみせる!」声は、あまりにも残酷な偶然を突きつけてくる。

「ジョンプリミティブは、お前が小学生くらいになった頃、あえて保護施設に預けたんだ。周囲の誤解や危険から、お前を何が何でも守り抜くために――なのに、その選んだ施設こそが、ストレンジプレデターが秘密裏に実験体を集めるために運営していた場所だったんだよ」その事実が明かされた瞬間、レイトキは全身の力が抜け落ちそうになる。父親が我が子を想って尽くした、ただ一つの「守るための選択」が、最悪の結果を招いてしまったのだ。

「守りたくて、預けた場所が……敵の手の中だったなんて……」言葉は震え、声は掠れる。父の後悔、無念、そして自分自身が辿った運命の皮肉さが、一気に胸を襲う。

久美子は腕を回し、レイトキを強く抱きしめる。

「それは……誰が悪いわけでもない。お父さんの愛も、レイくんの苦しみも、全部が踏みにじられた、最悪の悪意の仕業なのよ!」レイトキは彼女の肩に顔を埋め、一度だけ大きく息を吐く。そしてゆっくりと顔を上げ、その瞳には悲しみと共に、燃えるような決意が宿っていた。

「ならば、俺はその過ちを、そしてこの運命を、絶対に無駄にしない。父が守ろうとしてくれた命で、俺は全ての実験体を救い、こんな悪意が二度と生まれない世界を作ってみせる!」その言葉は、あらゆる世界の理を突きつけるように、静かに響き渡る。


「悪意は、必ず生まれるものだ。善意がある限り、それを利用し、踏み躙り、歪めようとする悪意も、また必ず存在する」


レイトキは拳を固く握りしめ、その言葉を真正面から受け止める。

「それが、この世界の定めなのか……? だったらなおさらだ! 俺はその悪意になんか、絶対に負けない! 善意が悪用されるだなんて、あってはならないんだ!」彼は久美子の手を強く握り返し、揺るぐことのない想いを声に乗せる。

「悪意があるなら、俺たちはもっと強く、もっと大きな善意で応えるだけだ! 誰かが純粋に手を伸ばそうとしたとき、それを支え、守り、最後まで共にいられる場所を――俺が作ってみせる!」声は再び不気味な笑いを零すが、もうその響きには、レイトキを揺るがす力はなかった。

「ククク……ならば、その覚悟、本物かどうか、確かめさせてもらうぞ」

同時に、足元の赤いパネルが一斉に点灯し、奥の扉がゆっくりと開き始めた。

[無幻想世界]

いわゆる人間界に該当する世界。クリプトンやビヨンダードとはもちろん別の世界。

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