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EPISODE1-10【準備と開店など】

新しく用意されたテナントの店内に、レイトキたち全員が集まっていた。机や棚、受付カウンターも設置され、電源や通信回線も整い、あとは看板を掲げるだけという状況だレイトキは壁の空いたスペースを見上げ、はっきりと提案する。

「店の名前だが――“クロノギア”にしよう」その言葉に、仲間たちは一斉に視線を向ける。

「クロノギア……時間と歯車、という意味だな」リジェが腕を組みながら口にする。

「偶然ではないだろう?」

「ああ」レイトキは頷き、胸元に手を添えるようにして続ける。「俺たちがこれから関わることの中心には、時間を操るコードも、世界を動かす歯車もある。だが表向きには、困っている人のために『動きを整え、道を開く』という意味にもなる。どちらの顔にも合っていると思ったんだ」

久美子は手を叩いて笑顔を見せる。

「いい名前だ! 響きも力強いし、何でも屋らしい柔軟さも感じられる。看板には文字だけでなく、歯車と時の流れを模したマークも入れれば、より分かりやすくなるわ」斗愛も肩を回しながら賛成する。

「クロノギア、か。何でも依頼を受けて、必要ならどんな場所にも駆けつける――まさに歯車のように回り続ける拠点になりそうだな!」与太郎、カグラ、デューク、ゼロ、アルカも次々に頷き、名前に同意する。

「歯車のように正確に、時間のように絶え間なく――そんな理念を込めるには最適だ」デュークが堂々と言うと、アルカも手を上げて元気よく叫ぶ。

「決まり! これからは『クロノギア』として、街のみんなの力になるんだね!」こうして彼らの新しい活動拠点には、「クロノギア」という名前が定まり、看板の文字が刻まれると同時に、普通の便利屋でありながら、世界の運命を左右する争いの中心となる場所として、静かに開店の時を迎える準備が整ったのだった。レイトキはペンを取り出し、さらさらと紙の上に描き始めながら、はっきりと説明する。

「マークはこうしよう。歯車を中心に、CとGの文字を組み合わせたデザインにする」描かれた図を皆の前に向けて示す。円形の歯車の輪郭の中に、左側には「C」、右側には「G」が滑らかに溶け込むように配置され、歯車の歯の部分が文字の曲線と自然につながっている。シンプルだが力強く、一目で記憶に残る形だ。

挿絵(By みてみん)

「Cは『クロノ』、Gは『ギア』の頭文字だ。歯車そのものが時間の流れと世界の動きを象徴しているから、名前と意味がそのまま形になる」久美子が顔を近づけて感心したように頷く。

「なるほど! 遠くから見ても歯車だとわかるし、文字も隠れすぎずちょうどいいバランスだね。表向きは普通の店のロゴとして通用するけど、俺たちには別の意味も込められている」リジェも腕を組んでうなずく。

「余分な飾りがなく、機能的で安定感がある。看板だけでなく、伝票や備品、移動用の機体にも使い回せるデザインだ」

「これで決まりだな!」斗愛が手を叩く。「このマークが街で知られるようになれば、『クロノギア』の名前も自然に広まっていくだろう」レイトキは描き終わった紙をテーブルの中央に置き、皆の顔を見渡して宣言する。

「よし。このロゴを元に看板を作ってもらおう。これが俺たちの印になる――何が起きようと、この歯車が回り続ける限り、俺たちの活動も続いていく」アルカは元気よく手を上げ、明るい声で提案する。

「よーし、決まったらこの名前とマークをSNSなどで広めていこう!」少し考えるように指を顎に当て、続ける。

「だけど、私たちまだ学生だよね? 授業や課題もあるから、活動できる時間は放課後から夕方、夜にかけて中心になるね」レイトキは頷き、現実的な調整案を口にする。

「確かに。昼間は学校にいるから、依頼の受付はメッセージや掲示で随時受け付けつつ、実際の作業や訪問対応は夕方以降にまとめて行う形にしよう」久美子もうなずいて補足する

「それなら学業との両立もできるし、急ぎでない依頼には事前に日程を調整してもらえば大丈夫。SNSには営業時間をはっきり書いておけば、混乱もないわ」リジェも賛同する。

「時間帯を決めておけば、地下の作業スペースで情報整理や装備の点検も計画的に進められる。表の営業と裏の調査、どちらも無理なく回せる」

アルカはすぐに端末を取り出し、笑顔で言う。

「じゃあ早速、プロフィールを作って投稿するね! 『クロノギア』――時間と歯車のように、困りごとを解決します! って感じで♪」こうして、学生らしいスケジュールを軸に、彼らの活動は現実的な形で軌道に乗り始めた。レイトキは手帳に時間割を書き込みながら、はっきりと営業時間を定める。

「じゃあ明確に決めておこう。月・火・水・木・金曜日は学校があるから、18時から22時までを営業時間にする。放課後から少し余裕を持って対応できる時間帯だ」次に週末と休みの日の予定を続ける。

「土・日・冥海曜日は一日中動けるから、朝8時から11時と13時から17時と19時から22時までと長めに取る。遠出の依頼やじっくり調べものをする仕事にも対応できるようにな」最後に休養日を調整する。

「天曜日は少し短めにして、8時から11時と13時から17時と19時から21時まで。体を休める時間も確保しないと、長く続けられないからな」アルカは端末に入力しながら頷く。

「わかった! この時間をSNSや店の入り口にも掲示しておくね。急な連絡用の連絡先も書いておけば安心だ」久美子も確認するように言う。

「授業との両立にも無理がないし、裏の作業時間も確保できる。これで依頼を受ける体制が完全に整ったわ」レイトキは皆を見渡し、最後に宣言する。

「よし、これで『クロノギア』の営業ルールが決まった。この時間を守りつつ、街の人たちの役に立てるように動いていこう」レイトキは自分たちの体質を踏まえて、無理のない生活リズムを整理するようにはっきりと言う。

「そうだ、俺たちは混因人だからな。普通の人間より少ない睡眠時間でも体が回復するようにできているらしい」手帳の時間割に追記しながら続ける。

「だからといって寝ないわけにもいかないが、最低でも日付が変わるか変わらない頃に休めば十分だ。営業が終わる21時以降の時間も有効に使える」仲間たちの方を向いて具体的に説明する。

「21時30分からは、学校の宿題や課題が残っていればそれを済ませる。終わったら体と頭を休める時間にする。これなら学業も活動も両立できるし、無理なく長く続けられるだろう」久美子は納得したように頷く。

「確かにそうだね。普通の人が7~8時間寝るところを、俺たちは半分強くらいで済むんだから、その分を準備や調査に回せるのは大きな利点だ」 リジェも補足する。

「だからといって限度を超えて夜更かしし続ければ、いずれ支障が出る。このくらいのペースが丁度いい」レイトキは笑みを浮かべて締めくくる。

「ああ。自分たちの性質を知って、上手に付き合っていく。これが『クロノギア』を長く続けるコツだな」ストレンジプレデター本部の指令室。モニターには「クロノギア」の名前と営業案内、SNSのアカウント情報が映し出されていた。マズミは画面を眺めながら、低い声でつぶやく。

「ふん、あの連中が何でも屋として表立って活動を始めるとはな」その背後から空間がわずかにゆらぎ、フィーアの姿が静かに浮かび上がる。

「接触を試みますか? 表の顔を利用して近づけば、彼らの動きや拠点の様子を探るチャンスになります」マズミは指で机の端を軽く叩き、少し考え込むような調子で答える。

「うーん、悩みどころなのよね。JOKERであるレイトキを相手に、下手に近づけば逆にこちらの意図を読まれる恐れもある。だが、彼らが動く限り、コードや歯車に関する情報も集まりやすくなる……」そんな話が続く中、まるで空気がほどけるように、もう一人の姿が現れた。白いフリルがあしらわれた紫のワンピースを身にまとい、柔らかな笑みを浮かべた女性が、まるで遊びに来たかのような軽やかな足取りで歩み寄る。

「あらあら、楽しそうな話をしてるわね、マズミちゃん」その声が響くと、指令室の空気が一瞬だけ変わり、マズミもフィーアも自然と姿勢を正す。この女性が、単なる幹部ではないことを、誰もが知っていたからだ。マズミは振り返り、目の前の女性を見ると少し驚いた表情になり、はっきりとした口調で言う。

「ユーカリ……アンタがここに来るなんて思わなかったわ。ましてやボーダーコンツェルンの大令嬢が、こんな現場の指令室まで顔を出すなんてね」フィーアもわずかに息を呑み、背後に控えるように姿勢を正す。ボーダーコンツェルンは次元境界の管理と流通を一手に握る巨大勢力であり、そのトップクラスの血筋であるユーカリが直接現れるのは極めて異例のことだった。ユーカリは柔らかく笑みを浮かべ、指先でワンピースのフリルをなぞりながら答える。

「堅苦しい呼び方はいいわよ。たまには外の空気を吸いに来ただけ。それに……レイトキたちの動きが面白くなってきたって聞いたから、自分の目で確かめに来たの」マズミは警戒心を隠さず、鋭い視線を向ける。

「面白い、だけ? ボーダーコンツェルンがこの争いに関わるつもりなら、それは我々にとっても無視できない話になるわ」ユーカリは笑みを絶やさず、モニターに映る「クロノギア」のロゴをちらりと見やる。

「関わるかどうかは、これからの展開次第ね。……でもね、あのJOKERと呼ばれる少年が何を選ぶのか、私自身も興味が湧いてきたのよ」マズミは真剣な眼差しをユーカリに向け、疑念を隠さずはっきりと切り出す。

「君の考えていること、どうにも読み取れないんだよね。過去に重罪で収監されていた囚人たちを、わざわざ手続きを踏んで釈放した上に、さらに身体や能力まで改造を施しているんだからさ」机に肘をつき、指を組みながら続ける。

「普通なら危険因子として隔離しておくのが常識だ。それをわざわざ戦力として使えるように仕立て上げる――そこまで手間をかけるからには、単なる興味だけでは済まない大きな目的があるはずだ」フィーアも無言のままユーカリの反応を注視し、指令室の空気に緊張感が漂う。だがユーカリは相変わらず柔らかい笑みを浮かべたまま、指先で紫のワンピースの裾をなぞりながら答える。

「まあまあ、そう難しく考えなくてもいいじゃない。使えるものは活用する、それだけのことよ。彼らは『元囚人』というだけで、新しい力を与えれば新しい道を選ぶ可能性だってある」少しだけ瞳の奥に冷たい光を宿らせ、続ける。

「それに……歯車もコードも、ただ持っているだけでは意味がない。誰がどう使うか、どんな駒を動かすかで結果はまるで変わるの。私はこの先の展開に、より多くの選択肢を用意しているだけよ」マズミは眉を寄せ、その答えに納得できないまま、さらに問いを重ねる構えを見せるのだった。ユーカリは口元に含み笑いを浮かべ、話を続ける。


「それにね、私にはもっと面白い駒も手に入っているのよ。……出ていらっしゃい、カトレア」彼女の声が落ち着くと、指令室の奥の暗がりからゆっくりと一人の女性が姿を現した。

挿絵(By みてみん)

真っ白な白衣をすっきりと着こなし、手元には薄いデータ端末を持っている。表情は無表情に近く、瞳には研究対象を見るような冷静な光が宿っている。一歩踏み出すごとに、周囲の空気がわずかに張り詰めるような感覚が生まれる。カトレアはユーカリの前で足を止め、静かに一礼する。

「ご指名があると聞いて、すぐに参りました」マズミとフィーアは一瞬視線を交わし、この新たな人物が何者なのかを探るように見つめる。ユーカリは誇らしげにカトレアを紹介するように言う。

「この方がカトレア。元々はSMOの最高研究者だったが、過去の事件で行き場を失っていたところを私が保護したの。改造手術の設計から、因子の調整、さらにはクロノコードの適合実験まで、何でもこなせる腕利きよ」カトレアは淡々と補足する。

「レイトキ=ジョースターの解析データ、奪取したクロノコードの断片など、それに改造体の反応記録……すべて私の手元で整理してあります。JOKERとしての適合率、コード同士の共鳴パターン、どこに弱点があり、どこを突けば力を引き出せるか――数値としてはっきりと見えています」その言葉に、マズミは改めて事態の深刻さを感じ取る。ユーカリが用意している駒は、単なる戦力だけでなく、敵の本質までも解析できる「鍵」そのものだったのだ。マズミは手を前に出して制止するような仕草を見せ、はっきりと声を上げる。

「待ちなさい。私たちの目的は、最初からあの連中を壊すことではないはずだ」鋭い視線をユーカリに向け、誤解のないように念を押す。

「レイトキはJOKERとして唯一無二の存在だし、クロノコードも歯車も、破壊してしまえばそれだけで価値がなくなる。お前の駒たちを使って力任せに潰そうという考えなら、それは我々の方針に反する」ユーカリはそれを聞いて、口元に余裕の笑みを浮かべながら、ゆっくりと答える。

「安心しなさいな。壊したりなんてしないわ。そんなことをしたら、これほど面白くて貴重な材料と可能性を失ってしまう――勿体ないにもほどがあるじゃない」彼女は指先で自分の髪を一房つまみ、続ける。

「彼らを敵として叩き伏せるのではなく、どう動かせば最も望ましい結果が得られるかを考えているだけよ。JOKERの力も、コードの性質も、カトレアの解析データも……全部を活かして、この世界の歯車を私の思い通りに回すために使うの。壊すなんて、最低ランクの選択肢よ」カトレアも無表情のまま、端末の画面を見つめながら淡々と付け加える。

「破壊よりも制御、制御よりも共鳴。データ上では、レイトキとコード、さらに改造体たちを同調させる経路が存在することが確認されています」マズミはその言葉に、さらに深い計画が隠されていることを感じ取り、警戒を緩めることなく次の言葉を待つのだった。ユーカリは笑みを少し深め、自分の真の狙いをはっきりと明かすように続ける。

「だいたい勘違いしないでね。私は歯車を集めたり、コードの在処を探し回ったりすること自体が目的なわけじゃないの」紫の瞳に冷静な光を宿らせ、言葉に力を込める。

「あくまでも、それらが秘めている真の力を引き出すこと――それだけが私の目的なのよ。歯車もコードも、ただ手元に並べて保管しているだけでは単なる記号や部品に過ぎない」指を空に向けるようにして、続ける。

「どんな法則の枠も超え、時間や次元の流れさえ書き換えられるような、根源的な力そのものを目覚めさせる。そのためには、JOKERであるレイトキの存在も、お前たちの組織の動きも、全部が必要な駒になるってわけ」カトレアも端末の数値を示しながら淡々と補足する。

「解析結果からも、単体では不完全な力が、複数の要素が共鳴することで初めて最大限の出力に達することが確認されています。探すことは手段に過ぎず、引き出すことが最終目標です」マズミはその言葉を聞き、ユーカリの計画が単なる争奪戦をはるかに超えた規模にあることを改めて理解し、口を閉ざして次の展開を見守ることにした。ユーカリは少し挑発的な口調で、はっきりと現状を指摘する。


「それにね、あなたたちは歯車の在り処について、まだ一つも確かな情報を掴めていないじゃない。幹部クラスの人員をあれだけ揃えて動かしているというのに、結果がこれでは効率が悪すぎるわ」


指先をゆっくりとテーブルの上で滑らせながら、自分たちの優位性を明かす。

「だけどこちらは違う。歯車を受け入れる『器』となり得る候補者たちが今どこにいて、どんな状態にあるか、すでにだいたいの所在を把握しているのよ」そして、核心となる予測を告げる。

「その中でも特に重要な『契約の歯車』にふさわしい器は、時間が経てば経つほど、自然とJOKERであるレイトキの側に引き寄せられ、ついていくことになるわ。これは力同士の相性と共鳴の法則から言って、間違いない流れなの」カトレアもすぐにデータを呼び出して補足する。

「解析によれば、契約の歯車は『意思との結びつき』を最も重視する性質を持っています。どんなに強引に力を奪おうとしても、その意思が歯車の求めるものと合致しなければ、完全な制御は不可能です。レイトキの存在は、その条件を満たす最も近い存在として、自然に歯車を呼び込む磁石のような役割を果たします」マズミは唇を引き結び、自分たちの進め方が単なる力任せでは通用しないこと、そしてユーカリがすでに一段先を読んでいることを痛感するのだった。ユーカリは余裕のある表情のまま、さらに核心的な情報を告げる。


「それだけじゃないわ。夢幻、時空、創世の歯車――これら最も根源的な力を持つ三つの歯車の『器』が今どこにいるかも、私たちは把握しているのよ」


マズミとフィーアは息を呑み、身を乗り出すように反応する。これら三つは、他の歯車とは次元の異なる力を秘めているとされ、長らく所在不明とされていた存在だった。だがユーカリはすぐに続けて、その難しさも明かす。

「ただし、これらは神域と呼ばれる結界の内側にいる。どんな実力者でも、準備なしに踏み込めば法則そのものに干渉され、存在ごと崩れ去ってしまう。迂闊に手を出せる相手ではないわ」カトレアが端末に神域の構造図を映し出し、淡々と解説を加える。

「神域はこの世界の外縁にある特殊な領域で、通常の空間座標が通用しません。三つの歯車の器は、それぞれの領域の守護を受けながら力を眠らせている状態です。侵入経路を探すだけでも数年単位の解析が必要で、力ずくで突破しようとすれば、歯車自身が暴走する危険性が極めて高くなります」ユーカリは指で画面の三つの地点を指し示し、冷ややかな笑みを浮かべる。

「だからこそ、焦る必要なんてない。レイトキがJOKERとして成長すれば、いずれ彼自身が神域への道を開くことになる。そのときこそ、これらの歯車の真の力が目覚める瞬間が訪れるのよ」マズミはこの言葉を聞き、ユーカリの計画が単なる争奪戦ではなく、何年も先を見据えた長期的なものであることを痛感し、改めて警戒心を強めるのだった。ユーカリは端末に映る歯車一覧をなぞりながら、落ち着いた口調で続ける。

「残りの革命、終焉、混沌、審判、時空……その他の歯車の器たちについても、今わざわざ手を出す必要なんてないわ」マズミが眉を上げて問い返す。

「手を出さなくても、どうなるというの?」

「決まっているじゃない」ユーカリはゆっくりと頷く。「力の流れと共鳴というのは自然なもの。最終的には、すべてが一つの中心へと引き寄せられ、集まる運命にあるのよ」カトレアがデータを補足するように言葉を挟む。

「解析上、歯車の器同士には互いを呼び合う性質があります。特にJOKERであるレイトキが存在する限り、彼自身が最も強力な磁場となります。無理に追いかけて奪おうとするより、自然な流れに任せた方が、損傷や暴走のリスクも抑えられます」ユーカリは紫の瞳に確信を宿らせ、宣言する。

「だから今は静観していればいい。レイトキが歩みを進め、力を深めていくほど、それぞれの器は自ずと彼の周りに集まってくる。そのときこそ、全部の歯車が揃った真の姿を目の当たりにできる――それが私の待っている結末なのよ」指令室には、すべてを先読みしているかのようなユーカリの余裕が漂い、マズミたちは自分たちがまだ全体の計画の一部に過ぎないことを改めて思い知らされるのだった。ユーカリは手を軽く振って歯車の話を打ち切るようにし、話題を一気に実務的な方向へと切り替える。

「そんなことよりもゲート作成装置の調整が最優先事項よ。まあ、あなたたちはオリジン・クロノコードを一つだけ回収できたようだけれど、その進め方はとにかく非効率的すぎるわ」

指で机の上の制御盤を軽く叩き、命令の口調を強める。

「次元間を安定的に繋ぐゲートがなければ、どんなに情報を集めても力を運ぶことも展開することもできない。これ以上手間取るわけにはいかない。システム内の全ての補助AIをフル稼働させなさい。計算、補正、安全確認、エネルギー調整……処理できるものは全部動員して、最短で安定稼働まで持っていくのよ」カトレアはすぐに端末を操作し、システムの負荷状況を確認しながら応じる。

「了解しました。現在のゲート試作機はエネルギー効率が32%に留まっていますが、全AIを起動させて並列処理を行えば、調整時間を約7割短縮できる見込みです。クロノコードの断片も補助的な安定化要素として組み込みます」マズミも慌てて端末を操作し、指令を下す。

「直ちに実行する。エネルギー供給系統を最大出力に切り替え、監視ネットワークを拡張して異常発生時の遮断体制も強化する」ユーカリは満足げに頷き、再び余裕の表情に戻る。

「そうよ。手段よりも結果を重視すること。ゲートが完成すれば、神域への接近も、コード同士の共鳴実験も、一気に選択肢が広がる。それまでの準備を怠らないことね」指令室は瞬く間に動き出し、次の段階へ向けた作業が本格的に始まっていくのだった。一方、ミクスタッド宮殿の重厚な執務室。壁一面に広がる水晶のスクリーンには、複数の界域をまたぐ情報網の流れが複雑な光の線となって映し出されていた。ジョンアイデルは肘をつき、指先で顎をなぞりながら、まるですべてを予見していたかのような落ち着いた口調で告げる。

「やつら……ストレンジプレデターとボーダーコンツェルンの連中が、ついに本格的に動き始めたようだな」

視線をスクリーン上の警告マークに向け、続ける。

「他の界域に張り巡らされたインターネット網、つまり情報の通り道を次々と狙い、オリジン・クロノコードの断片や本体を奪取して回っている。通常の防壁では彼らの侵入プログラムを止められず、保管されていたデータコアが次々と空白に書き換えられているのが確認できる」側に控えた補佐官が緊張した声で報告を重ねる。

「はい、すでに四つの界域で痕跡が発見されました。痕跡から推測すると、単なるデータのコピーではなく、コードそのものを『抽出・移転』する技術を使っているようです。彼らのゲート装置の開発も進んでいると見られます」ジョンアイデルは深く息を吐き、静かに頷く。

「ゲートが完全に安定する前に、力の元となるコードを集めて備えようという算段だ。だが忘れているようだな……コードは単なる情報ではなく、意志と世界の均衡と結びついた存在だ。無理に奪っても、真の制御権が手に入るとは限らない」彼はスクリーンの中心に浮かぶ「クロノギア」のロゴを一瞬だけ映し出し、瞳に確かな光を宿らせる

「だがこれで、レイトキたちにも本格的な試練が始まる。彼らが何を選び、どう力を使うか――今こそ、この世界の行く末が試されるときだ」

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