EPISODE6-21【ドネイター】
胸の奥に押し込めてきた想いを吐き出した後——ドネイターは決意を込めて振り返り、先へと進む道を示す。
「来なよ、儀式の場に」その声には怒りだけでも絶望だけでもない——全ての答えをその場で出そうとする覚悟が込められている。ドネイターはそのまま振り返ることなく、奥へ奥へと歩を進める。長い回廊の先、仄暗い光が漏れる扉が見えてくる——そこが、全ての始まりであり終わりの場所。クロノレイトは彼女の背中を見つめ、一行に合図を送る。
「行こう。彼女が本当に望んでいるもの——その目で確かめるんだ」星玲奈は頷き、手を胸元に置く。
「はい。どんな結末が待っていても、ちゃんと向き合いましょう」ウプアト、ゼロ、仲間たちが一斉に頷き、続く。ドネイターの歩幅に遅れぬついていくように、一歩一歩、確かに前へ——。こうして——導かれる最深部! 儀式の場で全てが明らかに! 物語、最終章のクライマックスへ——!広大な儀式場の中心には、濃く黒く輝く魔法陣が床一面に刻まれ、その上にはサタン因子が妖しく浮かび、蠢いている。周囲には紫がかった禍々しい気——穢れが渦巻き、空気自体が重く、肌に刺さるように淀んでいる。
窓の外は射手(亥)月31日の夕暮れ。朱に染まる空が、儀式場の闇と対照的に滲んでいる。ドネイターは陣の前に立ち、夕焼けを背に、はっきりと告げる。
「あと数時間後、サタンが降臨する」声に迷いはない。そして鋭い視線をゼロへと向け、指差す。
「おまけにアンタたちは、サタンの因子が入ってるものを図らずとも持ってきた。そう——彼をね」一同は息を呑み、ゼロに目を向ける。ゼロ自身も瞳を見開き、自分の胸元を押さえる。
「俺が……?」
「そうよ」ドネイターは続ける。
「聖書の力と共に、その身に宿していた。気づかぬうちに、完璧な『器』としてここへ来てくれた。これで儀式は完璧になる」クロノレイトは一歩前に踏み出し、叫ぶ。
「そんな! ゼロはただ——!」
「運命だと思えばいい」ドネイターは冷や声を強める。
「誰も悪くない。ただ、そういう定めだっただけ…」 だがその瞳の奥には、決して「定め」などと納めきれない葛藤が、夕暮れの光のように揺らいでいる——。 こうして——明かされた真の器! ゼロに宿る秘密! 物語、数時間後に迫る降臨——!ゼロは胸元に手を当て、自身の内側を確かめるように瞳を閉じる——。すると、先ほどまで微かに感じていた重く禍々しい気配が、すっかり消え失せていることに気づく。
「……抜けている」思わず声が漏れる。ゼロは周囲に向かってはっきりと告げる。
「サタンの因子が、俺の体から抜けている」ドネイターは眉を上げ、一瞬たじろぐ。
「え……? そんなはずはない。聖書の歯車と共に、完全に融合していたはずなのに……」クロノレイトはすぐに状況を捉え、力強く言う。
「聖書の力が、その因子を浄化し、外へ導き出したんだ。ゼロは誰の犠牲にもならない!」ゼロは拳を固め、真っ直ぐにドネイターを見据える。
「俺は器じゃない。俺は俺自身だ。誰かのために消されることなんて、ないんだ!」星玲奈も瞳に希望を宿して頷く。
「そうです……。その証拠に、ゼロさんは今こにいて、自分の言葉で話しています」ドネイターの指が震え始める。計画の核心が、突然崩れ始めた——。こうして——器ではない! 浄化されたサタン因子! 物語、運命が覆り始める——!予期せぬ展開にも動じることなく、ドネイターは決意を固め、自らの胸元へと手を伸ばす——。
「計画は変更だね」冷ややかな声が響くと同時に、浮かんでいたサタン因子が濃い闇の流れとなり、彼女の体へと吸い込まれていく!
「やめてください!」星玲奈が叫ぶ。「それはあまりにも危険です! ご自身が飲み込まれてしまいます!」クロノレイトは一歩前に踏み出す。
「それでは、あなたが犠牲になる! 自分だけを道連れにするなんて!」ドネイターは身を震わせながらも、譲らぬ意志で応える。
「構わない……。誰かが受け入れなければならないのなら、私がなる。同じ痛みを知る者として、最後に責任を負う」闇が彼女の輪郭を濃く縁取り、瞳の色が変わり始める。自らを「器」と定め、全てを一身に引き受けようとする覚悟——それは彼女なりの「救済」の形だった。ゼロは強く訴える。
「それは責任じゃない! 逃げてるだけだ! あなたの命は、そんなに軽いものじゃない!」だが因子は完全に溶け込み、ドネイターの姿は禍々しく変わり始める——。こうして——自らを器と定め! サタン因子が宿り! 物語、最終決戦がいよいよ始まる——!魔方陣の光が全身を包み込む中、ドネイターは自らに言い聞かせるように、はっきりと呟く。
「最初からそうすればよかったんですね」瞳の奥には諦めにも似た決意が沈み、闇の色に染まりゆく。
「そう、ワタシが器になればよかったのですね」サタン因子が彼女の内側から蠢き、声まで重く濁らせていく。それでも彼女は己の選択を肯定するように続ける。
「これで、叶う。人間とそれに与する亜人達の皆殺し」陣の光が一際強く輝き、空気が震える。
「ついでに醜い実験動物も消せる」その言葉が宙に落ちた瞬間——クロノレイトが一歩も退かず、真っ直ぐに叫ぶ。
「違う! 誰も醜くなんてない! 造られた命も、生まれた命も、同じように尊いんだ!」星玲奈は胸を締め付けられながら訴える。
「そうです! あなた自身も……亜人間であるあなた自身も、消す必要なんてない! あなたは何も悪くない!」ゼロは拳を握りしめ、力強く言う。
「俺たちは道具じゃない。だから消される謂われもない。そして、あなたも犠牲になる謂われなんて、どこにもない!」ウプアトが剣の柄を握り、厳しく告げる。
「自らを犠牲にしても、望む平穏など来ない。憎しみで滅ぶ世界に、未来はない」ドネイターは肩を震わせ、歯を食いしばる。
「だったら……どうすればよかったの! 誰も私を受け入れてくれなかった! 居場所なんてどこにもなかった!」
「ここにある」クロノレイトは手を差し伸べる。
「今からでも遅くない。共に生きる道を探そう。俺たちが、あなたの居場所になる」闇が彼女を飲み込もうとする中、その言葉だけが鮮やかに響き渡る——。こうして——自らを犠牲にする覚悟! だがそれは間違いだと叫ぶ! 物語、心が闇に抗う瞬間——!魔方陣の闇に包まれながら、ドネイターはかつての記憶を辿るように、一つ一つ言葉にしていく——。
「ボクもかつては人間とともに生きてた」
夕暮れの光が彼女の横顔を染める。当たり前に隣にいて、笑い合っていた日々があった——。
「だが、人間は掌を返した。ボクが亜人間と知ったとたんにね」
信じていた人たちの目が一瞬で変わった瞬間。優しさが恐れに、親しみが蔑みに変わった。その痛みは今も鮮明に胸を抉る。
「そして、さまざまなことをみてきた。人間は他者を蹴落としたり、実験したり、発展のための犠牲を正当化したりと」
理不尽な仕打ち、都合のいいときだけ利用し、用が済めば捨てる——そんな姿を幾度も見せつけられてきた。
「そして、それに与した亜人達も同じことをした」
それが何よりも痛かった。同じ立場の者までが、立場の弱い者を踏み台にするのを見て——。
「それから諦めと怒り、悲しみがボクを作った」
言葉が震える。自分がこうなったのは、選んだからではなく、そうするしかなかったから——心が壊れるのを止められなかったから。
クロノレイトは静かに応える。
「そうだったんだな……。その痛みは、計り知れない」
星玲奈は涙を浮かべながら言う。
「誰も教えてくれなかったんですね。痛みを抱えても、それを憎しみに変えなくてもいいのだと……」
「だからといって」ゼロは真っ直ぐに見つめる。
「全てを消すことが答えじゃない。あなたの受けた痛みは、次の誰かを救う力にだってなる」ウプアトが重く告げる。
「同じ痛みを知る者同士、手を取り合う道がある。それを忘れてはならない」ドネイターは瞳を潤ませ、拳を強く握り締める。
「手を取り合ったって……また裏切られるだけだ!」
「裏切られてもいい」クロノレイトは一歩踏み出す。
「それでも信じることをやめない。それが本当の強さだ。俺たちは、あなたを裏切らない」闇の中で、その言葉だけが温かく輝いている——。こうして——明かされた心の傷! 諦めと悲しみが生んだ闇! 物語、心の扉が開かれる時——!闇に包まれた儀式の間で、ドネイターは夕暮れが夜に変わりゆく空を背に、はっきりと告げる。
「それにボクを倒さない限り、サタンの降臨は止めれないよ!」
魔方陣の光が一層強く脈打ち、周囲の空気が張り詰める。
「どうする? 夜になったよ。今夜の8時——タイムリミットは四時間だよ」
刻一刻と迫る期限。残された時間はわずか——。クロノレイトは揺るがぬ瞳で彼女を見据え、力強く応える。
「倒すんじゃない。止める。そして、君を救う。四時間あれば、きっと想いは届く」星玲奈は手を胸元に置き、真剣に頷く。
「時間が限られているからこそ、無駄にはできません。心から話し合う時間——それが何より必要です」ゼロは拳を固める。
「力で封じるのは最後の手段だ。まだ間に合う。彼女の心に届くまで、諦めない」ウプアトが厳かに告げる。
「四時間。その間に真実を示すのだ。憎しみの連鎖を断ち、共存の道を示す時」ドネイターは冷たく笑うように言う。
「話し合って変わるものなら、とっくに変わっていた……」
「変わる」クロノレイトは一歩前へ。「俺たちがそうするから。だから最後まで、俺たちの言葉を聞いていてくれ」夜の帳が降りる中、全員の決意が一つになる——。こうして——残り四時間! 迫るタイムリミット! 物語、最終決戦の時が刻一刻と迫る——!ドネイターは陣の光を背に、鋭く切り返す——。
「無理だよ、倒す以外方法はない!自分たちの世界を滅ぼされようとしてるのに、まだそんな甘い考えしてるの?どうした? 調和の歯車——お前の救う覚悟はその程度か?」挑発とも、諦めともつかない言葉が響く。全てを否定され、問い詰められる中——クロノレイトは瞳を強くし、決意の声を上げる。
「そうかよ、分かった。ならば、恨むなよ!」一歩前に踏み出し、闘気を込めて告げる。
「お前を止めるために、お前を倒す!」救いたい——その想いは変わらない。だが世界が消えるよりは、君を力で抑える。それが今、選び取る覚悟だ。星玲奈は胸を痛めながらも、その決意を受け止める。
「レイト……どうか、どちらも傷つかない道があると信じています」ゼロも前に出る。
「俺も力を貸す。だが最後まで、心を届けることを忘れないで」ウプアトが剣を抜く。
「最悪の事態を避けるため、力をもって止める。だが決して、命を奪うことなく」ドネイターは笑うように構える。
「それで来い! 本当の覚悟を見せてみろ!」魔方陣が禍々しく輝き、闘いの幕が切って落とされる——。こうして——対峙する二人の意志! 力で止める覚悟! 物語、最終決戦がいよいよ始まる——!




