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EPISODE0-8【脱出】

あれからちょうど3日――日が沈み、施設全体が夜間の警戒体制へと切り替わる時間帯になった。レイトキは自室の窓から外の様子を眺めながら、心の中で静かに言葉を巡らせる。

「(いよいよだ……今日の夜、20時から21時の間に決行される)」彼はこの3日間、誰にも悟られないように水面下で準備を進めてきた。警備システムのセンサーに干渉する細工、監視カメラの死角を一時的に拡張する回路操作、そして「廃棄済み」と記録された実験体たちを隔離している空間の結界調整――すべて、施設の中枢システムに感知されることなく、密かに仕掛けを完了させていた。

「(突撃の合図と同時に陽動を解き、警備網に穴を開ける。後は俺たちが定めた経路を通って一気に外へ抜けるだけだ)」胸の奥に緊張が込み上げるのを感じながら、彼はゆっくりと深呼吸する。幹部からは「今日も通常通り任務に当たるように」と指示が出ているが、それこそが表向きの仮面を最後まで保つための時間だ。

「(演技も準備も、これで最後になる……)」彼は端末を軽く握りしめ、久美子たちにも無言の合図が届くよう暗号信号を送る。あと数時間で、この長い「準備」の日々が終わり、真の戦いと未知の道が始まる――その時が、確かに迫っていた。レイトキは久美子たちと別れ、誰の目にもつかないよう自室へと戻る。扉を閉めて施錠し、室内のジャミング装置を再び起動させると、あとは時計の針が動くのを待つだけとなった。秒刻みで時間が進み――時計の表示が20時30分を指した瞬間、彼は瞳を鋭く光らせ、心の中で低く呟く。

「(今だ)」両手を前に差し出し、ムー因子の力を静かに、しかし確かに発動させる。空気がわずかに歪み、空間の奥に隠された別の領域へと繋がる扉が、見えない形で開かれていく。これまで「制御不能となり完全に処分した」と記録され、施設側にはもう存在しないと思われていた失敗作たち――レイトキが空間の歪みだけで隔離し続けていた実験体たちが、次々とその封印から解き放たれる。次の瞬間、部屋の外の通路や隣接する区画から、低いうなり声と重たい足音が一気に広がり始める。施設全体の警報システムが遅れることなく反応し、けたたましい警告音があちこちに鳴り響いた。

「《緊急通知――複数の暴走反応を検知。隔離区画B-4、C-2、E-7にて危険個体が出現。至急対処班を派遣せよ!》 」レイトキは端末の画面に流れる混乱状況の報告を確認し、小さく息を吐く。

「陽動は成功だ……これで警備の目が一気に分散される。後は俺たちのタイミングだ」彼は身支度を整え、暗号信号を仲間たちへと送り出す。施設の秩序が一気に崩れ始めた今こそ、脱出計画を実行する絶好の機会が訪れたのだった。警報音が施設内に鳴り渡る中、監視室や制御室ではスタッフたちが慌ただしく端末を操作し、指示を飛ばし合っていた。画面に次々と暴走個体の反応が点灯し、状況が予想外に拡大していくのを見て、責任者らしきスタッフが額に汗を滲ませながら叫ぶ。

「正規実験体たちは現在、個別の監視プログラムと権限制御の調整中で今すぐ動かせん!このままでは対応が追いつかない――我々だけで設備と武装を使って対処しなければならない!」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに――ドカァーーン!!

重く大きな衝撃音が施設の外壁方向から響き渡り、天井の照明が一斉に明滅し、壁や床に細かい亀裂が走る。センサーの表示が激しく乱れ、外部からの強力な侵入が検知されたことを示す赤い警告ランプが、次々と点灯していく。

「な、何だ!?外壁の第3防壁が突破されたぞ! 外部からの大規模な侵入者だ!」

「内部の暴走と外部の攻撃が同時に発生するなんて……これは偶然の事故じゃない!何者かが意図的に仕組んだのか!?」制御室全体が混乱に包まれ、次々に飛び交う悲鳴と報告の声が、緊迫した空気をさらに濃くしていく。表の混乱がピークに達した今こそ、レイトキたちが動き出す絶好の瞬間が訪れていた。衝撃と混乱が続く中、制御室の責任者は声を張り上げて混乱を抑えようと指示を出す。

「落ち着け! 優先順位をはっきりさせろ!」

彼は画面を睨みながら、次々と命令を下していく。

「正規実験体と主要機材を最優先で確保・隔離せよ! 正規品の中でも特にゼクス、ズィーベン、アハトを優先的に保護し、安全な区画へ移送すること!」少し間を置き、他の個体の扱いについて続ける。

「それ以外の個体――特にJOKERことレイトキは、当面は後回しで構わん! あいつは単独でも制御不能になるリスクが低く、自力で生き延びる力もある。今は手の回らない所にリソースを割くな!」スタッフたちは慌てて端末を操作し、移送経路と警備配置の調整を始める。レイトキが「幹部クラスの権限」を持つがゆえに、組織側からは「自走可能で即時の保護が不要」と判断されたのだ。これはレイトキたちにとって、予想外に有利な状況だった。

「後回し……だと?」レイトキは自室の端末でこの通信の断片を傍受し、わずかに口元を緩める。

「俺たちの動きに気づかれる前に、監視の手が薄くなっている。これこそが、計画にとって最大の追い風になる」彼はすぐに合図を送り、久美子たちが待つ集合地点へと向かう準備を整える。混乱の渦中で、組織の優先順位の隙間を抜けるチャンスが、はっきりと開かれたのだった。施設内の騒動がますます激しくなる中、ゼクスは通路の壁に身を寄せ、遠くから響く警報音と衝撃の余波に眉をひそめて低く問いかける。

「この騒ぎは一体なんだ?暴走事故にしては規模が大きすぎる上に、外からの衝撃まであるな……」彼が状況を推し量っていると、数人の武装スタッフが慌ただしく駆けつけてくる。

「おい、無事なようだな! 今は余計なことを考えるな、お前たちは我々についてこい!」彼らは周囲を警戒しながら、壁の一部に隠された認証パネルを操作する。すると、普段はまったく見えない位置に重い金属製の扉がスライドして開き、暗い通路が現れる。

「これは緊急時用の隠し避難通路だ。外部からの侵入と内部の混乱が重なっている今、正規実験体を安全な区画へ移送するよう命令が出ている」

指示を受け、ゼクスは一瞬ためらったものの、この場で抵抗する理由も情報もないことを判断する。彼はズィーベンとアハトに視線で合図を送り、低く呟く。

「……仕方ない、今は従っておくしかない。この騒ぎの裏が何であれ、安全な場所に移ってから状況を見極めよう」ズィーベンは不安そうに周囲を見回しながら頷き、アハトも静かに同意の表情を示す。三人はスタッフに導かれるまま隠し通路の中へ入り、扉が閉まると同時に外部の騒音が一気に遠ざかり、彼らの姿は施設の表の混乱から隔離される形となった。こうして組織側の優先事項に従い、ゼクスたちは別の道へと送られる一方、レイトキたちの脱出経路には、思わぬ障害が減る結果となったのだった。混乱が施設全体に広がる中、レイトキはあえて慌てて動き出さず、自室の中でじっと待機していた。警報音と遠くから響く銃声や爆発音が続く中、彼は端末の微弱な受信信号だけに集中し、心の中で不安と緊張が入り混じるのを抑えながら呟く。

「仲間たちは……ちゃんと集合地点に向かえてるのか? 警備の動きは予定通り分散しているはずだが、何か不測の事態が起きていないだろうか」彼はこの待機にも理由があった。今すぐ飛び出せば目立って追跡の的になりやすいが、組織が自分を「後回し」と判断している今こそ、少し遅れて行動することで警戒の網をさらにすり抜けられる可能性が高まる。両手を軽く握り、体内の力を調整しながら、彼は再び端末に耳を澄ます。数秒後、予定通りの暗号信号が短く3回、静かに送られてくるのを確認すると、緊張が少しだけ和らぐ。

「……無事だ。これで俺の出番だな」 彼はジャミング装置を止め、扉を開ける前に最後に周囲の気配を探る。通路のセンサーはすでに混乱で一部機能が低下し、陽動の暴走個体が警備部隊を引きつけている。

「後は俺も経路に入るだけ。ここまで来たら、絶対に引き返さない」レイトキはゆっくりと扉を開き、影に紛れるように暗い通路へと足を踏み出した。出口付近の安全なエリアで、キキョウは無事に脱出した久美子たちを確保していた。だが彼女の表情には安堵よりも焦りが浮かんでいる。

「待ってください! レイくんがまだ来ていないんです! このままでは施設の中に取り残されてしまう!」隣に立つエルカーノスの隊員は周囲の戦況を確認しながら、厳しい声で答える。

「これ以上時間を稼ぐのは無理だ! 警備部隊がこちらに迫っている上、施設の防衛システムが再起動し始めている。残念だが、これ以上待てば全員が危険になる――諦めるしかない」だがキキョウは即座に反論し、決然と問いかける。

「場所に見当はついているのか?」久美子がすぐに答える。

「彼の性格と行動パターンから判断すると……たぶん自室のある区画付近にいるはずです」キキョウはすぐに後ろを振り返り、いつの間にか同行していたエピデンドラムに向けて声を上げる。

「エピデンドラム、少しだけ時間を作ってくれないか? JOKERことレイトキの確保は、私にとって絶対に必要な事項だ。それに――この実験体計画自体、元をたどれば私が関わって生み出した部分が大きい。最後まで責任を取らないわけにはいかない」それを聞いた久美子も一歩前に出て、真剣な眼差しで申し出る。

「ワタシも同行させてください! 彼の力や癖を一番近くで見てきたのはワタシたちです。捜すときにきっと役に立ちます!」混乱と緊迫が続く中、救出へ向けた決意が新たに動き出そうとしていた。レイトキが通路を進み、次の区画へ通じる扉の前にたどり着いた瞬間、金属製の分厚い扉が完全に閉まり、ロックがかかる重い音が響いた。壁面の表示盤には《緊急隔離中・通行禁止》の文字が赤く点滅している。

「誤算だった……! システムの再起動がこんなに早いとは。これで隔離されちまったか!」彼は扉に手をかけ、空間操作でこじ開けようと力を込めるが、緊急時用の強化構造と区画ごとの結界が干渉し、すぐに突破できそうにない。だが次の瞬間――

ドガァァァァァンッ!!

外側から重い衝撃が何度も連続して叩きつけられ、扉の継ぎ目から亀裂が走り、ロック機構が次々に破損していく。最後の一撃で扉が大きく歪み、内側へと吹き飛ぶように開かれた。煙と粉塵が晴れると、その向こうには久美子が立っていた。彼女は多腕を解き、息を少し乱しながら、安心したように笑いかける。

「来たわよ、レイくん!ここに取り残されてるんじゃないかって、みんなハラハラしてたんだから」レイトキは目を丸くし、すぐに緊張を解いて肩の力を抜く。

「久美子……どうやってここまで? 外はもう脱出できてるはずだろ」

「あとで説明する!今はとにかく走るわよ! 警備がこの辺りに戻ってくる前に、合流地点まで急ぐわ!」彼女が手を引くように促すと、レイトキは頷き、すぐに走り出す。一度は閉ざされた道も、仲間の存在によって再び開かれ――脱出の道が、再び彼らの前に続いていくのだった。倒れた警備隊員たちが通路のあちこちで気絶したまま横たわっている中、エピデンドラムは手を軽く払いながら、呆れたような口調で吐き捨てる。

「まったく……こんな規格外でデタラメな力を持ってるくせに、扉一つ突破するのに手間取るとはな。もっとスマートに動けないのか?」その言葉を聞いたレイトキは、すぐに鋭い視線を向け、反論するようにはっきりと言い返す。

「俺の事情も状況も何も知らないくせに、偉そうな口をきくな!そもそもだ、俺が内部の見取り図や警備システムのデータを流さなかったら、お前たちだけでこんな大がかりな突入作戦を立てて実行することすらできなかっただろうが!」一歩前に出て、さらに声を強める。

「俺は表では組織の目を欺きながら、裏では情報を集め、タイミングを調整し、陽動まで用意してきた。力だけ振るってれば済む話じゃないんだよ!」二人の間に一瞬だけ険悪な空気が流れるが、キキョウが間に入り、冷静に間を取り持つ。

「言い争ってる時間はないわ。ここまで来たのはお互いの役割があってこそ。今は力を合わせて施設の外に出ることだけを考えなさい」レイトキは舌打ちして視線を逸らし、エピデンドラムも肩をすくめて不機嫌そうに黙り込む。互いに不満は残っていても、脱出という共通の目標のために、それ以上の衝突は抑えるしかなかった。混乱の中、救出と脱出の流れは着実に進んでいく。まず最初に、斗愛と与太郎が戦闘の影響で少し消耗していたこともあり、エルカーノスの隊員たちに誘導されて装甲保護車両へと乗り込む。

「先に行って待ってるぞ、レイトキ!」与太郎が手を振り、車両の扉が閉まるとすぐに発進して安全な中継地点へと向かった。続いてデュークとカグラが続く。二人は周囲の警戒を固めながら移動し、異変がないことを確認してから次の車両へ乗り込む。

「後ろを任せたぞ」カグラが短く声をかけ、デュークも頷いて最後尾の二人に目配せすると、この車両もエンジン音を響かせて走り去った。

最後に残されたのは久美子とレイトキ、それに同行するキキョウとエピデンドラムだ。周囲ではまだ警報音が鳴り続け、遠くから銃声や衝撃音が断続的に届いている。

「さあ、私たちも行くわ」久美子がレイトキの腕を軽く引き、待機している最後の車両へと歩き出す。 レイトキは最後に一度だけ、暗く重い施設の建物全体を振り返る。ここで生まれ、育てられ、道具として扱われてきた場所――これで本当に終わりなのか、それとも新たな始まりなのか。

「……行くぞ」彼は短く呟き、頭を切り替えて車内へ乗り込む。扉が閉まり、エンジンが回転すると、車両は暗闇の中を進み、施設の境界線を越えていった。施設の崩壊と混乱が遠くまで広がるのを高みから眺めながら、リュウゼツランは無表情のまま低く言葉を発する。

「JOKER、それにEX、ノイン、アインス、ツェーン、エルフ……見事に逃げおおせたようだな」彼は指先で端末を操作しながら、わずかに口元を歪める。

「だがな、追跡用の位置特定カードを捨てなかったのは、明らかな判断ミスだ。どれだけ逃げても、信号さえ追えば居場所はすぐに突き止められる……」画面に指を滑らせて検索を実行するが、予期した反応はまったく現れない。ノイズばかりが流れ、特定可能な座標は一つも表示されない。リュウゼツランの眉がゆっくりと上がり、声にわずかな動揺が混ざり始める。

「……なんだと?反応がない?遮蔽装置を使っているにしても、ここまで完全に打ち消せるはずがない」さらに解析深度を上げて調べ続けると、画面の奥から奇妙な記録が浮かび上がる。カードの信号が単に遮断されているのではなく、空間ごとずらされ、別の座標軸へと封じ込められていることが示されていた。リュウゼツランは息を飲み、言葉が途切れる。

「ま、まさか……JOKERのやつ、自分の力で追跡用の標識そのものを、物理的に隠すのではなく空間ごと隔離しているというのか? これほどまでにムー因子と、ネームレス因子を使いこなしていたとは……」端末の画面が無反応なまま暗く点滅する中、彼の中には侮りを捨て、これからの事態が予想以上に複雑なものになることを悟る冷たい確信が生まれていた。車両が施設から十分に離れ、安全な速度で走り出した頃、レイトキは手のひらに浮かんだ小さな歪みの光を静かに消し去った。これで、追跡用の位置特定カードは完全に機能を失ったことになる。

彼は誰に問われるでもなく、独り言のようにその仕組みを口にする。

「最初からいつまでもこんなものを体の中や端末ポケットに所有し続けているわけがないだろう」少し間を置き、計画の裏側を解き明かすように続ける。

「施設側のデータ上では俺が『最後まで内部に留まっていた』と記録されるように動いていた。その間、未使用会議室で事前に仲間たちのカードも全部預かっておき、俺自身の分も含めて、信号だけを外部の無関係な地点へ送り込んで位置情報を偽装していたんだ」指先で空間をなぞるような動作をしながら、最後の手順を説明する。

「偽の座標に信号を流しつつ、本体のカードはムー因子の力で別の空間層へ隔離した。施設のシステムもリュウゼツランも、表面の信号だけを追って混乱するようにな。それが済んだ今、隔離しておいたカードをまとめて破壊した……こういうわけだ」隣にいる久美子はその言葉を聞いて、改めて感心したように息をつく。

「単純に捨てるだけじゃなく、追跡されないように逆手に取って利用していたなんて……レイくん、本当に何から何まで計算して動いてたのね」

レイトキはわずかに肩をすくめる。

「道具として扱われてきたからこそ、道具の仕組みと抜け道も誰よりよく知っている。これで、当分は彼らの追跡網から完全に外れたことになる」車窓の外にはすでに見慣れた施設の明かりも崩れた建物の姿もなく、未知の道が彼らの前に広がっていた。車内の緊張が少しずつ和らいできた頃、キキョウが前を向いたまま、落ち着いた口調で今後の予定を告げる。

「これからしばらくは、身分や生活に関する手続きを進めることになるわ。当面は私たちの拠点がある街、マタラシティで暮らしてもらうことになる」彼女は視線を仲間たちに向け、具体的な流れを説明する。

「最初に必要なのは住処の確保。安全で監視の届きにくい場所を用意してあるから、そこを拠点に生活を整えていく。その後は外の世界の常識やルールを学びつつ、これからどう生きていくか、ゆっくり考える時間も作れるはず」久美子が頷きながら問いかける。

「マタラシティ……組織の手は届かない場所なの?」

「安心して」キキョウははっきりと答える。

「エルカーノスの勢力が根を張っている地域だ。施設の連中が簡単に手を出せるような場所じゃない。当面はあそこが最も安全な隠れ家になる」レイトキも静かに耳を傾け、新たな生活への一歩が始まることを感じ取っていた。これまでのように「実験体」としてではなく、自分たちの意思で選ぶ日々が、ようやく現実のものになろうとしていた。車内で今後の予定を伝えた後、キキョウは少し口調を引き締め、必要な手続きについてもはっきりと説明を加える。


「だが、生活の準備の前に身体の検査も欠かせないわ。因子の安定状態や体内の痕跡を確認する必要があるからね。個体によって反応の出方や調べるのにかかる時間にはバラツキがある」彼女は順番について具体的に告げる。

「まず最初にレイトキ、久美子、デューク、カグラの4人から検査を始める。斗愛と与太郎はその後になるけど、こちらもそんなに長く待たせることはない。半日程度で終わる見込みだ」最後に今日の予定をまとめるように言う。

「ともかく、今日のところはまずエルカーノスの管理施設に入ってもらい、安全な状態で保護を受けることになる。あそこなら医療設備も整っているし、当面は外部の干渉も受けない」与太郎が腕を組みながら応じる。

「検査か……まあ、これまでと違って『実験』じゃなく『確認』だと思えば、気が楽だな」斗愛も頷き、柔らかく言葉を添える。

「自分たちの体が今どうなっているのか、正確に知っておくのも悪くない。これから外で生きていくためにも、必要なことなのでしょう」レイトキも静かに頷きながら、心の中で新たな段階への移行を受け入れていた。施設から逃れただけで終わりではなく、自分たちの状態を正しく把握し、これからの道を歩み始めるための第一歩が、こうして始まろうとしていた。

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