EPISODE6-1【非常警報】
街のあちこちで、けたたましい非常警報が鳴り響いている。
「サイレンが止まらない……!」共存派の亜人や亜人間たちは、逃げ惑うように道を走る。人間と共に生きることを選んだ者たち——子供を抱える母親、年老いた者、傷ついた者——誰もが安住の地を求めて右往左往する。
「どこに行けばいいの……?」
「施設はもうダメだって……」
「家族とはぐれちゃった……」不安な声があちこちから漏れ、地面には崩れ落ちた建物の破片が散らばり、遠くには煙が立ち昇っている。警報の音が絶え間なく響き渡り、一刻も早くこの場を離れるようにと人々を急き立てる。だが——誰一人として諦めきれない。手を取り合い、声を掛け合い、一人ではないことを確かめながら進む。
「大丈夫、一緒に行こう」
「絶対に、見捨てないから」クロノレイトたちはその様子を聞き、胸が締めつけられる思いをする。
「みんな、無事に……」メーミンが瞳を潤ませる。
「俺たちが動かなければならない」クロノレイトは拳を固く握り、前を向く。
「誰もが安心して暮らせる場所を、俺たちが守り抜く」こうして——警報が告げる非常事態! 逃れる人々の想い! 物語、守るための戦いが本格的に始まる——!街のあちこちに、毒の鱗を纏うバジリスクたちが放たれていた。鋭い瞳が人々を睨み、長い体をくねらせて行く手を塞ぎ、逃げ惑う人々の恐怖を煽る。
「ここは俺が引き受ける! 早く避難して!」クロノレイトは真っ先に飛び出し、複数のバジリスクを一手に引き受ける。レイスティアの光の輪を次々と放ち、纏う鱗の毒気を調和の光で浄化しながら、一頭一頭確実に戦闘不能へと導いていく。
「痛みはもう終わりだ——心を落ち着けて!」光の波は攻撃だけでなく、怒りに駆られた彼らの心をも静めるように働きかける。手当たり次第に傷つけるのではなく、力を抑え、正気を取り戻させるように——。瞬く間に全てのバジリスクが地に伏し、動きを静めた。
「大丈夫です! もう襲ってきません!」クロノレイトは汗を拭い、逃げ遅れた人々に手を差し伸べる。
「急いで安全な場所へ! 俺が先導します!」こうして——街に放たれたバジリスクを一掃! 力で制するのではなく心で応える! 物語、平和を取り戻す戦い——!街のあちこちで轟音が鳴り響き、次々と爆発が起こる——。
建物の壁が崩れ、道は瓦礫で埋まり、逃げる人々の足元は塞がれていく。
「痛い……動けない!」
崩れた柱や鉄材に足を挟まれ、抜け出そうとしても抜け出せない人々が、悲鳴を上げている。子供も大人も、怯えながら助けを呼ぶ声があちこちから漏れる。
「大丈夫だ! 諦めないで!」
クロノレイトは瓦礫の中に飛び込み、光の力で重い材を浮かせ、押し上げながら一人ひとりを救い出していく。
「もう少しだ! 掴まって!」手を伸ばし、足を挟まれた人を抱き起こし、怪我がないか確かめ、安全な場所へと導く。仲間たちも手を貸し、力を合わせて瓦礫を退かし、声を掛け合いながら救助を続ける。
「みんな無事だよ! 怖くない! 俺たちが絶対に助けるから!」汗が額を伝い、手の平は傷ついても——誰一人見捨てない。壊れた街の中で、たしかな絆だけが息づいている。
こうして——瓦礫の下から救い出す! 諦めない心! 物語、手と手を繋いで——!グラナディアの拠点にて——。ドネイターは状況報告を聞き、眉を寄せてはっきりと言い放った。
「ああされたら計画が狂ったな」指先で机を軽く叩き、思い描いていた筋書きが崩れたことを認める。
「これじゃあレイトたちを指名手配にすることは無理になった」狙いは——彼らを“災厄の張本人”として世間に見せ、孤立させることだった。だが現実は逆になった。街の人々はクロノレイトたちに救われ、彼らの誠実さを目の当たりにしている。
「誰が見ても、レイトたちが人々を守り、助けている……。その事実が広まれば、悪者に仕立て上げることはできない」星玲奈がその場に佇み、小さく唇を噛む。
「……私たちの方が、追われる立場になりつつあるのね」ドネイターは冷ややかに頷く。
「ああ。だからといって、諦めるわけにはいかない。別の手を考えるだけだ」計画は狂った。だが闘いはまだ続く——。こうして——計画に綻び! レイトたちの誠実さが道を開く! 物語、流れは変わり始めている——!街のあちこちで、衆生解放戦線の手によって奇妙な印が描かれていた。
共存派の人々が無事に避難した建物、安全な場所——そうした箇所の壁や扉に、五芒星が鮮やかに描き込まれているのだ。
「これは……何のためだ?」
クロノレイトが目にしたその印は、一見すると守りのようにも見える。だがその裏には確かな意思が込められている。
「生かす者、選ばれた者——そういう意味なのか」デュークが眉をひそめる。「共存派であっても、彼らの基準で『生かす』と決めた場所にだけ印をつけている」
「選別の印……」メーミンが声を震わせる。「ここにいる人たちは『許された』ってことなのでしょうか……」クロノレイトは五芒星に触れることなく、真剣に見つめる。
「違う。誰かが生かされるのも、選ばれるのも、誰かの基準で決められるものじゃない。この印が示す『選別』そのものが、間違ってるんだ」
「俺たちはこの印に頼らない。誰一人が自分の意思で生きられる世界を創る。それが答えだ」五芒星は冷たく佇んでいる。だがそれが定める境界線を、彼らは決して受け入れない——。こうして——選別の印・五芒星! 境界線を引かれた世界! 物語、その意味を超えて進む——!辺りに五芒星の印が浮かぶ中——クロノレイトの目の前に、ふっと姿が現れた。星玲奈だ。闇の衣をまとい、まだ瞳には迷いが宿ったまま、彼を真正面から見つめている。
「星玲奈……!」クロノレイトは思わず一歩踏み出す。手を伸ばしかけ、だが彼女の様子に足を止める。彼女はすぐそばにいるのに、遠くに感じられる——。
「レイト……」声は小さく、風に溶けるように囁かれる。
「まだ、君がここに来てくれるなんて……」クロノレイトは胸を躍らせ、同時に切なさが込み上げる。
「話してくれる気になったのか?」星玲奈は唇を噛み、視線をそらしかけ——それでも彼を捉えたまま言う。
「……違うの。ただ、伝えに来ただけ」その言葉の先に何があるのか——緊張が辺りを包む。こうして——再び目の前に! 星玲奈の想いはどこへ向かうのか! 物語、心が触れ合う瞬間——!星玲奈の瞳から、一瞬の迷いが消え去る。代わりに強い信念——いや、闇に染まった確信が宿り、声は鋭く突き刺さるように響く。
「人間やそれに与する者はやはり穢れてる!」一歩前に出て、言葉を続ける。
「歪みを正さなければならない! そのためには——」彼女の口から出たのは、あまりにも残酷な結論だった。
「やはり共存派は皆殺しにするべきだ」
「ッ! 何を言うんだ!」クロノレイトは衝撃に駆られ、思わず声を上げる。
「共存派の人たちは……何も悪くない! ただ共に生きたいと願っているだけなのに!」
「それこそが穢れなのよ」星玲奈は冷たく、だけどどこか震えながら言い放つ。
「人間の側に立つこと、それ自体が歪みなの。分かり合えるなんて幻想——その幻想が生み出す痛みを、私はもう見たくない」
「違う! それは幻想なんかじゃない!」レイトは手を伸ばす。「君自身、俺といた時はそれを信じてくれたはずだ! その心を捨てないでくれ!」星玲奈は一瞬ためらうように瞳を揺らし、だがすぐに顔をそむける。
「……それは全部、間違いだったの。だから——」闇の気配が濃くなり、彼女はその場から去ろうとする。
「待って! 星玲奈——!」手は届かない。だがクロノレイトは決意を胸に、強く叫ぶ。
「俺は諦めない! どんなに君が闇にいても、必ず真実を見せてみせる!」
こうして——共存派抹殺の宣言! 星玲奈の叫びは闇の彼方へ! 物語、想いがすれ違う——!星玲奈が去りゆくその背中に向かい、クロノレイトは声を震わせながらも真っ直ぐに問いかける。
「間違いか……。じゃあ、俺と出会ったのも間違いだと言うのか?」一歩踏み出し、彼女の心に届くように言葉を紡ぐ。
「君は俺を、もう好きではないと言いたいのか?」
その問いかけに、星玲奈の肩が大きく震える。足が止まり、振り返ることはない——だが背中越しに、小さく苦しそうな声が漏れる。
「……そんなこと、言わないで」
「嘘をつかないでくれ!」レイトはさらに強く訴える。
「本当は違うって、心のどこかで俺を想ってくれているって——言ってくれ!」星玲奈は拳を握りしめ、耐えるように首を横に振る。
「好き……だから、辛いの。だから……だからこそ、離れなきゃいけないの」
「それでもいい! 想いが消えていないのなら、まだ間に合う! 一緒に帰ろう!」手を伸ばした瞬間、星玲奈は闇の中へと消えていく。
「ごめんね……レイト」残されたクロノレイトは、その場に立ち尽くしながらも決意を新たにする。
「絶対に取り戻す。君の本当の気持ちも、笑顔も——全部」こうして——真実の想いはどこに! 問いかけるクロノレイト、消えゆく星玲奈! 物語、愛が試される時——!星玲奈が去った後、街を覆っていた轟音と衝撃が次第に静まっていった。爆撃も、バジリスクたちの襲撃も、五芒星の印を描く者たちの姿も——全てが止まった。空に浮かんでいた闇の気配が一つに纏まり、グラナディアへと続く転移の扉へと吸い込まれるように消えていく。
「衆生解放戦線……撤退したのか」デュークが空を見上げ、低く呟く。
「何か企んでいるのか、それとも……」メーミンは義眼を押さえ、不安そうに辺りを見回す。クロノレイトはまだ星玲奈の消えた場所を見つめたまま、拳を緩める。
「今は引いただけ。だけど——彼女の心が完全に闇に染まったわけじゃない。それだけは確かだ」
「追いますか?」久美子が問う。クロノレイトはゆっくりと首を振る。
「今は……ここにいる人たちを守る。それが先だ。だが必ず——グラナディアまで迎えに行く」街は静けさを取り戻した。だが安堵は一瞬だ。次の戦いは、より厳しく、心を試されるものになる——。こうして——一時の撤退! 去りし者たち、残された決意! 物語、次なる決戦に向けて——!




