第十七話 「賢人、第一の教え」
さて、組織の体裁も整ったことで、第一回業務会議を行うことになった。と、いっても、まだ弥弦氏の所にいる。また、夕食に誘われたので、お言葉に甘えることにして、その時間までだが、その間オブサーバーとして弥弦氏が同席してくれるので、このまま場所を借りて会議をすることとなった。
「と、いうわけで、会議を始めます」
と、仕切ってくれるのが、統括部長のさなえねぇである。
「まず、商品の選定だわねぇ。あんたたちは、赤烏賊がいいって言ってたけど、それをどう売るかよね」
うん、まずは、そこからだな。
「それについては、意見があるのだけど」
と、挙手して発言したのが璃々だ。
「おばあさまの〝くさや〟なんだけど、あれの作り方を教わろうと思うの。弥弦さんもあれをとっても評価なさってたし、あきらさんの料理のレシピと併せて商品にしたら人気出ないかしら?」
「俺は賛成だな。ばあちゃんが教えてくれるか判らないけれど、あれなら商品として、いいと思う」
と、俺も乗ってみた。実際うまかったもんな。水野さんの料理。
「それも、一つの案としてはいいかもだけど、やっぱ、赤烏賊は〝生〟が一番だよな。調理済は、たしかに無難だけど、〝売る〟ことを考えると加工品よりも〝生〟がいいってお客さんが多いのは事実だし」
と、貞夫が一つ提案してくる。確かに生の旨さも捨てがたいが、
「生VSくさやかぁ。どっちがいいか、分からないとこだよねぇ。弥弦さんは、どう思いますか?」
さなえねぇ、投げたな。
「ふむ、君達、商品も大事ではあるが、もっと大事な物があることを忘れていないかね?」
「へ? 商品よりも大事なもの? ですか?」
「と、いうよりも、ここで、一つ重要な秘密を教えておこうか。大多数のビジネスマンも知らないでビジネスをしているこの世界の秘密の一つだ」
「「「「「「「そんなものがあるんですか?」」」」」」」
「ああ、これを知っているかどうかで、人生が変わるほどの、ね」
そう、弥弦氏は、俺達にウインクしてみせた。やたらかわいい仕草が好きだな。この人。
しかし、この後も、弥弦氏は、俺達に幾度も重要なアドバイスをしてくれた。とても、大切な教えなので、ここからは、そう言う教えがある度にナンバーをふって強調する。栄えある第一の教えはこれだ!
①「商品の完成度は重要ではない。大事なのは、〝いかにして商品をお客様のところへ送りとどけるか〟なのだ。つまり、〝流通経路の確保〟だね」
「「「「「「「流通経路の確保?」」」」」」」
「どんなに良い商品でも、お客様の所に渡らなければお金にはならない。その一方で、実は、欠陥のある商品でも、流通させてしまえばヒット商品になることもままあることなのだよ。たとえば、家電製品なんかで、今の技術では完成に至らない新技術を使って商品を作る。むろん、買った人は不満も持つだろう。そこで、モデルチェンジの時に完成した技術を載せた新製品を発表する。不満を持った人や、口コミで買うのを控えていた人が完成した技術に群がりヒット商品となる。完成した技術を載せた商品だけを売るよりも倍以上売れる、という寸法さ」
「うわ! 大人の世界、きたなーい!」
さなえねぇは、おちゃらけて言うが、委員長なんか、眉間に皺よせている。
「だが、未完成の品が広告となって、完成した品のイメージを上げるのに役立っている。それに、未完成の品を売らなければ完成品を開発するための資金が集められないかも知れない。そう考えると悪いことばかりでもないと思うが、どうかね?」
「「「「「「「あ!」」」」」」」
「あ、それなら、生を売りつつくさやの方も完成度を上げながら売ればいいんじゃね?」
俺は、みんなに提案した。
「あとは、どうやってお客さんの所に届けるか? か」
「それなんでヤスが、たしか、統領の家には、直接買い付けのお客が何人かいて、毎年赤烏賊を何百杯と買ってるお客さんがいるでヤス。たしか、料亭とか、レストランとか、毎年数を集めるのが大変で苦労してるんでヤスよねぇ」
「おおっ! そうだ! 生だけじゃなくて、一夜干しなんかも買ってくれるよな。生は、パックに詰めて生きたまま運ぶんだ。施設はあるから、ジャンジャン使えばいい」
「いやいや、若! 統領がただで使わせるわけないでしょ! ここは、お金貰って統領に売りましょうよ。リスクは小さくなるでヤスよ」
「しかしなぁ。それこそ親父に売るんじゃ買い叩かれるぞ!?」
「それでも、話の持って行き方によっては、漁協より高く買い取ってくれるでヤスよ」
「ふむ、良いところに目を付けたね、宏くん。一つ一つを丁寧に売るのも流通なら、有力者に沢山売るのも流通だよ」
「そういうお客なら、うちにも居るわよー! じじいはあたしには逆らえないから、こっちの方が有利にビジネスの話が出来るわよ!」
「そういえば、うちの顧客名簿にも、そういう人もいるかもしれない。片っ端から連絡すれば、一人や二人買ってくれる人がいるかも」
「うちも~ めいぼあるよ~」
まりの家も民宿だからな。
「あ、あいつ! 力丸氏。あいつもグルメみたいだから、こういうの好きかも。金髪っちゃんがお願いしたらいくらでも買ってくれるんじゃない? 金持ちの知り合いもいるかもだし、うひひ」
さなえねぇ、怖い、怖い。
「うわ。連絡、しないとダメ?」
「「「「「「だめ!」」」」」」
消沈した璃々が死んだ魚の目にっ! ごしゅーしょーさまんさー。
「ふふふっ。なかなか、流通経路が充実してきたね。今度は、商品の仕入れルートを考えてみようか?」
そうだった。売り先ばっか増えても商品が手に入らなきゃ
「俺らの船は、イカ釣りに特化してもいいぜ! 上手くすれば大漁も狙えるかもな」
「うちとこの船は、無理ね。みんな自分の生活があるし、必要な魚、けっこう一杯あるのよ」
「つまり、俺が乗る船も無理だな。じっちゃんに迷惑がかかる」
「まあ、赤烏賊だけ買い取ってもいいけどね。それだと儲けが減るかな?」
「あ、あとは、子供たちを雇って堤防釣りで取ってもらうとかは?」
委員長が、アイデア出してくれた。うん、一人二、三杯でも、十人いれば十倍だしな。
「堤防で待ってて、漁協と同じ値段で買い取れば売ってくれるかも。私もお友達にお願いしてみるし」
そう考えると、なんだ。結構数も揃いそうだな。
そう考えながら、皮算用してみる。
漁協より高めの1500円で買い取って、それを一杯5000円で売れたら。梱包と配送費が1000円としても、一杯2500円の儲けだ。つまり、40000杯売れば目標は達成する。そう考えると、なんだ。一億っても、そう遠い話でもないんだ。約90日で四万杯、一日あたり450杯……
「結構、大変だぞ! これ!」
みんなの目が俺のほうに向いた。
この物語は、以下略(笑)
いかがでしょうか? 今回の「賢人の教え」は。
今後も、重要な話をぶっこんで行きたいと思っております。




