第十六話 さて、分け前とか、どうする?
と、いうわけで、この七人で試験に臨むことになった。
なったのだけど、実のところ、まだ何も決まってはいない。
とりあえず、資本は璃々が出すということだけか? しかし、
「すいませーん。資本は追加したらダメなんですか?」
! 貞夫?
「かまわないよ。資本を集めることも、ビジネスの重要な要素だからね」
「よーし、ヤス! 俺たちも出そうぜ!」
「! し、しかし、ここんところ無駄使いが過ぎるでヤスからあんま貯金無いでヤスよ?」
「げげぇ~っ! そうだったぁぁぁぁぁっ!」
ほ。あんまり大きな顔させるのも嫌だからなぁ。
「それよりも、どうやって一億円も稼ぐの? まだ何も決めてないうちから皮算用だけしてもしょうがないでしょう?」
とはいえ、この島で商売になるものといえば、もう種類は限られている。そして、この時期ならこれだ! というものは、一応頭の中にあるといえばある。
「ここは、やっぱり」
「「「赤烏賊だな!」」」
うわーん! 男子三人でハモってしまった!
「赤以下?」
いいんちょう、それはボケか? まり同様ゆるキャラだったのか? 漢字変換いらないか?
厳しい目つきで睨む男子たちに赤面して俯く委員長。ギャグのつもりだったのか。
「なるほど、高級食材ですね。築地などでは、形の良いものは一杯一万円近くになります。良いところに目をつけましたね」
てれてれする俺ら三人。水野さんに褒められるってすっげー癖になるんだよな。あ、璃々が睨んでる。
「まあ、俺ら漁師にとっちゃ常識だけどな。しかし、一万円! 漁協の奴らそんなに払わねぇぞ!」
「はははっ、最終消費地に近いほど物の値段は高くなるからね。君たちが売る値段は1300円くらいじゃないかね?」
「! 正にその通りです。やっぱり弥弦さんてすごいんだなぁ!」
貞夫が興奮してる。どうだ! 弥弦氏は凄いだろう! ふんす!
と、さなえねぇが、爆弾を投げてきた。
「まず、確認したいのは、誰が、どの役割を担うか、それと、最終的な分配かしらね。誰に、いくら、どのタイミングで、かしら。こういう場合、資本の持ち主が総取りして、そこから働きに応じて分配するのが筋ってもんよねぇ」
「すると、橘さんが総取りですか? 分配も、彼女が決めるわけですね? 他の人達から不満がでませんか? 先輩」
「それが嫌なら、みんなが資本を出す必要があるわね。貞夫たちや、神童、私はともかく、あんたとまりは不利になるわよねぇ」
つまり、金持ちのさなえねぇや、俺ら収入のある組、と比較して、親から小遣いをもらわねば無一文のまり、や、委員長が、最終配分でバカを見る。それも可哀想だ。だからといって、貢献度の高い人間が損してでも平等に、というのも違う気がする。
「こういう場合いい方法ってないですか?」
さなえねぇは、弥弦氏に尋ねた。それが正解かな?
「ふむ、実は、一番難しい問題なんだよ。大の大人ですら、この問題で互いに憎しみ合うようになったりするからね。だから、資本主義では、資本を持つ者が全て総取りするという原則があるんだ。しかし、それを大っぴらにすると、今度は働く人が居なくなる。だから、みんな努めて優しくお願いするんだ。そうすると、今度は、勤めている人たちが、自分にその資格が無いことを承知で、自分が全ての持ち主になったように振る舞い始めるんだ。会社で働いている人たちは、例えば大学で経済の原則について学んでいるはずだけどね。そういう人ほど、この罠に陥り安い」
「えーと、つまり?」
「うん、解決方法は無いかな?」
「ええええっ! そんにゃー!」
「いやいや、わからないよ? これから君たちが画期的な解決方法を思いつくかもしれないじゃないか」
「お館様、ご自分でも信じていないことを無茶ぶりするのは、どうかと」
水野さんに怒られた。やっぱり、無理なんだ。
「じゃあ、こ~ゆ~のはどう? しほんをだすひとがしめいしてり~だ~をきめるの。それで、り~だ~のひとがみんなのしごととぶんぱいをぜんぶきめるの」
「それって、普通に会社組織だよなぁ?」
「いいんじゃないの? そろそろ決めてしまわないと」
「じゃあ、りりちゃんおねがい~」
「うわお! 丸投げされたー!」
と、いうわけで、ドラムロール スタート!
ドドドドドドドドドドドドドドドトドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドジャン!
「じゃあ、神童、お願いします」
って、俺だったー!
なんとも、ふしぎなおどりを踊っていると、
「「「「「やっぱりなー! 予想はしてたけど」」」」」
確信犯かよ! ちくしょー!
と、言う訳で、暫定会社 璃々堂 開店!
組織図は、
オーナー 橘 璃々
社 長 桜田 神童
統括部長 桜田 さなえ
経理部長 長澤 恵
営業部長 網野 貞夫
投資顧問 篠崎 まり
総務部長 ヤ ス
なんで、全員部長以上か? というと、下に部下を集めやすいからだと、弥弦氏に助言されたからだ。
「……何で? あっしだけ仇名なんすか?」
「はっはっは、ヤスよ、仇名ではなく、ビジネスネームだ。名刺にも、しっかり書いてやるぞ!」
「うおー! 俺花形でヤスか? テンションMAXでヤスよ! 書き文字は英語で〝YASU!〟で」
なんか、調子に乗ってるぞ! 総務が花形なんて会社聞いたことないのにな?
「いや、従来通りカタカナで二文字の〝ヤス〟だ。誇りを持ってるんだろ?」
うんうんと、全員一致でヤスに「とどめを刺す」 しおしおのパ~。
「まあ、本当は法人化したらいいのだが、今回は大丈夫だろう。みんな、頑張ってくれたまえ」
そう、弥弦氏にエールを頂いたのだが、この時の台詞をもう少し吟味する必要があったなと、後々後悔することになろうとは。
この物語は、皆様の愛情の提供によりお送りしております。
現在、二本立てですが、こちらにも、力を入れていきますので、
どうぞよろしくお願い申し上げます。
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