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聖域なき王都、閉ざされた未来




 王都へ戻ったアルフレッドが見たのは、かつての栄光を失った「死にゆく街」だった。


 魔力供給が途絶え、象徴であった聖なる泉は泥沼と化し、通りにはゴミと腐敗臭が充満している。


 王宮の大聖堂。


 エリアが毎日欠かさず行っていた『循環調整』という心臓部を失った王国は、自浄作用を完全に失っていた。


「ベアトリス! どうにかしろと言っただろう! なぜ聖女の力が戻らない!」


「うるさいわね! ……精霊たちが、私を呪っているのよ!」


 二人は今や、王族と聖女の威厳いげんなど欠片もなく、責任転嫁を繰り返していた。


 周囲には、忠義を誓う側近など一人もいない。


 見限った元側近たちは、王宮の宝物庫から金品を盗み出し、逃げ去った後には、ただ虚しい静寂だけが残っている。



 王宮の外から、地鳴りのような怒号が響いた。


「聖女エリア様を返せ! 俺たちの暮らしを戻せ!」


「ベアトリスを処刑しろ!」


 飢えと絶望に駆られた民衆たちが、王宮の門を突破したのだ。


 ベアトリスを熱狂的に崇拝していたはずの民衆は、「疫病神」と呼んで罵倒ばとうしている。


 王太子はガタガタと震えて、頭を抱える。


 ようやく理解したのだ。


 自分たちがエリアを捨てたことで、すべての『恩恵』が永久に失われたことに。





 ……一方、辺境。


 エリアは、王都の方角を見ていた。


「……王国の魔力循環は、完全に停止したわ」


 かつての荒野の面影など微塵みじんもなかった。


 地脈から溢れ出した神聖魔力が淀みを浄化し、枯れ果てていた井戸からは、命の源となる『聖水』が湧き出している。


 精霊たちによって整えられた土壌には、瑞々しい果実が実り、周囲には、甘い香りを放つ花々が咲き乱れていた。


「精霊よ、ありがとう。ここは、大陸で一番豊かな土地になるわ」


 指を鳴らすと、精霊たちが喜びのダンスを踊り、慈愛に満ちた聖域の結界を展開する。


 王都が自らの欺瞞ぎまんで崩れ落ちるのと時を同じくして、辺境の地には、真の『理想郷』が産声を上げていた。




(完)

 お読みいただきありがとうございます。


 自分の犯した罪に気づいた王太子と、遥か彼方から静かに見守るエリア。


 王都は泥沼へ、辺境は理想郷へ――。


 本作はこれにて完結となりますが、楽しんでいただけましたら、ぜひ「ブックマーク」や「星評価」での応援をいただけますと幸いです。


 また別の物語でお会いできる日を楽しみにしています!

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