聖女の加護は、略奪者には毒となる
私が追放されて、四日が経過した。
王国の魔力供給システムは、完全に停止したはずだ。
辺境の領主邸の庭には、比較にならないほど純度の高い神聖魔力が満ちている。
精霊たちは私の奏でる波長を気に入り、庭の草花を慈しむように触れ回った。
加護を受けた草花は、生き生きと芽吹いている。
「……さて。ネズミ除けの仕掛けでも作っておこうかしら」
呟いた矢先。
地脈の微かな震動を検知した。
どうやら、「招かれざる客」が境界を越えてきたらしい。
魔力が完全に干上がり、パニックに陥った王太子がとった行動は、予想通り「真の聖女の強制連行」だったようだ。
領主邸の門扉が、乱暴に蹴破られる。
現れたのは、王宮直属の近衛騎士団だった。
庭に足を踏み入れた瞬間に、不快感を露わにした。
「おい、そこにいるのはエリアか! 王太子殿下の命により、今すぐ王都へ同行してもらう!」
隊長らしき男が剣を抜いて叫ぶ。
だが、威勢のいい踏み込みは、無残に中断された。
異変が起きたからだ。
「な、なんだ……体が……魔力が……!」
騎士たちの顔色が蒼白に変わる。
「魔力酔い」を起こしていた。
高密度に凝縮した神聖魔力は、私と精霊にとっては「心地よい春の風」だが、無機質で野蛮な魔力を纏う彼らにとっては「致死量に近い純度の毒」に等しい。
彼らは一歩も動けず、その場に膝をつく。
騎士団の鎧が、メキメキと音を立てて歪み始めた。
「報告しておきなさい。……聖域に、略奪者は足を踏み入れるなと」
指先を軽く鳴らすと、精霊たちが一斉に風を巻き起こした。
衝撃波が騎士たちを吹き飛ばし、領主邸の敷地外へと放り投げる。
門が、意思を持つかのように閉ざされた。
王国が絶望に沈む中、辺境は着実に「最強の聖域」へと進化を続けている。
お読みいただきありがとうございます。
「強制連行」という無能な悪あがきを、エリアと精霊の力で軽くいなす回でした。
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