王都、暗転。辺境、開花。
追放から三日が経過した。
予想通り、王宮の魔力供給システムは限界を迎えていた。
大聖堂では、ベアトリスが必死に祈りを捧げている。
だが、背後に浮かぶはずの宝石のような光は、点滅を繰り返し、最後にはバチンと音を立てて消失した。
「な、なぜですの……! 魔力が、全く足りないなんて!」
ベアトリスの悲鳴が響く。
だが、それは当然のことだ。
彼女の放っていた「光」は、地脈から魔力を搾取するだけの粗悪な出力。
エリアが整えてきた循環回路という「ベースライン」がなければ、崩壊するようになっている。
王都を潤していた聖なる泉は、干上がりつつある。
「聖女を代えろ! この無能め!」
ベアトリスと側近たちが、醜い責任の押し付け合いを始めた。
彼らは知らない。
王国が、明日には魔力枯渇を迎えるということを。
一方、辺境の領主邸は、対照的な静寂に包まれていた。
「……よし、地脈のベースライン、接続完了」
私の魔力は、王都で搾取されていたものとは違う。
地脈と精霊の特性を、完全にシンクロさせている。
すると、どうだろう。
萎えていた草木が、瞬く間に若緑色に染まる。
周囲には、数多の精霊たちが集まっていた。
王都で丁寧に行っていた『地脈調整』を理解し、信頼してくれていた存在。
しかし、ベアトリスが聖女となってからは状況が一変した。
光の演出のために地脈を強引に引き抜くたび、精霊たちは虐げられ、傷ついていたのだ。
私の神聖魔力に触れた瞬間、歓喜の声を上げて、肩や足元に寄り添う。
彼らの崇拝は、ベアトリスの光など足元にも及ばない「本物の加護」となって、辺境の荒野を塗り替えていく。
「精霊たちの休息所を、もっと整えてあげなくては」
王都が破滅へと沈みゆく同時刻。
辺境の荒野にも、小さな春が訪れようとしていた。
この地こそが、私だけの理想郷となる――。
お読みいただきありがとうございます。
王国は着実に破滅へ向かい、エリアは辺境で理想的な環境を再構築していく……という対比を描いてみました。
無能な王太子とベアトリスの「ざまぁ」は、次回から本格的に加速していきます。




