王都のインフラ、完全停止まであと三日
「ベアトリス様、魔導計器が異常な数値を……!」
「あら、不吉なことを言わないで! 私の光が足りないというの?」
王都の大聖堂。
祭壇に立つベアトリスが手をかざすと、宝石のような光が溢れ出す。
だが、魔導計器は「警告音」を、忙しなく鳴らしていた。
ベアトリスは、教会の象徴として「光の演出」に熱を上げている。
一方で、かつて私が教会の上層部に「地味で聖女らしくない」と命じられ、ひそかに行っていた『地脈の調整』は、完全に放置されている。
……教会の上層部は、単なる「祈り」だけで維持できていると思っているのかしら?
王都を離れる馬車の窓から、ゆっくりと遠ざかる王宮を見つめていた。
彼らは『ニセモノ聖女』が去ったことで、さぞかし清々していることだろう。
だが、王国の加護は、私が毎日欠かさず行っていた微調整なしには、一日たりとも正常に動かない。
……あと三日もすれば、王国は完全に破綻するわ。
王太子は、私を「地味なだけの無能」と切り捨てた。
ベアトリスの「派手な奇跡」こそが、地脈から魔力を強制的に引き抜く『略奪』に過ぎないことに、最後まで気づかないだろう。
馬車が辺境の荒野に差し掛かると、景色は一変した。
地図からも忘れられたこの地は、かつての繁栄など見る影もなく、精霊の加護が死滅している。
「……ひどい有様ね。精霊たちが逃げ出し、地脈が枯れ果てているわ」
かつての領主邸は廃墟同然だった。
その頃、王都の厨房では、料理長が顔面を蒼白にさせていた。
「な、なぜだ……朝採れたばかりの食材が、腐っている……!」
同じ頃、王宮の噴水からはヘドロのような濁水が溢れ出す。
加護を授かろうとした聖職者たちは、逆上した精霊たちの突風に吹き飛ばされていた。
誰一人として、原因が「真の聖女」の不在にあるとは気づかない。
彼らはただ、ベアトリスの周りで「悪霊の呪いだ!」と、的外れな犯人探しを始めていることだろう。
私は庭に立ち、大きく深呼吸をした。
肺に満ちるのは、死に絶えた空気。
だが、神聖魔力を流し込む。
「さて、まずはベースラインの構築からね。……泥遊びがお望みなら、『黄金の穀倉地帯』を見せてあげましょう」
指先から光が零れ落ちる。
枯れ木が震え、荒れ果てた地面が黄金色に脈動を始める。
王都が破滅に向かう一方で、辺境の荒野が、今まさに「真の聖域」へと書き換えられようとしていた。
お読みいただきありがとうございます。
崩壊していく王都。
そして、真の聖女であるエリアが辺境で再構築する理想の地。
次回も、どうぞお楽しみに!




