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第33話 規格外のペット登録と、胃を痛めるギルド長

バベル近郊の谷で、俺たちは無事に馬車の引き手となるSランク魔物『暴君地竜タイラント・アースドラゴン』のタロウをテイムすることに成功した。


「それにしてもクロウさん……本当に規格外すぎます。この暴君地竜って、本来なら国軍が総出で数週間かけて討伐するような『歩く自然災害』なんですよ?」


「ガウッ!」


タロウの背中に乗りながらバベルへと向かう道中、レイアが呆れたようにため息をついた。当のタロウは、俺に撫でられながら犬のように嬉しそうに喉を鳴らしている。


「いくら知能が高い竜種とはいえ、こんなに完全に人間に懐くなんて……冒険者の常識が根本から崩れ去ります……」


「まあ、俺の特製ステーキの味が忘れられないだけだろう。な、タロウ」


「ガウガウッ!」


尻尾をちぎれんばかりに振るタロウの姿に、セツナも「大きくて硬いワンちゃんですね」とクスクス笑っている。


そんな和やかな雰囲気のまま、俺たちは迷宮都市バベルの冒険者ギルドへと到着した。


「…………おい、クロウ。窓の外にいるあの『災害級のバケモノ』は、なんだ?」


ギルドの応接室。


窓の外からギロリとこちらを覗き込んでいるタロウ(※バベルの街中は通行人パニック状態)を指差し、ギルド長が死んだような目で俺を問い詰めてきた。


「ああ、新しくテイムしたペットのタロウだ。明日から遠出するんで、馬車の引き手として使おうと思ってな。ギルドに『従魔テイムモンスター』の登録をしに来たんだよ」


「ペット……? Sランクの暴君地竜が、馬車の引き手だと……っ!?」


ギルド長が両手で頭を抱え、机に突っ伏した。


「お前なぁ……! 魔法剣士のレイアに始まり、規格外の獣人の娘を連れてきたと思ったら、今度はSランクの魔物までテイムしやがったのか!? 俺の胃袋はもうボロボロだぞ!! 頼むからこれ以上、心臓に悪いものを集めないでくれ!!」


「ははっ、まあそう言うな。こいつは俺の言うことしか聞かないから、街で暴れさせたりはしないさ」


必死に抗議するギルド長だったが、やがて諦めたように深い深いため息を吐き、従魔登録の書類に震える手でサインをし始めた。


「……はぁ。わかった、登録はしてやる。だが、絶対に街で暴れさせるなよ。……ん? そういえば、さっきから気になっていたんだが」


書類から顔を上げたギルド長が、俺の後ろで優雅に紅茶を飲んでいる白銀の髪のエルフ――シルヴィアを見て、ピタッと動きを止めた。


「……なんで、Sランクのソロ冒険者として有名な『氷の狙撃手』シルヴィアが、お前たちと一緒にいるんだ?」


「あらギルド長、ごきげんよう。私なら今日からクロウのパーティに、後衛として正式加入させてもらったわ。……あと、彼のお家の同居人としてもね」


「ぶっ!?」


シルヴィアが妖艶に微笑みながら爆弾発言を投下すると、ギルド長は飲んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。


「お、おおお、お前たち……! Sランクのシルヴィアまで引き入れたのか!? しかも同居だと!? 魔法剣士、Sランク級暗殺者、Sランクエルフ、そしてお前……。おい、もうこのパーティだけで小国一つ落とせるぞ……!」


「そんな物騒なことはしないさ。それで、報告のついでなんだが」


俺は白目を剥きかけているギルド長に向けて、地図を広げた。


「明日からしばらく、バベルを離れる。火山の麓にあるドワーフの国へ、装備の強化と温泉旅行に行ってくるつもりだ。もちろん、タロウの引く特製馬車でな」


「ドワーフの国へ……。片道30日の過酷な道のりも、お前たちにかかればただのピクニックだな……。道中の盗賊や魔物が、可哀想になってくるぜ」


完全にツッコミを放棄したギルド長は、もはや悟りを開いたような顔で遠くを見つめていた。


「まあ、そういうわけだ。しばらくバベルの依頼は受けられないから、よろしく頼むぜ」


「ああ……。気をつけて行けよ。俺はしばらく、胃薬を飲んで寝込むことにする……」


こうして、ギルドへの報告とタロウの登録を済ませた俺たちは、明日の出発に向けて、買い出しの準備を進めるのだった。





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