表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/39

第32話 魔改造キャンピングカーと、暴君地竜のテイム

「よし、決まりだな。次の目的地は火山の麓にあるドワーフの国『ガルド』だ」


バベルのマイホームのリビング。


地図を広げた俺の提案に、レイアたち三人が身を乗り出した。


「ドワーフの国ですか! 確かに、あの国なら世界最高峰の武具が手に入ると聞いたことがあります」


「ああ。俺の新しい武器の作成と、レイアたちの装備の強化。それと……火山の熱を使った『ドワーフの豪快な肉料理』と『天然の火山温泉』を堪能するためだ」


「ふふっ、温泉とご当地グルメね。最高じゃない」


シルヴィアが楽しそうに笑う。


地図によれば、ドワーフの国までは通常の馬車で片道30日ほどの距離だ。行ったことのない場所へは【転移】の魔法が使えないため、地道に街道を進むしかない。


「だけどご主人様、30日も馬車の硬い木の椅子で揺られるのは、お尻が痛くなってしまいます……」


「心配するな、セツナ。俺たちの旅は『快適さ』が最優先だ。普通の馬車なんて使わない」


俺は立ち上がり、家の裏庭へと向かった。


そこには、俺がこの数日で深層の魔樹の木材を削り、一から組み上げた『超大型の特製馬車キャンピングカー』が鎮座していた。


「な、何これ……! 家がそのまま車輪に乗っているみたいね!?」


「ただデカいだけじゃないぞ。車輪の軸には、以前討伐した巨大スライムの核と粘体を加工した『特製サスペンション』を組み込んである。どれだけ悪路を走っても、車内ではお茶の一滴もこぼれない設計だ」


外装は竜のブレスすら弾く深層の魔樹。内装にはふかふかのソファとテーブルを完備し、さらに先日買った『冷蔵庫』や『魔力コンロ』の空調システムを応用して、車内は常に快適な温度に保たれるようになっている。


「す、すごいですクロウさん! これなら一生旅ができちゃいます!」


「問題は、この頑丈すぎてクソ重い馬車を引ける『馬』がいないことだ。普通の馬じゃ一歩も動かせないからな」


だからこそ、俺たちはバベル近郊にある危険地帯――『竜の谷』へとやってきていた。


「この谷の奥に、手頃な『エンジン』が住み着いてるってギルドの噂で聞いてな。……おっ、いたいた」


俺が指差した先。


谷の最深部で、岩山のように巨大な体躯を横たえていたのは、ティラノサウルスのような太い二本足と、鋼鉄よりも硬い赤茶色の鱗を持つSランクの魔物――『暴君地竜タイラント・アースドラゴン』だった。


「グォォォォォォォッ!!」


俺たちの気配に気づいた地竜が、鼓膜が破れそうなほどの咆哮を上げ、大地を揺らして突進してくる。


口からは岩をも溶かす高熱のブレスが漏れ出していた。


「ク、クロウさん! あれはSランクの災害級魔物ですよ!? いくらなんでも馬代わりにするのは……っ!」


レイアが慌てて剣を抜こうとするが、俺はそれを手で制し、真っ直ぐに突進してくる巨大な地竜の正面に立った。


「おい、止まれ」


俺は右の拳を軽く引き、地竜の鼻先スレスレの空間を『殴った』。


ただの素振り。だが、俺のステータスから放たれた理不尽なまでの風圧と衝撃波は、それだけで巨大な地竜の巨体を空中に浮かせ、そのまま地面へとドゴォォォンッ! と叩きつけた。


「ギャンッ!?」


「今日からお前は、俺たちの馬車の引き手だ。いいな?」


俺が深層で培った絶対強者としての『殺気』を少しだけ漏らすと、暴君と呼ばれたSランクの地竜は、まるで叱られた子犬のように「キュゥン……」と情けない声を上げて、地面にペタンと腹をつけた。


「あらあら……Sランクの魔物を、拳の風圧と殺気だけで平伏させるなんて。本当に常識外れね」


「あとは、鞭より飴だ」


俺は怯える地竜の鼻先に、インベントリにストックしておいた『オーク肉の極上厚切りステーキ』を山盛りにした樽をドンッと置いた。


地竜が恐る恐るその肉片を口に含む。


「……ガウ?」


瞬間、地竜の爬虫類めいた瞳がカッ! と見開かれた。

野生の生肉しか食べたことのない魔物にとって、絶妙な火加減と特製スパイスで調理された俺のステーキは、文字通り『未知の美味』だったらしい。


「ガツガツガツッ! グルゥゥ……♪」


地竜はあっという間に樽の肉を平らげると、さっきまでの凶暴さはどこへやら、俺の足元に巨大な頭をすり寄せて、尻尾をブンブンと振り始めた。


「完全に胃袋を掴まれちゃいましたね……」


「よし、交渉成立だ。お前の名前は今日から『タロウ』な。美味い飯を毎日食わせてやるから、しっかり働けよ」


「ガウッ!」と嬉しそうに吠えるタロウ。


俺は持参した特製のミスリル製ハーネスをタロウに装着し、魔改造馬車と連結させた。


「よし、これで馬車キャンピングカーの動力は完璧だな」


「ご主人様、このままドワーフの国へ出発しますか?」


セツナの問いに、俺は首を横に振った。


「いや、待て。いくら俺の言うことを聞くとはいえ、こんなSランクのバケモノを無許可で連れ回したら、各地の街や関所で大パニックになるぞ」


「あ……確かに。バベルの門番さんも気絶しちゃいそうです」


「だから、まずはこいつの『従魔テイムモンスター』登録を済ませて、身分を証明できるようにしておく必要がある。……というわけで、まずはバベルの冒険者ギルドに戻って、ギルド長に挨拶(報告)といくか」


「ふふっ、あのギルド長、また胃に穴が開くんじゃないかしら?」


シルヴィアが楽しそうにくすくすと笑う。


こうして俺たちは、明日の出発を前に、規格外の相棒タロウと魔改造馬車を連れて、バベルの冒険者ギルドへと向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ