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第3話 山頂の謎の果実と若返り。そして、怒れる主(ドラゴン)との遭遇


「……まあ、ちょっとかじるくらいなら平気だろ」


極限の空腹と、これまで培ってきた謎の自信(異常な胃袋)に背中を押され、俺は山頂の中央に実っていた紫色のヤバい果実をもぎ取り、思い切ってかぶりついた。


「――っ!?」


不味い、いや、美味いのか?


味覚を認識するより早く、強烈な熱が喉の奥から全身へと爆発的に広がった。


致死量の猛毒が体内を駆け巡る……はずが、俺の隠しスキル『状態異常完全無効』が瞬時に毒素だけを完全に焼き尽くし、果実に秘められた莫大な「謎のエネルギー」だけを肉体に定着させていく。


「ぐ、おおおおっ!?」


全身の骨が軋み、細胞が凄まじい勢いで作り変えられる感覚。


だが、痛みはない。むしろ、15年間の過酷なサバイバルで蓄積されていた見えないダメージや古傷が、一瞬にして癒えていくのがわかった。


視界が異様にクリアになり、体が羽のように軽い。


熱が引いた後、俺は自分の手を見て息を呑んだ。


剣を振り続けた分厚いマメはそのままに、ひび割れてボロボロだった肌が、瑞々しい張りを取り戻している。


慌てて近くの水たまりを覗き込むと、そこには髭が綺麗に抜け落ち、20代前半の若々しい姿に「若返った」俺の顔が映っていた。


だが、その瞳の奥には、15年間の死線を潜り抜けてきた鋭い光が確実に宿っている。


「……なんだこれ。ただの毒リンゴかと思ったら、とんでもない回復アイテムだったのか?」


軽く拳を握り込んだだけで、空気がバツンッ!と弾けるような音がした。


若返っただけじゃない。体の内側から、底なしの力が湧き上がってくる。


だが、その現象に首を傾げている暇はなかった。


『GYUROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』


突如、山頂の空気を震わせる鼓膜が破れそうな咆哮。


空を覆い隠すほどの巨大な影が舞い降りた。漆黒の鱗、鋭い角、見上げるほどの巨体。


ファンタジーの世界なら絶対に避けて通れない最強の存在――ドラゴンだ。


どうやら、この山のヌシであり、俺が今さっき食べてしまった「謎の果実」を長年守り続けていたらしい。


ドラゴンは、自分の宝を食い散らかした小さな人間を見下ろし、激怒の炎を吐き出そうと大きく息を吸い込んだ。


「あー……悪い、お前のお宝だったのか。でも」


俺は全く焦っていなかった。


ドラゴンの動きが、コマ送りのようにゆっくり見える。


腰に提げた自作の漆黒の剣に手をかけ、息を吐く。


15年間、生きるためだけに研ぎ澄ませた我流の抜刀。それに、先ほど手に入れたばかりの規格外の身体能力が合わさるとどうなるか。


「――お前、隙だらけだぞ」


ヒュンッ、と。


剣を振った自覚すらないほどの速度。


直後、空気を切り裂くような轟音と共に、凄まじい斬撃の衝撃波が山頂を駆け抜けた。


「……え?」


炎を吐く寸前だったドラゴンの巨体が、音もなく真っ二つにズレて崩れ落ちる。


吹き飛んだ剣圧はそのまま後方の雲を裂き、空に一直線の道を作っていた。


「……マジか。俺の剣とこの体、どんだけヤバいことになってんだ」


自分の規格外の力に少し引いたものの、これでようやく確信した。


今の俺なら、どこに行っても絶対に死ぬことはない。


俺は真っ二つになったドラゴンの素材から、使えそうな牙や鱗をいくつか剥ぎ取ると、山頂から広大な海を見下ろした。


15年続いた無人島サバイバルは、もう完全クリアだ。


「よし。海を越えて、人がいる場所を探すか」


俺は、新たな世界への期待を胸に、山を下り始めた。



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