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第2話 生き残るための拠点拡張と自作の剣。そして山頂で見つけた謎の果実

「ふぅ……よし、今日のノルマはこんなもんか」


額の汗を拭いながら、俺は自作の拠点を見上げた。


最初は木の上にツルで縛っただけの粗末な寝床だったが、今では丸太を組み上げた頑丈な小屋になり、周囲には魔物避けの鋭い柵まで張り巡らせてある。


あの日、木の枝一本で巨大ムカデを叩き潰してから、俺の生活は「生き残ること」ただ一つに集約された。


相変わらずどれだけ体を酷使しても「疲労」という感覚はなく、睡眠も1日2時間で完全に回復する。


かつてのブラック企業での異常な労働環境に比べれば、やればやるだけ自分の命が安全になるこの島での作業は、むしろ健全にすら思えた。


「問題は、武器だな」


石器や木の槍では、すぐに限界が来た。


この島の魔物は、外殻が鋼のように硬いヤツや、異常な再生力を持つヤツばかりだ。


俺は安全圏を少しずつ広げながら、島で見つけた未知の鉱石を採掘し、土で作った簡易的な炉で溶かして「剣」を打ち始めた。


もちろん、鍛冶の知識なんてネットの動画で見た程度のものだ。

最初はすぐに折れ、刃こぼれし、その度に死にかけた。

だが、折れたらまた新しい鉱石を掘り、より硬い素材を混ぜ、温度を変えて打ち直す。生きるためのトライアンドエラーを、狂ったようなペースで何千回、何万回と繰り返した。

同時に、戦い方も変わっていった。


型なんてない。あるのは「どうすれば一番早く、確実に敵の急所を突けるか」という生存本能だけだ。


魔物の動きを観察し、無駄な予備動作を削ぎ落とし、ただ生きるために剣を振るう。


――そうして、気づけば途方もない時間が流れていた。

川に映る自分の顔は、伸び放題の髭と無数の傷跡に覆われ、すっかり30代後半のむさ苦しい男になっていた。精神年齢も相まって、立派な「サバイバルに狂ったおっさん」だ。


手には、数え切れないほどの失敗の末に完成した、漆黒に鈍く光る一振りの剣。


これ一本で、島のジャングル地帯に生息する魔物はほとんど狩れるようになっていた。


「よし、今日はずっと気になってた、あの『山』の頂上まで行ってみるか」


島の中心にそびえ立つ、霊峰のような高い山。

あそこには今まで見たこともない生態系があるかもしれない。


数日かけて険しい獣道を登り切り、山頂に辿り着いた俺の目に飛び込んできたのは、異様な光景だった。


山頂の開けた場所。そこだけが、まるで生命力を吸い取られたかのように草木が枯れ果てている。


そして、その中央にポツンと生えた一本の古木に、ひとつの『果実』が実っていた。


「……なんだこれ。見るからにヤバそうだけど」


禍々しい紫色に発光し、周囲にうっすらと瘴気のようなものまで漂わせている桃。


どう考えても、一口かじれば即死しそうな代物だ。

だが、丸一日山を登り続けて、腹は減っている。


それに、この15年で腐った肉だろうが毒々しいキノコだろうが、食べても一切腹を壊さない(異常な胃袋だと自分でも思う)ことだけは証明済みだった。


「……まあ、ちょっとかじるくらいなら平気だろ」


俺は吸い寄せられるように、その紫色の桃に手を伸ばした。

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