第27話 ギルド登録と、偏りすぎた最強パーティー
バベルでの生活も落ち着き始めたある日。
俺たちはセツナの冒険者登録を済ませるため、迷宮都市バベルの冒険者ギルドを訪れていた。
「へえ、この子が新しい身内かい。……って、おいクロウ」
応接室で対応してくれたギルド長が、セツナをひと目見るなり、ピタッと冷や汗を流して動きを止めた。
「なんだ、その目は。ただの大人しい獣人の娘だぞ」
「とぼけるな。足音一つ立てない洗練された歩き方に、隠しきれてないその異常な気配……。レイアといいこの子といい、お前はどうしてこう、規格外のバケモノばっかり集めてくるんだ……俺の胃に穴を開ける気か?」
歴戦の冒険者であるギルド長は、どうやらセツナがただの少女ではないと一瞬で見抜いたらしい。
ギルド長の胃薬の消費量をこれ以上増やさないためにも、俺たちは適当に誤魔化しつつ、セツナを『Cランク(実力は未知数)』という異例の好待遇で正式なパーティーメンバーとして登録してもらった。
◆
その日の午後。
俺たちはさっそく3人での連携を確かめるため、バベル郊外の森へ『オーク集落の討伐依頼』に来ていた。
「ハァッ!!」
「シッ……!」
レイアが愛用の長剣に炎の魔法を纏わせ、魔法剣士特有の鋭い踏み込みでオークを数頭まとめて斬り伏せる。その死角からこぼれた敵を、セツナの銀色の双剣が瞬きする間に斬り裂いていく。
「……うん。見事なオーバーキルだな」
俺が手出しをするまでもなく、数十頭いたオークの群れはわずか数分で全滅してしまった。
討伐部位であるオークの耳を回収し終えると、俺は【時空間魔法】のインベントリを展開した。
「よし、今日の依頼はこれで終わりだ。昼飯にしようぜ」
これまでの過酷なサバイバル生活では、火にかけたフライパン一つで完結する『ワンパン飯』ばかりを作っていた。
だが、今は違う。バベルのマイホームには、最高級の魔道具を揃えた完璧なキッチンがあるのだ。
「今日は朝から、家でじっくり仕込んでおいたんだ」
俺がインベントリから取り出したのは、まだ湯気を立てている重厚な鉄鍋と、自宅の魔力オーブンで焼き上げたばかりのふかふかのパンだった。
鉄鍋の蓋を開けると、オークのすね肉を香草と赤ワインでホロホロになるまで煮込んだ、極上のシチューの香りが森いっぱいに広がる。
「わぁ……! すごい、お店で出るような本格的な煮込み料理!」
「ご主人様、フライパン料理以外もこんなに完璧に作れるのですね……っ。お肉が、口の中でとろけます……!」
大自然の中で食べる極上の手作りシチューに、二人は幸せそうな顔で頬を緩ませている。
美味い飯を食いながら、俺はふと、先ほどの戦闘を思い返して口を開いた。
「今日の戦闘を見てて思ったんだが……俺たち、パーティーの『バランス』がすげえ悪いな」
「えっ? そ、そうですか? 私たち、息はピッタリだったと思うのですが……」
レイアが口元にシチューをつけたまま、不思議そうに首を傾げる。
「連携の問題じゃない。役割の話だ。レイアは魔法剣士だが、基本の立ち回りは近接から中距離の斬り合いだろ。セツナは完全な近接特化の暗殺者。そして俺も前衛寄りだ」
過酷なサバイバル生活の中で、いかに効率よく安全に魔物を狩るかを追求してきた俺にとって、この偏りは少し気がかりだった。
今は個々のステータスの暴力(ゴリ押し)でなんとかなっているが、本来パーティーというものは、盾役、攻撃役、そして後方支援役がいて初めて安定するのだ。
「たとえば、空を飛ぶ魔物の群れや、こちらに近づかずに遠距離から魔法を連発してくるような厄介な敵が出た時、俺たちの構成だと『全員で突っ込んで殴る』しか選択肢がない」
「あ……。た、確かに……」
「このバベルのダンジョンならそれでもいいが、今後もし別のダンジョンを探索したり、未知の領域に行くなら、戦略の幅は広げておきたい」
俺の指摘に、セツナも納得したようにこくりと頷いた。
「つまり、後衛から安全に攻撃や援護をしてくれる『純粋な遠距離の戦闘職』が必要、ということですね」
「ああ。強力な広域魔法が使える後衛の魔法使いか、索敵と狙撃ができる弓使いが一人欲しいところだ」
これだけ快適な拠点ができて、頼れる前衛も揃った。ならば次は、パーティーの欠点を補う戦力の拡充だ。
時間をかけて資産と仲間を増やし、万全の態勢を構築していく。これもサバイバルの醍醐味の一つである。
「よし、決まりだな。明日はギルドや酒場を回って、優秀な『後衛職』を探してみるか」
俺の提案に、レイアとセツナは「はいっ!」と元気よく返事をした。
こうして俺たちは、空席となっている後衛のポジションを埋めるべく、新たな仲間探しの準備を始めるのだった。




