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【1日目-夢】
目の前に、こちらに横顔を向けた女の子が所在なさげに立っている。
10歳かそこらだろうか。
お世辞にも良い生地とは言えない仕立ての着物を着て、無造作に髪を束ねている。
奥に見えるのは、父親だろうか。
父もまた、粗末な着物を着ているが、話し相手は、対照的に随分と着飾っている。
桜の木の下で、ここからは聞こえないが何やら話しているようだ。
「うた」
大人たちに気づかれないように、小さな声で少女に呼びかける。
2度目の呼びかけで気づいた少女は、振り返って満面の笑みを浮かべた。
「宗次郎様」
「遊びに行こう」
「はい!」
そう言って、差し出された細い手をぎゅっと掴む。
今日のお目付役は優しい庄五郎だ。気づいても上手く取りなしてくれるだろう。
宗次郎は生まれつき体が弱く、自室で寝込むことが多い。
そんな彼にとって、同じ年頃の遊び相手は、たまに訪れる庭師の娘のうただけだった。
そっと裏門を抜け、山を登る。
中腹に開けた草原が2人だけの大切な遊び場だった。




