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その探偵、問題児につき  作者: 白沼 雄作
第一章 狂気があたりまえの世界
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第四話 幼き復讐 その2

遅れた上に、今回はかなり短くなってしまいました。すみません!

 時を少し遡り、カイ達が遠くでエルフを監視していた頃――

 シグマは一人、シトリン劇場のすぐ目の前にある、建物と建物の隙間に身を隠していた。

 エルフが荷台を劇場の前まで運び終えると、周囲を警戒しながら交渉人を待っていた。

(今回は先輩方との合同作業。下手に動くわけにはいかない。指示を・・・・・・そういえば)

 シグマはエルフから目を離さず、音を立てずに服のポケットを触り、何かを探った。

(やっぱり、インカムを渡されてない。先輩のミスか、それとも俺を試しているのか・・・・・・?)

 そう思った時、シグマは背後に迫る殺気に気づき、素早く振り返る。

 覆面を被った男が、ナイフでシグマの首を貫こうとしていた。シグマは焦ることなく男の右手を払い、攻撃を阻止すると同時に、宙に放たれたナイフを左手で受け取る。間を置かずにシグマは右手で男の口を抑え、ナイフを男の喉に突き刺した。

「ッ!! ッ・・・・・・!!」

 男は息絶え、そのまま後ろへと倒れた。

 シグマは男の血反吐が付いた右手を自身のズボンで拭いながら、焦り始める。

(俺達の待ち伏せを読まれていた!? 下手すると先輩達の方にも――!)


 ――ドォンッ!!


 嫌な予感が的中し、遠くで爆発音が聞こえた。

(今の音は地雷だ――先輩が仕掛けたものだと考えていいとはいえ、敵襲が来たことに変わりはない。すぐに援護に向かわなくては!)

 シグマはこの場を離れようとするが、劇場から男二人が姿を現したのを確認して、もうしばらく身を潜めることに。

「始めたようじゃな」

 エルフは、爆発が起きた建物の屋上を見ながら微笑んでいた。

「はい。仰せの通りに」

「・・・・・・けど、あの建物に向かった奴と、この付近に配置した奴から連絡が途絶えたんだが」

 男二人がエルフにそう話しかけた。まるで主人に仕える執事のようだった。一人は礼儀がなっていないが。

「やられたようじゃな。恐らく待ち伏せでは彼らを殺すことはできないであろう。問題はその後じゃが。依頼そのものが罠だったと知れば直接乗り込んでくるか、あるいは下手に絡む必要がないとこの場を去るか。まあどちらにせよ、我らに敗北はない。戦力からしても数で圧倒できる。逃げられても既に身元は確認済みじゃ。殺せずとも表社会から退場させる程度のことは容易いものじゃ。ひとまず中へ入るぞ」

「了解」

「了解」

 エルフと男二人が劇場の中へと消えた。肝心の身代金が乗っている荷台は外に放置されたままだった。

 シグマは辺りを警戒しながら荷台に被さった布を降ろす。

「・・・・・・やられたか」

 荷台に乗っていたものは、十億円――と思わせるための、ただの紙束だった。

(どうして・・・・・・どうしてエルフは俺達をはめるようなことを――)

 エルフの裏切りに、シグマは頭を悩ませていると、今度は遠方からの狙撃音が聞こえてくる。それを聞いたシグマは、カイ達の方にも敵襲が来ていることを思い出す。

(今は先輩方の救出が先だ――!)






「――なるほど、話はわかった」

「あー、このパターンは非常に面倒くさいことになるぞ」

 シグマから一通り話を聞いたカイとラムダ。

「んで、どうすんだ? 奇襲するにしろ、撤収するにしろあいつらの手の内で踊らされるのと一緒なんだろ?」

 ラムダが頭を抱え、シグマに問う。

「エルフの目的はわかりません。ですが、恐らくそれは俺に問題があるのだと思います」

「何か思い当たることでもあるのか」

 思い詰めた顔をしたシグマを見て、カイが尋ねた。

「俺が殺し屋だった頃に、アルムスター夫妻の護衛の依頼を受けたことは、話しましたから覚えてますよね? その依頼を終えた後、『名声、財閥の勢力を上げるためにボディガードと偽って殺し屋を雇い、テロ組織を壊滅させて正義のヒーローを気取った偽善貴族』として、裏社会で悪い噂が流れました。その影響を受けてか、アルムスター財閥は徐々に財力を失い、徐々に表から姿を消えていきました」

「あちゃー・・・・・・それが本当なら<ガーネット>に恨み持つわけだな」

 察したラムダが困った顔をして頬をかく。

「劇場には俺一人で行きます。先輩達を巻き込む訳にはいきませんので」

「待て待て、あっちはテロ組織を構えてるんだぞ! オレの見込みじゃ劇場に最低でも三十人はいるぞ! それにお前、被弾してるのを忘れてるとか言わせねぇぞ!」

「被弾・・・・・・・・・・・・?」

 ラムダの言葉を聞いて、シグマはふと自分の横顔を左手で触ると、液体の感触がした。シグマはすぐに左手のひらを確認すると、血が付着していた。

 シグマは頭を狙撃されたことを思い出した。

「あっ、さっきのあれですね。大丈夫ですよ」

 しかし、シグマは平然としていた。シグマにとって、頭の被弾が痛くもかゆくもなかったのだ。

「はぁ!? 何言ってんだよ! そんな体で行かせるわけには――」

「<ガーネット>」

 シグマの平然とした顔に、むしろ怒りが込み上げてきたラムダであったが、それを妨げるようにカイがシグマをコードネームで呼んだ。

「お前は一度の依頼、一度の場面で最大どれくらいの数を相手にしてきた?」

「そうですね・・・・・・組織の本部に乗り込んだこともありますので、百以上です。正確には数えてませんからわかりません」

「そうか・・・・・・」

 カイは右手を顎に当て、下を向いて考える。

「・・・・・・よし、いいだろう。行ってこい」

「おい!」

 なんとカイは、シグマを一人で行くことを許可した。

 ラムダはそれに不満だった。

「ありがとうございます!」

 シグマは二人に一礼すると、駆け足で屋上から飛び降りる。

「!?」

「!?」

 驚いたカイとラムダは思わずシグマが落ちた下を確認しに行こうとする。それよりも早くシグマは劇場へと素早く向かい、扉を蹴飛ばして中へ入った。

「・・・・・・なあ、<アマゾナイト>、覚えているか?」

「・・・・・・何の話?」


「<ガーネット>を調べた際に出てきた、『機械人間』についてだ」


「・・・・・・まさかあいつがそれとは言わねえよな?」

「断定はできんが、明らかに人間業ではない」

「それは置いといてだ。今はこれからどうするかが問題だ」

 普段のふざけた態度が嘘のように、ラムダは次の行動を催促した。

「行かせてはおいたが、もちろん野放しにはできん。すぐにでも向かいたいところだが・・・・・・」

 カイは、武器が入った鞄を枕にして、寝かせている尚紀に目を移した。

「あっ、忘れてた」

「あいつを放置するわけにはいかない」

「んー・・・・・・・・・・・・俺ここに残るわ。念のために例のアレを準備しとく」

「アレか・・・・・・いいだろう。何かあった時はよろしく頼む」

 カイは爆発によって扉が壊れた階段を下り、劇場へと急いだ。



「あいつが・・・・・・『機械人間』ねえ・・・・・・・・・・・・」


肝心の戦闘シーンに移れず、本当にすみません。

やはり二つの作品を並行して書くのは難しい・・・・・・

次の更新は通常通りに、6/15に行います。

今後ともよろしくお願いします!

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