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その探偵、問題児につき  作者: 白沼 雄作
第一章 狂気があたりまえの世界
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第三話 幼き復讐 その1

 深夜二時前――

 シリトン劇場前に、荷台を辛そうに押している少女――エルフの姿があった。

 荷台には十億円が積まれているらしいが、薄い布で隠されて外から見えなかった。

 それを、約五百メートル離れた場所の屋上で監視している、尚紀、カイ、ラムダの姿があった。

 尚紀、ラムダは双眼鏡で、カイは狙撃銃――L96A1を構え、スコープでエルフの様子を伺っていた。

「ねえ、あんな重たそうな物、彼女一人じゃ辛いんじゃないの?」

「許せ。条件に一人で来るようにとあったからな」

 不満そうな尚紀に、カイは無情に答えた。

「・・・・・・・・・・・・てか何でお前いんの?」

 今更のようにラムダが尚紀に問う。探偵の一員ではない尚紀が、この場にいるのは相応しくない。それ以前に、普段であれば尚紀の方から断っているのにも関わらず、今回は自ら依頼についてきたのだった。

「いいじゃない、今まで散々誘ってきたくせに。今回はダメだって言うの?」

「いや、今までの誘いは前線に出させるためじゃなくて、参謀を務めてほしかっただけなんだけど」

「・・・・・・<ガーネット>が心配なんだろ?」

「そうよ、あなた達が変なことさせないようにね」

「おっ、無茶する彼氏を心配する彼女のかが――あっ、ごめんなさいお願いします殴らないで! 依頼に支障出るから!」

 茶化してくるラムダに対し尚紀が拳を構えると、見苦しく謝ってきた。

 そんなラムダを無視するかのように、カイは話を続ける。

「心配無用だ。あいつは強い。学業に専念したために腕が鈍っていようと、俺達より遥かにな。むしろ、<カルセドニー>は見ない方がいいだろうな。あいつのやり方を」

「カルセドニー・・・・・・って、それ私のこと?」

「あぁ、勝手についてきたとはいえ依頼中だ。本名がバレれば即身元が判別されてしまうからな。特に、両親が有名人だったりすると尚更だ」

「それはいいと思うけど、顔がバレれば普通に特定されちゃうと思うんだけど」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 何故かカイとラムダは言葉を返さず・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・そろそろ二時だな」

「ウィッス」

「ちょっと! 話逸らさないで――」

 ――ドォンッ!!

 突然、三人の背後から爆音が響き、爆風がした。

「ん、もしや・・・・・・・・・・・・?」

 ラムザ達は後ろを振り向くと、念のため出入りする扉に仕掛けておいたM18クレイモアが爆発していた。

 ラムザは単身でその近くに来て確認すると、謎の男の死体があり、肉片が辺りに散らばっていた。

「誰なの?」

「知らない人。お前は見ない方が身のためだ」

「恐らくそいつは組織の刺客だな。俺達が来ているのが既にバレている証拠だ」

 そう言うとカイは再びエルフの様子を見る。

 シリトン劇場の扉から出てきた男二人が、エルフと交渉していた。

「マズいな、あれじゃ人質を返す気はなさそうだ・・・・・・聞こえるか、<ガーネット>?」

 カイは左耳に付けた小型インカムの通話スイッチを、片手で押しながら言った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 しかし、シグマからの応答がなかった。

「<ガーネット>、聞こえるか! 応答してくれ!」

 カイは必死に呼びかけるが、返事が返ってくることはなかった。

「・・・・・・・・・・・・おい、<アマゾナイト>」

 カイは手をインカムから離し、ラムダをコードネームで静かに呼んだ。

「ん? 何かあった?」

「お前・・・・・・<ガーネット>にインカムを渡し忘れたとか言わせないぞ?」

「まさかぁ~? そんなわけ――ん?」

 ラムダが余裕の表情でズボンのポケットを漁っていると、謎の異物があるのを手の感触で把握した。それを取り出すと、小型インカムが――

「あっ、これは・・・・・・・・・・・・」

「はぁ・・・・・・・・・・・・」

 振り向くことなく察したカイは、ため息を吐くしかなかった。

「そもそも、彼はどこにいるの?」

 尚紀が、シグマの居場所を尋ねてくる。

「あいつは・・・・・・わからん」

「はぁ?」

 カイの答えに尚紀は理解に困った。

「それ、どういうことよ! 連絡手段がなくたって、事前の打ち合わせで配置位決めてあるんじゃないわけ!」

「普段はもちろんそうだ。ただ今回、<ガーネット>は俺達と初の共同作業で、あいつがどういう動きが得意で、何をさせてやればいいのかわからなかったからな。だから、好きなようにしろと言ってある。つまり、あいつは既に内部に身を潜めている可能性もあれば、俺達同様――遠くから様子を伺っている可能性もある」

「そんな・・・・・・・・・・・・」

 尚紀は生気が抜けたように膝を崩した。

「<アマゾナイト>、準備しろ。狙撃に入――ッ! 伏せろ!」

 何かに気づいたカイは、尚紀を押し倒し、自身も地に伏せる。ラムザも同様に素早く伏せると、狙撃音とともにカイの上を弾丸が素早く通過した。

「スナイパー、3時方向!」

「んげ! 気づかれた!? 今回の敵は優秀だな」

「感心してる場合じゃないでしょ! 早くここから――」


「いたぞ!!」


 屋上の扉から、数名の男がぞろぞろと姿を現す。男全員には短機関銃を持ち、カイ達に向け構えていた。

「チッ、面倒になったな・・・・・・」

「いやー参ったね、どうする?」

「どうするも何も、もう何もできないわよ!」

 尚紀の言うとおり、今カイ達にできることは何もなかった。下手に動けば即座に打たれ、何か策を打てたとしても、スナイパーの視界に入れば即座に射殺されるだろう。

 このように、完璧に為す術もない状況であるが、何故かカイとラムダは余裕を浮かべていた。

「ここは降参するしか――」

「<カルセドニー>、前方をよーく見てみるんだ」

「えっ・・・・・・・・・・・・?」

 ラムダに言われ、尚紀は前方をじっと見つめる。

 前方には無論、男三人がいたが――

「!?」

 尚紀は気づいた――

「降参するのであれば、伏せたままこっちへ――」

 男の一人が銃を向けながら言っている最中――突然その男の頭が弾け飛んだ。

「? どうし――!? 何だ!?」

「ッ!?」

 言葉が途切れたのを不思議に思った別の男が、話していた男の方を見て驚愕した。残りの男もその異様な反応に目を移し、頭のない男を見て度肝を抜いた。

 頭を失った男は思い出したかのように倒れる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!?」

 その衝撃で、血飛沫が尚紀達にかかる。

 初めて見る大量の血と肉片に、尚紀の体が自然と震え始める。

「おい! 貴様ら何を――!!」

 男の一人が、尚紀達の仕業と思い銃を構え、引き金を引こうとした直前――その男の首に穴が空く。

「ぅ・・・・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・・・・・・ッ!!」

 悲鳴を上げようにも、声帯が切断されたためにうめき声すらままならずに、ゆっくりと倒れた。

「くそッ! 一体誰が――!」

 残った男が辺りを警戒し始めてすぐ――左胸に大きな風穴が空き、体を硬直させたまま倒れる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 尚紀達の前方にある別の建物の屋上に、マグナムを構えていたシグマの姿が確認できた。

「あいつ、派手にやるな」

「さすがは『冷酷紳士』――容赦ないな」

 ラムダとカイは、シグマに感心しながらも安堵する。シグマが助けに来ずとも打開策はあったものの、来てくれるだけでも安心感が得られた。

「皆さん、大丈夫ですか!?」

 シグマは地を一蹴りし、その勢いだけで尚紀達の屋上に移動してきた。

シグマが元いた屋上と、尚紀達がいる屋上との間は五メートル程あった。それを一っ飛びで行くこと自体異常なことであったが・・・・・・実のところ、カイとラムダもその程度のことは容易にできるのである。

「あぁ、なんとか――」

「シグマ伏せろ!」

 ラムダが呑気に言ってる中、カイはコードネームを使うことを忘れて指示する。

 シグマも事態を察するも、それに対応出来ず、こめかみに弾丸が当たる。

「!?」

「!?」

「いやああああああああああああああああああああああああ!!」

 弾丸は頭を通り抜け、外に抜けると同時に勢いよく血飛沫が上がる。

 それを目の当たりにした尚紀は思わず悲鳴を上げた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 体を硬直させたまま言葉を発さないシグマ。既に絶命したかのように思われた――




「なんだ、ただのスナイパーですか」




 なんと、シグマは意識を正常に保っていた。それどころか、被弾をものともせずあっさりした感じで言葉を吐いた。

 すると、右腕を横に上げ、マグナムを右方向に構え、発砲する。その方角を見ることなく。

 間もなくして、右からゴンッ! と鈍い音がなる。弾丸が着弾した音である。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」

 それを目にしたカイとラムダは息を呑んだ。

「シグマ・・・・・・大丈夫なの・・・・・・・・・・・・?」

 尚紀は二人より一足早く立ち上がり、シグマに駆け寄る。

「大丈夫です。この程度はなんとも・・・・・・・・・・・・すみません、長い休業で感覚を鈍らせていたとはいえ、狙撃手に気づかないなんて」

 シグマは微笑みながら、自身の安否とともに被弾した謝罪をした。

「ッ!! よかった・・・・・・・・・・・・!」

 尚紀は力が抜け、その場に倒れる。

「!? 先輩!?」

 シグマはしゃがみ、尚紀の体を起こさせて状態を確認する。

 尚紀は気絶しただけで、体に異常はなかった。

「・・・・・・一度に大量の血に、彼氏の被弾が重なれば、気が落ちるのも当たり前やな」

「クッ! 俺としたことが、敵襲を許してしまった・・・・・・!」

 ラムダとカイも立ち上がり、体勢を整える。

「気に病まないでください。この依頼は、イレギュラーなものですから」

「どういうこっちゃ!?」

 ラムダはシグマの言っていることがわからなかった。

「あれを見てください」

 シグマが指を指した先を、ラムダとカイは見る。

 シトリン劇場前――既にエルフの姿はなかった。しかし、荷台だけは残っていたものの、布が落ち、露わになったものは十億円――でなく、ただの紙束だった。

「馬鹿な!? 俺達が確認したときは、確かに十億円が!!」

 スコープでそれを確認したカイが驚いた。

「恐らく、彼女が道中ですり替えたのでしょう・・・・・・」

「は? どうして?」

 ラムダが納得できずに聞き返すと、シグマはこう答えた。




「全ては演技だったんです・・・・・・・・・・・・俺らを殺すための!」





お読みいただき、ありがとうございます。

一応ギャグメインの作品にする予定ですが、しばらくシリアスな場面が続きます。

次回の更新は5/15です。

また、今回は「混沌のディオス・ウォー」も同時に更新しましたので、そちらの方もよろしくお願いします!

※※※追記※※※

次回の更新ですが、部活の大会や、テスト期間と被ってしまうため、勝手ながら休載させていただきます。そのため、次の更新は5/30です。

誠に申し訳ございません!

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