別室にて
門番に案内された別室で、私と琥珀くんは所在なさげに座っていた。
すると、部屋の空気がピリリと震えたような気がした。
「――おやおや、これは驚いた。門番が『化け物じみた魔力の塊が来た』と泣きついてくるから何事かと思えば……こんなに可愛らしいマレビトさんたちだったとはね」
重厚な扉が開き、一人の人物が現れた。長く白い髭を蓄えた、賢者と呼ぶにふさわしい風格の老人。
その瞳は優しげだが、すべてを見透かすような鋭い光を宿している。
「あ、あなたが学園長……?」
「いかにも。ローズマリン学園で学園長を務めている、アルフォンス・ゼーレだ。二人とも、まずはここに来てくれたことに感謝しよう」
アルフォンス学園長は、私たちの前に腰を下ろすと、膝をついて目線を合わせてくれた。その瞬間、彼は私の腕の中にいるスノウを見て、少しだけ目を見開く。
「……ほう、高位の精霊まで連れているとは。ユーフェリアの召喚術も、とんでもないものを引き寄せてしまったようだね」
「……じいさん、俺たちをどうするつもりだ」
琥珀くんが警戒して私を背中に隠す。
学園長は愉快そうに目を細めた。
「どうもしないよ。ただ、この街の平和を守るのが私の役目でね。君たちの魔力は、言わば『むき出しの太陽』だ。そのまま街を歩けば、悪い輩に利用されるか、魔力が暴走して周囲を焼き尽くす。……そこで提案なんだがね」
学園長は悪戯っぽく微笑んで、二通の招待状を取り出した。
「我が学園の『特別全寮制クラス』に入らないかい? 正体は隠匿し、身の安全を保障しよう。
君たちの望む『元の姿に戻る知識』も、我が校の禁書庫なら見つかるかもしれない」
琥珀くんと顔を見合わせる。
「……禁書庫。……琥珀くん、どうする?」「……学園長自らのスカウトか。断れる状況じゃなさそうだな」
こうして私たちは、学園長自らの手引きによって、ローズマリン学園へと招かれることになった。
豪華な「学園長専用の馬車」が迎えに来る中、私たちは初めて、これから始まる波乱の生活を予感したのだった。




