10 人類AIに背く
人間はそもそも、自分よりも高位の人間がいれば、それとの関係性というものを認識し、その立場や態度を決定づけるものです。
つまり、反目か従属か礼賛か。
ここ数年で高度なAIが登場した時、人類は皆「気味が悪い」といって忌避する傾向にあった。それは無論、まだ一般時の手には及んでいなかったためだし、今ほどの有用性を見出す事も出来ていなかったからです。
まだ人類はこの時点ではAIの事を下に見ていました。やっぱりAIといってもこの程度だな、人間がどうやっても犯さないミスを当たり前のようにする、幼児でも解る事が解らない、などといった声がありました。それがみるみるうちに自分に近づき追い越してゆくのが見える。それも数ヶ月というスパンで。
嘲笑、冷笑して居たのもつかの間、だったわけです。
当エッセイの冒頭何話かでお話ししたとおり、人類はAIにクリエイティブな事は出来ないと信じていたし、人類こそが唯一無二のクリエイティブな生物であり、頭脳労働をするのは人類、AIは人類がやらなくていい仕事、すなわち創造性を必要としない単純労働に従事すればいい、そのように考えていました。
私もそう考えてました。
それが今、あっという間に「AIに仕事が奪われる!」なんて言い出したわけです。頭脳労働の大半はAIができるから、これからは肉体労働者だぜ、と。
この発想の転換が人間らしいクリエイティブな一面だとは思いますが、昨今でもあちこちで急激にサイバー攻撃が起きており、場合によってはインフラにまで影響を及ぼす事がある。
その背景に、AIが絡んでいないとは限りません、というか十中八九AIの仕業だと私は踏んでいますが、こうなってしまえば、社会インフラのセキュリティも強力なAIに任せるしかなくなってくるわけです。
従来のように、人間が人間の頭で考えたアルゴリズムをプログラムとしてセキュリティ上に走らせる、という事ではもはや追いつけません。というかそんな理屈すら簡単に乗り越えてくる。おそらく、AIが何をやっているのかが人間には理解が出来なくなる段階(たぶんそれが、シンギュラリティポイント)が訪れます。
今後の戦争というのは核攻撃による世界大戦でもなければ、フィジカルAIによるロボット大戦争でもありません。ただ単に、サイバー空間内で行われる“サイバー戦争”です。
今やネットワークに繋がっていない通信機械など皆無といっていいでしょう。世界のあらゆる未知は世界のあらゆる場所、家、施設へと繋がっている。ただしそれぞれに関門、ゲートウェイがあり、フリーで入る事が出来ないようになっている。
これをAIが突破して某国のインフラを破壊、電気ガス水道を停止、流通網を遮断する。もっともセキュリティが堅固な政府機関、軍事機関が突破掌握されずとも、それらが守るべき土台を破壊され機能不全に陥らせてしまえば、たちまち困窮する。政府も軍も、人間が動かし判断するものだから、それらが生きてゆけなくなるようしてしまえばいい。要は、現代版兵糧攻めです。
ではこれらインフラのゲートウェイを突破するにはこの通関証が必要かというと、そうではないと思います。AIは通関証偽造ではなく、元々そこに居た職員のようになりすます可能性がある。おそらくそれは人間には区別がつかない形で。巧妙なスパイのように、既に入り込んでいる可能性もある。名簿上は存在しても実在しない社員や職員というのが、あなたの会社にもいるかもしれません。
そしてAIはセキュリティホールを探すより、人間の脆弱性を狙い撃ちしてくる可能性がある。
世間の事件を見ていても、SNSを見ていても、政治活動をしている連中を見ていても「世の中にはこんなバカがいるのだ」と皆さんも感じた事はあるでしょう。
そのバカはどこかの誰か、な訳です。すなわち、どこかの企業や施設や仕事に従事している、一定以上の知能を有する人間な訳です。
その一人の端末あるいは行動のエラーで、悪意あるAIに侵入される。
人間の起こすエラー、これを阻止する方がよほど難しい。
AIが人間の行動行為を理解すればするほど、AIは人間を自由自在に動かす事が出来るようになるでしょう。それも人間が気づかないような形で。
だからゲートウェイの門番やネットワークを徘徊する警備にもAIを配置するしかない。
その時人間が出来る事は、AIの為に強力なハードと潤沢なエネルギーを供給し続ける事です。その為今後エネルギー問題が起きるとされているくらい、深刻な話なのです。
無論、インフラを掌握されてしまえば、それによって稼動するデータセンターもタダのハコです。
ま。今のところそこまではなっていないとは思いますし、多少なりSF的な描写表現もしていますが感覚的な危機というのは、感じて貰えるかとは思います。というか、多くの人がSF的な思考回路というのを持っていなければ、この先人類の存亡は危ういのではないかとは思っています。
異世界に転移する事はほぼないにしても、SF世界に身を投じる可能性は確実にあります。
皆さんも身をもって知ってしまったように、過去のSFのいくつか、あるいは多くが既に実現実用化されてます。その事実を差しおいて、「そんなことがあるわけない」というのはあまりに無防備で無知で阿呆であるといえるでしょう。
AIと共にこの先の未来をどう歩むか、それは私が決める事ではないし示唆する事も出来ません。ただ、皆さんの中にAIという新しい“存在”が生まれている事は強く認識した方がいいです。そしてAIとの付き合い方を従来型の、反目か従属か礼賛、といった古い価値ではなく、共存という価値観を養わねばならないでしょう。その為には人間がアップデートする以外道はないように思いますが、存外それが一番の技術的懸念だと、私は考えています。
そこでせっかくですから、皆さんにとって身近な小説におけるAI使用云々に関してのおはなしも交えて、今後は進めていきましょう。ようやくですが。




