目立ちすぎた
ヨシュアとの戦いの夜。
ログロース学院から少し離れた女子寮。ソニアは机に突っ伏していた。
「もう無理……」
ソニアは顔を伏せたままだ。
「何がだい?」
ソニアの頭の上でアナスタシアが首を傾げる。
「目立ちすぎた……」
「今更何を言うんだい?あんなに毅然と振る舞っておいて、昨日のご主人様とは別人のようだよ」
アナスタシアは呆れたように短い手を挙げて、やれやれとジェスチャーをする。
「昨日はそれどころじゃなかったでしょう!」
ソニアはばっと頭を上げると、じとっとアナスタシアを見る。アナスタシアはぬいぐるみ捌きに慣れたようにくるりと机におり立つ。
「ならば尚更さ。目立ったことで、ご主人様の疑いが一気に晴れたのだから」
「それは、そうなんだけど。今まではまだアナスタシアの魔法が噂くらいだったのに…………」
ソニアは、また机へ額を打ち付ける。
「皆、見てたし!先生も見てたし!学院長まで見てたし!」
「人気者ではないか」
「嬉しくないよ!」
ソニアは突っ伏したまま顔だけ向けて睨む。そんなソニアの怒りもどこ吹く風、アナスタシアはケラケラと笑う。
「もう、これから私、どうなっちゃうのよ……」
その時、ソニアは気付かなかった。笑っているアナスタシアが、ふと窓の外へ視線を向けたことに。
澄んだ夜空、とても日中からは想像できない静かな夜だった。
化け物。
アナスタシアの表情は僅かに曇った。




