ヨシュア・コレポルトの策略
コレポルト家の一室、ヨシュアの部屋は一面に賞状が飾られ、ヨシュアが今までに様々な功績を成してきた事が分かる。しかし、その煌びやかな功績とは正反対に、ヨシュアの顔は難しいものであった。高等部の編成が発表されてから数日、生徒会に一報が入った。それは、ソニアとセラの加わった騎士団が、ドラゴンを討伐したという知らせだった。
「お兄様!どうなさるおつもりですか!あの憎たらしい2人がお兄様と同じ第一騎士団というだけでも腹立たしいのに、ドラゴン討伐したなんて!」
マリアンは、兄からその知らせを聞き、怒り心頭だ。ヨシュアは、椅子にもたれかかり考え込んでいる。
「ドラゴンがこんな都市部に現れるものか…………」
普段ならば従順に従うマリアンも、学院での自分の立場がどんどん弱くなることに焦ったのか、ヨシュアの独り言を諌める。
「ドラゴンだろうと何でも構いませんわ!ログロース学院の英雄はお兄様なのよ!編成試験から、私はソニアに尻尾を巻いて逃げた負け犬と呼ばれているんです!お兄様だって、このままでは……」
マリアンは兄という見栄が無くなってしまうことが耐えられず、ヒステリックに喚き立てていると、ヨシュアは机をどんっと叩く。
「私が何だって?マリアン」
ヨシュアは、およそ実の妹を見る目ではない。マリアンはビクッと身体をこわばらせる。兄の視線から外れるよう顔を逸らし、髪で顔を隠そうとする。
「騎士団も落ちたものだな、話を盛るにも限度がある。ドラゴンなどと……ただの出任せだろう。しかし、ソニア、お前はこの私の顔に泥を塗った。それは、到底許すことはできない」
「では、お兄様、何とかしてくれるのですか!」
マリアンは嬉々として兄に縋る。ヨシュアは、見下すようにマリアンを一瞥すると、賞状に目をやる。
「セラはまだ使い道があるが、あの田舎者は排除する。あいつの実力はセラを超えるものだ、ましてや私を超えることはあってはならない。全く……目立たなければ消されることもなかったというのに」
ヨシュアは立ち上がり、窓の外を見る。マリアンは兄を追うように顔を向ける。
「1人、刺客を送り込んだ。腕利きだ。どんなに魔術に長けていようが、暗殺されたら一溜まりも無いだろう」
「お、お兄様……」
マリアンは、唾を飲み込む。首筋に一筋の汗が、胸元へ流れていく。
「マリアン、お前にも手伝ってもらいたいんだが、やってくれるな?」
マリアンは窓に映る兄へ目をやるが、表情は認識できない。ヨシュアの言葉はお願いのように聞こえはするが、マリアンには選択の余地はない。引き受けなければ、自分の立場が危うくなるのだ。
「はい……お兄様の命令なら、喜んで引き受けますわ」
部屋に灯された照明が、ヨシュアの功績を讃えるように、ゆらゆらと照らしていた。




