宰相アルベリック・アーケイン
アーリオの湿林の哨戒隊からの報告
我が隊、アーリオの湿林の西に5キロ程進んだ地点にてモンスターに遭遇。種別はドラゴンタイプ、遭遇するや否や激しい攻撃に合う。動くもの全てを敵と見做していると推測。辺り一面は、焼け焦げており、湿林とは言い難し。攻撃、あまりの苛烈さに種別以外は判断に及ばず。我が隊の3名は、ドラゴンの吐炎で絶命。遺体は消失し、認識票の回収はできず。未だ林深いが、街に影響を及ぼすまで、時間の問題と考える。早急に応援を願いたい。
アルベリックは、アーリオ湿林の東にある村に建てられた野営地で報告を受ける。哨戒隊は半壊し、生きて帰れたものも既に病院、もしくは息を引き取り、報告書だけが届けられた。
なんと言うことだ、これで7件目だぞ。しかも、だんだんとモンスターのレベルが上がっている。この前は、アルエとエレナで対処できたものの、今回はドラゴンタイプだと。ドラゴンは、大陸中央部にしか生息しないはずがどうして……。いや、このモンスターの発生は、王領とアーケイン領と、この国の大都市付近でしか報告されていない。どこか、人為的なものを感じる……。
アルベリックはあっては欲しくない仮説に、報告書を持つ手に力が入る。
「宰相、どうかしましたか?」
「ああ、すまない。我が兵士が命をかけて届けてくれた報告書なのに」
「いえ、お顔が優れないので……」
近衛兵の一人が、アルベリックのひどく動揺した顔を見て、容態を案じる。アルベリックは、哨戒兵からの報告書を綺麗に折り畳み、その近衛兵に手渡す。
「生き残った哨戒兵たちに、この度の任務、ご苦労であったと伝えてくれ。君たちのお陰で、万全の準備をもって望むことができると」
「はっ、承知いたしました」
「私はこれから城へ戻る。また、何か状況が変化したらすぐに、伝令を出してくれ。討伐隊を編成し次第戻る」
幸か不幸か、前回のアルエとエレナが参加した討伐からの時間が短いがために騎士団長2人は、アル・ヘレナに残っていた。ドラゴンタイプ……アルエとエレナで行けるか?正直なところ、後1人は団長クラスの者が欲しい。しかし、戦争こそ起こってはいないが、これ以上一地域に騎士団長という力を偏らせるのはまずい。私も国の防衛に当たらなければならない中、なかなか困ったものだ。
アルベリックは、野営地にいる兵士たちに指示を出し、アーケイン城に赴くと信じられないことが待ち構えていた。
なんだこの者は……ログロースの学生だと……。団長クラス、いやそれ以上の魔力を感じる。人と相対して、ここまで魔力を感じることなどなかった。アルベリックは、平静を装い応対する。
「ソニア・エヴァークレスト、中等部3年です」
アルベリックは、アーケイン城の謁見室でソニア、つまりアナスタシアと対峙する。握手をした時、確かに感じる絶大な魔力にアルベリックは驚きを隠せない。それが、ましてやログロースの15歳の少女だという。その時、アルベリックに思惑が過ぎる。
この子が討伐隊に参加してくれれば、ドラゴンタイプいけるか?学生を討伐隊に参加させ、この子に何かあろう者なら大問題となるだろう。しかし、団長が1人欠けようものならば、それこそ国力が傾きかけない。これは賭けだ。この子ならば、アルエとエレナの助けにもなるだろう。セラには、まだ持て余すだろうが、プライドの高い子だ。セラともう1人のクララという子には後方支援を任せて、このソニアさんの魔力に賭けてみるか?
アルベリックは、ドラゴンタイプの討伐にログロースの中等部の子供を送り出そうと決心する。良心の呵責は想像に難くない。しかし、国力の保証、ドラゴンタイプという不確かな情報源、ソニアの未知数の魔力を総合的に鑑みてこの賭けとも言える策に出るしかないと決断した。
この相次ぐモンスターの出現が人為的なものと仮定するならば、この先騎士団の力は絶対に必要なる。どこの国だ?このような大掛かりな真似をするのは。我々の力を試しているのか。それとも、少しでも騎士団の力を削ろうとしているのか。いずれにせよ、確実に間者が存在する。
アルベリックは、様々な思いをめぐらせて、天秤にかけて選択をする。そして、最後に心の中で強く思う。
「やっぱり、セラたんは可愛すぎて、ワシ死んじゃう!」
セラが、悪寒を感じたのは言うまでも無い。




