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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第86話:その魔王は最悪の暴君を以て玉座の不穏を圧し潰す。~氷棺に眠る絶対の暴力~

【前回までのあらすじ】

 エスペル島での報告、指示を終えたマクマリスは、反乱の火種が燻る自身の根城『魔界』へと旅立つ。


 一方、オウカで修行中のロイは、源流から「誰かの期待に応えるため」という『借り物の志』を看破され、一度は修行を打ち切られてしまう。しかし、立ち寄ったハーフリング領でタフリン王たちの「武器を持たない彼らなりの戦い」に触れたことで、「背後にいる優しい人々を自分の手で守る」という真の志に覚醒!


 迷いを捨てて戻ってきたロイを認めた源流は、ついに敵の装甲を分子レベルで崩壊させる対・硬質装甲用の絶技『波紋断ち』の過酷な伝授を開始するのだった――。

 陽の光が届かぬ闇の底。魔界、マクマリスの居城。

 黒曜石で造られた冷たい回廊を、マクマリスとアルフィリオンは最深部の研究室に向かって歩いていた。


 その行く手を遮るように、巨大な影が二つ立ち塞がった。

 現在、魔界でマクマリス派を支える有力な魔将、アズモとベルゼブだった。


「……久しぶりに戻ってきたと思ったら、我らの神聖なる魔界に、薄汚いダークエルフなど連れ込んで。いったいどういうつもりだ、マクマリス」

 爬虫類のような目をしたアズモが、舌打ち交じりに凄んだ。


(チッ……前の世界でクーデターを起こされた時と、似たような不穏な空気だ)

 マクマリスは内心で警戒レベルを引き上げた。

(しかし、あの時と違い、今回は奴らの背後にディネルースの後ろ盾はない。うまく立ち回れば、力で抑え込めるか……)


「おい、マクマリス! 聞いているのか!」

 猪のような牙を持つ巨漢のベルゼブが、床を強く踏み鳴らした。


 背後に立つアルフィリオンが、マクマリスに小声で耳打ちする。

「お世辞にもいい雰囲気には見えないが……大丈夫なのか? いかにも力こそ全てといった野蛮な連中だぞ」


「ああ。私に任せてくれ」

 マクマリスは落ち着き払った声で返し、アズモとベルゼブに向き直った。

「こちらのダークエルフはアルフィリオン殿。ネクロゴンドの長であり、私の大事な『客人』だ。……貴様ら、礼を失しないようにしろ」


「客人だと? ふざけるな」

 アズモが鼻を鳴らす。

「俺たちの派閥の猛者どもが、人間やエルフどもと馴れ合う貴様に魔王を任せておいていいのかと、いきり立っていてな。俺たちも、下を抑えるのが大変なんだぞ」


「分かっている」

 マクマリスは威圧感を含んだ低い声で返した。

「不満があるのは承知の上だ。だが、後ほど貴様らに『極上の土産』を見せよう。それを見れば、貴様らや派閥の部下どもも、必ず私のやり方を気に入るはずだ。……今は準備をする。後ほど研究室へ出直せ」


 マクマリスの気迫に押されたのか、アズモとベルゼブは忌々しげに道を譲った。


 マクマリスとアルフィリオンは、二人の間をこじ開けるようにして研究室へと向かう。

「見ての通り、現在の私の魔界での立場は微妙でな」


 歩きながら、マクマリスは苦笑した。

「人間やエルフ、ダークエルフらと共闘することに、納得いかない血の気の多い者たちもいるのだ」


「あいつら、今にも背後から襲ってきそうだったぞ。お前たちのつまらん権力争いに巻き込まれるのはご免だからな」

 アルフィリオンが不満げに吐き捨てる。


「私としても、機械生命体との決戦が控えている中、同士討ちで戦力を削る事態は避けたい。さっさとコアの複製を進めるぞ。……あのコアさえ完成すれば、奴らは黙る」


「黙るだって? あいつらがそう簡単に引き下がるわけがないだろう。一体どうやって黙らせるつもりだ?」


 マクマリスは、妖しく口角を上げた。

「『絶対的な抑止力』があるから、安心しろ」


    ◇


 最深部の研究室の重い扉を開けると、肌を刺すような異様な冷気が満ちていた。

 作業台の上で、アルフィリオンは持ち込んだアビス・ゴーレムのコアの特性について講義を始めていた。


「……なるほど。この特殊なコアが、単なる動力源ではなく、死体の生前の魔力回路を強制的に繋ぎ直す役割を果たすのか」

 マクマリスは感心したように顎をさすった。


 講義をしていたアルフィリオンは、ふと手を止めて部屋を見回した。

「しかし魔王。一体、何にこのコアを使うつもりだ? 通常のゴーレムを作るにしては、このコアの出力は高すぎる。器が耐えきれずに自壊するぞ」


「これだ」

 マクマリスが指をパチンと鳴らすと、仕掛けが作動し、部屋の奥の壁が重々しい音を立てて左右に開いた。

 そこから現れたのは、冷気を放つ巨大な『氷の棺』だった。


 分厚い氷の中に眠っていたのは、全身に無数の傷を負いながらも、圧倒的な威圧感を残す四腕の巨漢――三百年前の厄災、先代魔王ガングダードの死体だった。


「なっ……!?」

 希代の死霊術師であるアルフィリオンでさえ、その存在感に絶句し、一歩後ずさった。

「まさか……先代魔王を使役するというのか……?」


「機械生命体と戦う上で、これ以上の戦力はないだろう? それに、こいつが動けば、外のうるさい連中も黙らせられる」

 マクマリスは平然と言い放った。


 前回、未完成のコアの欠片だけでアズモたちを黙らせた、あの圧倒的な暴力。今度は完全体のコアで、理性を奪った完全な傀儡として起動しようというのだ。


「これがさっき言っていた『抑止力』か……。狂っているな」

 アルフィリオンが呆れたように呟く。


「そこでだ、アルフィリオン殿」

 マクマリスは、探るような、ひどく冷たい視線を向けた。

「念の為に聞くが……貴殿の持つ『反魂の術』の制御術式を、私に教えてはもらえないか?」


「……なに?」


「門外不出の秘術なのは重々承知している。だが、これから始まる総力戦で、もし貴殿が戦場で死んだら、その素晴らしい技術は永遠に失われる。その知識があれば、私が作るアンデッド兵も格段に強化され、勝算も上がるのだが」


 マクマリスの言葉には、過去の絶望に裏打ちされた切実な響きがあった。

 前回の世界で、頭部を吹き飛ばされたアルフィリオンの無惨な死体を見て、戦慄した記憶。あの無念を晴らし、ディネルースに教えた死霊術の完成形を我が物にしたい一心だった。


 だが、アルフィリオンは頑なに首を横に振った。

「断る。しつこいぞ、魔王。この術は我がネクロゴンド一族の誇りであり、アイデンティティだ。他者に教えるくらいなら、墓まで持っていく」


 その暗い瞳には、決して譲れぬ死霊術師としての矜持があった。


「……そうか」

 マクマリスは一瞬だけ目を細めたが、不服そうに、それ以上食い下がることはせず引き下がった。


(……生きたまま説得するのは、やはり不可能か。無理に聞き出そうとして関係が悪化しては元も子もない。今はまだ、協力関係を維持することが最優先だ)


 マクマリスは恐るべき冷酷な計算を心の奥底に隠し、気持ちを切り替えるようにガングダードの氷の棺に手を触れた。

「分かった。この話は終わりだ。さっさとコアの移植を済ませよう。時間が惜しい。外のアズモらは、いつまでも待ってくれないのだからな」


「フン、急かすな。緻密な作業なのだぞ」

 アルフィリオンは術具を手に取り、作業に戻る。


 冷え切った研究室に、二人の稀代の死霊術師による、禁断の儀式の詠唱が不気味に響き始めた。

【次回の予告】

「極上の土産は『圧倒的な絶望』! 恐怖の前にひれ伏す反逆者たち!」


 ついに武器を手に研究室へと乗り込んできたアズモとベルゼブたち反乱分子。しかし、彼らを待ち受けていたマクマリスの「極上の土産」は……氷の棺を内側から粉砕して目覚める、先代魔王ガングダードだった!


 三百年前の厄災が放つ規格外の咆哮と禍々しい威圧感を前に、いきり立っていた魔将たちは完全に戦意を喪失し、無様に尻尾を巻いて逃げ出していく。


 一切の血を流すことなく魔界の完全掌握を宣言するマクマリス。だが、歓喜に沸く配下たちの裏で、彼の瞳にはアルフィリオンの秘術をいずれ我が物にするという、深淵よりも暗い決意が渦巻いていた――!


 極上の土産による魔界の完全掌握。

 第87話は、明日の21時40分更新です!


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