第125話:その覇王は世界の栓を背に鉄壁の雷刃を振るう。~深淵の頭脳を溶かす終末の太陽~
【前回までのあらすじ】
無限の生産ラインを抜け、ついに一国サイズの母船を稼働させる巨大な『心臓』へと到達したマクマリスたち。
一方、敵の『頭脳』であるマザーコンピューターの破壊を目指すウルスヌスたちは、無限に湧き出る機械生命体の大群に囲まれ、絶体絶命のピンチに陥っていた。
前に進むことも退くこともできない極限状態の中、老魔導師ザルティムがついに覇王から使用を禁じられていた禁術『終末の赤』を解放!
目標上空に巨大な「擬似太陽」を生み出し、大群もろともマザーコンピューターを空間ごと灼き尽くす、規格外の超絶魔法を炸裂させたのだった!
船外上空では、極限の防衛戦が続いていた。
水竜レヴィアタンと共に、巨大な海割りの回廊を展開・維持し続けるディネルース。魔石から絶え間なく魔力を練り上げる彼女の顔には玉の汗が浮かび、いつもの余裕のある冷たい笑みは完全に消え失せていた。
「……なっ!?」
ディネルースは、眼下の母船の中央付近から突如として現れた規格外の熱源を見て、驚愕に目を見開いた。
「船体を突き破って現れたあの巨大な火の玉は何!? 敵の新兵器!?」
驚く彼女の隙を突き、海割りの維持に全精力を注いで無防備になっているディネルースとレヴィアタンを目掛け、上空から数十体の飛行型機械生命体が特攻を仕掛けてきた。
「邪魔だッ!!」
その時、漆黒の飛竜バハムートを駆る覇王アンドレアが、ディネルースの前に壁となって立ちはだかった。
バハムートの凶悪な竜の爪と、覇王の雷を纏った大剣が、迫りくる銀色の翼を次々と両断し、粉砕していく。まさに、絶対不可侵の鉄壁の守護神だった。
「勘違いするな、女王」
アンドレアが、敵を蹴散らしながら背後のディネルースに言った。
「あれは敵の兵器ではない。うちのザルティム先生の『擬似太陽』だ」
「先生? 太陽?」
「彼は若かった俺に帝王学を教え込んだ師匠でもある……あの太陽は地図を書き換えるほどの破壊力だぞ。衝撃に備えろ」
「あの老いぼれに教わっていたなんてね……しかし、あんなものを一人で作ったっていうの!? とんでもないわね……」
「フン。海を割っている、お前も似たようなものだ。……どっちもどうかしている」
アンドレアが鼻で笑う。
「フッ……褒めているのよね?」
「どうだかな」
「……それにしても、皮肉なものね、覇王」
ディネルースは、脂汗を流しながら自嘲するように口元を歪めた。
「世界で最も私を殺したいはずの男が、こうして私の命を身を呈して守っているなんて」
アンドレアは、振り返りもしなかった。
「勘違いするな。俺は、お前を守っているのではない。お前という『世界の栓』を守ることで、この世界を守っているだけだ。……余計な口を叩く暇があったら、海を割ることに集中しろ!」
「フフ……仰せのままに、野蛮な王様」
◇
再び船内。
「準備が整った! 二人とも、わしの後ろの『影』に隠れよ!」
ザルティムが叫ぶと同時、大きく膨れ上がった擬似太陽が、目標であるマザーコンピューターのブロックへ向けて落下を開始した。
ズガアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!
擬似太陽が着弾した瞬間、船体が大きく傾くほどの激しい爆発と、超高温の爆風が吹き荒れた。強固な隔壁も、群がっていた何万という機械生命体も、すべてが圧倒的な熱量に飲み込まれ、蒸発していく。
「『熱変動結界』!!」
ザルティムが即座に杖を突き立て、自身の周囲に超高温を遮断する強固な壁を展開し、カーラとウルスヌスを熱波から守る。
しばらくした後__。
周囲にいた機械生命体の多くは、爆風だけで塵となって吹き飛んでいた。
「よし、チャンスだ! 二人とも、俺の背中に捕まれ!!」
ウルスヌスが膝を曲げて深く沈み込む。
「擬似太陽が空けた天井の穴から、ブースト全開で一気に外の海域に飛ぶぞ!!」
ウルスヌスがギガント・ギアの出力を最大にし、背部のブースターから強烈な炎を噴射した。
ドゴォォォォンッ!!
三人を乗せた重装甲が、溶けた天井の穴をすり抜け、弾丸のような超高速で船外へと飛び出した。そのまま空を滑空し、海が割れて露出した海底の岩場へとズシンと着地する。
「よし、脱出成功だ!!」
ウルスヌスが快哉を叫んだ。
だが、その直後。
着地と同時に『終末の赤』の詠唱で魔力を完全に使い切って膝をついたザルティムの背後に、外にいた一体の機械生命体が、鋭いブレードを振り上げて迫っていた。
「『影縫い』!!」
カーラが即座に反応した。
すんでのところで、迫った機械生命体の足元の『影』に自身の短剣を突き刺し、魔力を干渉させて物理的に拘束。その動きを完全に封じた。
「ウルスヌス、お願い!」
「オララララァッ!!」
金縛りにあったように動けなくなった機械生命体の頭部に、ウルスヌスが右腕のパイルバンカーを容赦なく突き刺し、完全に粉砕した。
息を整え、カーラはイヤーカフを通じてマクマリスに思念を送る。
『魔王様。マザーコンピューターを、ザルティムの魔法で遠距離から破壊しました。完全に破壊できたかは未確認ですが、私たちは天井を突き破って、無事に船外に脱出しました!』
『……よくやった。怪我がないなら、そのまま船外での掃討戦に加われ。こちらも、メインディッシュを片付ける』
マクマリスから、短くも確かな労いの思念が返ってきた。
「ウルスヌス、どうする?」
カーラが問う。
「ザルティムの爺さんを、一度後方の臨時指揮所に避難させるぞ! 悪いが、背中の予備バッテリーを交換してくれ。俺も魔力切れで、もう一歩も動けねえ」
ウルスヌスが、プスプスと煙を上げる鎧の中で悲鳴を上げる。
「了解!」
「フォフォフォ……。老いぼれは燃費が悪くていかん。世話をかけるのう」
ザルティムが、カーラに肩を貸してもらいながら苦笑いした。
「あんな太陽みたいな大魔法をぶっ放したんだから、仕方ないわよ。最高だったわ、ザルティム」
カーラも、泥だらけの顔で笑い返した。
【次回の予告】
「都市がひっくり返る大爆発! 限界の結界と、母船の死を告げるサイレン!」
マザーコンピューターの破壊を確信したマクマリスは、ついに巨大な心臓である『動力炉』への爆破を決行する!
暗闇の中、ヘギルの雷爆弾を起動させ瞬時に転移魔法で離脱を図るも、暗がりのため爆心地の有効範囲内へと転移してしまう。
四人を守るため、クリアの長老が全魔力と生命力を編み込んだ絶対の『結界』を展開する!
直後、極限の雷魔力と動力炉の大誘爆が重なり、都市一つを覆うほどの分厚い隔壁がひしゃげ、母船という空間全体が星の終わりを思わせる尋常ではない激震に見舞われる!
雷爆弾の起動と、動力炉の大誘爆。
第126話は、明日の21時40分更新です!
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