第123話:その老王は無名の英傑たちに主人公の言霊を授ける。~紡がれる人類の反撃譚~
【前回までのあらすじ】
ついに敵に潜入作戦が露見し、巨大母船の各ハッチから赤眼の機械生命体が雪崩のように溢れ出す!
大魔法で海を割る氷の女王ディネルースを死守すべく、船外で待機していた連合軍による決死の迎撃戦がスタート。地上では次期魔王の座を争う魔将アズモとベルゼブが圧倒的な暴力で敵を蹂躙し、上空では覇王アンドレアの熱き号令のもと、ガエサルと若き竜騎士ロイが五頭の竜と共に完璧な連携攻撃を魅せる!
人類と魔族、種族の壁を越えた最強の布陣が絶望的な物量に真っ向から激突する、熱き総力戦の幕が切って落とされた!
船外の東側、ゴツゴツとした海底の岩場に陣取る『帝国・クリア連合軍』。
彼らの耳に、臨時指揮所にいるララノアからの切羽詰まった全軍通信が響き渡った。
『緊急事態! 潜入組が目標破壊前に敵に勘づかれました! 各所のハッチから、敵が雪崩を打って溢れ出る可能性があります! 全軍、迎撃態勢を急ぎなさい!! 一機たりとも、地上へ抜かせてはなりません!』
その通信を受け、帝国とクリアのエルフを統括指揮する紅葉の森のエルフ長スーリンディアと、魔法剣士部隊および帝国の歩兵部隊を率いる帝国将軍サイロスが、最前線で盾を構える兵士たちの前に立った。
「聞いたな、皆の者!」
サイロスが、覇気のある通る声で数万の兵士たちに呼びかけた。
「君たちにも、絶対に守りたい『大切な人』がいるだろう! それは、故郷で帰りを待つ父親かもしれない。優しいお姉さんかもしれない。共に杯を交わした親友かもしれない!」
サイロスは腰の剣を鋭く抜き放ち、曇天の空高く、高らかに掲げて叫んだ。
「……私にとっては、ここにいるシルフだ!!」
「えっ!?」
副官としてサイロスのすぐ斜め後ろに控えていたエルフの魔導師シルフは、数万の兵士の前での突然すぎる公開告白に、耳の先まで真っ赤にして狼狽した。
「な、なに言ってるんですか将軍っ! こんな時に!」
「やれやれ……」
隣で杖を構えていたスーリンディアが、呆れたように額に手を当てて深いため息をつく。
しかし、サイロスは全く構わずに、熱を帯びた瞳で演説を続けた。
「大切な人たちの笑顔を! 明日も、明後日も、未来永劫見るために! 君たちの胸にある熱い『友情』を! そして『愛情』を! 今こそ、目の前の敵を砕く力に変えろォォォッ!!」
「「「ウオォォォォォォォォォォッ!!」」」
サイロスの真っ直ぐすぎる熱と愛の叫びに、張り詰めていた帝国兵たちの士気が、爆発的に跳ね上がった。
その凄まじい熱気に押されつつも、スーリンディアが冷静に具体的な号令を被せる。
「……飛行型は、上空のドラゴンライダーと後方の魔導砲が一手に引き受ける。我々地上軍は、ハッチから出てくる『歩行型』の殲滅に専念せよ! 魔法剣士と帝国歩兵は重装甲で前衛の盾となり、エルフの魔法部隊は後衛より雷のエンチャントと攻撃魔法で絶え間なく援護するのだ!」
ゴゴゴゴゴゴォォォォッ!!
巨大な母船の壁面に連なる複数のハッチが、不気味な重低音と共に一斉に開いた。
暗闇の中から、赤いセンサー光をギラつかせた機械生命体の群れが、文字通り『銀色の雪崩』となって津波のように溢れ出してきた。
スーリンディアは、杖の先から眩い光の魔法陣を展開し、美しくも苛烈な顔で叫んだ。
「来たるべき絶望の未来を打ち砕き……我々の『無念』を、ここで晴らすのだ!! 撃てェェェッ!!」
号令と共に、前衛の帝国兵たちが盾を構えて一斉に突撃し、後衛のエルフたちが空を埋め尽くすほどの魔法の矢を放つ。
愛と矜持を胸に秘めた兵士たちが、無機質な銀色の雪崩へと真っ向からぶつかっていった。
◇
一方、船外の北側に陣取る『エスペル島連合軍』。
ララノアの『一機たりとも、地上へ抜かせてはなりません!』という悲痛な通信が響き終わると同時に、最前線に三人の王が立った。
中央に老王アレフドリア十五世。その右に巨大な戦斧を構えたゴンドラ王、左に湾曲した双剣を構えた砂漠の民ドーザの代表。
ときに島の領土を巡って反目することもあった彼らが、今は強固なスクラムを組んで連合軍の兵士たちを率いていた。
「聞いたか、皆の者! 間もなく、見たこともない恐ろしい敵の群れが、あの鉄の城から出てくる!」
アレフドリア十五世が、白髪を風に靡かせながら、王の威厳に満ちた声で呼びかけた。
「……お前たちの『物語』を紡ぐのは、一体誰だ!?」
かつて世界を救った英雄の血を引く老王の問いかけに、島からやってきた兵士たちが、武器を握りしめ、固唾を呑んで次の言葉を待つ。
「それは……他の誰でもない。お前たち自身だ!!」
老王は、皺に覆われた拳を強く握りしめた。
「英雄の血など関係ない! ここにいる我々、一人ひとりが、それぞれの人生の『主人公』となり、後世に語り継がれるあまたの物語を紡ぐのだ! ……主人公は、決して負けない!! 最後に笑うのは、我々主人公たる人類軍である!!」
「「「オオォォォォォォォォォッ!!」」」
兵士たちの間に、地を揺るがすほどの激しい闘志が燃え上がった。
「フン。人間たちのロマンチックな夢物語なんざ、俺たちドワーフには興味はないがな」
ゴンドラ王が鼻を鳴らしつつも、獰猛な笑みを浮かべて戦斧を肩に担いだ。
「……だが! ゴンドラの勇敢なる兵士たちよ! 今、あの薄気味悪い船の奥底で、俺たちのために命を張ってくれているクリアの『腐れ縁のババア』のために……安心して帰ってこれる『帰り場所』を用意してやるのも、悪くないだろう! この地は、俺たちドワーフの意地にかけて死守するぞ!」
「「「応ッ!!!」」」
ドワーフの重装歩兵たちが、武器を打ち鳴らして呼応する。
ゴゴゴゴゴゴォォォォッ!!
巨大な母船の北側ハッチが轟音と共に開くと、こちらにも一斉に、赤黒い光を放つ機械生命体の群れが怒涛の勢いで飛び出してきた。
「構えろォォォッ!!」
砂漠を生き抜く屈強なドーザの代表が、双剣を交差させて叫ぶ。
「我らが故郷、エスペル島を脅かす侵略者どもを、砂塵に還せ!! 全軍……突撃せよ!!!」
「「「ウオォォォォォォォォォォォォッ!!!」」」
三人の王たちの号令と共に、エスペル島連合軍が、割れんばかりの雄叫びを上げて一斉に動き出した。
東西南北、そして上空。
それぞれがそれぞれの場所で、愛する者を守るため、自身の物語を全うするため、そして未来を切り拓くため。
様々な想いを胸に、人類と魔族の連合軍は、底知れぬ恐怖を撒き散らす銀色の津波へと、己の命を懸けて激しくぶつかっていくのだった。
【次回の予告】
「心臓と頭脳! 巨大動力炉の恐怖と、老魔導師の禁術解放!」
無限の工場の奥深く、マクマリスたち「動力炉組」はついに一国サイズの母船を動かす巨大な『心臓』へと到達!
だが、マクマリスは敵の「最後の進化」を警戒し、動力炉より先に「頭脳」であるマザーコンピューターの破壊を優先させる。
一方、敵の大群に囲まれ前進を阻まれたウルスヌスたち「マザーコンピューター組」は絶体絶命のピンチに!
しかしその時、老魔導師ザルティムが覇王から禁じられていた禁術を解放! 目標上空に巨大な「擬似太陽」を生み出し、目標を空間ごと焼き尽くす超絶魔法『終末の赤』を炸裂させる!
心臓と頭脳、そして解放される禁術。
第124話は、明日の21時40分更新です!
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