第122話:その覇王は女王を護るべく空の絶対防衛線を敷く。~五頭の竜が舞う制空の死闘~
【前回までのあらすじ】
敵の中枢を目指し、二手に分かれて母船の深層へと進む『潜入組』。
マクマリスたち「動力炉組」は、機械が機械を無限に生み出し続ける絶望的な「全自動の死の工場」を発見する。
一方、先を急ぐウルスヌスたち「マザーコンピューター組」は、不運にも巡回中の敵と遭遇! 瞬時に粉砕するも、間一髪で送られた通信により船内中に非常警戒サイレンが鳴り響き、照明が警告の赤へと染まってしまう。
ついに隠密作戦は破綻し、ここからは無数の敵との強行突破による死闘が幕を開ける……!
船外、剥き出しの海底に設営された臨時指揮所。
ララノアは、カーラからの切羽詰まった思念を聞くと、すぐに拡声の魔導通信で船外に展開している全軍に連絡を飛ばした。
「緊急事態! 潜入組が目標破壊前に敵に勘づかれました! 各所のハッチから、敵が雪崩を打って溢れ出る可能性があります! 全軍、迎撃態勢を急ぎなさい!! 一機たりとも、地上へ抜かせてはなりません!」
『ララノア、船外の包囲網は完成したのか?』
マクマリスから確認の思念が飛ぶ。
『第二陣の降下までは完了しています。最終の第三陣は、現在こちらへ輸送中です!』
『チッ……空はアルゴス五隻抜きで守ることになるか。……いいかララノア、地上軍を束ねて、なんとしてもディネルースだけは死守しろ! 海が戻れば我々は終わりだ!』
『承知しました! マクマリスも、気をつけて!』
ララノアはすぐさま通信先を切り替え、魔導砲部隊の総指揮を任されているヘギルに指示を出す。
「ヘギル! アルゴス五隻が戦線に戻ってくるまで、魔導砲の火力を上空のガエサル、ロイの援護射撃に回して!」
『了解した! 砲台の半分を対空迎撃用に回す!』
ララノアが続いて、上空の二人に魔導通信で連絡を取る。
「ガエサル、ロイ! アルゴスが戻るまで、地上の魔導砲で上空を援護します! 射線に巻き込まれないように気をつけなさい!」
『『了解!!』』
二人の竜騎士から、力強い返事が返ってきた。
◇
魔王軍が陣取る船外の南側エリア。
爬虫類のような目をした魔将アズモが、巨大な戦鎌を肩に担いで舌舐めずりをした。
「聞いたか、ベルゼブ。鉄屑どもがお目覚めだぞ」
「フン、待ちくたびれたわ。体が鈍っちまうところだったぜ」
猪のような牙を持つ巨漢の魔将ベルゼブが、戦斧を地面に叩きつけて嗤う。
「なあ。マクマリスは、あの中途半端な戦力で戻ってこられると思うか?」
「奴は、あの化け物ガングダードを使役している。そう簡単には死なんだろうさ」
「だが……もし、万が一奴が死んだ時は……次は俺が魔界を統べる魔王になる」
アズモの目に、野心の炎が灯る。
「寝言は寝て言え、トカゲ野郎。次の魔王はこの俺様よ!」
ベルゼブが鼻息を荒くして睨みつけた。
「笑わせるな! 貴様のような脳筋ごときに、魔界の王が務まるわけないだろ!」
アズモがベルゼブの顔面に額を擦り付けるようにして凄む。
一触即発の魔将二人。それぞれ傘下の悪魔や魔獣たちも呼応して叫び声をあげ、お互いの派閥を殺気立って威嚇し合う。
だが、その同士討ちの空気は、すぐに外敵へ向けた『怒号』へと変わった。
ゴゴゴゴォォォッ!!
巨大な母船の壁面に設けられた複数のハッチが一斉に開き、中から怒り狂ったような赤目の機械生命体の群れが、文字通り『雪崩』のように押し寄せてきたのだ。
「オラァッ!! 行くぞ野郎ども!!」
アズモとベルゼブが、互いの争いを後回しにし、配下の悪魔たちを最前線へけしかけた。
「エルフや人間なんぞの下等生物と共闘など反吐が出るが……!」
アズモが鎌を振るう。
「貴様ら鉄屑の不気味な顔は、見るだけで虫唾が走るわっ!! ぶっ壊してやる!!」
ベルゼブが戦斧を振り下ろし、先頭の機械生命体を粉砕する。
魔族特有の果てしないプライドと圧倒的な暴力性が、今は人類にとって、これ以上ないほど頼もしい強固な『矛』と『盾』になっていた。
◇
船外、はるか上空。
「来たぞ!! 一体たりとも、ここを通すな!!」
バハムートの巨大な背に立つ覇王アンドレアが、大剣を天高く掲げて吠えた。
「いいか! ディネルースがやられたら、海が戻って下にいる全軍が溺れ死ぬ! 彼女は俺が死守する! お前たちは飛行型の撃墜に専念しろ!」
「「御意!!」」
ガエサルとロイが、それぞれの相棒と共に散開する。
「行くぞ、ティアマト!」
ガエサルが手綱を引くと、多頭の海竜ティアマトは、ハッチから噴き出してきた飛行型の群れに対し、単騎、音速のスピードで真っ向から突っ込んだ。
ズバァァァァンッ!!
群れのど真ん中に突っ込むと同時に、ガエサルが愛用の魔槍『トライデント』を横薙ぎに振りかざす。穂先から発生した巨大な『真空の刃』が、すれ違いざまに機械生命体の首や翼を次々と刎ね飛ばしていく。
群れを突き抜けると、ティアマトは空中で鋭く急旋回し、再び敵の背後から群れに突っ込む。
真空の刃から逃れた飛行型は、邪魔なティアマトを追いかけようと一斉に向きを変えるが、音速で宙を舞うティアマトには到底追いつけない。
そして、敵の陣形が崩れ、隙だらけになったその横腹を――。
「シャヴォンヌ! みんな、今だ!」
ロイの号令と共に、四頭の竜が襲いかかる。
飛竜ワイバーンが、鋭い風の刃を無数に放ち、敵の装甲を切り裂く。
地竜リントヴルムが、自らの頑強な巨体を弾丸のように突撃させ、敵を粉砕する。
蛇竜ブリトラが、長い巨躯で敵を巻き込み、鋭利な牙で噛み砕く。
そして白竜シャヴォンヌが、口から放つ絶対的な『浄化のブレス』で、敵の群れを広範囲にわたり消滅させる。
極め付けに、地上に設営されたヘギルの魔導砲から、極太の『雷撃』が空を貫き、生き残った飛行型を次々と撃ち落としていく。
帝国最強の騎士と、若き竜騎士。
彼らと五頭の竜たちの完璧な連携は、『五天王』と見紛うほどに、滑らかで圧倒的だった。
【次回の予告】
「数万人の前で愛を叫ぶ!? 熱き想いが交錯する、地上軍の大激突!」
無数の機械生命体が溢れ出すハッチを前に、地上で待ち受ける連合軍の士気は最高潮へ!
東側に陣取る帝国軍では、サイロス将軍が数万の兵士を前に、エルフの副官シルフへ「愛」を叫ぶというまさかの公開告白をキメて士気を爆発させる!
一方、北側のエスペル島連合軍では、アレフドリア老王の「誰もが人生の主人公だ!」という熱い演説や、潜入中のクリアの長老の「帰る場所」を守ろうとするゴンドラ王の不器用な友情が、兵士たちの心を震わせていた。
それぞれの愛と矜持、そして胸に秘めた物語を武器に、人類の総力が絶望の「銀色の津波」へと真っ向から激突する!
愛と矜持の突撃と、主人公たちの物語。
第123話は、明日の21時40分更新です!
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