第121話:その魔王は命なき軍勢の産声に破滅の刻限を定める。~紅蓮に染まる隠密の終焉~
【前回までのあらすじ】
敵の目から逃れるために入った冷凍カプセルに閉じ込められ、絶対零度のタイムリミットが迫るカーラと源流。
しかし、外の指揮所で遠隔操作を行うララノアの元へ、ドワーフの天才ヘギルが駆けつける! 未来特有の「三進数」プログラムを神がかったタイピングで見事ハッキングし、間一髪でロックの解除に成功。
駆けつけとザルティムの温かな魔法により、二人は死の淵から奇跡の生還を果たす。
無事に完全合流を果たした七人の精鋭たちは、敵の中枢を叩くべく『マザーコンピューター破壊組』と『動力炉破壊組』の二手に分かれ、船内のさらに奥深くへと進んでいくのだった!
マザーコンピューター破壊組と別れたマクマリスたち『動力炉破壊組』の四人は、真っ白で無音の巨大なリフトに乗り、母船のさらに下層へと向かって降下していた。
すると、完全な静寂に包まれていた空間に、微かな、だが規則正しい機械音が混じり始めた。
ウィーン、ガシャン。シュゥゥゥ……。ウィーン、ガシャン。
透明な強化ガラス越しにその部屋を覗き込んだ一同は、戦慄に息を呑んだ。
そこには、地平線が見えそうなほど広大な空間に広がる『全自動の生産ライン』があった。
無数の巨大なロボットアームが、目にも止まらぬ速さで銀色の金属パーツを組み立て、青白い火花を散らして溶接し、冷却液を吹き付けている。
アームの先からは、次々と真新しい『機械生命体の完成品』が吐き出されていた。
機械が機械を産み、その産み出された機械がさらに新たな機械のパーツを運ぶ。
武骨で熱気に溢れたドワーフ鉄鋼共和国の工場さえも児戯に見えるほど、すべてにおいて洗練され、無駄がなく、そして血の通わない『冷徹な命の工場』だった。
「……なんと。次から次へと作り出しておる」
クリアの長老が、深く皺の刻まれた眉根を寄せた。
「圧倒的かつ無限と思えるあの物量は、ここでこうして作られていたか」
マクマリスは、ベルトコンベアの上を整然と行進していく、生まれたばかりの機械生命体の軍列を忌々しげに見つめた。
「疑問なのだが」
アルフィリオンが、ガラスに手をついて尋ねた。
「この巨大な製造ラインの機械どもは、一体どうやって動いていると思う? これだけの規模だ、並の魔力や動力では到底動かせるまい」
「ガイアス王の見解では……この船は大量の海水を取り込み、何らかの変換を行って莫大な『発電』をしているのではないかと言っていた」
マクマリスが答える。
「なら、ディネルース様によって周囲の海水が完全に割られているこの状況下では、いずれ電力が尽きてじきに止まるということだな?」
「いや、これほどの船だ。非常時に備え、莫大な電気の『備蓄』はしているはずだ」
マクマリスは下降していくリフトの先、さらに深層へと続く果てしない闇を見据えた。
「備蓄電力を使い切れば、この生産ラインも完全に止まるだろう。……だが、止まるということは、敵の中枢がこちらの干渉に『気づく』ということでもある」
マクマリスは、己の亜空間収納に保管してある必殺の兵器、『雷爆弾』に意識を向けた。
「……ラインが止まる前に、爆破せねばな」
四人を乗せたリフトが、死の工場を横目にさらに下へと落ちていく。
彼らが目指す最深部には、この一国サイズの船を動かす巨大な心臓が待ち受けている。そしてそれは、起爆者となるマクマリスにとっての『決断の場所』でもあった。
◇
マザーコンピューター破壊組。
カーラとザルティムを左右の肩に背負い、ウルスヌスがギガント・ギアの出力を上げて無人の白い廊下を疾走していた。
「カーッ! 魔王の『無音魔法』ってのはすげえな! こんだけ重てぇ鎧で全速力で走っても、全く足音がしねえ。超便利な魔法だぜ!」
ウルスヌスが感心しながら角を曲がる。
「感心してないで、前を見て! 次の十字路を右に曲がって!」
背負われたカーラが、ララノアのナビゲートを頼りに指示を出す。
「あいよ!」
ウルスヌスが勢いよく右の通路へ飛び込んだ。
だが、運の悪いことに、向こうからこちらへ向かって巡回してくる『三体』の機械生命体と正面から鉢合わせてしまった。
「やべっ! 見つかった!」
「やれッ!」
カーラの鋭い声と同時に、ウルスヌスはギガント・ギアのブースターを吹かして急接近した。
距離を一気に縮めると、右手の『パイルバンカー・ガントレット』から極太の鉄杭を射出し、先頭の一体を粉砕。すかさず左手の高周波振動シールドを振り抜き、残る二体を『盾ノコギリ』で瞬時にスクラップに変えた。
見事な瞬殺だった。しかし、直後。
ウウウウウウウウウウッ!!!
船内の至る所で、非常事態を告げる甲高いサイレンが鳴り響き、無機質な青白い照明が、警告を示す『赤色』へと一斉に切り替わった。
「くっ……! 潜入がバレたわ!」
カーラが血の気を引かせて叫ぶ。撃破される直前に、敵がネットワークに警報を送ったのだ。
「ちくしょう! 隠密は終わりだ、先を急ぐぜ! 振り落とされないようにしっかりつかまってろ!」
ウルスヌスがリミッターを解除し、赤く染まった廊下を猛スピードで突っ切っていく。
カーラは必死にしがみつきながら、イヤーカフで思念を送った。
『魔王様! 私たちの存在が敵に完全に勘づかれました! 魔王様たちも気をつけてください!』
『……分かった。いいか、何があろうと、なんとしてもマザーコンピューターだけは破壊しろ!』
マクマリスの冷徹な思念が返ってきた。
【次回の予告】
「無数の敵が溢れ出す! 氷の女王を死守せよ、最強連合軍の総力戦!」
潜入作戦が露見し、巨大母船のハッチから雪崩のように押し寄せる赤眼の機械生命体たち!
海を割るディネルースを死守すべく、ララノアの迅速な指揮のもと、ついに全軍による迎撃戦の火蓋が切って落とされる。
地上では次期魔王の座を争う魔将アズモとベルゼブが圧倒的な暴力で敵を蹂躙し、上空では覇王アンドレアの号令のもと、ガエサルと若き竜騎士ロイが五頭の竜と共に『五天王』に匹敵する完璧な連携攻撃を魅せる!
人類と魔族、種族の壁を越えたかつてない最強の布陣が、絶望的な物量に正面から激突する!
雪崩れ込む機械生命体と、最強連合軍の総力戦。
第122話は、明日の21時40分更新です!
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