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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第99話:その魔王は深淵を滅ぼす雷光を亜空間に収める。~氷の女王へ贈る夜宴の祝砲~

【前回までのあらすじ】

 エスペル島に到着したマクマリス。実はディネルースへの熱狂的な歓迎は、気位の高い彼女の機嫌を取るために魔王が仕込んだ「サクラ」だった!


 一方、研究所では巨漢のウルスヌスと天才職人ヘギルが、男のロマン溢れる強化外骨格『ギガント・ギア』を前に意気投合。


 女王の無茶な要求に疲弊する秘書官ララノアに対し、マクマリスが「いざという時は私が守る」と甘い約束を交わして距離を縮める中……ついに、深海に眠る敵母船を破壊するための「極大の爆弾」がお披露目の時を迎える――!

 第一ドックでの潜水艇の確認を終えたマクマリスは、ヘギルに秘密裏に呼び出され、ララノアと共にガイアス王国の外れにある広大な荒野へと足を運んでいた。


 月明かりすらない暗闇の中、冷たい夜風が吹き抜ける岩場には、すでにヘギルとウルスヌスが奇妙な物体を前にして待ち構えていた。


「どうしてこんな殺風景な所に呼び出した? 時間も遅い。明日の朝でもよかったんじゃないのか?」

 マクマリスがマントを風になびかせながら尋ねる。


「何言ってんだ? 今頃、王城では俺たちの愛しのディネルース様が、華やかな歓迎パーティーの真っ最中だろ?」

 ヘギルがニヤリと悪戯っぽく笑い、足元の物体をポンと叩いた。

「せっかくだ。あの高飛車な女王様に、特大の『花火』でお祝いしてやろうと思ってよ」


「……特大の花火」

 マクマリスの口角が上がる。

「頼んでいた『爆弾』だな?」


「その通り。こいつが、あんたのオーダーに応えた究極の爆弾だ」

 ヘギルが叩いたそれは、直径一メートルほどもある重厚な金属球だった。


 表面には複雑怪奇な魔導回路がびっしりと刻み込まれ、微かに青白い明滅を繰り返している。そして中心には、いかにも危険な雰囲気を放つ『大きな赤いボタン』が設置されていた。


「ちょっと待って。こんな大きくて重そうな爆弾を、隠密行動中の突入部隊に持ち歩けって言うつもり?」

 ララノアが信じられないという顔で抗議する。


「うっ……まぁ、確かに鉄と魔石の塊だから死ぬほど重たいし、ちょっと目立つよな……。キャスターでも付けるか?」

 ヘギルがバツが悪そうに頭を掻く。


「いや、重さや大きさについては問題ない」

 マクマリスが静かに制した。

「私には『亜空間収納』という魔法がある。敵の動力炉にたどり着くまで、私がこれを持っていよう」


「『亜空間収納』って何?」

 ララノアが小首を傾げる。


「どこにいても出し入れができ、理論的にはどんなものでもしまっておける『空間の扉』を開く魔法だ」

「すごい……そんな便利な魔法まで使えるのね」


「おいおい、随分と便利な魔法だな。俺の弁当も入るか?」

 ウルスヌスも感心して身を乗り出す。


「保管にも出し入れにも、相応の魔力がいる。便利かどうかは、使い手の魔力量次第だな。……話を腰を折ってすまない。ヘギル、爆弾の説明を続けてくれ」


「おう」

 ヘギルはコホンと咳払いをして、金属球の赤いボタンを指差した。

「これはな、このボタンを強く押し込むと、球体の中に限界まで圧縮された『雷の魔力』の臨界制御が外れ、一気に解放される代物だ」


 ヘギルは、自信に満ちた凶悪な笑みを浮かべた。

「名付けて『雷爆弾(サンダー・ボム)』! その衝撃と熱量は凄まじいぞ。狭い船内の動力源付近で使えば、莫大な魔力の奔流が隅々まで及び、瞬く間に動力炉を誘爆させて船ごと消し飛ばすだろう!」


「カァーーッ! 『雷爆弾(サンダー・ボム)』か! 最高に痺れるネーミングだぜ!!」

 ウルスヌスが両腕を突き上げてテンションを爆発させる。


「だろぉ!? 遠慮せずにもっと褒めろ、兄弟!」


「……うるさい」

 はしゃぐ野獣とドワーフに、ララノアの冷ややかなツッコミが炸裂した。


「すいません」

 二人がシュンとなって同時に謝る。


 マクマリスは何事もなかったように、冷徹な目で金属球を見下ろして質問した。

「……威力は?」


「俺の天才的な計算に狂いはない。絶対に母船を沈められると保証する」

 ヘギルは胸を張ったが、すぐに肩をすくめて付け加えた。

「ただし、このボタンを押した本人が『どうなるか』までは知らんがな」


 マクマリスは爆弾に手をかざし、内部に渦巻く魔力の密度を読み取った。

「……恐ろしいまでの魔力だ。生身の人間なら、灰すら残らずひとたまりもないだろうな」


「だが、あんたは『空間転移魔法』を使えるだろ?」

 ヘギルがマクマリスを指差す。


「ああ。使えるが」


「よし。じゃあ、理屈より実践だ。早速実験してみようぜ」

 ヘギルは金属球を持ち上げ(ドワーフの筋力でなければ持ち上がらない重さだった)、マクマリスに言った。

「今から俺がこのボタンを押して、その辺の谷底に向かって思い切り投げる。爆発する前に、あんたの転移魔法で俺たち四人を遠くに避難させてくれ。王城のディネルース様を、轟音で飛び跳ねさせてやろうぜ」


 マクマリスは周囲を見渡した。どこまでも続く、だだっ広い荒野だ。

「……あの遠くに見える、小高い丘の上まで飛べば大丈夫か?」


「ああ。距離的に、あそこなら絶対に安全圏だ。準備ができたら言ってくれ」


 マクマリスはララノアとウルスヌスに向き直った。

「私の肩に手を置け。間違っても、転移が終わるまで離すなよ」


「はいよ」

 ウルスヌスが気楽に太い腕を乗せる。


「マクマリス……本当に大丈夫なの?」

 ララノアが、不安そうにマントの肩口をギュッと掴んだ。


「私を信じろ」

 マクマリスが力強く頷くと、ララノアも小さく「うん」と頷いた。


 マクマリスは意識を集中し、転移の詠唱に入った。空間の座標を固定し、ヘギルの肩に手を置く。

「詠唱は完了した。いつでも飛べるぞ」


「オラァッ!!」

 ヘギルが赤いボタンを叩き込むように押し、渾身の力で金属球を暗闇の谷底へ向けて投擲した。

【次回の予告】

「地形を変える究極の爆弾! しかし判明した『脱出不可能』の絶望!」


 谷底で炸裂したヘギルの最高傑作『雷爆弾』は、まるで巨大な隕石が墜落したかのような規格外の破壊力を見せつける!


 大歓喜する脳筋コンビ(ヘギル&ウルスヌス)とは裏腹に、マクマリスは一人、冷や汗を流して絶望していた。未知の敵母船の深部では転移魔法の条件(視認・座標把握)を満たせず、脱出が不可能。つまりこの究極の爆弾は、起爆者が確実に命を落とす『自爆兵器』だったのだ……!


 「誰かが犠牲にならなければならない」という重すぎる現実がのしかかる中、疲弊した一行は夜の王城へ腹ごしらえに。


 究極の自爆兵器と、優しく変わる秘書官。

 第100話は、明日の21時40分更新です!


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