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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第100話:その魔王は深淵を滅ぼす光に命の代償を見る。~誰かが散るための決戦兵器~

【前回までのあらすじ】

 エスペル島に到着したマクマリスたちは、裏でサクラを動員して高飛車なディネルースのご機嫌を取りつつ、決戦に向けた準備を進めていた。


 天才職人ヘギルと巨漢ウルスヌスの「脳筋コンビ」が意気投合し、マクマリスとララノアが甘い距離感を育む中……ついに、敵母船を消し飛ばす究極の決戦兵器『雷爆弾サンダー・ボム』がお披露目される!


 そして今、王城で優雅にくつろぐ氷の女王への「特大のドッキリ(嫌がらせ)」として、夜の荒野で命がけの起爆実験のスイッチが押されたのだった――!


挿絵(By みてみん)

 金属球が宙を舞い、空中で太陽のような眩い青白い閃光を放ち始めた瞬間――世界が歪んだ。


 シュンッ。


 四人の姿が荒野から消え去り、数キロメートル離れた丘の上へと瞬時に転移した。

 その、直後だった。


 カッッッ!!!!


 夜の荒野が、真昼のように真っ白に染め上げられた。

 一拍遅れて、空気を切り裂き、鼓膜を破るような圧倒的な轟音と衝撃波が丘を襲う。


 ズガアアアアアアアアアアアンッ!!!!


「うおっ!?」

 ヘギルが凄まじい強風に煽られ、たまらず尻餅をつく。


「きゃぁぁぁーーーっ!!」

 ララノアが悲鳴を上げ、飛ばされそうになる。


 マクマリスは何も言わず、彼女の細い肩を抱き寄せ、マントで爆風から庇った。

 ウルスヌスだけは、その巨体と金剛体で、暴風の中でもニヤニヤと笑いながら平然と立ち続けていた。

 やがて風が収まり、もうもうと立ち込めていた土煙が晴れた。


 マクマリスは『光』を灯す魔法を空中に放ち、辺りを明るく照らし出した。

 そして眼下の光景を見て、己の目を疑った。


 そこには、空から巨大な隕石が墜落したかのような、すり鉢状の規格外のクレーターが穿たれていたのだ。

 爆心地から半径二キロメートルにわたり、岩も土も植物も、すべてが超高温の雷魔力によって黒く焼け焦げ、ドロドロのガラス状に溶けて固まっていた。


「ガハハハハハ! どうだ!? 天才ヘギル様の最高傑作の威力は!」

 ヘギルが(すす)けた顔で、自慢げに高笑いする。


「すっげー破壊力だな……! オレの獣王咆哮よりヤベェぜ!」

 ウルスヌスも目を輝かせてクレーターを覗き込む。


「こいつを敵の母船の動力炉にセットして起動し、直後にあんたの転移魔法でサヨナラだ。これで敵さんは一網打尽、海が割れていようが何だろうが木っ端微塵よ!」

 ヘギルが勝利を確信したように親指を立てた。


 圧倒的な破壊力。確かにこれなら、都市サイズを誇る巨大な母船も、分厚い装甲ごと確実に沈められるだろう。

 だが、マクマリスの顔色は優れなかった。むしろ、絶望的な事実を前に、冷や汗すら流していた。


「……駄目だ」

 マクマリスの低く沈んだ声が、夜風に溶けた。


「ああん? なんでだよ。威力は十分だろ? 完璧な作戦じゃねえか」

 ヘギルが不満げに抗議する。


 マクマリスは、冷ややかに、そして残酷な現実を告げた。

「ヘギル。……貴様は『転移魔法』の理屈を知っているか?」


「知るかよ。俺はドワーフだぜ。魔法なんざ専門外だ」


「転移魔法は、『視認できる範囲』、且つ『その場所を脳内に明確にイメージできる所』にしか飛べないのだ」

 マクマリスは、溶けたガラス状の大地を見つめながら説明した。

「壁の向こう側のような極至近距離なら、見えなくても空間の座標を推測して飛ぶことは可能だが……」


「……どのみち、見ず知らずの敵母船の深部に潜入し、そこでこいつを起動したとして。そこから一瞬で『安全圏』へ脱出する方法がないのだ」


 マクマリスの言葉に、ヘギルの動きがピタリと止まった。

「えっ……」


「動力炉が、都合よく船の外壁の隅っこにあるとは考えにくい。船の中心部だと仮定すると、そこから一回の転移で船外へ飛ぶことは、構造が分からない以上不可能だ。もし壁の中に転移してしまえば、私たちはその瞬間に肉体が分断されて死ぬ」


 マクマリスはさらに言葉を重ねた。

「かといって、確実に飛べる壁一枚隔てた『隣の部屋』や『通路』に飛んだところで……これほどのデタラメな威力では、絶対に爆発に巻き込まれるだろう。逃げ切れない」


「…………」

 ヘギルは開いた口が塞がらなかった。


 最強の爆弾を作ったはいいが、起爆してしまえば、安全圏へ逃げる手段がない。

 つまり、これを使えば――『起爆者は確実に死ぬ』。これは兵器ではない。ただの『自爆兵器』だ。


(誰かが、起爆の犠牲にならなければならないのか……?)


 マクマリスの脳裏に、かつて時間を稼ぐために自爆したララノアや、白亜の巨塔で敵を巻き込んで特攻したヘギルの姿がフラッシュバックした。


 マクマリスは深く、重いため息をつき、焼け焦げた大地に背を向けた。

「……まぁいい」


「『雷爆弾』の威力が十分であることは確認できた。素晴らしい出来だ。……実戦での運用方法については、私が考えるとしよう。私の要望通りに作ってくれたことには感謝する」


「お、おう……。なんか、役立たずなもん作っちまって……すまねえ……」

 ヘギルがすっかり落ち込んで肩を落とす。


 重苦しい空気を断ち切るように、マクマリスは三人に問いかけた。

「……みんな、夕食は済ませたか?」


「いや、ずっと研究室に篭りっぱなしだったから、まだだ」

 ヘギルが腹をさする。


「私も、食べてなーい!」

 ララノアがマクマリスの腕から離れながら答える。


「オレも腹ペコだぜ! 肉! 肉が食いてぇ!」

 ウルスヌスが腹を鳴らした。


「よし。色々と頭を使って疲れた。今日は王城の食堂に忍び込んで、遅い夕食としよう」


「賛成ー!」

 ララノアが子供のように両手を上げて喜んだ。


 その様子を見ていたヘギルが、目を丸くしてララノアを指差した。

「……なんか、お前。キャラ変わったよな?」


「えっ……そ、そうかしら?」

 ララノアがキョトンとする。


「以前のお前は、議長の秘書官としての完璧を求めるあまり、いつもピリピリしてて、俺みたいな粗野(そや)な奴を寄せ付けないような『冷たい感じ』だったぞ。氷の女王の腹心って感じにな。……なぁ、魔王殿もそう思わねえか?」


「そうだな……」

 マクマリスは歩き出しながら、夜空を見上げてふと笑った。

「そうかもしれないな」


 ララノアは慌ててマクマリスの隣に並び、恐る恐る上目遣いで尋ねた。

「こ、こんな私は……嫌、かな……?」


「そんなことはない」

 マクマリスは足を止め、彼女の瞳を優しく見つめ返した。

「以前にも言ったことだが、昔の貴様は表情筋が死滅したかのように無表情だった。……だが今は、よく笑い、よく怒り、何より楽しそうに見える。私は、エルフらしくなった『今』の方がずっといいと思う」


「っ……!」

 ララノアは顔を真っ赤にして、嬉しさを隠しきれないように俯いた。


 その甘酸っぱい空気を察したヘギルが、呆れたようにウルスヌスの背中を押した。

「おいウルスヌス。こいつらほっといて、俺たちは先に行こうぜ。当てられちまう」


「ん? よく分かんねーけど、腹減ったから行くか! なぁヘギル、爆弾の名前とかつける『コツ』って、あんのか? オレにも教えてくれよ!」

「ガハハ! いいぜ、俺のセンスの極意を伝授してやろう!」


 とてつもない破壊力を持つ爆弾と、それを使えば誰かが死ぬという残酷な現実。


 四人は、強すぎる切り札の扱いに頭を悩ませつつも、今はただ、この束の間の和やかな時間を噛み締めるように、夜のガイアス王城へと足取り軽く戻っていった。

【次回の予告】

「守るという甘い約束が引き裂かれる夜。魔王の残酷な決断と、ついに見つかる巨大な絶望!」


 夜の静かな港。戦いの後のささやかな未来を語るララノアに対し、マクマリスはあまりにも残酷な真実を告げる。


 究極の自爆兵器『雷爆弾』の起爆者……それは「時間逆行の印」を持つ、マクマリス自身だった。


 彼自身は死なないとしても、それは彼女たちから見れば「この世界からの永遠の消滅」を意味する。涙ながらに拒絶し、駆け去っていくララノア。そして、己の作った兵器を呪うヘギル。


 重苦しい悲しみが漂う中、ついに最悪の報せが届く。――深海にて、敵母船、発見!


 涙の海と破られた約束。そして、深海の巨大な影。

 第101話は、明日の21時40分更新です!


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