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死に戻り魔王の「強くてニューゲーム」 ~未来の知識と圧倒的戦力で、人類ごと世界を救います~  作者: Chris Tartan


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第96話:その魔王は喪われた記憶から必勝の陣を敷く。~竜騎士を降ろす奇策~

【前回までのあらすじ】

 超高負荷の決戦兵器『ギガント・ギア』の搭乗者に、特異体質を持つ帝国四天王ウルスヌスをスカウトしたマクマリス。

 

 「彼が地上に降りれば貴重な航空戦力が減る」と懸念する覇王アンドレアに対し、マクマリスは白竜から告げられた『忘却の0周目』から来る魂の直感を信じ、「ロイなら他者の竜でも操れる」と断言。


 半信半疑で演習場へ向かった一行が見たものは、新しい鎧の搭乗者に選ばれて大はしゃぎするウルスヌスと……白竜と地竜の二頭を完全にシンクロさせ、見事な編隊飛行で大空を舞う覚醒したロイの姿だった!

「魔王。……お前の言う通りだったな」

 腕を組んで空を見上げていたアンドレアが、隣のマクマリスに低い声で言った。


「フッ、当然の結果だ」

 マクマリスは不敵に笑ってみせたが、直感とはいえ、言葉とは裏腹に実際に自分の目で見て、内心ホッと胸を撫で下ろしていた。


「……ついでに、もう一つ、二ついいか?」

 マクマリスがアンドレアに向き直る。


「また直感がらみの話か?」


「そうなるな。私の見立てでは、ガエサルを除く四天王は……ドラゴンに乗っていない時の方が真価を発揮すると思っている」


「はぁ〜……」

 アンドレアは天を仰いで特大のため息をつき、首の骨を鳴らした。

「……もう好きにしろ。おい、ザルティム、カーラ」


 アンドレアに呼ばれ、二人が居住まいを正して振り向く。

「何でしょうか、覇王様」

 カーラが問う。


「魔王が、お前たち二人のドラゴンも、ロイに預けたらどうかと言っている」


「フォフォフォ! わしは一向に構わんよ。あんな高いところは、腰が冷えていかん」

 ザルティムが朗らかに笑って快諾する。


 だが、カーラは怪訝な顔をした。

「魔王様。私たちから機動力を奪って、地上に降ろしてどうするおつもりですか?」


「話した通り、ウルスヌスには強化外骨格『ギガント・ギア』を着用して最前線で暴れてもらう」


「任せてくれ! 片っ端からミンチにしてやるぜ!」

 ウルスヌスが拳を打ち合わせる。


「そして、ザルティムの魔法の『瞬間火力』は、この私をも上回る。これを使わない手はない。ウルスヌスが前衛でタンクとして暴れ回り、後ろからザルティムが超火力で焼き尽くすイメージだな」


「フォフォフォ。魔王殿より火力が上とは、素直に嬉しいのう。腕が鳴るわい」


「では、私は?」

 カーラが自分を指差す。


「今後の予定だが……ガイアス王国で、間もなく潜水艇が完成する。完成次第、ディネルースらと合流し、海の底に眠る敵母船の捜索を開始する予定だ」


「ついに潜水艇ができるのか。それで、見つかったらどうする?」

 アンドレアが腕を組んだまま尋ねた。


「敵の母船が見つかったら、ディネルースが母船周囲の『海を割る』ことになっている」


「海を割るだと!?」

 アンドレアの目が驚愕に見開かれた。


「フォフォフォ。あの小娘、やはり只者ではないの」

 ザルティムが感心する。


「船体が露出したら、精鋭で突入メンバーを編成し、船内の動力炉を直接破壊しに行くつもりだ。……カーラには、その突入メンバーに入ってもらう」


「なぜですか?」

 カーラが戸惑う。

「私には、覇王様やウルスヌスのような圧倒的な武はありません。狭い船内で、機械生命体の大群と戦うには足手まといかと……」


「船内には『隠密潜入』を基本とする。正面から戦いに行くのではない」

 マクマリスは、カーラの目を真っ直ぐに見据えた。

「貴様は仕事柄、特別『鼻が利く』はずだ。その嗅覚で、動力炉の場所を特定してもらいたい。……意味は分かるな?」


「……ッ」

 カーラが息を呑んだ。


 彼女はハーフエルフでありながら、獣人並みの鋭い嗅覚を持つ隠密アサシンだった。だが、その能力は帝国でも限られた者しか知らないトップシークレットだ。


「……なぜ、貴方が私たちの手の内を、そこまで正確に把握しているのですか?」

 警戒心を露わにするカーラに代わって、アンドレアがフォローを入れた。


「当の本人も『覚えていない』そうだ。だが、お前たちも知っての通り、奴は未来から来た。前の世界で、魔王とお前たちとで一緒に戦うような『何か』があったと考えるのが自然だろうな。……お前たち、魔王に協力してやれ」


「……覇王様がおっしゃるなら、承知いたしました」

 カーラが深く頭を下げる。


「よろしく頼むよ、魔王殿」

「よろしくな、魔王! 俺の新しい鎧が楽しみだぜ!」


 マクマリスは、少し離れた場所で控えていた隻眼の将軍に視線を向けた。

「ガエサル。貴様と海竜ティアマトのコンビは、帝国最強の航空戦力だ。空の守りは、貴様とロイに完全に任せることになるが……ドラゴンライダーの先輩として、引き続きロイの指導をよろしく頼む。育ててやってくれ」


「承知した。我が命に代えても、彼を立派な竜騎士にしてみせよう」

 ガエサルが力強く胸を叩いた。


「ウルスヌス。すぐに出発の準備を始めろ。エスペル島のガイアス王国で『ギガント・ギア』のフィッティングと実戦練習だ」


「ああ、すぐ支度をするぜ! 待ってろよ、機械の化け物ども!」

 ウルスヌスが土煙を上げて自分の兵舎へと駆けていく。


 マクマリスはアンドレアに向き直った。

「母船が見つかり次第、エスペル島で最終の作戦会議を行う。また通信機で連絡する」


「分かった。吉報を待ってるぞ」

 アンドレアが力強く頷いた。


 マクマリスは、上空を見上げた。

 四枚の巨大な翼――白竜と地竜が、雲を引き裂きながら美しく交差して飛んでいる。

 (ことわり)の外にある記憶と、失われた0周目の絆が生み出した、最強の布陣。


(もっと……もっと強くなれ、ロイ。君のその真っ直ぐな魂が、我々の希望だ)


 魔王は、若き竜騎士の背中に向けて、静かに熱い祈りを捧げた。

【次回の予告】

「女神の笑顔の裏に潜む氷の本性! 明かされる真の目的と、無慈悲なスケジュール!」


 ガイアス王国へ向かう飛空挺。そこで、連邦議長ディネルースがララノアを出向させた真の目的が明らかになる。


 それは、痛みも恐怖も感じない『使い捨ての特攻兵士』完成のための糸口を見つけるためだった。女神の笑顔の下に隠された氷のような本性。


 そして、ガイアス王国に降り立った彼女を待っていたのは、国民の熱狂的な歓迎と……ララノアによる無慈悲なハードスケジュールだった! 内心ブチギレの女神が、笑顔でアーチをくぐる!


 氷の本性と、営業スマイルの女神。

 第97話は、明日の21時40分更新です!


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