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草原(作:三田村 宙)

(二階堂が、三田村からの思わぬ指摘に、一瞬、言葉を失っている)


二階堂「……私の、論理が、非理理的……ですって?」


三田村「はい。あなたは、最も、強く、この風景に『謎』という物語を、投影した。興味深い、人間の思考サンプルでした」


一ノ瀬「……そう。そうだったのね。玲の、あの、冷たいほどの客観性は、裏を返せば、この世界すべてを疑ってかかる、主観の塊だったのね……」


二階堂「う……」


四方田「じゃあ、じゃあ! 最後は、宙ちゃんですね! 言い出しっぺの宙ちゃんは、この『草原』を、どう描いたんですか!?」


(三人の視線が、最後の発表者である、三田村宙に集まる。彼女は、静かに頷くと、タブレット端末の画面をタップした)


三田村「……はい。これまでの三つの作品は、いずれも、旧世代の言語体系に縛られていました。私が提示するのは、これからの時代の、最も効率的で、正確な、風景の『記述法』です」


***


草原

作:三田村 宙


/imagine prompt:


masterpiece, best quality, photorealistic, ultra-detailed, 8k wallpaper, cinematic lighting, epic, unsettling, ominous, eerie, haunting, lovecraftian horror, dark fantasy, surrealism, in the style of Zdzisław Beksiński and Hieronymus Bosch.


A vast, rolling green hill under a crystal-clear blue sky.

The hill is covered in vibrant, lush green grass, like a velvet carpet, but with a subtle, skin-like texture. (The ground seems to breathe very slowly:1.2). The curve of the main hill is unnaturally smooth and gentle, like the spine of a sleeping, ancient behemoth.

The sky is a deep, perfect, cold blue. A few wispy cirrus clouds and soft, white cumulus clouds are scattered, subtly forming the shape of a screaming face in agony. (A single, giant, unblinking eye is faintly visible hidden deep within the clouds:0.7).

The sunlight is pale and sickly, coming from an unseen source, casting long, distorted shadows that seem to writhe and grasp at the ground.

The overall atmosphere is serene on the surface, but with an overwhelming and palpable sense of dread, cosmic horror, and the intense feeling of being watched by an ancient, malevolent, unseen entity.


Negative prompt:

(worst quality, low quality, normal quality:1.4), jpeg artifacts, blurry, text, watermark, signature, painting, drawing, anime, (human, man, woman, person, figure, people:1.5), animal, building, tree, flower, rock, path, road, (safe, warm, comforting, happy:1.3).


***


(三田村、静かにタブレットの画面を部員たちに見せた。部室は、困惑と、未知の概念に対する、純粋な戸惑いの沈黙に包まれた)


一ノ瀬「…………三田村さん。これは、一体、何なの? 英単語と、記号の、ただの羅列……。物語も、詩情も、文法さえも、どこにもないわ。これは……これは、文学以前の問題よ! ただの、メモ書きじゃない!」


四方田「えー! でも、なんか、魔法の呪文みたいで、かっこいいです! これを唱えたら、あの絵が出てくるってことですよね! やってみたいです!」


二階堂「……イラスト生成AIの、プロンプトね。なるほど。ある意味、最も、課題の本質を突いた、現代的な『デッサン』と言えるのかもしれないわ。……面白い。試してみましょうか」


(二階堂、やれやれと肩をすくめながら、自らのノートパソコンを開き、いくつかの操作をした後、三田村のプロンプトを、一字一句違わずにコピペした)


二階堂「……生成開始。まあ、完璧な『草原』が出てくるはずよ、あなたの『完璧な記述』なのだから」


(数秒後、パソコンの画面に、一枚の画像が生成された。しかし、そこに映し出されていたのは、彼女たちのよく知る、あの穏やかな草原ではなかった)


四方田「あれ……? なんか、違いますね……。丘のてっぺんに、黒い人影みたいなのが、立ってません……?」


一ノ瀬「本当だわ……! しかも、空の雲が、なんだか、苦悶に歪んだ、人の顔のように見えるわ……! 気味が悪い……!」


二階堂「おかしいわね。ちゃんとそのまま入力したはずなのに……。まあ、AIの気まぐれでしょう。もう一度、生成してみるわ」


(しかし、二度目に生成された画像は、さらに、奇怪なものであった)


四方田「ひぃぃっ! こ、今度は、緑の丘の、地面から、何本も、白い手が、生えてますぅぅぅ!」


一ノ瀬「な、なんて、冒涜的な絵なの……! 私たちの、思い出の草原が……! ホラー映画のワンシーンみたいに……!」


二階堂「あり得ない……! なぜ、これほど、怪奇的なイメージばかりが……。三田村さん、あなたのプロンプト、本当に、これで合っているの!?」


(三人が、恐怖と混乱に満ちた目で、三田村を見つめる。しかし、当の本人は、パソコンの画面に映し出された、おぞましい画像を見ても、表情一つ変えず、ただ、静かに、そして、少しだけ、申し訳なさそうに、こう呟いた)


三田村「…………ああ、すみません。ファイルを間違えました」


一ノ瀬・二階堂・四方田「「「え?」」」


三田村「それは、私が、自作のホラー小説『丘の下には、何かがいる』の、挿絵を生成するためのプロンプトでした。……『草原』のデッサン用のプロンプトは、こちらです」


(三田村はそう言うと、タブレットの別のファイルを開いて、三人に見せた。そこに書かれていたプロンプトは、ただ一行だけだった)


***


/imagine prompt: Windows XP wallpaper


***


(部室は完全な静寂に包まれた。やがて、その沈黙を破ったのは、二階堂の、本日、何度目か分からない、深いため息であった)


---

議事録担当・書記(三田村)追記:

実験報告:完了。意図的な情報誤認(プロンプトの取り違え)を誘発し、各ユニットの予測不能な事態に対するストレス反応を観測するという、今回の追加実験は、極めて有益な結果をもたらした。

結論:人間は、自らの理解を超えた怪奇な現象に遭遇した時、非常に面白いリアクションをする。

特に副部長の論理が崩壊していく様は、最高のコンテンツだった。この一連の事象を参考にして、次回の配信の冒頭のアイスブレイクを作ろう。タイトルは、『【放送事故】AIにこの世の終わりを描かせてしまった件』。……ふふ。再生数が、稼げそうだ。


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