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第七話 追放・ざまぁ・今さらもう遅い  2

「あぁ……よかった……」


「よかった? おまえの嫌疑が晴れなければ、おまえはここから一生出られないというのにか!」

 ロマンツェはつい声を荒げた。



「デザストを追放したんです」

 ライリスがとうとつに言い放った。

「は?」

「3年前、わたしはパーティーの厄介者だった、デザストという男を追放したんです」


 

 ライリスは3年前の話を語りはじめた——

  

 ライリスのパーティーに所属していた、デザストは物見(スパイ)のスキルをもつ男だった。だが生来の大飯食らいがやめられず、動作が鈍重になり、まともに任務を果たせなくなった。しばらくは雑用係として使っていたが、ある日、仲間と話しあって追放したということだった。


「いつか復讐してやるからな!」 

 追放を言い渡したとき、デザストはさんざんな悪口雑言を喚き散らしたあげく。そう捨てぜりふを吐いて去っていった。彼はたいしたスキルや戦闘能力もないのに、魔法を勉強したり、剣術を鍛えたりもせず、ただ自分は『最強』だとうそぶくなど、プライドだけは高い男だった。


 だがこのデザストは追放後しばらくして、その(おご)った態度が原因で、ある魔導士に呪いの魔法をかけられてしまったという。

 その魔法によってデザストに、狂乱のスキルが与えられることになる。


 大喰らいスキル『グリード』——


 なんでも喰らって、自分のものにするというスキルだった。

 デザストは戦士の技術や、魔導士のスキル、賢者の魔法を喰らい、すべてを自分のものにしていきはじめた。

 その強さは異次元レベルにまで達しているという噂があったが、その戦いの対象が魔物や怪物ではなく、ほかの冒険者にむけられていると聞き及んで、ライリスたちは危機感を覚えた。

 このままでは冒険者たちが根絶やしになるだけでなく、いずれ自分たちにも、災厄がふりかかりかねない。そうライリスたちは判断した。


 デザストを葬らなければならない——


 ライリスたちが下した決断は、じつに重たいものだった。彼らは自分たちの冒険の旅を中断して、デザストを殺すために罠をしかけた。


「罠をしかけた? どんな罠を?」

 ロマンツェは尋ねた。


「魚人族が棲む湖へ誘いこんだんですよ」

「魚人族! あれは一人に数十匹……いや数十人で襲いかかって、鋭い歯で食いちぎると聞いているぞ。海のゴブリン、いや、水のなかだからゴブリンごときの手強さではないだろう」

「ええ…… 確実に葬れると思っていました……」


「ですが、彼の持つ『グリード』というスキルは、亜種の生物とはじつに食い合わせがわるかったんです」

「どういう意味かね?」


「水のなかに落ちたデザストは、われわれの目論見どおり、ものすごい数の魚人族に襲われ、からだをついばまれていきました。あらゆる部位がみるみる、骨だけになっていくのをみて、われわれはデザストが絶命すると確信しました。ですが……」

 ライリスは首を横にふった。

「デザストはそんな状態になりながらも、逆に魚人を喰らいはじめたんです。喰らいながら、魚人族のからだの特徴を、自分のからだに取り入れた……」

「取り入れた?」


「水のなかからあがってきたデザストは、すっかり別の生物に変わっていました。からだこそでっぷりとした、怠惰(たいだ)なデザストのからだでしたが、首から上は魚の顔になっていたんです」 


 どろんと白濁したおおきな目——

 顎がつきだし、ギザギザとした小さな歯が並ぶ。

 そんな不気味な頭が、人間の肩幅そのままのおおきさでぬっと突きだしている。その首の根元付近にはエラがあり、呼吸のたびに開いたり閉じたりしていた。エラが膨らむたびに、内側の鮮血のようにぬらぬらと赤い襞が見え隠れする。


 ロマンツェはぶるっと身震いした。

 想像するだけでおぞましい——

 

「さらに力を増したデザストを、わたしたちは火山に呼び込みました。ドラゴンに喰わせようとしたのです」

「ドラゴンだと!」

「ええ、もっとも凶暴なレッド・ドラゴンです……」


「魚の化物はドラゴンのいい餌でした。ドラゴンの口から吐き出す火炎を浴びて、デザストは黒焦げにされたあげくドラゴンに喰われました」

「それならひと安心……」


「10日後、ヤツはドラゴンの腹を食い破って、そとにでてきたんです」


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