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第四話 ダンジョンで赤ん坊を抱く女 3

 おかしい——


 ミーゲルはすぐに違和感をおぼえた。

 まず逃げ出した通路とは逆の通路にいるのが、()せなかった。

 なにより、その女性が着ているドレスが、さきほどのものとちがっていた。こちらの女性は薄いピンクがかったものを着ている。


 ミーゲルはその女性を追おうとして、自分が先ほどまでいた回廊の角に、女性がたたずんでいることに気づいた。


 そんなばかな——


 今度の女性は黒いローブを着ていた。頭からすっぽりフードをかぶっていて、まったく顔が見えない。しかも今度はシルエットから、女性であるかも特定できない。

 抱きかかえた赤ん坊をじっと見おろしていている姿だけがおなじだった。


 呆然として黒いローブの女性を見つめていると、そのうしろにまた別の人物が現われた。

 今度は戦士のような肩当てや胸の防具をつけ、とても女性とは思えないからだつきをしていた。おそらくミーゲルより高い身長、筋肉隆々のどっしりとした体躯——

 だがその人物もほかの女性とおなじように、赤ん坊を抱きかかえていた。


 背後から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

 ふりむくとそこにも女性が立っていた。

 今度は赤い色のケープのようなものをまとった女性だった。まるで魔法使いが着るようないでたち。頭からかぶったフードのせいで、やはり顔は見えない。


 十字路の四方向の通路をふさがれたことに気づいて、ミーゲルはごくりと唾をのみこんだ。襲ってくる様子はみせないが、逃げ道はないのはたしかだ。


 罠にかけられたのか?

 だとしたら——


 挟み撃ちをされる前に、こちらからうってでるしかない!



 ミーゲルは身体を翻すなり、赤い服の女性の方角へ走りだした。

 

 虚をつかれたのだろうか。

 赤い服の女性は通路脇にある小部屋へ、あわてて逃げこんでいった。

 その小部屋はいくつもの部屋が連なる複雑な構造をしていたが、姿さえ見うしなわなければ袋小路においつめられそうだった。


 赤子を抱えたままで逃げ切れるわけがない!!

 

 ミーゲルの気持ちは(はや)った。

 赤い服の女はたくみに小部屋から小部屋に逃げまどった。が、赤ん坊を抱いたままで、そう速く動けるわけもなく、あっという間に一番奥の部屋にまで追い込むことができた。


 赤い服の女はその部屋の隅に立ちすくんでいた赤ん坊を必死で抱きしめたまま、がたがたとからだを震わせている。


 なぜ、ふるえている——?


 ミーゲルは剣を前に突きだしながら、ゆっくりと赤いケープの女性に近づいた。

「おい、おまえは何者だ?」

 だがおんなはうつむいたままだった。フードに隠れてまったく顔が見えない。

「なにか言え!」


 おんなはからだを萎縮させた。さらにぎゅっと赤ん坊を抱きしめる。 

 ミーゲルはゆっくりと近づき、おんなのフードに手をかけた。


「正体を現わせっっ!」

 いきおいよくフードをはねあげた。


 おんなが顔をあげた。

 まだわかい女性——

 彼女の頬に涙がつたい落ちていた。


 そして——


 くちびるがなにかで縫われていた。

 粘り気のある菌糸のようなもので、上下がびっちりと縫いあわされていた。


 おんなはなにかを伝えようとするように、涙に濡れた目で首を下につよくふった。

 ミーゲルは混乱したまま、うながされるように、彼女が抱えている赤ん坊に目をやった。

 

 彼女は赤ん坊を抱いているのではなかった——




 赤ん坊は、彼女の腹からはえていた——

 



 胴体から赤ん坊の上半身が突き出していたのだ。


 ミーゲルはがく然とした。手に持った剣が落ちそうになる。

 その瞬間、赤ん坊の頭が……頭だけが、ぐるりと180度まわってこちらをむいた。


 マンドレイクだった。


 ひきつれをおこしたような醜い顔は、禍々(まがまが)しさを帯びて、さらにみにくくゆがんでいた。

 マンドレイクが口をひらいた。


「た・す・け・て……だって…… けけけけけけけ……」



 おんなの目からあふれる涙が、すべてを物語っていた。


 ミーゲルは剣をふりあげた。

 このバケモノを切り離してあげなければ——

 こんな魔物から女性を開放してあげねば——


 が、斬りかかろうとした瞬間、マンドレイクがぷっと口からなにかを吹き出した。


 それは種のような、ほんのちいさなものだった。

 それが甲冑の隙間から飛び込んで、ミーゲルのからだに撃ち込まれた。

 ミーゲルはあまりの痛みに、剣をふりあげたまま、その場に崩れ落ちた。



 薄れゆく視界にうつったのは、自分を取り囲んで上からみおろす——


 赤ん坊を抱えた女たちの、涙に濡れた顔だった。







「あのダンジョンにいくのはよしなされ」

 老人が言った。

 勇者グルカンは肩をすくめてみせた。

「なぜかね。ぼくは第五階層くらいまでしか、行くつもりはないんですけど……」


「その階層が危険なのじゃよ……」





「赤ん坊を抱いた冒険者が現われるのでな……」


【※大切なお願い】


少しでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新がんばって!」


と思ってくださったら、

ブックマークをおねがいします。広告下↓の【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて応援して下さると嬉しいです!


この異世界奇譚シリーズの第2弾に取り掛かっています。

ただ、あまり反響がないようなら、執筆してもしかたがないな、と考えています。

ぜひ応援ください。


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まだまだ刺激が足りないでしょうか……


それでは次のお話をするといたしましょう。


 魔法学園の最高峰マーベルグ学園の惨劇のことは聞いたことはないですよね。

 あれは魔法庁が秘密裏に処理したせいで、巷間に知れ渡ることはありませんでしたから。

 ですが、あの名門学園で100年前に起きた惨劇は——

 簡単には語れないほどの、おそろしくも哀しい事件でした。

 困ったことに、現在の生徒のなかには、そんな忌まわしい事件に、知らず知らず惹きつけられてしまうものがいるようなのです。


異世界心霊奇譚     第五話 魔法学園の惨劇


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