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兵主部弐 ビブロフォビア─ひょうすべの日本史─  作者: ずずつすず
女神の降駕
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21/22

二 鏡像

 女神は、たたずんでおられたーー冴え冴えと。

 旭日のように。

 東国あづまの風に、吹かれたように。

 

 遠神とほかみ

 笑賜えみため

 

 この、微笑みしょうと、仰ぎ見る黙契もっけいの限りを、古人は、この四字に託した。

 

 

 権現ーーかりに、現れる・・

 

 もだして、

 むすび(産霊)する・・


 かつて、おのれのinvocation(召喚)をはばんだ冒涜者を、女神は、祝福した。

 これより、京洛から、地方へーーevent horizon(地平の向こう)へ没していく・・兵主の民を。

 

 ーーどうか、ご無事で・・と。

 

 かの地が、eastern haven (東の飛鳥)でありますように・・と。

 

 あづまは、日が上る方向だ。

 古来、ひとは東方をくらい(昏い、冥い)場所とし、西方の日没にこそ荘厳を見た。

 闇の下、静まりかえった地平に、やっとで日が兆すーー

 

 そこから、どれほどの輝かしさと、新生が氾濫するのかは、まだ分からない。

 

 だから、歴史の闇に、歴史の行間に消えゆくものたちへ。


 女神は、別辞と、祝福を託したのだ。

 

 



 

  

  

 ひょうすべたちが、担いできた神輿から、ご神体を取り出す。

 鏡ーー三角縁神獣鏡。

 

 (楽園よ)

 恩讐は超えたーーにもかかわらず、徐福は、枯れ木のように恬淡とした気持ちで・・挑むのだ。

 臨むーー挑む。

 れずーーなずまず。

 服従まつろわず・・

  

 一線を画してある・・それをして、不敬とそしられるのなら、

 

 もはやわれらは、車の両輪ではあり得ぬのだ。

 

 本邦の中の異邦人としてあろう。

 矛と盾のごとく相容れず・・

 (それゆえ、凄絶に)

 

 

 求め合おうぞーー

 

 

 渡来人が、鏡を運ぶ。

 これから帰化人となり、日本人になっていく。

 しかし、それは、本物か?

 鏡は写すーーだがそれは、にせものだ。

 ほんものではないーーーすべてが。

 

 真っ正面から向き合っているのに。

 

 (われらはちがう)

 異なっているーー

 だから。

 

 影のようにーー

 響きのようにーー

 

 実体なく、定かではなく、わけがわからぬが、()()()()()ーー

 

 ただ縁取り、添う()()として、ともにあろう。

 

 きっとそれが、

 

 ひょうすべの掲げうる限りの、

 

 形見なのだ。

 


 

  

 


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