水の境界よりご来店 ~4~
「それにしても、どうやって共有者を見つけるんですか? 」
ふと疑問に思った。世界中からたった一人を見つけるわけだ。共有者だとすぐに分かるものなのだろうか?セーヴェルは少し困ったように言った。
「場所の特定は簡単なんだけどね。共有者の特定は難しいかな。同じ形をしているとも限らないし。」
カウンターの奥から足音がしてノヴァとシファが戻ってきた。特に荷物を持ってきたわけでも、着替えてきたわけでもなく、これから他の世界に行くにしてはずいぶんと身軽な格好だった。
「セーヴェル、場所を教えてくれ。」
ノヴァがそう言う前から、セーヴェルはノヴァの方に手を差し出し、言われると同時にノヴァの肩をぽんと叩いた。ノヴァは少し微笑むと小さくお礼を言い、喫茶店の入り口のドアから外へと出ていった。シファも同様にそれに続いた。
「気をつけてね。」
バルは二人が外へ消えていく前にそう言った。
「さて、しばし待ちますか。」
セーヴェルはコーヒーのカップを両手で持って残っていたコーヒーを飲み干した。
暇だ。バルは洗濯物を取り込むと言ってカウンターの奥へ引っ込んでしまい、セーヴェルはコーヒーを飲んだ後だというのに、カウンターに突っ伏す形で眠りこけている。話し相手もおらず、ずっと座ったままだが、不思議と退屈な感じはなかった。むしろ、今日一日で色々なことが起こりすぎて、頭の中を整理する時間を得られたからかもしれない、いくらでも考え事をしていられた。私の共有者はどんな人だろう。共有者であれば、見た目も似ているのだろうか。先程セーヴェルは同じ形とは限らないと言っていた。となると、似ていない可能性もあるのかもしれない。そもそも魂の共有だから、人であるとは限らないのだろうか。
「見つけた。」
ずっと眠っていたセーヴェルが起き上がり、はっきりとした声を発した。
「もう見つかったんですか? 」
静かな考え事から急に現実へと呼び戻され、私は驚いて立ち上がった。
「目立つモノで良かったよ、小さな虫とかだったらどうしようかと思った。」
セーヴェルは微笑みながらそう言うと、立ち上がり、喫茶店入り口のドア付近まですたすたと歩いていった。
「ロナ、こっちまで来て。」
自然に名前を呼ばれ、私は反射的に動き出した。木でできた床が軋んで音を立てる。ドア前まで来ると、セーヴェルが手を伸ばし、私の肩に触れた。その瞬間、懐かしい風景が頭の中で明確なイメージとして浮かび上がった。
「その風景を思い続けて。難しければ目を閉じてても良い。」
風景は私の故郷だった。田んぼに落ちる前に見ていた光景だ。意識し続けないと徐々に薄れていきそうだったので、私は目を閉じた。
「準備は良い? 」
鮮やかな風景の中で、セーヴェルの声が聞こえて、その後ドアのベルがカラコロと音を立てる。私は声を出すことなく頷いた。
「じゃあ行くよ、またね。」
セーヴェルに軽く背中を押され、私は数歩歩いた。




