第27.5話 細い線は切れなかった
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勝ったわけではない。
ガリオ商会は大きい。
荷も金もあり、付き合いも長い。
ベルカ商会とは、持っているものが違う。
だから、勝ったわけではない。
ただ、押し込まれるのは止めた。
仕入れ先を見せろと言われても、ミリアは断った。
規格外品をどう保証するのかと聞かれても、逃げなかった。
南区管理所に確認すると言われても、止まらなかった。
前なら、たぶん固まっていた。
俺を見る。
ロイを見る。
帳簿を見る。
それから、どうしましょうと言う。
だが、今日は違った。
「対等になる必要はありません」
そう言った。
「うちは、うちの仕事をします」
あれは悪くなかった。
かなり、悪くなかった。
口に出せば、たぶん全部くださいと言う。
だから九割にした。
残り一割は、息を止めていた分だ。
だが、息を止めても言葉は止まらなかった。
それなら十分だ。
ロイも変わった。
帳簿を奥に下げ、荷札を隠し、必要な時に記録を出した。
あの帳簿は、ただの数字ではない。
何を、どこへ、誰が確認し、何に使うか。
それを分けていたから、ベルカ商会は説明できた。
説明できたから、南区管理所が認めた。
認めたから、仕事になった。
細かいものは面倒だ。
だが、面倒なものを分けなければ、細い仕事はすぐに切れる。
トマたちも見ていた。
それでいい。
商会は、商会主だけでは動かない。
帳簿を見る者がいる。
荷を運ぶ者がいる。
店先に来た相手を見る者がいる。
そういう手が増えると、商会は少し止まりにくくなる。
細い線は、細いままだ。
ニール鍛冶場は小さい。
規格外の鉄材も多くない。
継ぎ輪金も、どこにでも使えるわけではない。
それでも、切れなかった。
南区の小樽は止まらない。
西区の調査も始まる。
大きな荷ではない。
だが、小さい荷が動くと、止まらない場所が増える。
それでいい。
ガリオ商会が太い道を持つなら、ベルカ商会は細い道を拾う。
細い道は、踏まれやすい。
すぐ曲がる。
すぐ詰まる。
だが、見つけて、分けて、記録して、運べば、道になる。
今のベルカ商会には、それが少しできる。
それに、ミリアの作る昼飯は、やはり前より少しうまくなっている気がする。
理由はわからない。
豆の煮方か。
塩の量か。
俺が慣れただけか。
どれでもいい。
食える飯があり、動く荷があり、切れない線がある。
なら、まだここにいる理由はある。
次は、南区の正式な小樽管理。
それから、西区の調査。
仕事は増える。
帳簿も増える。
たぶん、文句も増える。
だが、ベルカ商会はもう、ただ小さな荷を運ぶだけの商会ではない。
止まりそうな線を見つける。
切れそうな線をつなぎ直す。
そのために動く商会になり始めている。
細い線は、切れなかった。
次は、その線をどこまで伸ばせるかだ。
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